「キャプテンの正木を中心に（この日の正木はパスを忘れたFBと清宮監督が評するほど）、気持ちが前に出たいい試合だった」（清宮監督）。気合…。失意の敗戦から一週間。宿敵の聖地に乗り込んだ大一番で、ワセダが息を吹き返した。
この日の一番星は『ガッツ』ことフランカー東条雄介（１年）。相手の足首に突き刺さるスーパータックル、一瞬の機先を制するセービング、BK顔負けのランニングスキル、そして休むことを知らない豊富な運動量…。あの羽生憲久（前年度フランカー・現日本航空）を思わせる獅子奮迅の活躍で、チームに活力をもたらした。
闘志剥き出しの東条に引っ張られ、ディフェンスが前に出続けると、先週はまったくいいところがなかったアタックも自然と機能。「ゲインできる奴がいるだけで全然違う」と主将・大田尾に言わしめたCTB豊山寛（３年）、フランカー古島直（３年）を軸に、相手ディフェンスを切り崩した。
細かいミスこそあったものの、奪った７つのトライにはワセダらしさが散在。ペナルティーからの素早い仕掛け、BKによる『高速』展開、FWによるラインブレイク…（後半３８分にはこの日を象徴するようにフランカー東条がこぼれ球を押さえ込みダメ押し！）。常に先手を奪う理想の展開（最小得点差は２１－１２の９点）で会心の勝利を収めた。
残すは首位をひた走る帝京大と『チームワセダ』最大のターゲット・関東学院大。「全勝の帝京は俺たちが引きずり降ろす！」（正木）。ファーストフェイズトップ通過へ、ワセダは一気に突っ走る…。そして、東条雄介は羽生憲久を超えるか…＜HP委員 疋田拡＞
＜気持ちでチームを立て直したゲームキャプテン・正木健介＞
「やっといい試合で勝つことができました（笑）。本当によかった。今日はとにかく気持ちが入っていた。練習から先週と全然違った。みんな負けたことで危機感を持ったんだと思う。負けてから４年で引っ張ろうという話をしていたし、自分もチームに対してもっと厳しく言っていこうと意識した。今日は相手がサイドをしつこく突いてくるところを、一次の段階で下に入って前で止めることができたし、アタックでは確認していた通りに順目を攻めることができた。でも一番大きかったのはやっぱり気持ち。勝ちに対する拘りを忘れてはいけないと改めて感じた。今日はみんな、自分がチームを勝たせるんだという気持ちでプレーしていたと思う。東条みたいな元気な奴も入ってよかった。今日のこの気持ちを持ち続けていけば、この先もいいプレーができるはず。この前みたいなことが二度とないように、これからも尻を叩き続けていきたい。Bチームで勝つことももちろん大事だけど、目標はあくまでもAチームで赤黒を着ること。みんながその気持ちを持ち続けていくことも大切だと思う。上井草以外の人工芝で初めてプレーしましたけど、膝をすりむいちゃいました（笑）。少しやわらかいなと感じるくらいで、特に違和感はなかったです」
＜フランカー２試合目、初のシニアで驚愕のプレーを連発した東条雄介＞
「今日はすごくしんどかったです（笑）。やっぱりシニアはコンタクトが全然違う。スイープとかスクラムサイドのディフェンスはまだまだだと感じました。（入部式の）新歓試合で自分のスピードのなさを痛感して、これはCTBでレギュラーになるのは無理だと思って、すぐに清宮さんにフランカーをやらせてくれと訴えました（この時はCTBのスキルを身につけてから転向させようと却下）。フランカーでなら勝負できるかなと。夏合宿から始めたんですけど、１日でケガしてしまって…。タックルはフランカーの方が入りやすいです。今日もとにかくタックルだけしようと思ってました。自分は前にでることしかできないですから（笑）。今日シニアを体感してみて、受けなければ一発で相手を倒せるし、ドライブもできることが分かった。これからも大きい相手が高く来たところを下に突き刺さっていきたい。ワセダの試合も昨年はBKのプレーしか見ていなかったんですけど（笑）、この間ビデオを見たら羽生さんと力也さんが２人でガツガツいって、仕事していたので、自分もあんな風になりたいです。体を大きくして、ケガさえしなければ、上も狙えると思う。まずは能力を上げていきたい」
