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2024
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対NZU戦観戦記

 「怯まずに前へ」。それがワセダの生きる道…。
 試合直前、世界最強・誇り高き漆黒戦士が戦場へ向かうために行う儀式・ハカ。赤黒を身に纏った22人は、ただそれを見つめるのではなく、眼前にまで歩みより、鋭い眼光で相手を睨み返した。「俺たちは1歩も引く気はないぜ」。東洋の小人が見せた強烈な意思表示。先人たちから受け継がれてきた強い気持ちが、単独チーム史上初の快挙を呼び込んだ。
 「今できることを精一杯やろう」(大田尾主将)。『大田尾組』本格指導からわずか1週間。そこには新たな試みはもちろん、確固たるゲームプランも存在しなかった。しかし、ここ2年で作り上げてきた『Victory Chain』、85年を超えるワセダの伝統が選手たちを突き動かした。
 勝負師・清宮監督が仕掛けた「飛び道具」・首藤甲子郎(1年、WTB)がファーストアタックでライン際を疾走すると、これを口火に『高速』アタックが炸裂。相手の1歩先を行く集散の速さに激しいスイープ。シーズン中と何ら変わらぬ見事なパフォーマンスで、大男たちを揺さぶり地獄に引きずり込んだ。3分、ペナルティーからのハリーでFB内藤慎平(3年)が4人を抜き去り、先制となるトライを挙げると、30分にも「ラインアウトからのアタックではSOの内が空くからそこを突け」と言う清宮監督の指示通りに仕掛け、CTB豊山寛(3年)がトライ。常に先手を取る理想的な展開に持ち込み、1歩ずつ勝利への階段を駆け上がった。
 そして、ワセダのお家芸・低く激しいタックルが歴史的勝利への決定打。「相当よかったね」と清宮監督も認めるスーパータックルを随所に見せ、強く、懐の深い相手に思うような攻撃を許さなかった。特に第3列を中心としたFWのディフェンス力はサイズの差を超越。誰彼となく相手に襲いかかり、素早い仕掛けからターンオーバーを連発した。
 前半のトライ合戦(14-14)、PGを蹴り合う後半開始からの神経戦(23-17)にピリオドを打ったのも、そのディフェンスからの逆襲。30分、しつこいタックルで相手のノックオンを誘うと、そこからSH後藤翔太(3年)が渾身のラインブレイク。敵陣に蹴り込んだボールを最後はWTB山岡正典(4年)がインゴールまで運び切り(30-17)、ワセダ、そして秩父宮に歓喜の渦を巻き起こした。直後の34分にも、この日抜群の安定感を見せたスクラムからの揺さぶりでCTB内藤晴児(4年)がトドメのトライ(37-17)。この後パワープレーに屈し2トライを返されたものの、最後まで強い気持ちで戦い抜き、この上ない、会心にして極上の勝利を掴み取った。
 単独チーム初となる歴史的勝利に喜びを隠し切れない選手たち。熱い試合とは打って変わり、和やかな雰囲気で行われたアフターファンクション(ラグビーはやっぱりノーサイド精神。とっても盛り上がりました!)でのNZU団長・スティーブ・モリス氏からの言葉がその喜びを倍増させた。「今日はワセダの歴史的勝利に敬意を表したい。ワセダのスタイルは日本が世界と戦う時に有効だと思う」。見せつけた『ワセダスタンダード』。小さくたって勝てる。誇り高き赤黒軍団にまたひとつ、新たな歴史が刻まれた。<HP委員 疋田拡>

<2003年初采配を勝利で飾った清宮監督>
「今日は接点で思うようにボールがコントロールできたのが大きい。始まって4,5分でいけると分かった。メンバーを入替えてくる後半が勝負、前半の内に何点取れるかなと考えていた。後半相手のメンバーが替わっても、変わらずいいプレーができた。スクラムも日本A代表みたいに崩壊しなかったし、計算通り。スクラムは低すぎて嫌がっているように見えた。途中からは日本A代表の時と同じメンバーだったけど、低さと仕掛けるスピードでうまく対抗できた。後半ゲームが荒れたのは彼等が本気になった証拠でしょう。今日は新たなプランもなかったし、用意できるわけがない。昨年とメンバーが替わったところを生かすサインは作ったりしたけど、大枠は変わらない。一人じゃ止まらないし、球が出せないと思っていたので、局面の数で上回ろうと。その通りにできた。セットからも2本取ったし、相手の穴を突く竜彦のリードが光った。これからはビデオを見て、それぞれのプレーの可能性を探って、うまくいきそうなものを実現させるように練習をしていく。甲子郎は日本A代表の試合を見て使おうと思った。ワセダが上回っている部分は、フィットネス、数的優位、HB団のパス、それと甲子郎のスピードだと思ったから。他に勝っているものが見えていたら、使わなかったかもしれない。前半2,3本走って相手にも速いと分からせることができたし、外に速いのがいることで内側が空いた。まだタッチとの感覚が分かってないからこれから教えていく。今日の勝ちのすごさは明日の新聞を見て理解したい。最後は栄次がPG決めて、みんなでガッツポーズするはずだったのに(笑)」

<主将として最高のスタートを切った大田尾竜彦>
「今日はとにかくディフェンスをしっかりやろう、2人、3人で止めようと話していた。その通りいいディフェンスができて、勝ちを掴み取ることができた。準備期間は確かに短かったけれど、グラウンドが使えなかった分、フィジカルが鍛えられたと思う。弱いところが引き上げられ、自信を持って戦うことができた。何か試そうとか、これを大事にしたいとかそういうことは何もやってこなかったから、特に意識することはなかった。とにかくやれることをやろうと言っていたし。そんな中でいいゲームができたことはすごく自信になる。A代表も大敗して、周りはワセダが勝つなんて思ってなかったでしょうし。最後に栄次が外した時にはさすがにビビりましたよ(笑)」

<激しいタックルを連発した副将・川上力也>
「思っていたほど相手が強くなくて、タックルにバシバシ入れました。組織的なことは何もやってなかったので、今日はひとりひとりの意識や基本プレーがしっかりできるかが重要だった。その点では満足しているけど、自信を過信にしてはいけない。今年は今年のチーム、昨年とは別と考えている。今日もステップのひとつ。(同じくフランカーで出場した)松本もいい選手なので、特に違和感なく入っていけた。今日は練習が少なかった割にはよくできたと思う。副将としてはFWをしっかりまとめていきたいし、個人的には大学一のフランカーになりたい」

<4年の意地、大外の好ディフェンスでチームを救った山岡正典>
「相手がでかいと燃えますね。A代表の試合を見てて、みんなあの11番(ツイアキ・ファンクションでは佐々木も交え、すっかり仲良しに)にハンドオフされていたから、下にいったらアウトだと思った。清宮さん、清さんに言われた通りのディフェンスができた。イメージができていたので、慌てずに対応できた。(後半30分の)トライは意地でしかなかった。飛びこまれなかったらやばかったですね(笑)。情報がない分助かりました。自分が負けたらもう4年生がいなくなるからとにかく意地を見せようと思った。1年生には負けられません。もっと走れないとだめですね。昨年と一緒じゃだめ。今年はボールをもらいにいきたいので、運動量を上げることを意識してきたい。トライを取られたのは慎平とのコミュニケーションミス。そういう部分をなくしていきたい。セブンズもよかったし、今日の勝ちも自信になる。小さくて足が遅くてもワセダでレギュラーになれるし、大きい相手にも勝てるということを証明できた」

<FWの核として期待が懸かるロック桑江崇行(3年)>
「どんなに大きくて強い相手でも力強く、負けないプレーを心掛けている。今日はある程度はできたかなと思う。接点、ラック周辺で1番強いプレーヤー、北川さん(トヨタ)以上のロックになりたい。今日はスクラム以外はうまくいったと思う。スクラムはとにかく強かった。しょうがないという位。今まで組んだ中でも一番。そんな相手でもマイボールがキープできたのは練習の成果ですかね」

<初めて赤黒の1番に袖を通したプロップ諸岡省吾(3年)>
「昨年の大江さんは絶対的な存在だったから、今日は自分にとってすごく大事な試合だったし、絶対に押されてはいけないと思っていた。前半はよかったけど、後半はちょっとやられてしまった。大江さんが抜けたことは相当意識しますね。プロップは個人差があって、大江さんには大江さんの組み方がある。大江さんの理論は色々と教えてもらったけれど、自分流にアレンジして、自分にあった組み方を追求していく必要があると思う。今日はとにかく集中してタックルしようと気持ちを入れていた。周りからはきつい試合にみえたかもしれないけれど、そこでがんばれるのがワセダの強さですから。(久我山の同級生)豊山も伊藤も試合に出ているのに自分だけ出られなくてとても悔しい思いをしたけれど、今日でやっと背中に手が掛かった感じです。今年は久我山で1列が組めたらいいですね。今年は国立で山村(関東学院大)を押します。山村と比べたら自分はまだまだですけど、正月には絶対に押します」

<甲子郎との赤黒に大満足、スピードを存分に発揮した後藤翔太>
「どんなに強い相手でも球を捌けるようにならないとだめですね。その点は不満です。最初から負けるなんて全然思ってなかったし、勝てると思っていた。もっといいプレーをして勝ちたかった。昨年は20分とかの出場で、どうしても自分を見せようという気持ちが強くなってしまっていた。今年はドンと構えて試合に臨めているのが大きいと思う。甲子郎と一緒に試合に出ることができて本当にうれしいですね。一番かわいがってますから。まだまだあんなもんじゃないですよ。チームにフィットしたらもっといけますよ」

<入部式から1週間で赤黒を手に入れた首藤甲子郎>
「緊張は全然しませんでした。今日はもっとやれましたね。最初は体力もあって自分からボールを要求できたんですけど、スイープとかコンタクトをする度に体力を消耗して、途中からはもう足がパンパンでした。Aチームの練習は高校とは全然違います。動きが組織化されていて、何とかついていってる感じです。高校までの考えをなくして、1から作りなおすのが大変です。最初の試合で外国人とやれて、大学でやっていく自信がつきました。この1週間は練習で翔太さんにたくさん声を掛けてもらって助かりました」