「この2週間日本一の練習をしてきた。怖いかもしれないけど、みんなでこれを乗り越えよう。苦しいときこそ、笑って狂ってこい!」(中竹監督)―。『東条組』に忍び寄っていたものは、これまでに味わったこともないような『恐怖』。「自分たちにできるのか…」、「もし、ここで負けたら…」。それはワセダだからこそ感じる、歴代の『荒ぶる』戦士たちも跳ね除けてきた、絶対に打ち勝たなければならない特別な感情。この夏生まれ変わることを誓った『中竹ワセダ』は、強い意志、一体感で、その難敵を乗り越えた。
とにかくこの日のターゲットは、あの日以来徹底して取り組んできた「ディフェンス」と「ブレイクダウン」。網の目を常に張り続ける素早いセット、怒涛のアップ、動き出しの一歩、激しさ…。「もうそこだけで勝ってこいって」(中竹監督)。菅平に来てからのこの2週間、確たる意志で取り組んできた、そのすべてをぶつけるだけだった。
最高のアップ、超気合で迎えた試合は開始から誓いどおり、FW、こと『ワセダの命』前5人が局地戦で奮闘。逃げない、怯まない、とことんまでファイトする。「春相手が拘ってきた部分をやらせなければ、絶対勝てると言っていた」(後藤彰友)。「Bチームが練習から関東を意識して拘ってやってくれたおかげです」(フッカー種本直人)。常にトツし続けたのはもちろん、関東の十八番ブロー(あのガツガツくるやつです)にも一歩も引かずにやり返し、ボールを保持し続けた。これぞ『軍曹』の教え、対関東必勝パターン。「関東戦は気合、痛みに怯まないかの戦いです…」(プロップ瀧澤直)。
そして、そのファイトが形となって表れたのが、前半13分の先制トライ。一進一退の攻防が続くなか、自陣でのボール争奪戦で『ヨコヅナ』畠山健介が、関東のブローに対し激しさMAXの真っ向勝負。一歩も下がらないどころか、逆に相手のペナルティーを誘い、矢富→豊田→早田→矢富の速攻(矢富の突破力、豊田のセンス、早田のボール継続スキルの融合!)で一気に主導権を手繰り寄せた。「あのプレーは本当に大きかった」(後藤コーチ)。「健介さんのあのブロー、後藤さんに言われていたとおりでしたね」(フランカー豊田)。合言葉は、やられたらやり返す。春とは明らかに違うその姿は、ジンクス破りを確信させた。
その後は、後半8分にNO8林徹、19分にロック後藤彰友が立て続けにシンビンになるなど、ひたすら我慢の展開。幾度となく苦境に立たされたものの、フランカー笠原歩のスーパーバックセービング(今年1かもです!)、フッカー種本の激熱タックル(この日の1列のディフェンスは秀逸!)など、チーム一丸、強い意志で凌ぎきり、折れることなく、迫る『恐怖』に打ち勝った。「しんどかったけど、最後まで笑顔でできたかなって…」(SO曽我部佳憲)。苦しいときこそ笑って狂う、まさにこの夏からの『中竹流』。スペクタクルなBKアタック(そもそも関東相手には至難の業?)、華麗な展開は確かになかったものの、ある意味意図したとおりの戦いぶりは、『新生ワセダ』の第一歩にはふさわしかった。
「ブレイクダウンとディフェンス。ここがしっかりしていれば、負けることはない」(後藤コーチ)。内容はともかく、そんなお手本のような試合で、一番大切だったものだけはしっかりと確保。ここが『中竹ワセダ』『東条組』本当のスタートライン。この夏、中竹監督が学生に贈った言葉 ・「狂気は必ず響きあう。それがワセダ。狂気を放った者は一生結ばれる。それがワセダ」―。狂って、狂って、笑って、狂って。ここからが宿敵・関東学院、『恐怖』との本当の戦い。今年は今年のやり方で…。『東条組』、狂気の『荒ぶる』を―
<新たなスタート 残り一週間更なる追い込みを宣言する中竹監督>
「いやぁ、正直これからがスタートだなって。それが今1番感じていること。Aが勝ったこともそうだし、Bがあのような負け方をしたこともそうだし。今日は何よりあれだけの気持ちを入れて戦えたのがよかった。学生たちには『恐怖』という言葉を投げ掛けていたけれど、もちろん俺自身にもあった。でも今日でそれを越えることができたと思う。Aチームの試合に関して言えば、トライは取られてしまったけれど、今日はディフェンスとブレイクダウンで勝ってこいって言っていたから。ある意味では意図どおりの試合ができた。関東のあのブロー、春やられたことをやり返してこいと。みんなそこに拘って、勝負してきてくれた。まだまだ完璧とは言えないけれど、学生たちの意識はかなり上がってきていると思う。課題はペナルティーの多さ(今シーズンからノットロールアウェーが厳しくなりました)とノット10。ずっと言い続けている動き出しの一歩は、だいぶよくなってきているけど、まだまだ全然いける。喜んでいられるレベルではない。ブレイクダウンもまだ早く倒れすぎ。ディフェンスでもセットできていないところが見られたからね。でも今日は男として勝負して勝ってこいと送り出して、そのとおり勝って帰ってきたから、その点に関しては、よくやったと言ってあげたい。でもここからが本当のスタート。これからもひとつひとつやっていかないといけない。中竹色がでてたか?、そうね、できていたと思うよ。苦しいときこそ笑って狂ってこいと言っていたけど、そういう場面でドッシリ構えている姿も見られたから。すべてではないけれど、頼もしいところがあった。アタックに関しては、まだこれからだね。今日の試合もブレイクダウンとディフェンスに拘ったところが結果として出たけれど、まだ極めてはいない。これは今年のチームの1番大きな柱になるから、時間が掛かっても極めていきたい。何となくできていたからで、次にいくのではなく、もっと拘って極める。アタックではいい展開ができなかったけれど、そこは焦らずにいきたい。試合後春口さんと話したこと?、いや、6月25日からここまでの成果だよ、よくここまできたねって。自分もすっかり深い仲です(笑)。合宿の残り一週間ももちろん追い込む。学生にも最初に言ったのが、浮かれるなって。次の慶應も春に負けているからね。今日は若手のOBもたくさん来てくれて嬉しかったよ」
<勝負はこれから 『恐怖』に打ち勝ち更なる精進を誓う主将・東条雄介>
「全部が全部いい結果は出なかったけれど、やってきたことが出せてよかった。ここで負けたら先は見えないとずっと言い続けてきましたから。自分は出られなかったので、今日はもう信じるだけ。僕自身も『恐怖』を感じていましたけど、アップについたときにみんないい顔をしていたので、あとは一緒に戦うだけだって。そういう気持ちになれました。1年生のときは春も負けて夏も負けて、何をすれば勝てるんだろうって思いましたけど、今年はどうすればいいのかをイメージをしっかりと持つことができて、結果を出すことができた。形で崩したトライはなかったですけど、継続して穴を突く、そういうところは出せたかなと。ディフェンスもよかったし、常に起き上がってセット、ブレイクダウンも負けてなかった。まだまだですけど、ひとりひとりの意識が変わってきたと思う。今日で今年のチームの戦い方、やることが分かった。これからはこのベース、スタンダードを上げていくだけ。自分たちのイメージをこの夏でしっかり持つことができた。でもまだ全部のチームが勝ったわけじゃないし、秋冬には全部勝って終わりたい。どこかが負けたら悔しいし、ワセダである以上負けは許されないですから。これで満足することはありません。今日はめちゃくちゃ疲れました(笑)。試合に出ているほうがいいですね、やっぱり」
<シンビンに猛省も見事に責任を果たしたゲームキャプテン・後藤彰友>
「キャプテンだったにも関わらず、シンビンにもなってしまったし、いいプレーも全然できなくて、チームには迷惑を掛けてしまいましたけど、出ていたみんなが支えてくれて、やっとチームがひとつになれた気がします。春はああいう雰囲気になったら、みんながバラバラで、好き勝手やりだして、ワセダらしくなくなってしまっていたけれど、今日はこの2週間やってきたキツイ練習が自信になって、ひとつになれた。僕自身こんなに緊張したのは初めて。今までは責任を感じることなく、上の人についていくだけだったけど、今年は自分のことはもちろん、全体をまとめていかないといけないと。こんなに色々なことを考えたり、チームの雰囲気、状態に気を配るのは初めてです。戦う前までは『恐怖』を感じていましたけど、いざ試合が始まったら、楽しめたというか、『恐怖』を乗り越えることができました。みんなラグビーを楽しめている時間も、下を向いてしまいそうな時間もあったけれど、やってきた練習のおかげで乗り越えることができた。今日は春に相手が拘ってきた部分をやらせなければ、絶対勝てると言ってきて、練習でもとにかくそこに拘ってきた。ブローにやられたり、超えられてりというのがほとんどなかったので、ターゲットにしていたところは、まぁできたと思う。もちろんまだまだですし、昨年と比べても下ですけど。あとは大事なところでのミスが課題です。今年の色が出せたか?、見ている方が感じたものが今年のラグビーです。僕らは中竹さんを信じてキツイ練習についていきます。今日はチームとしてのまとまりを感じました。誰かが下を向いたら声を掛けるし、僕を助けてくれる人もたくさんいましたから。今日の試合が持つ意味は、まずジンクスを破ったということと、このチームはこれから伸びていくチームだということ。ホントこれからです。満足なんてできないです。まだつめていかなくてはいけないことがたくさんありますから」
<ビッグヒット連発! 最前列で体を張り続けたフッカー種本直人>
「春関東は後半しか出られなくて悔しくて…。あの負けから関東を常に意識して、ワセダはチャレンジャーだと、一日一日やってきたことが今日出せた。この合宿でも、何でこんなキツイことやらなくちゃいけないのという思いを出さずに、いい雰囲気でやってくることができた。下の学年がついてきてくれたのも大きい。週初めの練習では『恐怖』感もありましたけど、やっていくうちにみんな絶対勝てるって。中竹さんについてきて、東条、彰友、甲子郎についてきて本当によかった。試合の入りでしっかりできたのも、下のチームが生まれ変わったところを見せてくれていたから。FWはまだまだ全然ですし、関東もこのままでは終わるチームではないので、また一日一日追い込んで力をつけて冬に『荒ぶる』を歌います。今日接点で戦えたのは、Bチームが練習から関東を意識して拘ってやってくれたから。ビデオを見てここが勝負、ここは意識で変われるって、いい雰囲気でやってこれた。本当にみんなには感謝です。フランカーの仕留め、ブロー、早いセット、そこでは絶対に負けないです。モールも練習どおり。スクラムに関しては、これからやっていけばもっとよくなると思います。今日は途中健介と瀧澤にかなり助けてもらいました。中竹さん、コーチ陣には本当に感謝です。タックル、スウィフト、チャレンジしてきた成果が出た。これからは、キツイときこそ全員で修正できるチームになっていきたいです。今日で『恐怖』は超えられたと思います」
<好キック連発!冷静なゲームメイクで勝利を手繰り寄せたSO曽我部佳憲>
「この合宿がんばってきて本当によかったなぁって。春は敵陣でラグビーをすることができなかったので、五郎のキックと僕のキックで何とかしようと思ってました。エリアの意識、そこはよかったと思います。久木元コーチのおかげです。今日は春に比べたらまだ冷静にできたかなと。ブレイクダウンで十分と言えるほどボールが出てきましたし、ホントFWに助けられました。でもBKは…。全然ゲインを切ることができませんでした。相手のディフェンスもありますけど、自分たちに修正しなくてはいけないことがたくさんありますね。まだまだ全然いけると思うので。『恐怖』ですか?、ありましたよもちろん。昨日も負けたらどうしようって。実際今日の試合もしんどかったですけど、最後まで笑顔でやれたと思います。この合宿でやってきたことが出せた。これからはもっとBKで魅せたいです(この日もボールを散らす予定でしたが、展開上なかなか…。敵陣勝負と展開、バランスはこれからです)。これでやっとスタートラインに立てた。ここからがスタートです。残り一週間ももっとキツく。何でもします!せなあかんし、自分は言える立場でもないんで。今日の試合で今後へのいいイメージが持てたというよりも、本当にこれでスタートラインに立てたという感じです。こっからです」
<スクラム命! 個人の更なるパワーアップを誓うプロップ瀧澤直>
「勝てて本当によかったです。4年生がどういう気持ちか分かっていましたし、厳しくすべきところはどこか分かっていましたし、これで練習が正当化されたかなと。内容については、いいところも悪いところもあったと思いますけど。『恐怖』はもう感じまくりでした(笑)。緊張は今までもありましたけど、今回はそれ以上のものというか、負けたらどうなるんだろうって。ひとまず、今日くらいの『恐怖』は超えられましたけど、これはあくまでも前哨戦で、本番はまだ先。そのときは更なる『恐怖』が待っていると思うので、それを乗り超えられるようにこれからもっとやっていきます。もっとやるも怖いですが(笑)。とくかく監督、コーチ陣、4年、みんなを信じてついていきます。そのなかで僕ができるのはスクラムだけ。今日は基本春に比べたら安定はしていましたけど、BKがここだというときにいい球を出せなかったです。8人で組むのがワセダのスクラム。もっとゲームの流れを見て、集中して組めるようにしないといけないです。この夏取り組んでいる地域の組み分け、フロントだけでなく全員でどう組むか。今日は押しもせず、押されもせず(畠山曰く、相手の2番が自分の方にきていたらしいです…)。春より意図どおりに組めたのは収穫ですけど、まだまだ全然。これからは個人の力をもっと上げていかなくはいけないです。筋力は関東の方が上ですから。そこを高めた上で、チームとして。どんな場所でもどんな相手でも意図どおり組む。それでワンランク上にいけると思います。ブローは練習でのイメージどおり。今日は死にそうでしたけど、大江さんが瀧澤走れ~って。ずっと見られているので、抜けそうなところは助けてもらっています(笑)。反省、課題、収穫、色々とあって今日はよかったです。関東戦は気合、痛みに怯まないかの戦いです」
<久々にセンス爆発! フランカーで息を吹き返した豊田将万>
「昨日後藤さん(コーチ)に熱い言葉を掛けて頂いて…、今日はそれに尽きます。それがすべてです。羽生さんもずっと自分を見ていてくれて、一緒に練習もしてくれた。コーチ陣と選手がひとつにまとまって掴んだ勝利です。いい状態で試合に臨むことができて、やっとまとまりました。今日はとにかく負けたくない。試合中も4年生がずっとそう言い続けてましたし、自分たちもそれについていこうと。今日でチームがひとつ上にいけたと思います。彰友さんがいなくなったときはどうしようって思いましたけど、種本さん、林さん、笠原さんが引っ張ってくれました。フランカーですか?、逆サイドの一貴、笠原さんが働いてくれたからです。自分ももっと仕事しないといけないです。ただ、ブラインドフランカーだと見えるところが広くて、行くべきところ、空いているところが見えるので、自分のいいイメージでプレーできました。今日はブレイクダウンを越えていこうと。何本かいいのがありましたし、2週間の成果がでたと思います。健介さんが前半あのブローに対して戦ってくれた。後藤さんの言っていたとおりです。これでやっと関東と同じところに立てました。今日はブレイクダウンとディフェンスでしたけど、これからは、もうちょっと今村さん、五郎さんらが自由に走れるような継続ラグビーを取り入れていきたいです」
<オールアウト? ノーサイド後はグッタリ…>