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清宮監督今シーズンを振り返る

清宮監督今シーズンを振り返る

 シーズン終了から5日経った1月25日の午後、サントリーのお膝元『赤坂』にて清宮監督に今シーズンを振り返ってもらいました。短くなった練習、選手起用、あと1歩及ばなかった関東学院との決勝…、激動のこの1年のすべてをここに。<聞き手HP委員>


――今まで主将の経験はあるが、今回初めて監督をやってその感想は?
 楽しかった。自分が思うように人が使えるし、チームを作っていけるし。キャプテンをやってたときと同じ感覚だね。

――監督として大切にしていたことは?
 軸がぶれないこと。常に自分の言葉で話すこと。あの時こう言ったのにというのができるだけないようにした。

――自身が学生の時と今の学生に違いはあったか?
 肉体的にはみんな足が細いし遅いなと(笑)。今でもFWで俺より速い奴はいないんじゃないかな。昔はFWでも50m計って俺より速い奴もいたし。存在感みたいなのがバーっとこなかった。でもその存在感が(シーズンが進むにつれて)だんだんでてきた。パスとかも春とは格段にうまくなった。精神的にはもっと前はやんちゃだったし、もっと衝突していた。

――今の学生はおとなしいなと?
 だんだん個性が分かってきて、今はそんなことはないけどね。

――早明戦に代表されるようにメンタル的にも強いチームだったと思うが、そういったトレーニングはしたのか?
 精神的なことは何もしてないはず。チームに自信がついて、チーム力も上がってきて個人のプレーにも磨きがかかって、それで精神力が出てきた。(チームが)弱かったら自信も持てない。

――学生の間からは監督が身近に感じたという声が多かったが?
 選手の親というような身内意識がある程度あった。それは自然発生的な感情で、どの監督にもあることだとは思う。

――練習時間を短くしたことで学生の間には不安の声もあったようだが?
 今までも主将が決めて、メニュー自体は普通にこなせば2時間くらいだったと思う。それを最後までこだわっていたから4時間になっていたんじゃないかな。俺だったら一刀両断に斬る。それはやらなくていいとか、それはダメだとか。ここはこうしろとか。(そうすることは)最初から決めていた。週6日間練習するわけだから、1日にあんまりやってたら続かないし。社会人は週に3,4日しか練習しないからね。

――今までは主将がすべてを背負っていた部分を監督と主将で役割分担したと聞いたが、どういった分担をしたのか?
 私生活、態度、意識、もちろんグラウンド上での、例えばみんなを集めて何か言うとか、それは主将にまかせた。キャプテンがやるべき仕事をもっと与えても良かったかなとも思うけど、今年に関してはしょうがない。

――アタック重視の戦術でいくことは実際に選手を見る前から決めていたことなのか?
 サントリーに似ているというのはあるけど昔の早稲田はあんな感じだったと思う。自分のときもタッチキックとかなくて蹴るならハイパントしかなかった。それが当時最先端で、時間が経ってそれが主流になってきて、今年やったらサントリー版ラグビーと名がついた。アタックしないと点はとれないし、ディフェンス重視で考えてチームを作るときは体が大きくなくてはいけない。一人、二人の強い、タックルで止められる選手がいたらディフェンスをもっとしっかりやっていたけど、小さいと限界があるし、持っていかれるところはもっていかれるし。

――大西先生のラグビーに似ているというOBの声もあったが?
 そうかも知れないね。

――シーズン終盤はディフェンスの練習にあまり時間をかけていなかったが?
 ディフェンスについては昔から、昨年とかもそうだけど相手があって、「相手がこうきたらこう」というやり方だったけど、今年は相手というより、大きいルールを作った中で「自分たちがこうしていく」というようにした。そのための大枠を教えていった。早稲田はそういうところが弱かった。カウンターアタックとか偶発的なプレーが出てきたときはディフェンスが出来なかった。大枠だけ決めて、自分で判断するようにしたことで(ディフェンスの練習には)時間をかけずにいけた。

――100個以上のサインあったが、決め事と個の判断のバランスはどうとっていたのか?
 ほとんどのサインは表と裏を作っていた。ディフェンスの動きと一緒でこだわりだしたら時間がいくらあっても足りないから、サインで流れだけをつかむように。ボールを持った奴がそこで右に抜くか、左に抜くかは決めてない。グラウンドの中でのボールの流れだけを決めていた。そうすることであらゆる場面に対応できる。そこが今シーズンのアタック力につながった。

――西辻(勤、4年FB)を中心に据えてにサインを作っていたことで、誤算もあったと思うが?
 西辻というよりスピードのあるFBをイメージして作ったから、誤算ということはない。今思えば、今シーズンは、西辻はWTBで使ったほうが良かったかもしれないね。

――シニアとジュニアに練習を分けたが?
 全員じゃできないから。時間が許せば全部見てやりたいけど、例えばあの施設で6時から練習するのは無理。その点で来年は変わるかもしれない。グラウンド整備の時間もなくなるだろうし。

――コーチ陣について、昨年までは指導に統一感が欠けているという声もあったが?
 今年はコーチも俺のやろうとしているラグビーを勉強していた。人数しぼったのは、軸がぶれないようにするため。みんなそれぞれが思う早稲田のラグビーがあってそれを教えようとするからそういう声があったんじゃないかな。

――同年代のコーチが多かったが?
 深い意味はない。先輩達は長い間コーチしていただろうから、お疲れ様と。土日には家族サービスも大事だから(笑)。

――関東学院大に負けての準優勝という結果について
 社会人の監督とは違うからね。何年か経つと優勝できなかった代だと言われるのは、左京もOB会で言ってたけど、その通り。あの舞台(決勝)に立たせてやることが出来たのは最低限のことはしてやれたかなとは思う。やっぱりまだ足りないね。

――具体的に関東学院大との差、足りなかったところとはどんなところか?
 基本プレー。まだなってないと思う。セットプレーとかもっとつめれた。セットプレーがもっとできれば勝てた試合。ディフェンスはまあまあ良くやった。本当に勝ちゲームを逃した感じ。密集でのターンオーバーが多かったのも、レベルのそこまでいってない選手が何人かいたから。(勝負は運と言っていたが)そのレベルまでいかなかったということかな。やるべきことをやっていなかった。

――関東学院大と互角に渡り合えるという手応えを感じたのはいつ頃か?
 夏合宿の後半から。関東とやったあとくらい。夏合宿で改めて、チームの伸び方とかすごいもんだと思った。

――決勝の後からは『清宮対春口・新ライバル対決』のような報道も目立つが?
 別に何とも思わない。それを期待してラグビーを見に来てくれるお客さんが増えればそれで良いと思う。

――やはり来シーズンも目指すところは関東学院大か?
 もちろん。来シーズンは試合をするのは6月と、選手権だけかな。選手権でも向こうは上がってくるだろうし。

――ワセダは長年、明大を倒すことを年頭に置いてきたが?
 イメージ的には同じだね。強いスクラムがあって、FWで崩してくる。1番強いところを目標にするのは変わりない。それが今は関東だということ。時代が変わって明大から関東になっただけだと思う。

――今シーズンはコンバートもうまくいったが、どう決断しているのか?
 毎日俺が見ているからだし、ひらめきもあるけどぱっと1日見て決めているわけではない。うまくいくだろうと思ってやっているから。指導する前から思い描いていたのは大田尾(竜彦、2年)のSOくらいかな。大悟(山下、3年)もだけど、大悟のCTBは思っていた以上に良かったね。

――準決勝での大江(菊臣、3年)の起用など、采配もかなり的中したが?
 すべてが上手くいっていたらメンバーを変更する必要はない。このままじゃまずいと思うから変える。だいたいは直感かな。最終的に前の試合で悪かったりとか、何か不安なことがあって一掃するために変える。例えば外すことで安藤(敬介、4年)も良くなると思ったし、豊田(大生、3年)を2回出したのも良くなると思ったから。スランプを脱出させるための交代だったり。変えて下のやつのモチベーションが上がるのは当たり前だけど、上のやつも変えることで良くなる。

――下のチームの選手のモチベーションの維持は難しいと思うが、どのようにしていたのか?ジュニアの選手も監督に気にかけてもらっていてうれしかったと言っていたが?
 4年生は難しくない。4年は言わなくてもやるから。下級生は伸びなきゃいけない時期に腐ってしまったら困る。ジュニア以下の底上げは大谷(ジュニアコーチ)の力もある。内ゲバも、もっと早くてもよかったかもしれないが、いい時期にやったと思う。C(チーム)がもっと早くこうなっていればもっと強いチームになったかもしれないね。

――今年はマスコミの注目度もすごかったが?
 取材をすべて受けるのはラグビー自体が人気低迷してきていて注目されたいからだし、自分の母校(のラグビー部)がなくなったというのもある。4人しか部員がいなくなってしまって廃部になってしまった。自分が声をかけた子供たちがそれでラグビーを続けたりしてくれれば、うれしいね。

――掲載された記事などは見ているのか?
 マスコミには目を通している。それを見て発言には気をつけようと思ったこともあるし。

――選手権のあとの記者会見でマスコミにありがとうございましたと言っていたが、やはりマスコミに感謝する気持ちは大きいか?
 そうだね。何だかんだいっても早稲田のOBがいるからこれだけ注目されるし、それで天狗になっても仕方ないけど。こういうOBがいなかったら本当は取り上げられないから。自分たちが現役のときは今年みたいにグラウンドにカメラが来ているのは当然だったから、学生にもそういったなかでやらしてあげたかった。

――今年はOBも例年にないほど練習に集まってきてくれたが?
 みんな来たかったのに、今まで早く負けて練習やってなかったから来れなかっただけじゃない?(笑)暮れは忙しいから、お正月とか年明けてからじゃないと練習もなかなか来れないだろうし。

――今年は改革の年、そして来年は進化の年ということだが?
 今年は1から始めて、新しいチームは5から始められる。その分今年のチームでできなかったことをやれる。今年出来たのは、やりたいことの半分くらいかな。卒業する4年の穴は成長で埋められる。来年に向けては「S組」というのを作って、宝田雄大のところに派遣している。下級生対象に12月中旬からスタートして、最初のメンバーが12人くらい、2月からプラス6、7人。シーズン途中からラグビーやらせないで体作りをやらせることは今までの早稲田にはなかった。こういうような新しい来年に向けての動きもたくさんあるし、イングランド遠征もあるし、東伏見のサヨナラもあり、新グラウンドもあり、もっともっとすごいことが来年もあるから新しい年も大変だよ、ということかな(笑)

――大学ラグビー自体も言われていることは色々あるが?
 対抗戦は残したい。チームを作るのに時間がかかるから9月の最初に強いところと当たってその勝敗が後々まで残るのはワセダにとっては不利。(総当りリーグのような)制度で強くなるかもしれないけど。対抗戦を残しながらその後にトップリーグみたいのができればいいね。

――日本選手権については?
 記者会見で言った通り。何%かの可能性があればやりたい。でも差はどんどん広がって行く一方だね。(トヨタとの試合も)本当は浅いところで抜きながら、横にパスを出していくイメージ、相手にしてみれば、どこで抜かれるか分からないという。でも(後ろで)パスを回すことばかり考えていた。だからやりたいことができたというわけではない。最初のボールタッチする3人くらいが大事。来シーズンは9,10,12番のところを徹底的にやる。

――東伏見でやるのも今年度が最後だったが?
 試合に勝つために、歴史の意味、伝統を使ってやろうと思った。すべては試合に勝つために利用した。東伏見に戻って来た時はやっぱり心が落ち着く場所だなと思った。でも(なくなる)さみしさよりも、それ以上の素晴らしいものが手に入る。芝になると、全然違う。練習の方法も変わるし、やりたい練習がいっぱいできる。スクラムも強くなるし、低いプレーも強くなる。

――『早稲田ラグビー』にしかないものは?
 『荒ぶる』

――応援してくれる早稲田ファンへメッセージを
 もともとファンが多いのは知っていたけど監督になって改めてそのすごさを感じた。特にトヨタ戦のノーサイドの後、学生達に多くの握手してくれて、幸せだなと。Yahooの掲示板などを見ててもいつからかすごい数になっていて。HPも色々見てるよ。選手起用法とかおもしろい(笑)(見ていて書きこみをしたくなるか?)書きこみたいことがいっぱいあるよ(笑)さすがに書きこんだことはないけどね。