「慶應戦は理屈じゃねぇ。最初からいわせるぞ。それぞれのファースト、そこに懸けろ!」(主将・権丈太郎)。「形には拘らなくていい。とにかくコンタクト。しっかりと気持ちを作って戦おう!」(副将・五郎丸歩)。「やるだけ。相手は慶應。理由はそれだけでいい」(副将・畠山健介)―。合言葉は、リベンジ、慶應に力を与えるな。忘れることのできないあの試合。殺気、拘り、そしてプライド…。『権丈組』はその芯の強さで、ライバルを思惑通りに圧倒した。
昨年…だけでなく、80年を超える対戦で踏まえた慶應戦の教訓・ファーストプレーですべてが決まる。あの痛さ、いやらしさに晒されるかは入り次第。絶対に逃げない。真正面から粉砕し、相手を凹ます。「ファーストプレー、意識しろ。絶対に圧倒して来い!」(中竹監督)。この日もキックオフから思い切りブッ刺さり、ターンオーバーしたところで流れは決した。スキッパー・権丈太郎も試合後、開口一番、真っ先に口にした。「ファーストプレー、ターンオーバーしましたよね? いい集中、いい意識。みんなで話していたとおりです」…。
もっとも意識した試合の入りをきっちりと乗り切ると、あとはこの試合のテーマと拘り、自分たちとの戦い。FWはこれでもかとモールをプッシュ、BKもチャンスフェーズで結果を残し、しっかりとそれに応えた。「FWがあれだけいってくれましたからね。BKとしてもすごく楽でした。FWが高麗大戦でできなかったところをしっかりとやってくれて、安心しました」(五郎丸)。「今日はBKです。モールへの拘りもよかったですし、これからもこういうラグビーをしていたいです」(畠山)。FWもBKもまずは先週からの課題をクリア、この春の取り組みを出せたことは、大きな大きな収穫だった。
そしてモール、チャンスフェーズでの拘り以上に光ったのが、ワセダの命・接点の完全制圧。この日もガッツガツ体を当てる有田を中心に、攻守ともほぼすべての接点を前へ。呼応するようにそこにいる全員がガムシャラにファイト。アタックでの躍動感(トライはすべていい形!)も、ディフェンスのアップ(なかなかグッド!)も生み出す好循環で、やりたいラグビーを体現した。「高麗大、今日の慶應。いいイメージで来ていると思います」(主将・権丈太郎)。まずもってのところは、しっかりと『Penetrate』(浸透)。あとは本当の勝負、あの相手に同じことができるかどうか…。
後半、開始からの20分で12個ものペナルティを犯し、ほとんどの時間ラグビーをできなかったという反省こそ残ったものの、全体を通して見れば、ファーストプレー、ゲームテーマを遂行しきった実り多き勝利。「やっと今日自分の手で勝つことができた」(フッカー臼井陽亮)と言う様に、あの忌まわしき記憶(山田くんもシャットアウト!)ともしっかりとケジメをつけ、チームとしてまたひとつ成長できた。この勢いに乗り、今週24日(木)にはいよいよ今季初のサントリー練。新たな刺激で、新たな力を。『権丈組』は、まだまだまだまだ強くなる―
<テーマ遂行に手応えを感じる中竹監督>
「今日は高麗大戦の反省がしっかりと生きたゲームだった。モールへの拘りが見られたし、バックスもチャンスフェーズを物にしてくれた。そういう意味ではいい試合。スローガンのリベンジ、しっかりできたと思う。ミーティングで話したファーストコンタクトも、みんな強く意識できていた。Penetrateは…、チームとしてはかなりできていて、よかったけれど、個人個人、1対1のところを見ていくとまだまだ物足りないかな。そこはもっと拘ってやっていきたい。ディフェンスも前に出ていたけれど、まだまだもっと出られる。接点をもっと前に持っていけるように。トライも防がないといけないものだった。後半のペナルティ連発は、チームとして対応することができなかった。ズルズルいってしまって…、すごくもったいない。ほとんどラグビーをしていなかったからね。FWで崩してBKで仕留めるという形が随所に見られているし、やってきたことが出せていて、いいイメージできていると思う。サントリー練では、ブレイダウンとセットプレーをメインに見ていきたい」
<本日のベストペネトレーター! この日もギラつきまくった主将・権丈太郎>
「慶應は昨年負けた相手だし、あれからチームが失速してしまったところがあった。あのとき出ていたメンバーも多くて、今日はモチベーション高く試合に臨めた。ファーストプレー、ターンオーバーしましたよね? みんなで絶対にそこで上回ろうと話をしていて…、そこはしっかりできたと思います。相手のFWうんぬんもありますけど、今日はモールでトライを取るというのがテーマだったので、そこもしっかりできたかなと。もっと楽にいけた場面もあったかもしれないですけど、今日はモールに拘ろうと言っていたので、OKです。ディフェンスに関しても、接点、ブレイクダウンのところで前に出られたから、ラインを上げることができた。よかったと思います。ただ、後半タックルミスからゲインされて、オフサイド、そういう場面が多かったのは課題です。ペナルティに関しては…、何かよく分からないところもありましたけど、チームとして修正できなかったのは反省しないといけないです。あとはターンオーバーを狙う局面での倒れこみだったり、人数を掛けすぎるところがあるので、そこの見極め、人数もしっかり確認して、球を出されてもきれいにセットできるように、精度をあげていきたいです。ラインアウトはお互いまったく同じことをやっているんですけど(慶應もサントリー式…)、僕のリフトミスもあって…、ちょっとまずいところがありました。まだセットしきれていないので、そこも課題です。ディフェンスに関しても、やってくることが分かっているにも関わらず反応が遅かったので、そこもしっかりできるように。慶應も監督が代わってすごく自信を持っていたと思いますけど、僕たちワセダとしても慶應には絶対に負けられない。今日はその意地を見せられてよかったと思います。チームとして形に拘らずに、ひとりひとりが激しくプレーして、裏に出て、立ってつなぐ。FWもガンガン前に出て、BKがトライという形も見られたし、春やってきたことがしっかり出せたのは評価できる。まずはいい形できていると思います」
<すっかりお疲れ?モードも最前線で体を張り続けた副将・畠山健介>
「今日は正直疲れました…。心も体もです。後半の最初、慶應ペースの時間帯で苦しかった。連続ペナルティはなしと言っていたのに…。あそこが1番辛かったです。ゴール前のペナルティからモール、キックオフからモール、立ってつなぐ、今日はしっかりと拘れてよかったかなと思います。けどまだまだできるので、もっともっと拘っていきたいです。今日はBKがやってくれて、やりたいラグビーができました。これからもこの形でいきたいですね。ループですか?、サインではなかったですけど、練習からドンドン使っていこうと言ってましたし、あの場面臨機でできてよかったです(笑)。今日は接点でしっかり勝って、前に出て、激しくプレーできたのがこの点差に繋がったと思います。これからもこの春やってきたことを出せれば、絶対にいいラグビーができる。この2試合はいいイメージです。ラインアウトにはまだミスもありますし、スクラムもまだまとまっていない。もっと激しいラグビーを目指して、これからも毎日しっかりやっていきます。慶應のスクラム、強かったです。後半のメンバーも拘っているのが分かりましたし、自分たちはまだまだ足りないということがよく分かった。次の明治は圧倒できるように、またやっていきます。昨年は春に慶應に負けたところから始まった。出てる奴が1番悔しかっただろうし、出ていない僕もものすごく悔しかった。今日こういうラグビーで勝つことができたのは大きな収穫だと思います」
<栃木でも大フィーバー! この日も抜群の存在感を見せた副将・五郎丸歩>
「昨年負けてますからね。昨年を越えるには、まず今日の慶應戦だろうと。みんないい意識でしっかりと気持ちを作って、いい試合運びだったと思います。このゲームでまたチームとしてレベルアップすることができた。FWがあれだけいってくれると、BKとしてもすごく楽ですし、高麗大戦でできなかったところをしっかりとやってくれて、安心しました。トライも完全に崩してからのものでしたし。とにかく自分はFWを下げないこと。前半はしっかりできていましたけど、後半はイマイチだったので、もっと集中してやっていきたいです。全体を振り返ると…、やっぱり後半の10分で取りたかったですね。そこで畳み掛けられなかったのが自分たちの甘さであり、これからの課題。コンタクト、激しさに関しても、しっかり出せたと思います。日頃から激しくやっているので、チームでやり合う方が嫌なくらいです。高麗戦後は、慶應戦がどうこうというよりも、この春やってきたことをしっかり出そうという意識でやってきて、今日はよかったと思います。ペナルティが多かったですけど、そこをしっかりコントロールできていれば、もっと点差が開いたかなと。チームの方向性はしっかりと見えています」
<ついにリベンジ! ラストイヤーにすべてを懸けるフッカー・臼井陽亮>
「昨年の春は代表が6人くらい抜けていて、自分たちが強いラグビーを体現するんだという気持ちで臨んだにも関わらず完敗。その記憶が忘れられなくて、とくかくリベンジしてやろうという気持ちが強かった。対抗戦は出ることができず、やっと今日自分の手で勝つことができてよかったです。FWで崩してBKで取る。テーマであったモールも、高麗大戦の反省をしっかりと生かすことができた。停滞からの形も練習でやってきましたし、崩れないという意志、拘り、しょっぱなのモールからトライを取ることができたのは、大きかったと思います。ペナルティが多かったですけど、みんなで前に出て、チャレンジすべき局面でターンオーバーできたのはプラスです。ペナルティはそこのおまけみたいなもの。まぁ今日に関しては、気にはしてません。ブレイクダウンも自信を持ってやっていますし、今年は強いFWで勝ちます。前半はしっかりその流れを作れたと思います。スクラムは…、相手ボールはコントロールできたところもありますけど、マイボールはまだまだでしたし、もっともっと強くならないといけないなと。この春の相手に他を圧倒するスクラムを固めていきたいです。昨年はシーズンで試合に出られない悔しさを味わった。今年は試合に出続けて、決勝の舞台に立って、しっかりと自分の力で『荒ぶる』を歌いたいと思ってます」
<故郷に錦! 地元凱旋で大声援を受けたCTB大島佐利>
「こうして栃木に帰ってくることができてホッとしました。花束贈呈、相当恥ずかしかったです(笑)。後半はずっと自陣に釘付けだったので、何とかしたかったんですけど…。自分もまだまだ周りに動かしてもらっているだけなので、もっと自分からプレーできるようにならないといけないです。古庄さんですか?、とにかく帰ってこれてよかったねって。昨日はもう必死でした(笑)。とにかく栃木にいきたいって。嬉しかったです。今年は正月に国立に立っていたい。昨年以上に自分にできることはたくさんあると思うので、とにかく毎日勝負して、13番を勝ち取りたいです。ボールを持って自分からガンガン勝負する。今は余り得意ではないですけど、しっかりとタックルもできるように。いい週末を過ごすことができました」
<頼りになります! 早田健二、キレキレランで怒涛の4トライ!>