「大会を通して見せ場はたくさんあったし、すごく楽しかったですけど、やっぱり勝たないと…。負けたら一緒ですね…」(細川コーチ)。あの屈辱から1ヶ月、リベンジを固く誓った東日本大学セブンズ。ノリと勢いの『細川ワセダ』は、4試合の激闘の末、またしても涙に暮れた。あと一歩、もうあと一歩 ―。
朝9:07。まず初戦の中大戦は、開始僅か60秒、フィニッシャー田中渉太のキレッキレ80メートル爆走トライで先手を取ると、その勢いに任せて一気の寄り。後半はフルにメンバーを入れ替えながらの省エネセブンでさっぱりと勝利を収めた。
続く相手は、仕込まれている感アリ、個々人がガンガン仕掛けてくるライバル・明大。センス溢れるBKプレーヤーに、有無を言わさぬ圧倒的な個のパワー。「おい、メイジだぞ。絶対にやられるな。ワセダの力を見せるぞ!」。この先待ち受けるイバラの道第一弾。否が応にも緊張感が高まった。
開始早々の相手ファーストアタックで、ディフェンスの間をスッポーンと抜かれる(ここだけ止めようって話でしたが…)最悪の入りも、ここからはひたすら我慢。『ゴジラ』瀧澤の見事な暴れっぷり、さらにはターゲットを絞った間隔の狭いディフェンスが功を奏し、主導権は渡さなかった。前半7分、後半5分、ともに狙い通りのターンオーバーからトライを奪い逆転。直後のラストプレー、相手のフリーキック(ワセダのキックオフがラインをオーバー…)から力づくで同点に追いつかれたものの、日頃の行いか、はたまた勝利への強い意志か、見事抽選勝ちを収め、念願の東海大戦へ駒を進めた。超ドキドキ、けど勝利を信じられた運命の抽選。「こんなに当たりくじが来ると信じられたこと、人生でなかったです」(細川コーチ)
「自分たちの力だ出せば絶対勝てるぞ!」「怖くない。先手を取ってそのまま行こう!」。ここまできたらもう後は勢いに任せるのみ。迎えた『大一番』東海大戦。この春セブンズで輝きを放ち続ける相手にも、ワセダの自信は揺るがなかった。
このゲームの主役は、何と言ってもこのふたり。末恐ろしき1年生・『隆ちゃん』と『カンゾー』。満を持して登場した有田がAチーム顔負けのスーパージャッカルと『ULTIMATE』スイープ(こんなの久々に見ました…)で喝采を浴びれば、中濱も強烈なハンドオフ(首藤甲子郎バリの黄金の右腕…)と強気のランでビッグゲインを連発。このふたりに後押しされるように、開始から田邊、三井、井上らもガンガン仕掛け、まったく相手を寄せ付けなかった。「いやぁ、完全に若い力に持っていかれましたね…」(瀧澤)、「こいつらスゲェ。そりゃ俺もやられるわ…」(田邊)。まさに会心のベストゲーム。采配もズバリ。『細川ワセダ』がもっとも輝いた瞬間だった。
そしてイバラの道第三弾。どうしてこんなにツライのか、セミファイナルの相手は拓殖大。外国人留学生と横山ツインズ。相手のストロングポイントもワセダがすべきことも分かってはいたものの、予想以上のスピードとキレについていくことができなかった。「ワセダが我慢、できなかったです…」(三井)。勇んで仕掛けにいってのターンオーバー&トライ、その後の淡白なディフェンス。この言葉が試合のすべて。4試合目ワセダ、3試合目の拓殖、その差があったかはつゆ知らず、仕掛けと仕留め、我慢で勝利を掴んできたチームが、最後の最後に自分たちの姿を見失った。
「うまさと速さ。分かってはいたんですけどね…」(細川コーチ)。心と体のギャップ…。あと一歩のところまで来ていただけに、この空白は悔しく、そして歯がゆかったに違いない。
頭にあったのは優勝の二文字だけ。当然納得できる結果ではなかった。しかし、仲間に対して恥じることのない、胸を張れる戦いではあった。YCACセブンズから着実にチームとして成長し、殻を敗れなかったルーキーたちが自分を出すことができた。拓殖大戦後には、自らの不甲斐なさからか宮澤が涙を流した。これ、ものすごく大きなこと。「チームとしても見えてきたんじゃないですかね。また色々あるシーズンの始まりです」(瀧澤)。「切り替えは大丈夫です。やってきたことがどれだけ出せるのか、15人制楽しみです」(細川コーチ)…。ゴールデンウィーク最後に得たものすごい悔しさと、たくさんの収穫。まずはこれで一区切り。『権丈組』は悔しさをバネに、再び信じた道を突き進む―
<無念のベスト4 チームの成長に充実感も悔しさを露にする細川コーチ>
「負けたら一緒ですね…。拓殖がうまいことも、速いことも分かってました。外国人も、横山兄弟も分かってはいたんですけど、ちょっと速さについていけなかったです。大会を通して見せ場はたくさんあったし、すごく楽しかったですけど、やっぱり勝たないと…。秀樹だったり、渉太だったり、シニアの練習がきつくて、体がしんどいなかあれだけやってくれた。だからこそ、負けさせたくなかったです。いいところ、たくさん出せたんですけどね…。YCACのメンバーに新戦力が加わって、相乗効果でお互いが伸びていったと思います。1試合1試合うまくなって、チームになっていって、充実感はありました。明日からみんな切り替えです。終わったことは終わったこと。今のこの想いを絶対に15人制に繋げて欲しいです。チームとしては…、隆ちゃんに寛造、1年生たちが自分を出せたのが1番大きかったと思います。これまでの練習ではボールが来るのを待っているだけでしたけど、7人制をやってからは自分からしっかりアクションを起こせるようになった。これはすごく大きい。コーチとしての切り替えも…、大丈夫です。やってきたことがどれだけ出せるのか、ジュニアも楽しみです」
<屈辱をバネに! YCACのリベンジを期し好プレーを連発した井上隼一>
「もう悔しいというか…、赤黒で負けたら意味がないっていうのもあるし、スタンドで見ていてくれたみんなに申し訳ない。情けないです…。毎試合毎試合相手が強くなっていくななかで、みんなケガも抱えるきついなかで、出し切ることが絶対だったんですけど…。最後はそれができなかった。拓殖戦もそれができれば勝っていたと思います。あと一歩、でした…。言葉にするの、難しいです。相手のスピードが想像以上でした。YCACでは法政に負けて、その後のOBとの懇親会ではもうボロクソに言われて、今回は絶対にやってやろうと思ってました。そのときのメンバーもだいぶ残っていてやりやすかったですし、自分たちが引っ張ろうという空気になってた。チームとして、いいところもたくさん出せたと思います。ゴールデンウィークは体がすごくきつかったですけど、そのなかでここまでやれたのは自信にはなる。来週から始まる試合でこの経験を生かします。今年は1年間ずっと上にいるのは当たり前。セブンズだけでなく、15人制でも赤黒に絡めるようにがんばっていきます」
<まさにスーパープロップ! ビッグプレー連発で場内を沸かせ続けた瀧澤直>
「負けてしまったことはものすごく悔しいですけど、楽しかったです。セブンズは練習から新鮮でした。最後に負けてしまったので、あまり言えないですけど、純粋に楽しかった。拓殖戦は…、僕のところで抜かれてしまいましたね…。スピードでくることは分かっていて、僕のところを狙ってくるとは感じてはいたんですけど、対応できませんでした。あと一歩。その狙われたところでやられてしまうのは普通の選手、やられないのが僕であって欲しかったんですけど…。簡単にやられてしまいました。チームとしてはいいところもたくさんありましたけど、自分はまだまだだったということです。今回は若いパワーに完全に持っていかれましたね。隆ちゃんに。ズルイです。僕がもし一年生で同じことをしていたら…。正直、プロップのライバルでなくてよかったなと思ったくらいです(ただ今フッカー挑戦中。まずはジュニアでみっちり仕込まれています)。近々動けるフロントとして一緒に組めたらいいなって。その前に僕がもっと動けるようにならないといけないですけど。重くなってさらに強くなるか、重くなっても今のプレーをできるのか、難しいことですけど、隆ちゃんなら大丈夫だと思います。スクラムは余裕ですよ。今回セブンズに参加して、ハンドリングスキルが上がった気がしますし、ラグビーを色々と知ったので、これからに生かせると思います。来年もメンバー入りしてリベンジです。チームとしても田邊だったり、1年生だったり、見えてきたと思います。また色々あるシーズンの始まりです。最後は自分のところでやられすぎました…」
1回戦 対中大 26-10(前半19-0、後半7-10)
出場メンバー:瀧澤(←8分中濱)、小峰、長尾、三井、田邊(←12分宮澤)、井上、田中(←6分三原)
得点者:田中2トライ、田邊1トライ、井上1トライ、三井3ゴール
2回戦 対明大 12-12(前半7-7、後半7-7 :抽選勝ち)
出場メンバー:瀧澤、小峰(←13分中濱)、長尾、三井、田邊、井上、田中(←7分大野)
得点者:井上1トライ、田邊1トライ、三井1ゴール
準々決勝 対東海大 21-0(前半14-0、後半7-0)
出場メンバー:有田隆、小峰(←4分掛井)、長尾(←10分三原)、三井(←7分櫻井)、田邊、井上、中濱
得点者:長尾1トライ、井上1トライ、櫻井1トライ、三井2ゴール、田邊1ゴール
準決勝 対拓殖大 12-28(前半7-14、後半5-14)
出場メンバー:瀧澤、掛井、長尾(←5分有田隆)、三井、田邊(←7分宮澤)、井上、田中(←5分中濱)
得点者:中濱1トライ、有田隆1トライ、三井1ゴール