4連覇、そして赤黒への第一歩は、そーっと、そーっと、ちょっとだけ…。2005年9月17日、ついに待ちに待ったシーズン開幕。『佐々木組』セカンドチームは、聖地・上井草で「ごく普通に淡々と」ライバル・法政を制圧した。「ちょっと意識が低かったけれど、公式戦初戦で勝てたのは何よりです…」(Jrチームキャプテン・宮田昇)。
ちょっと意識が低くて、淡々として、課題もたくさん出た試合―。終わってみればそんな総括に至る80分も、スタートは快調だった。まずは6分。散々の『継続』後、敵陣深くでペナルティーを得ると、今ワセダでもっとも『ギラギラ』した男・百合洋が怒涛の突進。そこに見えるは、悲壮な『決意』、二度と揺らぐことのない『覚悟』…。SHからもぎ取るようにボールをもらうと、相手を次々と跳ね飛ばし、そのままインゴールへ飛び込んだ。「ペナルティーからガンガンいって相手を集めろって言われてましたから…」(百合)。まさに清宮監督の指示どおり。文字どおりの一発解答。シーズンインファーストゲーム、開始直後にいきなり魅せるその意識の高さに、百合洋のハートの充実が感じられた。
この『ギラギラ』感満点のトライで勢いに乗ると、その後は要所を抑えながら着実に加点。高橋銀太郎の判断、小峰徹也の嗅覚、佐藤晴紀のビックゲイン…。フェーズを重ねる毎に人数が減る場面も見られたものの、FW、BKとも地道な前進、しつこい『継続』を繰り返し、5つのトライで勝負を決めた。
「こういうコンディション(この日の上井草は激暑…)で1番差がつくのは意識。しっかり声を出しながら。ボーっとしてたらすぐに40分終わってしまうぞ」(清宮監督)―。迎えた後半。その『意識』で差をつけるべく円陣を組むも、待っていたのは自らの至らなさを痛感させられる「きついきつい」40分だった。人数が揃っているにも関わらず、まったく前に出ることのない、出ることを放棄したとさえ思われる受身のディフェンス。数的優位を作れない、あっても生かせない稚拙なアタック。点差から来る心の緩みか、(自らの選択で)長い時間自陣で過ごした前半のツケか、はたまた日々ファーストチームにいたぶられるダメージか。躍動感溢れるSHに、快足WTB。さらにはルーキーとは思えないCTBの強烈なタックルにあしらわれ、淡々と時間だけを浪費した。
「まだ初戦。これからどんどん精度を上げていければ…」(SO高橋銀太郎)。「あまりいい試合ではなかったけれど、両CTBを初め1年生が思い切ってプレーしてくれたのは、この先を考えるとよかった…」(Jrチームキャプテン・宮田昇)。快調だった前半から一転、終わってみればどこか後味の悪さが残る試合も、きっとこれは「まだまだ課題がありますよ。現状に満足しない、更なる精進が必要です」という神様(お天道様?)からのお告げ。今セカンドチームに求められるのは、百合洋が見せる『ギラギラ』した心。もっと激しく、もっともっと拘って…。
「最後には15人の中に入って国立で泣いて笑っていたい。ジュニア選手権は優勝が目標の試合ではなく、もうひとりのロックとの格の違いを見せるための試合だと思ってます」(百合洋)。この気持ちを全員に。もっともっと『ギラギラ』感を押し出して。そうすればJr選手権4連覇、赤黒だってきっと見えてくる。常に高い意識を。見据えるべきは、その先にあるもの―
<公式戦白星発進に安堵の表情を見せるJrチームキャプテン・宮田昇>
「今日はあまりいい試合ではなかったけれど、両CTBを初め1年生が思い切ってプレーしてくれたのはこの先を考えるとよかったと思う。今日の試合はとにかく反応。ターンオーバーボールの反応が悪くて、何本かポンポンといかれてしまったのは課題。フィットネスで負けてはいけなかったんですけど、正直バテました…。タッチに切って欲しいところでしっかり切れなかったり、前半は自陣での時間が長かったです。ともかく今日はターンオーバーの意識。法政はそこの意識が高かったし、ワセダはディフェンスで前に出られなかった。アタックでは外が空いていたけれど、自分たちのコミュニケーション不足、法政のCTBのディフェンスが固かったこともあって、なかなか前に出られなかった。そこのところでもうちょっと前に出たかった。そうすればもう少し違う展開になっていたと思う。法政はディフェンスで前に出てくるからボールキャリアが一歩でも前に出ること、入りで受けないことを意識して臨んだんですけど…。ターンオーバーされたときにポッと気が抜ける。フワッとしたペナルティーから攻められる。今日はちょっと意識が低かったです…。でも公式戦初戦で勝てたのは何よりです。公式戦最初ということで不安もありましたし、いつも練習でAにやられていますから。明日はAにしっかり勝ってもらってググッといきたいです。キャプテンとしては非常に周りが見えにくいポジションで、全体はどうしても銀太郎に頼る部分もあるだろうけれど、ブレイクダウンでの相手のクセとか、ディフェンスの立ち方とかをしっかりと言っていければと思ってます。もちろん目標は赤黒を着ること。層の厚いポジションだけど、がんばったら必ずチャンスは来ると思うので」
<ギラギラ度MAX! 滾る闘志でチームに勝利をもたらしたロック百合洋>
「今日は清宮さんから言われていた、ペナルティーからのボールキャリアとしての仕事ができたのがよかった。ペナルティーからガンガンいって相手を集めろと言われていたので(実際には集めるどころか、そのままトライ)。今日は途中で交替するかもというのが頭にあったこともあって(笑)、よく動けていた。しっかりと周りも見えていたし、必死さのなかにも余裕が持てるようになってきたかなと。今年はほんとに最後の年。高いモチベーションでやれているのが、それにつながっていると思います。チームとしては、法政がシャローで来るところを交わすために、単純に外にボールを回し過ぎてしまった。外にいき過ぎてバテた。もっとFWが内をきっていれば楽な展開になったのに、走りきれず内を切れないがために外に回して、余計にバテてしまった。僕も含め、FWはもっともっと走らないとダメです…。ただ、自分としてはようやくこの100キロの体に慣れてきた(合宿で105キロ、現在は104キロ)。100キロ超えると、やっぱりそのことに対して自信が持てるようになってくる。昨年は桑江さん、内橋さんに当たり負けしていたけれど、今年は誰にも負けない。4年間で今が1番充実しているとき。隆道がこんな自分に目をかけてくれて、アドバイスをくれるのはほんとにありがたいことだし、あいつについていけば絶対に間違いない。もっともっと隆道から色々なことを聞いて、いいところを盗んで自分自身成長していきたい。夏最後の帝京戦にAチームで出たことで、自分でもやれる、レギュラー取れないことはないと自信を持てるようになった。Aチームのロックとも対等だと思って勝負する。今はBチームだけど、最後には15人の中に入って国立で泣いて笑っていたいです。ジュニア選手権は優勝が目標の試合ではなく、もうひとりのロックとの格の違いを見せるための試合だと思ってます」
<猛烈な暑さにガス欠? 自らの不出来に猛省のSO高橋銀太郎>
「今日はアタックはある程度思うようにできたけれど、ディフェンスで取られすぎ。ターンオーバーからの反応が悪かったし、ディフェンスで前に出ることができなかった。受けてしまって、相手のいいテンポでズルズルとやられてしまった。個人としてもチームとしても、正直だいぶバテました…。菅平とは違うこの暑さに早く慣れないときついです。全体としてはとにかくターンオーバーの反応の悪さ。そこでやられてしまった。ターンオーバーされたのは2人目、3人目と言うよりも、ボールキャリアの問題。1人でいって孤立することが多かったし、法政もブレイクダウンが弱いチームではないので、もっと激しく、圧倒しないといけなかった。相手にはターンオーバーされるのに、同じようなところでワセダはマイボールにできなくて、後半は特に苦しい展開になってしまった。そこの意識が課題。あとは僕自身がバテてしまって申し訳なかった…。でも今日はまだ初戦。メンバーが替わっていて、多少やりにくいところもあったので、これからどんどん精度を上げていければと思ってます。僕も含めて、ここからAチームに上がっていく選手がひとりでも増えればと。ジュニア選手権は優勝するための試合ではなく、上にあがるための試合です」