「慶應は死に物狂いでくるぞ。これでシーズンが終わりくらいに。それを超える気持ちで戦え。ワセダはここから一気に突き抜ける。早慶戦はその第一歩だ」(清宮監督)―。「全員で勝つぞ。俺たちがやってきたんはそういうラグビーや。教わってきたやろ、慶應だけには絶対に負けたらアカン。全員で勝たな意味ない。スタンドの奴抜くな。試合に出る奴もっと抜くな。全員で勝つぞ」(主将・佐々木隆道)―。ライバルの魂をしかと受け止め、自らのアイデンティティを認識する舞台『早慶戦』。気持ち、プライド、チーム一丸。目標達成のためには避けては通れぬ戦いで、『佐々木組』は一気にその殻を打ち破った。「今日はスタンドにいる選手も、グラウンドで戦った選手もそれぞれの責任をまっとうしたいい試合だった。こういう試合でチームは成長して、強くなる」(清宮監督)…
この日掲げられたテーマは、ビクトリーチェーンのなかでも原点とされる『激しさ』。メンバー入りを賭けた前日のBCゲバ(激熱でした…)が、『佐々木組』に忘れかけていたものを思い出させた。「ゲームキーワードは『激しさ』だ。そこに懸けてくるであろう相手を上回れ。ワセダのラグビーは接点で前に出ることだ。ゲバを見て改めて分かっただろ」(清宮監督)。まさに主将・佐々木隆道が口にしていた「真っ向勝負」。決して逃げない、激しいドライブで一歩でも前へ。前半、昨年とは明らかに違う慶應の意志あるタックルを浴びても、ワセダはひるまず前へと出続けた。
そして、この日何より大きかったのが、相手が自信を持っていたであろうスクラム戦での完全勝利。「練習してきたとおり。小山さん、森島さん、大江さん、教えてくださったコーチのみなさんには本当に感謝です」(プロップ前田航平)。機先を制する激しいヒットに、8人が一塊となった怒涛のプッシュ。フロント3人で90メートルを切り返す超ビッグプレーまで飛び出し、意気込む虎を完膚なきまでに叩きのめした。
「見たか、この野郎って感じです」(副将・青木佑輔)。試合前のロッカールーム、選手たちは何気なく手にしたライバル・『慶應スポーツ』に目を奪われていた(会場入り後しばらくはリラックスタイムです)。ポジション毎に書かれた「早慶戦力分析」。星5つの慶應に対し、ワセダは4,5個。フロント陣は当然ながらいじられた。「おい、フロント舐められてんじゃねーよ」(ロック内橋徹)。「うるせー、うっちー。ロックは星の数が多いからって調子乗んな」(青木)。そしていつか目にした相手の「スクラムトライ」宣言。ブレイクダウンはもちろん、スクラムだってワセダの命。『ULTIMATE CRUSH』の体現者、誇り高き大男たちが、燃えないはずがなかった。「相手も自信があったみたいだし、絶対やってやろうと思ってた。ワセダのフロント魂を見せ付けられたんじゃないですかね」(青木)。清宮監督も、このグレートパフォーマンスを満面の笑みで褒め称えた。「やっぱりラグビーはスクラムです」―
意志あるタックルを受け続けた前半を、逃げずに、かつボールを動かしながら凌ぎ切ると、後半はキラ星の如き『スターバックス』が、待ってましたとばかりに満点の輝き。『野獣』、『イリューション』、『怪物』に、『エクスプレス』(どれも秀逸でした)…。「内をえぐってから、外で取る」。FW、BK一体、全員で勝つ。トライの山を積み重ねた一連の流れは、すべてが思惑どおりだった。
「『佐々木組』のいいところが出た」(副将・青木佑輔)と言う様に、猛攻の一方で、佐々木隆道の信念・「完封」までも成し遂げ、これで対抗戦無敵の5連覇を達成。次戦はこれまた赤黒にとって特別なバトル『早明戦』。「次も我々にとっては最高の舞台。ワセダが手を抜くとか、そんな失礼なことはもちろんないし、存分にその舞台を楽しみたい」(清宮監督)。この季節思い出されるのは、『ULTIMATE CRUSH』生みの親・奥克彦さんの存在。今年も尊敬する先輩に捧げる勝利を。「優勝して嬉しいとか特別な感情はない。勝負はここからですから…」(主将・佐々木隆道)。『早明戦』、選手権連覇、夢の打倒・トップリーグへ。ここから先はノンストップ。殻を破った『佐々木組』は、ここから一気に突き抜ける―
<対抗戦5連覇! 一丸となって戦った学生たちを称える清宮監督>
「今日の試合はワセダにとってすごく大事なものだった。伝統の一戦ということももちろんだし、1週間前にBチームが関東学院に十数試合ぶりに負けた。その出来事がチームに緊張感を生み、選手たちの中に早慶戦に懸ける今まで以上の気持ちが生まれた。早慶戦に向けた準備は10日間ほどだったけれど、伝統の早慶戦、1,2日で今日のような試合はできない。今日は特にそのことを強く感じた。この1年の積み重ね。昨日は隆道がうまくチームを作った。選手たちが自らの早慶戦を完璧にULTIMATEした。今日で学生たちは成長したと思う。このまま一気に選手権連覇、トップリーグを倒すチームにしていきたい。慶應は今までの相手ならば外れていたであろうタックルが前半は決まっていて、歯ごたえのある相手だった。ひとつひとつのプレーに想いのある印象を受けた。タックル、ブレイクダウン、いいチームだなぁと。キャプテン、監督の意志が伝わっているいいチーム。今日大きかったのは2本目のトライ。あのまま1トライだけだったら、最後のペナルティーはショットで7-3だったはず。フロントの選手がトライを取るとチームが勇気づけられるし、あれはチームの雰囲気を変えるプレーだった。そういうビッグプレーを2番、3番がしたのは大きい。その前は前田? じゃあ1,2,3がいいプレーをしたのは素晴らしい(笑)。春に試合をして慶應はセットでいけると思っていたはず。実際あの試合は50%以上の支配をされていましたし。慶應はその辺りが誤算だったと思う。ラグビーはスクラムです。松永さんもそうおっしゃっていなかったですか?(笑)。今日は8人で組み込む意識の差が出たと思う。それはスクラムを大きく見れば分かること。後ろの5人がいかに力を発揮するか。久々に出たメンバーは、最初の15分くらいはゲーム勘がなかったかなと。いつもではないプレーがあった。でもあとは期待どおり。今村はひどいケガで、8週間かな、ぶっつけに近い状態だったので、早めに交替させた。五郎丸はやっぱり安定感がある。チームが後ろに相当な信頼を置いていて、そこは大きい。自分にとっては監督5年目の早慶戦だけど、今年は今年の早慶戦。早慶戦は私ではなく、選手たちが作っていくもの。スタンドにいてもフィールドに立っているのと同じ気持ちになれる。そういうゲーム。5年目とか1年目とか関係ない。早慶戦で得るものは大きい。チームがひとつになるし、目標に向かっていく上で必ず通らなくてはいけない試合だから。毎年毎年違う早慶戦がある。(隣に座るキャプテンに)隆道もキャプテンになっての早慶戦はこれまでと違うだろ? 一応頷いてくれましたけど、そういうことです(笑)。次の早明戦も我々にとっては最高の舞台。ワセダが手を抜くとか、そんな失礼なことはもちろんないし、存分にその舞台を楽しみたい。そこに立つためにやってきた選手たちを盛り上げるように導くのが私の仕事。そういう2週間を過ごしていく。今日はスタンドにいる選手も、グラウンドで戦った選手もそれぞれの責任をまっとうしたいい試合だった。こういう試合でチームは成長して、強くなる」
<信念の完封! 全員で掴み取った勝利に笑顔溢れる主将・佐々木隆道>
「今日は僕たち4年にとっては対抗戦最後の早慶戦。チーム全体がひとつにまとまって戦えたことが、0点につながった。上も下もひとつになれた。試合前には、やるだけのことはやったから、あとは楽しんで笑顔でやろうとみんなに言っていた。80分楽しい時間を過ごせて、今日は幸せでした。でも慶應とは選手権でもまた当たることになったし、まだまだこれが始まり。僕自身のリベンジもまだ終わらないです(笑)。慶應のタックルは強かったけれど、思っていたくらい。前半トライを取れなかったのは、うちのミスの多さが原因。崩す形はしっかりできていたので、いつかは取れると思っていた。もっとFWで崩したかったけれど…。今日はBKに頼ってしまったところがあった。これで対抗戦の優勝が決まったけれど、個人的にはイメージできてない。そういうことは考えてなかったし、特別嬉しいとかもない。今日は早慶戦に勝てて嬉しい。ただそういう気持ち。いつも怒られてばかりだった前田がビッグプレーをしてくれて、あいつも4年なんだなぁと(笑)。次の早明戦は1年生の時から憧れ続けてきた舞台。選ばれた奴は80分必死に戦うし、そこに出るために全員が必死でやる。やる前にもう結果は分かっている。そのくらいの気持ちを作れるようにやっていきたい。昨日話した全員で勝つ、いけたんじゃないですかね。試合前からいい雰囲気だったし、落ち着いてやらせることができた。いいキャプテンの仕事ができたかなと(笑)。ただ僕個人のデキとしては…。ずっと完封が1番と言っていたけど、今日は気が付いたら完封だったという感じ。最後は自分も両足が攣った状態でよくやれたと思う。気が付いたら走れてた。4年ですからね(笑)。今日1番はスクラム。前田がデカイ。よくやってくれた。スクラムで完全にうちが勝っていたし、相手はモールをやりたかったみたいだけど、どちらでもきてくださいという感じだった。慶應の魂のタックルを受け止めて勝った? 本当は受け止める予定ではなかったんですけど(笑)。今日はやっぱり春の試合のことが頭にあった。あんなに悔しい試合はなかったですから。でも個人としての借りはあまり。最近動きがフランカーっぽくてダメですね…。NO8として、もっと先頭に立って前にでていきたい。それができてないからチームとしてリズムがでないのかもしれないです。僕も迷ってますね…。次は待ちに待った早明戦。今までと同じで、楽しむだけ。今日も楽しかったですから。昨日清宮さんの言っていた、ワセダはここから突き抜ける、まさにそのとおり。こういう伝統の一戦を経験することで、若い奴らが成長する。むしろしてくれないと困りますから(笑)。昨日のゲバにはたくさんの力をもらいましたよ」
<流れを変えるスーパートライ!フロント魂を見せ付けた副将・青木佑輔>
「見たか、この野郎って感じです(笑)。相手はスクラムに自信を持っていたみたいだし、今日も入りから余裕かましてたので、ガツンとやってやりました。そして選手権でもう一度やってやります。今日のスクラムは、練習してきたとおりにいいイメージでいけた。あのトライはハタケのおかげですね。その前の前田と合わせてフロントで90メートル切り返し。ワセダのフロント魂を見せ付けられたと思います。これで慶應スポーツも星の数、増やしてくれますかね(笑)。今日のテーマのひとつであったブレイクダウンに関しては、相手が頭を下げて倒れてきたけれど、帝京戦よりはよくできていたと思う。ただ、いいタックルをしてゲットできる場面があったのに、逃していることが多かった。そこをもう少しいけていれば、もっとよかったと思う。完封は『佐々木組』のいいところが出ましたね。次の早明戦も目指すは完封。完封すれば大悟さんの代以来。1年生のときの大悟さんたちのプレーを思い出して、自分たちもいいプレーをしたいです。モールに関しても、いい塊で押すことができた。これはBチームがいい練習をしてくれたおかげ。Bチームすごく強いんですよ。でも今日はスクラムに尽きる。いい早慶戦でした。あとはラインアウトの精度。これからも毎試合完封していきたいです」
<初早慶戦で爆発! 最前列でチームを勝利に導いたプロップ前田航平>
「自分にとっては初めての早慶戦だったけど、特に緊張もせず、いい状態で試合に臨めた。ゴール前からのビッグゲインは一生に一度のプレーが出てしまったという感じです(笑)。スクラムは練習してきたとおり。小山さん、森島さん、大江さん、教えてくださったコーチのみなさんに感謝です。慶應はスクラムに対して自信をもっていたみたいなので、今日は絶対やってやろうと思ってました。スクラムトライは次。早明戦、そして慶應ともう一度やるときはスクラムトライを狙います。モールもみんな拘っていてよかった。ゴール前でも入りさえよければ大丈夫と思っていた。初めての早慶戦、今日は自信になりました」
<スクラム圧倒! スーパープロップぶりを如何なく発揮した畠山健介>
「今日はいいスクラムが組めた。春と、個人的には昨年のリベンジができた。ファーストスクラムで相手がいきなりペナルティーしたし、後ろの5人ともよく連携していいスクラムだったと思う。慶應はスクラムトライを狙いにくると思ってたけど、ゴール前で選択してこなかった。あの瞬間勝ったと思った。こいつら拘ってこれないんだなって。あとはドンドンいって凹ますだけだと。あのビッグゲインは、ゲームが膠着していたところで、トライにつながってよかった。いいプレーができたと思う。ワセダのフロントみんなで取ったトライ、嬉しいです(笑)。今日はスクラムトライだけ足りない。次の明治、そして慶應ともう一度やったときにスクラムトライできるように、また厳しい練習をしていきたいです。慶應のタックルはプレッシャーがあったけれど、前半トライを取れなかったのは、要所要所でのミスが多かったから。そこはここから修正しなくてはいけないところ。今日はワセダのフロント魂を見せられたと思います」
<早慶戦はお手の物?24歳のバースデーを見事勝利で飾った内橋徹>
「今日で24回目の誕生日、自身で早慶戦を戦うのは4回目(笑)。チームとしてはいい試合だったけれど、個人としては全然でした…。まだ体力が戻っていない。元々ないのは分かっていたんですけど、やっぱり80分はきついです。今日はとにかくスクラム。前田がよくて、僕らがどうこうというより、あいつが決めてくれた。すごくよかった。モールも最近はダメだったけれど、意識して変わることができた。前半はミスも多かったし、慶應もしっかりと対策をしてきた。モールを押してくると見せて、違うプレーを選択してきたり。慶應らしいなと。後半はワセダもそれに対応して、よかったと思う。練習からFWFW言われていたし、接点でFWが拘れたのがいい。チャンスも近場から作っていたし、そこから相手を崩せた。ワセダに対して広がってくるところをFWがうまく突けた。やっぱり早慶戦は気持ちがいい。もちろん勝っているからというのもあるけれど(笑)、お客さんもたくさん入るし、テンションの上がる試合。個人的にはとりあえず80分もつ体力を取り戻すこと。あとは昨年から言っている1対1で負けない強さ。学生はもちろん、社会人にも負けないくらいの。そこがチームとしての課題だと思うし、まだまだ弱い。そこをより高めていって、接点ではどこにも負けないチームになっていきたい。シーズンが深まるにつれて、FWは成長している。春先はどう動けばいいのか分からない奴がいたけれど、僕や昨年からのメンバーがどんどんコールしていくことで、みんながそれを分かるようになってきた。前田にしても指示をすれば、自分から声を出して動けるようになってきたし。そういうところが今日の完封につながったと思う」
<ひとり別次元のプレーで秩父宮を震撼させたCTB今村雄太>
「今日は試合前から自分がいってやろうと思ってました。チームとしてのテーマも『激しさ』だったので、自分もそこを意識して、持ち味を出していこうと。でも久々の実践でさすがにバテた。いいプレーができていたので、本当はもっと出たかったんですけど、最後は足もパンパンだったので(笑)。前半は思ったよりも前に出てこないディフェンスに対して、自分たちのやるべきプレーを話し合って、しっかりとそれに対応したアタックをしないといけなかった。そういったところがこれからの課題だし、その対応が遅れたことでなかなかトライが取れなかった。僕は最後までいなかったけれど(笑)、今日は完封できたことが1番。次の明治も絶対に勝たなければいけない相手だし、その先には選手権もある。また練習から気を引き締めてやっていきたい。これからの試合でもバンバン走ります!」
<清宮監督も絶賛! スーパープレーヤーへの道を突き進むWTB菅野朋幸>
「自分では緊張してなかったつもりなんですけど、周りから見たら最初は硬かったみたいですね(笑)。勝田さんにも言われました。とりあえず今は終わってホッとしました。最後のトライはラッキートライ。あれは谷口のおかげです。試合の内容については…、夢中で覚えてない、分からないです(笑)。前半は僕自身も飲まれていて、外からいいコールが出せなかった。今村様様です。五郎丸、今村がいてくれると心強いです、ほんと。早慶戦は昔からずっと憧れていた舞台。入学したときからずっと出たいと思ってました。今はとにかく終わってホッとした。泣いてしまいましたね(笑)。次の早明戦、その先の選手権は未知なる舞台。出るからには最低限、自分の仕事をまっとうしてトライを取っていきたいです。WTBなんで、やっぱり1番はトライです」