80分戦い抜いた後の充実感。走って、走って、起きて、起きて、トライを挙げる。『佐々木組』シニアチームが、久々にノーサイドの瞬間まで躍動した。「最近は最後に取られて終わったり、走れなくなっていたので、とにかくそれをなくそうと。今日は最後まで走ろうとみんな意識してましたから」(SH三井大祐)。
爆発的な先行逃げ切りから、軽快なピッチ走法への転換を呼び込んだのは、15人の意識はもちろん、BK陣が見せた抜群の安定感。「FWで崩せていたという感じはしなかったけど、あれだけBKがトライを取ってくれると楽です、やっぱり…」(ロック百合洋)。FW陣も思わず感謝。肉弾戦、力技に頼らぬ多彩な仕掛けで次々とトライの山を築き上げた。相手を揺さぶる展開力に、うっとりするようなしなやかさ。これぞワセダの伝統です―。
「CTBのタテよりも外で勝負。進也が入ったことで展開力が上がった」と司令塔・久木元孝成も明かしたように、この日の軸は紛れもなく『遅れてきた天才』平野進也。クラッシュではなくパス、ステップで相手を交わす。「スピードがなくなった分、周りが見えるようになりましたから…」(平野)。シニアデビューとは思えない堂々たるプレーぶりで、ディフェンスの扉を開けまくった。
この他にも、攻守に大ハッスルの百合洋(終了間際には久々に『百合爆弾』が炸裂!)、リーダーシップ抜群のSH三井大祐、「とにかくすごい」CTB谷口拓郎ら、今季が勝負の選手たちが持ち味を存分に発揮。「今シーズン、ここまでで1番かも」(後藤コーチ)という納得のデキで、リーグ戦1部校(東海大は教育実習で主力の4年生が2,3名不在とのこと…)から価値ある勝利を手に入れた。
80分走り回る。相手が倒れていても立つ。そして最後は笑顔で締める。これこそワセダのあるべき姿。見ていて楽しい80分を、次こそトップのAチームで―
<今こそが勝負のとき 再出発を誓うSO久木元孝成>
「今日は気合い入ってました。清宮さんには特に何も言われていないですけど、それは自分で感じ取れということなんだと思います。下に落ちてこれまで見えなかったものが色々と見えました。チームとしてもいい試合だったと思うし、今年初めて納得できるゲームができました。CTBが進也だったので、タテよりも外での勝負。谷口もすごく自信をつけていて、どんどん持ってこいという感じで、いいアタックができていたと思う。進也が入ったことで展開力があがった。ディフェンスに関しては、途中で少し受けてしまったのが反省。東海や帝京、関東といったチームは体も大きくて前に出ると強いので、そこでもっとファイトできるようにならなければいけない。これまで4試合やってきて、ひとつも満足できるものがなかった…。ひとりで全部やろうとして、うまくいかなかったので、今日はとにかく今の自分にできることだけをやろうと。山岡さんにも、今まで見えなかったものが見えてくるだろうからって言われましたし、これをきっかけにいい加減変わらないとダメです。清宮さんに、チームのみんなに信頼されるように」
<攻守に奮闘し、その存在感を見せ付けたロック百合洋>
「今日はもう無我夢中でした。いいトライも取れたし、ディフェンスもできていたし、この試合をいいきっかけにしていきたいです。ボールに絡めていたのは運もありますけど、いいところにいれたのは、それだけ動けていたとのかなと。チームとしてもモールで1本やられた以外は、やるべきことができていたし、いい試合だったと思う。途中切れかけたところもあったけど、みんな声を出し合ってよく動けていましたし。FWで崩せていたという感じはしなかったですけど、あれだけBKがトライを取ってくれると楽です、やっぱり。ゴールデンウィークに体調を崩して下に落ちてしまったけれど、また戻ってくることができた。今年は最後の年なので、最後の最後まで赤黒に拘ってがんばります。もっと早くにこんな気持ちになれればと後悔しています…。今日は清宮さんにチームアタックでやっていることそのままやればいいからと言われたとおりにできたかなと思います」
<的確な捌きと声でチームを最後まで引き締め続けたSH三井大祐>
「後半相手を0に抑えることができたのは大きいし、ハーフタイムに清宮さんから言われた点をきっちり修正できてよかった。ただ、アタックでの反応はまだまだ悪い。裏に出たときにつけなかったり、チャンスで人がいなかったり。そこは課題です。最近はAチームも最後に取られて終わったり、走れなくなっていたので、今日はそれをなくそう、みんなで最後まで走ろうと意識してました。後半はバテて、FWも前半ほどは寄れないだろうと思ったので、たとえスイープがいなくても自分が捌こうと。まずまずのプレーができたと思います。HB団コーチのおかげです。タックルとパスに関しては毎日ビシビシ言われてますから。今日はBKもいいアタックができました。谷口がとにかくすごいです。今年は4年にSHがいないということもあって、自分たちが1番上の学年。他の奴らには負けたくないですし、3年としてチームを引っ張っていけるように、声を出してがんばろうと思ってます。まだまだもっとできる。自分で言うのも変ですけど、自分の持ち味は捌くことだと思うので、そこで他の奴らに差をつけて、プラスタックルで存在感をだせればと。そして周りから信頼されるプレーヤーになりたいです」
<ついにシニアに昇格 この日も好プレーを連発したCTB平野進也>
「シニアはやっぱりコンタクト力が全然違う。タックルしてすぐ起きて、すぐにバテてしまいました…。ミスしてはいけない雰囲気がありますし、練習の緊張感も全然違います、シニアは。ケガをして足が遅くなった分、周りが見えるようになって、パスができるようにはなりましたけど、自分で取りきれないのはやっぱり悔しいです。1対1で昔は交わせていたのにってところがあって…。ただ、復帰した当初よりだいぶ動けるようになってきましたし、スタミナもついてきたので、そこは徐々に上げていければと。今日は孝成さんが前で仕掛けているのに、自分が上がりきれなかったりと、レベルの差がでてしまったので、早くそこを克服して、みんなについていけるようになりたいです。Aチームと練習することで、大学のレベルも分かりましたし、何とかいけるかなという感じはしています。まずはケガをしないことが第一。今年は赤黒を着て試合に出たいです。僕はただ一生懸命やっているだけですけど、曽我部がその姿を見てモチベーションを上げてくれたら嬉しいです(笑)」