ワセダのプライド、持ってますか。赤黒を背負う意味、分かっていますか―。伝統と格式・1209年創立のケンブリッジ大(ノーベル賞80人超!)と、進取の精神・創立125周年ワセダとの威信を懸けた一大決戦。テーマは『 PRIDE 』。日本一に拘り続ける、負けず嫌い『権丈組』の、そのテンションはマックスに近かった。学生たちのハートに火をつけた、中竹監督の言葉…。「相手は世界でもっともプライドの高い集団だぞ。ケンブリッジと試合ができる意味。負けずにしっかりとファイトして来い!」。
誇り高き『赤黒』はお祭りムードもどこ吹く風、しょっぱなからエンジン全開。「結果」を形に表すまで、そう時間は掛からなかった。開始23秒、超集中のキックオフ→いきなりの大外高速展開でWTB田中渉太が相手をブッちぎると、その後も意のままにゲームをコントロール。速さと早さ、低く激しく、常に相手を揺さぶり続ける。17分にはセンタースクラムから指一本触れさせずにビューティフルトライ(シーズンベスト!)。まさに芸術、これがワセダの伝統工芸。自分たちより大きな相手にいかにして勝つか。外国チームとはいかに戦うべきか。『権丈組』の戦いぶりには、先人たちが築いた伝統、ワセダのアイデンティティがギッシリと詰まっていた。『緊張』、『創造』、『継承』…。近年ちょっぴり加わったモールの強さ(この日もブリブリ!)。大学創立125周年、創部90周年まであと少し、ワセダの生命線、確固たる芯は、過去も、そしてこれらも決して変わることはない。
前半はほぼ完璧なゲームコントロールで40-7。後半開始早々も、全員の意志がひとつになった速攻、立って繋ぐ「今年の形」で完全に勝負アリ。しかし、それでもなお、究極を目指す『権丈組』は、その後30分への反省を忘れることはなかった。「後半は風下ということもあって敵陣に行けず苦しかったです。マイボールラインアウトからモールを選択したけれど、あそこでしっかり取れていれば、ああいう展開にはならなかった。そこはまだ自分たちの甘いところです…」(主将・権丈太郎)。「後半は風下でなかなかキックが使えず、繋ごうとしたけれど、そこでハンドリングミスをしてしまって、それに対する反応もイマイチ。何よりディフェンスで受けてしまいました…」(副将・畠山健介)。早々に勝負はついて最後はグダグダ、まぁラグビーではよくある話(前半拮抗、最後に突き放すのもまたしかり。どちらがいいかは…)。そりゃ、後半も同じペースであのケンブリッジから80点も取れたら、それはそれは「エクセレントチーム」。大学選手権ではダントツの優勝候補(の、ハズ…)。けど、まだ今のワセダは「グッドチーム」止まり。逆に言えば、これから更に強くなる余地、課題、モチベーションを得ることのできた、次に繋がる試合だった。
思えば日英対抗は、いつもその後のシーズンに大きな影響を与えてきた。オックスフォードから悲願の初勝利、その勢いで覇権を奪回した『諸岡組』。ケンブリッジに過去例を見ない快勝にも猛省し、伝説まで昇り詰めた『佐々木組』。そして、『権丈組』も大きな自信と、更に強くなるヒントを。「今日は自信にもなるし、課題にもなるし、いい試合だったと思います」(副将・畠山健介)。「今日の勝利はチームにとってすごく大きなものだと捉えています」(主将・権丈太郎)。課題もある、けど、進んでいる方向は決して間違ってない。『権丈組』、覇権奪回へ。そしてワセダ、これからも『永遠に』そのプライドを―
<『権丈組』、夜の日英対抗も圧勝?>
試合後、東京ドームホテルに場所を移して行われた「フェアウェルパーティー」は、まさにノーサイドで大盛り上がり。ワセダがゲリラ的に英語の歌を披露すれば、ケンブリッジもその美声でしっかりとお返しするなど、それはそれは素晴らしい会になりました。ただ、乗りと勢いはさすがにホームのワセダが優勢!「今日のワセダはベリーfastで、すごくいいラグビーをしていた。チャンピオンシップを取れることを心から祈っています」(ケ大主将・ロス・ブレイク)。グラウンドはもちろん、試合後も、ワセダに負けは許されない???
※水色のブレザーを着ている選手はブルー保持者です。ブルーかブルーでないか、一目瞭然。すごい世界です…。ちなみにケ大主将はプレミアシップでのプレー経験がある相当な実力者です。
<伝統と誇り ケンブリッジ戦の意義を語る中竹監督>
「前半は取るべきところで取って、ディフェンスもしっかり抑えて、いいゲームコントロールで常に敵陣。ワセダにとっては、すごくいい内容だった。後半はあれ以上のテンポで行こうと言っていたけれど、ミス、ペナルティに戸惑って、ほとんどの時間を自陣。締めが悪かったという点では、よくないゲームという感じ。前半はゲームコントロールがうまくいって、それが得点に結びついていたけれど、今日のテーマのテンポという点ではまだまだだったから、もっとそこを強調した指示を出して、突き放してこいと。でも、まだまだということだね。今年で日英対抗は最後ということだけど、非常に残念。もし可能性が残されているのなら、スポンサー等も含め、色々な提案をして、続けていきたい。ケンブリッジやオックスフォードというラグビーの原点とも言えるチームと交流を持てるということは、ラガーマンとして非常に大きなことですから。昨日もミーティングで戦術うんぬんの前に、この試合の意義、ケンブリッジの歴史、プライド、そういった話を学生にはした。学生もしっかりとその意味を理解して、プライドを持って、ファイトしてくれたと思う。今日の試合は、この先の自信になるだろうね」
<ネセサリー! 今後への自信を口にする主将・権丈太郎>
「今日はゲームのテンポを上げること、2人目の寄りを意識して試合に臨みました。前半は思っていた以上に自分たちのやりたいラグビーができて、意図したところでトライも取れたすごくいい試合。ただ、相手が勢いに乗った局面ではダブルタックルに行けず、オフロードで繋がれてゲイン…、そこは課題です。後半は風下ということもあって敵陣に行けず苦しかったです。マイボールラインアウトからモールを選択したんですけど、あそこでしっかり取れていれば、ああいう展開にはならなかったと思います。そこはまだ自分たちの甘いところ。ただ、成蹊戦からと比べても、夏から比べても確実に力をつけているという実感はありますし、今日の勝利はチームにとってすごく大きなものだと捉えています。後半テンポを上げられなかった要因は、まずはボールキャリア。大きな相手の目の前(足元)で寝込んでしまって絡まれる。その状態からスイープにいっても、自分たちの意図するテンポは出ない。ボールキャリアが1番の課題だと思っています。日英対抗が今年でなくなってしまうのは、非常に残念です。自分としても、ワセダとしても、この試合は夏を終えてどれだけの力がついたのかを計る試合。大きな相手に何が通用して、何が通用しないのかをここで確認する。シーズンを戦っていく上で大きな試合だっただけに、すごく残念です。プライドですか?、ん~、しっかり負けずにファイトできていたと思います(笑)。1対1に関しても、しっかりセットできたときは大丈夫。ただ、ゲインされた後、1人目が甘くて、2人目が強く入れなかったところは反省です。今日はチームの自信になる試合でした。まだまだ課題もありますけど、大きな一勝だと思います。ディフェンスもそうですけど、自分たちがきついところでまだまだがんばりきれないところがあるので、この先に向けては、そこを意識してやっていきます。あとはアタックの1次の精度とボールキャリアです」
<グッドゲーム! 着実に前進し続ける副将・畠山健介>
「前半はテンポも上げていいゲームプランでいけたと思いますけど、後半スコアで負けたということは、自分たちもまだまだだなって。後半は風下でなかなかキックが使えず、繋ごうとしたんですけど、そこでハンドリングミスをしてしまって、それに対する反応もイマイチ。何よりディフェンスで受けてしまいました。やっぱりどこかで仕掛けないとズルズルいってしまう。ターンオーバーしないといけないです。FWはデカイ相手に対してしっかり戦えたと思いますけど、国内にはもっとスピードのある選手がいる。そういう意味では、僕も含めてコンタクト、1対1はまだまだというところです。スクラムは、外国のチームとやるといつもそうなるように、案の定うまくいきませんでした。僕と瀧澤的にはいいと思っていたんですけど、後ろの人間はもっとって。自分たちがいいと思っても、後ろがそう言うということは、まだまだよくないってこと。しっかりとビデオを見て反省したいです。接点ですか?、向こうも強かったですよ。体の大きさを前面に出してきて、大変でしたから。今日は自信にもなるし、課題にもなるし、いい試合だったと思います」
<この日も抜群! 試合後、敵将から留学の誘い?を受けた副将・五郎丸歩>
「前半は完璧だったと思います。ずっと敵陣にも入れましたし、BKもしっかりと1次で取れて、よかったです。後半に関しては、攻めてないので何とも…。そういう状況を作ってしまったことが問題です。風下では全然違いました。ただ、ここまで1戦1戦しっかり勝ってますし、着実にチームとして前には進めていると思います。コンタクトも全然負けてなかった。今日はチームが変わるための試合だと思ってましたけど、相手の力もあり、分岐点とまで言える試合ではなかったです。これからは難しい試合が続きますけど、チーム内の競争を作っていきたいと思っています。ケンブリッジへの留学?、無理ですよ(笑)」
<使命はセット! 後半の不出来を悔やむフッカー・臼井陽亮>
「先週のオール関東との試合を見て、あの試合はリザーブ中心、今日がベストメンバーだと聞いて、試合前は今年やってきたなかで1番強い相手だろうと思ってました。そんな相手に対し、FWはモールでも取れたし、BKは1次でしっかりと前に出て、やりたいラグビーができたと思います。特に前半は。後半に関しては、やっぱりキックで前に出られなかったのが1番。あとはゴール前でのミス、ペナルティが多くて、うまく乗っていくことができなかった。チームとしては、1対1で負けない、2人目の寄りを早くすることを意識してましたけど、しっかりできた、勝てたところもあるし、もっとやれたというところもあるし…。と、そんな感じです。セットに関しては、8割は安定しましたけど、ゲームを決めるここぞの場面、ここで出せばBKでいけるというところで、イマイチうまくいきませんでした。自分のスローミスもあってリズムに乗れず、そこは反省です。スクラムはプレッシャーを掛けようと思えば掛けられましたけど、相手の8が強くて、むやみに押しにいって回ったりすると、逆にピンチになったりで…。まぁ、相手ボールに関しては反省ですね。セットアタックラグビーもうまくいって、大きな相手にコンタクトでも負けないで、この点差。チームとして1歩1歩前進しているのかなと思います。昨年の決勝で負けた要因はセットプレー。ワセダが苦戦するのはセットが崩れたとき。どんなときでもBKにいい球を供給する。それが自分の1番のテーマ。加えて、個の強さをチーム1になるくらい高めていきたいと思ってます」
<タイトな男! この日もしっかりとチームを支えたCTB長尾岳人>
「最近は最後にこうなることが多いですね…。敵陣深く攻め込みながら一気にゴール前まで行かれたり。今日も最後の方はきつかったです。しかも最後は僕のサインミス。アドバンテージが出てると思ったので、裏に蹴るようにコールしたんですけど…。アドバン出てました?(蹴った瞬間解消…)、でも申し訳なかったです…。前半に関しては、キックオフターンオーバーからのアタックをはじめ、いいイメージで取れたと思います。セットからも取れてよかったです。まぁでも今日はFW。モールで取ってくれてすごく楽になりました。ディフェンスについては、1人1人が強いので下に入ろうといっていたんですけど、追いタックルになってしまうところもあって反省です。それとSO周辺。今日も来ると分かっていたんですけど…。やっぱり1発目で受けると、その後もいかれる。そこは課題です。最後に取られたのは僕のミスからだったので、そういう意味では満足できないですけど、チームとしては特に前半いいイメージで戦えたと思います。自分がアタックでもディフェンスでも起点になれるように。この先もがんばっていきます」
<ゴスペラーズ村上てつやさんからメッセージを頂きました!>
「小学生の頃ラグビーをやっていた自分にとって、数々の名勝負を生んできたラグビーの聖地、秩父宮ラグビー場の美しい芝の上で気持ちよく歌わせて頂き、感激しました。日本のラグビーが盛り上がるためには、やはりワセダには常に勝者であって欲しいです。がんばれワセダ!」