「毎日ミーティングやってきて、いい結果が出せた。自分たちからやったことで結果がでるのは、やっぱり嬉しいですね…」(主将・佐々木隆道)。スキッパーが見せる久々の笑顔。聖地を包む心地よい達成感。言うは易く、行なうは難し―。これまで若さを露呈してきた『佐々木組』が、『自らの力で』その殻を打ち破った。これぞ、あのとき掲げた『RAISE UP』…。
チームをブレイクに至らしめたのは、「自主的に」行われた連日連夜のミーティング。「そこには入らなくてもいい」「そこではラインをもっと、こう…」。生命線・ブレイクダウンの作り方から、アタックに置ける立ち位置まで―。その過程に一切の妥協なし。ひとりひとりが納得するまで話し合い、チームの成熟度は急激に高まった。そして4日間の練習を経て得た勝利への確信。「隆道、今日もFW行ってくれよ。相手の穴は俺たち(BK)が突くから」(WTB勝田譲)―。
ワセダ先蹴でキックオフ。意思統一された選ばれし15人は、開始から見事な集中力を見せる。FWは激しく、強く、一歩も引かず(前半10分より出場した山岡正典の秘蔵っ子・松田純平、タックルしまくりでした…)。BKは速く、しなやかに、仕掛けて前へ。聖地・上井草で展開されたラグビーは、ワセダらしさに溢れていた。
そして待望の先制トライはMr.チャンスフェーズ・勝田譲。主導権をがっちり握った13分、『ヨコヅナ』・畠山健介のビッグゲイン&SH矢富勇毅の素早い捌きで得たチャンスに、みなぎるセンスで相手ディフェンスを一閃。SO久木元孝成の飛ばしパスから一気にインゴールを駆け抜け(もらい方がザ・ワセダWTB!)、我慢を重ねたチームに、誰もが欲した得点をもたらした。男に二言はなし。「相手の穴は俺たちが突く」―。
このビューティフルトライで完全に勢いづくと、ここからは『我慢』→仕掛け→『我慢』→仕留めのワセダ的必勝サイクルに突入。16分、自陣ゴール前でのピンチを意識の高さ、プレーの低さ、豊富な運動量で凌ぐと、22分にはトップリーガーもビックリの『野獣』・今村雄太が相手ディフェンス3人を抱え込みながら、そのままインゴールへダイブ(外国人選手が止めに入ったときには時既に遅し。上井草には何とも言えないどよめきが…)。27分にも相手のミスをWTB勝田が確実にトライへ結びつけ、完全にトップリーガーを凌駕した。
「いい集中だ。俺から言うことは特にない。あとは気持ちの問題だ」(清宮監督)。指揮官も納得のデキで迎えた後半、ワセダは更なる輝きを放つ。まずは5分、SH矢富勇毅がそれまで封印していた『イリュージョン』を解禁し、またまたまたWTB勝田のトライを導き出すと、続く7分には矢富&佐々木&権丈でブラインドサイドを攻略し、最後は『野獣』今村が驚愕のノーホイッスルトライ(清宮監督も思わず拍手!)。相手のセキュリティーを遥かに超える『イリュージョン』と『野獣』の華麗なる共演で、早々に勝負を決定付けた。「いい球出してくれたし、走ってくれたし、FWには感謝です」(SH矢富勇毅)。
「フィットネス切れ」(清宮監督)、「コンタクトを続けて、動けなくなってしまった」(主将・佐々木隆道)と言う様に、バッタリ足が止まった残り10分、スクラム、リムーブに課題を残したものの、終始気合の戦いぶりで、喉から手が出るほど欲しかった対トップリーグ勝利を『自らの力で』見事にゲット。「学生には自信になる。『Target2004』、いい感じで来ていると思うよ」(清宮監督)。「またひとつ階段を登れましたかね…」(主将・佐々木隆道)。危機感が芽生えさせた自立への確固たる意思。2005年・『佐々木組』は粘り強く、泥臭く、自らの力で、一歩ずつ―。
<トップリーグ初撃破にも涼しい顔の清宮監督>
「今日はまぁ、いい試合だったんじゃないかな。トップリーグのチームとやってみて、今のワセダの力が分かった面もあるし、今日だけでは分からない面もあった。1番よかったのは集中力。特に前半はすごくよかった。後半の最後はフィットネス切れ。そこはまだまだこれからの課題。あとはメンバーが替わったところかな。いい練習ができているし、『Target2004』いい感じで来ていると思うよ。今日の勝ちは学生にとっては自信になる。トップリーグ初勝利?それは相手のメンバーもあることだからね」
<『Target2004』へ、着々とチームづくりを進める主将・佐々木隆道>
「今日は譲に代表されるように反応がよかった。先週よりも全然いい試合。ひとりひとりの役割が明確になったことが1番大きかった。自分たちで毎日ミーティングやって、いい結果が出せた。自分たちからやったことで、こうして結果が出るのは嬉しいですね。毎日みんなでビデオ見て、ひとつひとつのプレーに対し、誰々がここに入りすぎとか、なんでオーバーラップができないのかとか、話し合ってきたことが、この結果につながった。これでやっと「いまに」くらいにはなりましたかね(笑)。全体で見ると、途中まではよかったけれど、最後のところは社会人とのいつもの『10分』が出てしまったなと。コンタクトフィットネスが疲労してしまって、みんな動けなくなってしまいましたから。それよりも、そうなる前のチャンスとピンチでのミス。そこの意識をもっともっとチームに植え付けていきたいです。今日は青木も和也も五郎丸も最初からいないのが分かっていましたからね(笑)。誰かに頼らないで、チームとしてがんばるのは当たり前です。それにしても今日は種本ががんばってくれた。セットではまだまだのところはありましたけど、あいつのいいところがよく出ていた。試合に出ている奴と同じプレーしろとは言わないし、リザーブの選手たちがそれぞれのいいところを出せるようになれば、厚みのあるいいチームになっていけるかなと。今日の試合がみんなの自信になればいいですね。これまでは納得できないまま終わってましたから。もちろん課題もあるけれど、今日はいいところが一杯あった。そう感じることができるのが、成長への第一歩ですから。『Target2004』、またひとつ階段を登れましたかね。今年は昨年のチームとは違うアタック見せますよ」
<確かな戦術眼、意識の高さでBKに芯を通したWTB勝田譲>
「これまでAの試合を外から2試合見てきて、気持ちも戦い方もワセダらしくないなと強く感じていたので、自分が入ることで外からの声でチームを動かせる、動かそうと思ってました。接点がしっかりできれば十分いけると思っていたし、今日はFWはもちろんCTBも拘ってくれて、外としてはやりやすかった。小吹がケガしている状況で、あいつができることは自分もできるように。ライバルですからね。それプラス自分のウリも出そうと。そういう気持ちがいい方向に向いていると思う。今日は収穫がたくさんあった。チームも少しずつだけど変わってきている。週初めの委員会で、隆道が留学していたときの意識が薄れてきているんじゃないかって話をしたんです。隆道に任せる雰囲気はチームとしてもよくないし、ひとりひとりにとってもよくないだろって。そういう意味でも今日1番よかったのは、気持ちです。BKに関して言うと、今日はCTBのところで芯がはっきりしていたのがよかった。同大戦は余り意図的なプレーができてませんでしたから。ただ最後のあれはいかん。気持ちが切れてしまった。あれでは勝てないです…。試合をするごとに課題が出てくるので、それをひとつひとつ乗り越えて、ステップアップできるようにやっていきます。隆道が最初に言った言葉。言うのは簡単だけど、やるのは難しい。今まさにそんな状況だと思います。今日こうしてプレーできるのは、周りのみんなが支えてくれているおかげです」
<捌きながらの『イリュージョン』成長の跡をちょっぴり披露したSH矢富勇毅>
「今日は今までの2試合よりは、まぁいい試合だった。チームとして気持ちが充実していたというのもありますけど、この2試合は僕がリズムを崩していたところがあったので、今日はとにかく捌くことを考えていて、それでリズムが出たのが1番大きかったかなと。いい球出してくれたし、走ってくれたし、FWには感謝です。今週和也さんのお見舞いに行ったときに、いくのはいつでもいけるからまずは捌くことを意識しろと言われたんです。今日はたまたま前が空いていたので、抜けましたけど、頭にあったのは捌くことだけでした。でもまだまだです。ディフェンスは、みんなでとにかく前に出ようと意識していたこともあって、強くいけたと思います。同大戦は外を先に考えて全然うまくいかなかったので。今日の試合で勢いに乗りたいですけど、まだまだ課題も一杯です。個人的にはゲームコントロールがまだまだですし、もっともっと捌いてリズムを出しながら、肝心なところで自分で抜く。それにはパスの精度をまだまだ上げなくてはいけない。自分の『Target2004』はとにかく翔太さん。もっともっと練習してパスうまくなります」
<トップリーグ相手に最前列で奮闘したプロップ・畠山健介>
「相手が2本目の途中まではいいスクラムが組めていたけれど、山賀さんが入ってきてからはうまく組めませんでした。すごく強かったです(山賀さんは、あの伊藤雄大をしてヤバイと言わしめていた、日本で1番強い?スゴイ人です…)。後ろの重さはトヨタや東芝の方がありましたけど、プロップとしての強さはあの人が1番。今日は本当にいい勉強をさせてもらいました。FW全体としては、取り切れないところは課題ですけど、モールはよかったと思いますし、スクラムも途中まではよかった。ただ最後にスクラムターンオーバーからトライを許したのは、課題。あれは完璧に僕たちのせいなので、反省しなくてはいけないです。高麗大、同大と余りよくない試合が続いて、チームにも緊張感があったんですけど、今日はいい経験になったと思います。青木さんがいないなか、種本さんともうまくコミュニケーションとっていいスクラムが組めましたし。昨年は伊藤さんを見て勉強。自分が出た後半は責任感。今年は全部自分が牽引していくんだという気持ちでがんばります。昨年と違ってずっと上にいれるように。まだ2年生なので、とにかく自分のすべきことをして、それがチームにとってプラスになればと。ワセダは負けてはいけない。勝ち続けるんだという強い意識を持ってやっていきます」