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2024
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対慶大戦・観戦記


 「これまで何度も早慶戦の勝利を経験してきたけれど、あの時のことは今でも忘れない…」(副将・川上力也)。4年生が抱いた特別な想い。『大田尾組』の原点、手も足も出ずに粉砕された屈辱の1年早慶。聖地・東伏見にひれ伏したあの日から3年、『大田尾ワセダ』が忌まわしき記憶を払拭した。
 4年生の想いを乗せ、出足は快調。開始4分、ハーフライン上のスクラムからNO8佐々木隆道がショートサイドを攻略すると、そこから電光石火のワイドアタック。最後は完全にフリーとなったWTB首藤甲子郎がインゴールに飛び込み、欲しかった先制点をあっさりともぎ取った。まさに計画通り、相手に触れさせずに奪うビューティフルトライ。放たれるオーラに、漲る自信。その勢いで一気に突き放すかに思われた。
 しかし、あまりに事がうまく運びすぎ拍子抜けしたのか、はたまた相手の気迫、独特の雰囲気に飲まれたのか、この後はやることなすこと、そのすべてが空回り。続出するノックオン。遅れるサポート。失われる冷静さ。「相手のディフェンスにうまく対応できなかった」(清宮監督)…。自慢のアタック力が影を潜め、前半は3トライに留まった。
 「もっと冷静にプレーしろ。タックルに倒されすぎだぞ」(清宮監督)。迎えた後半、指揮官の檄に目が覚めたのか、ワセダは本来のアタックのようやく披露。「あそこはうまく崩せたと思う」(主将・大田尾竜彦)。FWの力強いドライブにBKの華麗なラン。それまでの鬱憤を晴らすかのような4連続トライ(7分、15分、18分、29分)で、相手を一気に突き放した(49-10)。
 そのまま引き離し、王者・ワセダの強さを誇示したいところであったが、「大田尾、川上が抜けて若さがでてしまった」(清宮監督)と言う様に、最後は再び失速。次代のワセダを担う1年生カルテットのハツラツとしたプレーに大いなる可能性を感じさせたものの、チームとしては機能せず、後味の悪さが残ってしまった。特に集中力、粘りを欠き、終了間際に2トライを許した淡白なディフェンスはお粗末の一言。「もっとプライド、マストの意識が必要」(川上)。ゴール前、ここ一番での最後の粘り。勝つには勝ったが、チームワセダは大きな課題を抱え込んだ。
 試合後、誰もが「不満足」と漏らしたように、内容は決してよくなかったものの、やはり『早慶戦』の大舞台は何物にも変えがたい貴重な経験。「伝統の一戦を経験したことで、みんなタフになってくれると思うよ」(清宮監督)。『伝統』の見えない力で、ワセダは更に強くなる…。<HP委員 疋田拡>

<早慶戦3連勝を飾った清宮監督>
「前半はアタックの起点となるSHの球出しのところでリズムを崩されてしまった。慶應がやってくることに対してどう対抗しようかと考えていたけれど、やろうとしたことの半分くらいしかできなかった。慶應はよくワセダに対処していたと思う。とくにスクラムのフッキングは速かった。あれは芸術。スクラムで圧倒できると思っていたので、あそこはちょっと計算外。それにディフェンスにもうまく対応できなかった。前半はそこに尽きる。後半は意図したところで突破できたけれど、最後はメンバーが若くなって雑になってしまった。点数を取られてしまった場面も若さがでた。チームとして若いとこうなってしまうのかなと。テンパってる奴もかなりいたし、この雰囲気でやれたのはいい経験。伝統の一戦を経験したことで、みんなタフになってくれると思うよ。これからはイングランドの球出しとワラビーズのようなディフェンスがしたいね」

<攻守に奮闘も負傷交代した主将・大田尾竜彦>
「ラインアタックをしようとした時に慶應の選手の方が多い状況でもむやみにいって、リズムを崩してしまった。ノックオンが多くてデキとしてはまったく満足できない。今日はとにかくノックオン。判断ミスとかではなく、レベルの低いノックオン。ボールを受ける時というよりも、ドライブしている時のものが多かった。いつもの選手がやってしまったかなと。前半はミスばかりで自分たちの形でやれていなかったので、形になるまでは我慢だと思っていた。後半は意図どおりに崩せたと思う。ディフェンスはサイドに立っている選手の姿勢が高い。そこに相手がもぐり込んできてやられてしまったし、人数も少なかった。もっとリムーブして立って倒さなければダメ。最後は大勢も決まっていて、自分や力也が抜けていたというのもあるけれど、もっとディフェンスに行かないと。この先自分が抜ける可能性もあるし。今日の試合をいい経験と捉えるかは自分次第。この試合をプラスの方向にもっていくのが大事だと思う」

<更なる高みを目指す副将・川上力也>
「勝つことで、自分が1年生の時の新人早慶(このときは5-52で敗戦)の借りは返すことができたとは思うけど、内容的には不満足。気合が入っている相手に対して交わしにいってしまった。清さんも言っていたように慶應相手にそれをやるとハマってしまう。はじめはもっとガツガツとシンプルなプレーで流れを作るべきだった。AとBのふたつの選択肢があったとしたら、難しい方をやろうとし過ぎた。拮抗している場面では流れを掴むためにもっと手堅くいけばよかった。そこが反省点。ディフェンスではFWの周辺で崩されてしまった。昨日の関東対法政を見ていても、関東はそこで崩していたし、他のチームもワセダとやるときはあそこを突いてくると思うので、もっとプライド、マストの意識を持って練習から取り組んでいかないと。ただ、若いチームだし今日みたいな経験は間違いなくプラスになる。いつもと違う雰囲気で浮き足立った面もあったけど、ビッグゲームを経験しながら強くなっていくのがワセダですから。今日でその怖さも分かったと思う。これはこの先絶対に生きてくる。まずはシンプルに、染み付いた基本プレーに立ち返りたい」

<早慶戦初スタメンとなった内藤晴児>
「今日はミスで波に乗ることができなかった。チームも自分も100%やったという感じがないし、不満。前半は下のボールの働きかけ、戻りの部分で慶應に負けていた。アタックはゴール前までいっても、最後がうまくいかなかった。自分がゲインできたのは相手が外にズレようとしていたから。最後は竜彦も力也もいなくなって崩れてしまった。あそこでしっかりとできていればチームとして成長できたと思うので、残念。自分がもっと若いBKをまとめなければいけなかった。今日の試合は誰も満足していないと思う。もっとできるし、やらなくてはダメ。100%ではない。次はもっといいパフォーマンスがしたい」

<ゲームブレーカー佐々木隆道>
「今日は冷静さに欠ける展開になってしまった。慶應のディフェンスがあそこまで出てくるとは思わなかった。いいアタックもあったけれど、それを継続できずに、うまく対応することができなかった。CTBのところで差し込まれてしまった。もっとFWで崩せばよかった。ジャガーのトライは、相手を引き離すいい場面でお膳立てできたと思う。ディフェンスはよくなかった。ひとりひとりの判断が悪い。詰める必要のないところで詰めたり、状況が把握できてなかったり。今日は全然不満。これからもっといきたい」

<初の公式戦で大緊張の小吹和也>
「前半に一時交代で入った時はかなりビビってました(笑)。後半も緊張しっぱなしで、普段の10%くらいしか出せなかった。赤黒を着れなかった人の分までがんばらないといけなかったんですけど…。展開的には余裕があったんですけど、今日は本当に出ただけという感じです。ただ、初めての早慶戦は本当に嬉しかったし、気持ちよかった。もし高校からそのまま法政に進学していたらこの雰囲気は経験できなかっただろうし、本当にいい経験ができた。チャンスはそんなにないと思うけど、出るチャンスがあれば100%の力をだして物にしていきたい。今日は高校3年の県大会決勝以来の公式戦で、緊張しました」

<スクラムにご不満の青木佑輔>
「今日はスクラムで色々と試そうと思っていたけれど、うまくいかなかった。完全に押し勝ってはいたけれど、うまく球を出された。そこは相手がうまかったし、相手が組みに来ないのに自分たちの反則を取られたりしてかなりイライラしてしまった。フィールドプレーはおまけみたいなもんです。もっと内橋さんみたいなピックゴーができるようなところにいたいですね。今日は大舞台で楽しかったですけど、デキは不満です」

<すべてのコンバージョンを成功させた曽我部佳憲>
「入場した時は人多いなぁと思ったけど、いつも通りにプレーできました。雰囲気を楽しめましたし、1年生も出られてよかった。今日はディフェンスせなあかんなぁと思っていて、一発いったろと思ってたら最初に相手からこっちに突っ込んできた(笑)。矢富とのHB団でトライが取れたのは嬉しかったですけど、竜彦さんが抜けた後ゲームが変わってしまったのはショックです…。全体としてはちょっとダレた面もあったけど、思っていたよりBKも走ってくれたし、FWもいってくれた。ただ、トライ寸前のミスが多かったのは課題ですし、取られてしまったのは反省してます。今日は早慶戦に出場できて光栄でした」

<3トライを挙げた首藤甲子郎>
「自分のデキは最悪です。思ったようなプレーは全然できませんでした。3トライはすべて周りに取らせてもらったものですから。緊張とかはなかったですけど、やっぱりガーッと熱くなるものはありました。ずっと試合に出させてもらってますけど、まだまだです。今日の経験は今後のラグビー人生にプラスになると信じてます。試合前に曽我部に媚売っておいてよかったです。いいパスがきましたね(笑)」