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2024
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対関東学院大戦観戦記

 「汝等の平和は勝利にあれかし」。大正14年5月15日に発刊された『鉄笛』創刊号には哲学者・ニーチェの言葉が引用されている。勝利への飽くなき探求心。みなぎるインテリジェンス。創部間もない頃からワセダは勝利への情熱に満ち溢れていた。勝利=大学日本一こそがワセダにとっての使命、存在意義。12年の空白を経て、ワセダはついに理想の境地へ帰ってきた。
 「ここにいるみんなにとって明日は人生最高の日になる」。試合前日の決意表明、主将・大悟は全部員の前で力強く言い放った。悟りを得たかのようなすがすがしいその表情。すべてをやり尽くしたという自信。大悟の脳裏には既に勝利の部歌・『荒ぶる』が奏でられていた。
 雌雄を決する大一番。ワセダは会心のロケットスタートを見せる。まずは7分、頼れるエース・山下大悟が相手を引きづりながらインゴールに飛び込みトライ。赤黒に染まった国立に火をつけると、14分には「ライン際を駆け上がり日本一へのトライを決める」と宣言したWTB仲山聡がこの1年間の思いすべてを乗せ、ライン際50メートルを独走。22分にもゴール前フリーキックから準備に準備を重ねたサインプレーでSO大田尾竜彦がインゴールを陥れ19-0。悲願の大学日本一へ見事な『ULTIMATE CRUSH』を展開した。
 しかし、12年間勝利から見放されたチームの宿命か。「攻めるぞと言ってもどこか意識してうまくいかなかった」(山下主将)と言うように、ここからは王者・関東学院大の超強力FW、快速バックスリーの前に後手を踏む苦しい展開。これでもかとばかりに組まれるスクラム、一枚岩のモール。ゲームプランどおりにことが運ばず、ひたすら我慢を強いられた。
 ここでワセダを支えたのが『勝利への情熱』。現役、そしてOBの「勝ちたい」という強い意志が、ワセダの伝統・魂のタックルを呼び込んだ。激しく速いタックルで体格で大きく上回る相手を粉砕。守りに守り、最後は5点差にまで詰めよられながら、「狂気」で大学チャンピオンの座を掴み取った。
 「荒ぶる 吹雪の逆巻くなかに…」、主将・大悟のソロで始まった勝利の部歌・『荒ぶる』。日本一になったときにしか歌うことが許されない、「ワセダにしかない特別な歌」(清宮監督)がついに国立にこだました。涙を浮かべ絶唱する部員、監督、コーチ、スタッフ。それを誇らしげに見守るOB。受け継がれる伝統、勝利に彩られた輝かしい歴史、涸れるほど流してきた血と汗と涙。『荒ぶる』こそがワセダのすべて。人生最高の狂喜。ワセダラグビーが最も輝く瞬間に誰もが酔いしれた。「結構うまかったでしょ(笑)」(山下主将)。「泣かないようにと思っていたけど、思わず涙がでてきた」(清宮監督)。「今日のことは一生忘れない」(田原耕太郎)。
 2003年1月11日、ついに果たした『荒ぶる』復活。またひとつワセダラグビーに新たな歴史が刻まれた。訪れたワセダ新時代の幕開け。「ワセダの時代はまだまだ続く」(清宮監督)。目指すは真の常勝軍団。「汝等の平和は勝利にあれかし」…<HP委員 疋田拡>

<男泣き 清宮監督試合後のコメント>
「互いに特徴のあるかたちでトライを取り合った決勝戦にふさわしいいいゲームだった。前半にあれだけ簡単に点が取れるとは思っていなかった。点数が開かなければ、関東が固いゲーム運びできて、ワセダのペースになると思っていた。関東は細かいミスもあったけれど、今までのベストゲームだと思う。それほど大体の部分がよかった。関東は最後のところでミスがあり、逆に言えばワセダがよくがんばった。19-0になってからちょっと守りに入ってしまった。いつもなら攻めに行くところで蹴ってしまった。ラインアウトが思っていたように取れなかった。2、3人脳震盪でサインが分かってない選手がいてあーあという感じだった。スクラムに関しては3番の伊藤が十分期待に応えてくれた。優勝できたのはこれまで支えてくれた方々のおかげ。ワセダの時代はまだまだ続く」

<今シーズン一番の笑顔を見せた山下主将>
「1年間ここで勝つことを目標にしてきたので、勝つことができて素直にうれしい。19-0になってからは攻めるぞって言ってもどこか意識してうまくいかなかった。まぁ、勝てたので今日はすべてOKです(笑)。PGを狙ったのは直感。2トライ2ゴールでは追いつけない点差にしておきたかった。ペナルティーからは色々なサインプレーを用意していて、どれも自信のあるものばかりだった。そこでトライが取れたので、(序盤に)ペナルティーからトライを取りにいったのは正解だった。関東は個々が強かった。うちがその部分に焦ってディフェンスで反則を重ねてしまった。オフサイドが多かった。もっと落ち着いて守ればよかった。最後はロスタイム長いだろと思ってやっていた。反則しないで守っていれば大丈夫だろうと思っていたけれど、関東のFWがよく動けていた。ずっと自陣だったので、後半は長く感じたと言えば長く感じた。負けなしで1年を終えたことはうれしい。人生で最高の日になった。(『荒ぶる』は)結構うまかったでしょ(笑)。うれしいでしょみんな。とにかくホッとした。もう笑うしかない」

<激しいプレーでチームを支えた副将・上村康太>
「試合のことはあまり覚えていない。最後は自分がタックルミスをしてしまった。ノーサイドの後のことは全部覚えてますけど(笑)。『荒ぶる』を清宮さんの横で歌ったけれど、今までの人生で味わったことのないうれしさだった。本当に最高。卒業後もことあるごとに『荒ぶる』を歌えることがマジでうれしい。今年優勝できたのは自分が1,2年生の時の小森さん、江原さんの代の厳しい練習があったから。その時の先輩たちの熱さを大事にしていきたいとずっと思っていた。優勝できたのはみんなのおかげです」

<5年目で栄冠を掴み取ったSH田原耕太郎>
「最高にうれしい。今日のことは一生忘れない。プレースキックを入れたのは後々見ると大きかった。7点は大きい。今日はもうちょっといけるかなと思っていたけれど、向こうも一生懸命で強かった。今日は勝てばいい。チームに残って本当によかった。(試合前、同期左京組のメンバー全員の寄せ書きが5年生の3人に送られた)試合前に色紙を見てみんな粋なことするなーって。試合前に泣かせるなって感じ(笑)。みんなの分も勝ててうれしい。夢が叶った」

<後半13分、キックチャージから貴重なトライを挙げたロック高森雅和>
「優勝が決まった瞬間はあまり実感は沸かなかったけど、『荒ぶる』を歌ったときに4年間よくやったなと思った。4年間でだんだん上がっていくことができた。1年生の時は全然ダメで、2年生のときは試合に出られたけど途中で外されて、3年生の時は最後の舞台に立てなかった。4年生になってやっと決勝の舞台にでることができた。色々と思うところもある。本当にうれしい。トライはワセダらしいいいトライだったと思う。4年間の集大成を出すことができた。ラグビー人生で日本一を経験することももうないでしょう。こんな思いは二度とできないと思う。4年間色々とあったけれど、自分たちのしてきたことは間違ってなかった」

<表彰式で一番の歓声を受けたフランカー羽生憲久>
「今日は勝てたんでいいんじゃないですか(笑)。久しぶりに見るOBがたくさんいてびっくりした。『荒ぶる』を歌っている時はこういうもんなんだーって感慨深かった。いい思い出になった。相手にやすやすとゲインを切られたのに悔いが残る。でも今日は勝って、いい4年間になったと思う」

<昨シーズンの悔しさを払拭するトライを挙げたWTB仲山聡>
「あのトライで昨年から続いていたモヤモヤが完全に吹き飛んだ。気持ちよかった。試合が終わった後はとてもさわやかで晴れ晴れとした気持ちで涙はでなかったけど、『荒ぶる』を歌った瞬間、こみ上げてくるものがあった。4年間を振り返った。ワセダで日本一になるために浪人して一生懸命勉強して本当によかったなーって。今日ですべてを出し切りました。僕はもうお腹一杯です(笑)。悔しい思いもたくさんしたし、激動の4年間だった。過ぎてしまえばあっという間だった。悩んだときがあって今の自分があるのだと思う。すべてがいい思い出です」

<1年間司令塔としてチームを引っ張りつづけたSO大田尾竜彦>
「今日はもうとにかくうれしいということだけ。ホッとした。今は他のことは何も考えられない。今日はいい試合だったと思う。やろうとしていたことは最初はできたけれど、途中からはあまりできなかった。相手のFWがものすごく強かった。辛さとかはこれまでと変わらなかったけれど、気が張っている分楽に感じた」

<ケガから2ヶ月ぶりに復帰したプロップ伊藤雄大>
「関東のスクラムはそれなりに強かった。清宮さんも言っていたけれど、『荒ぶる』の価値は歌ったすぐには分からない。10年後位にその本当の価値が分かると思う。今日は足よりも腰が痛かった。自分のプレーはできた。スクラムだけですから。『荒ぶる』をあと2回歌う」