意志あるところに道は拓ける。学生たちよ、失敗を怖がるな― 4月26日、雨降りしきる聖地・上井草にて入部式を開催。選手権連覇!…ではなく、今年の『荒ぶる』を目指す『豊田組』に、33個の新たな個性が加わった。
佐藤英善部長、矢部ROB倶楽部会長より、夢を叶えるために努力すること、文武両道とのお言葉を頂戴し、続いては中竹監督が挨拶。「1年生のみんな、入部おめでとう。今日から『豊田組』のスタートです。俺自身は連覇、今年<も>勝とうなんて考えていません。とにかく『荒ぶる』を取ること、それだけです。今年のスローガンは、『Dynamic Challenge』。大胆な挑戦。失敗、ミスも当然出るだろうけど、そこから逃げるな、失敗を隠すな。チャレンジした人間を俺は評価します」―。この日はサントリー・清宮監督もご来場。年々存在感、その色が増し続ける中竹監督ことはどう映ったか…。力強いメッセージに、新入生たちの心は打たれた。
そして式はメインともいえる新入生挨拶に(今年は音響設備を新設。ありがとうございます!)。新人練で見たまんま、みんな真っ直ぐで素直、さすがに笑いを取る奴はいないなぁ~と、思った矢先、「兄・井上隼一より器のデカイ男になりま~す!!!」。これには上級生たちも大喝采(そのとき兄は…)!。場の雰囲気が和んだところで、新人総代・井口剛志がキッチリ締め、晴れの儀式は幕を閉じた。さすがは伏見の主将。よく教育されている。そして、やっぱり気合いが違う…。
「この全部員と、コーチ・スタッフと、中竹さんと、絶対に『荒ぶる』を歌います!」(主将・豊田将万)。これですべての陣容は整った。さぁ、2008年『豊田組』、いざ『荒ぶる』の航海へ―
<どしゃ降りからの第一歩… 新歓試合では力の差を痛感>
入部式に続いて行われたvs2年生試合は、洗礼(熱烈歓迎?)を受けたと表現すべきか、一言で言って完敗。「成す術なく、手も足も出なかった」(井口)と言うように、何から何まで圧倒され、まったく見せ場を作ることができなかった。
そんな展開のなかで最後まで気を吐いたのは、まさに模範生・花園準優勝FBの井口剛志。アタックでは終了間際にあの華麗なステップで5人抜き、ディフェンスでも裏に抜け出た相手へのタックル&瞬時のジャッカルと、上級生にも十分通用するところを見せた。他にも新人練で輝いたところで言えば、早い段階から相思相愛、桐蔭学園のスクラムを支えた横谷大祐(お兄さんは現在NZ短期留学中)。あの『ヨコヅナ』の後輩、仙台育英では東大一直線だった?近藤統靖(ラグビー部では稀な特別進学クラス在籍!)。気合いタイ!権丈太郎の血を引く男・堺裕介(知る人ぞ知る?北九州予備校経由)。4年前の臼井陽亮そっくりの斎藤健(同じサクセスストーリーを!)。文字通りの親子鷹・土屋鷹一郎(なぜだかトライを取る男!)。かの久我山で1年からレギュラーを取った山﨑大夢(怪我から完全復活!)…。ハンドボール界からの華麗な転身・小林勇也(ハンドに未練はないとキッパリ!!!)も堂々のデビューを果たし、それぞれがその第一歩を踏み出した。
試合はここ数年例を見ない0-81。一見すれば前途多難な、ドン底からのテイクオフ…。しかし、この学年には花園で決勝を争った2人のホンモノがいる。そのうちのひとり、井口剛志は試合後の円陣で涙ながらに訴えた。「俺は今年の1年は弱いなんて思われたくない。ここで悔しいと思わなかったら、男じゃないだろ。新人練から甘かった。みんなで切り替えて、今日をキッカケにあいつら変わったと言わせよう」…。ここにリアルリーダーの姿を見た。同じ雨、同じ大敗、あの東芝B戦後の佐々木隆道の姿とダブって見えた。まだ入部初日、これからどうなっていくかは自分たち次第。いかようにも変わっていける。赤黒、そして『荒ぶる』へ。がんばろう、新一年生!
<ワセダに入るために生まれた男? 見事に新人総代を務めたFB井口剛志>
「今日は先輩たちの出迎えを受けたというか、試合で力の差、ワセダのラグビーというものを感じさせられました。まだまだ1年生は甘いし、これから意識を、ラグビーへの姿勢を変えて、ひたむきにやっていかないといけないです。接点のところで1番差を感じました。先輩たちのタックルはすごく前に出てきて、こちらがアタックしていても後退させられる。逆にディフェンスでは喰い込まれて常に後退。成す術なく、手も足もでませんでした。個人的にここまでやられた試合、相手に裏に出てこられた試合は、高校時代仰星とやったとき以来です。山中さんがいたときの仰星(どれだけ強かったのかと…)。自分はもう中学生のときから、伏見に行って、ワセダに行って、その先~と決めてました。ワセダはずっと憧れの存在。あのジャージーの重さは他とは全然違います。中学生のときから、絶対に自分はあのジャージーを着るんだと思ってました。赤黒にはそれほどのインパクトがありました。実際に入ったワセダは…、もう思っていたままです。厳しい現実です。試合後の円陣で言っていたことは、中竹さんにも同様のことを言われていたので。それを言われて、黙っていたら男じゃないです。僕たちにはまだ機会がある。1日1日を大切にして、ひとりひとりがどれだけ成長していけるか。周りには素晴らしい先輩、素晴らしい環境があるので、1日1日を大切にして、たくさんのことを吸収して、日々努力していきます。山下、そんなこと言ってましたか? ポジション違うんですけどね(笑)。時々あのときの話はします。今度は一緒に日本一を目指そうって。あいつとは常に切磋琢磨していきたいと思っていますし、よき仲間であり、よきライバルであり続けたいと思っています」
<ワセダを実感! 仲間との、井口剛志との日本一を誓うNo8山下昂大>
「今日でワセダの一員になることができましたけど、僕自身新人練には参加できませんでした(入学前よりリハビリ中。復帰は…)し、試合に出ていた奴らが羨ましかったです。見ていて自分も早くプレーしたいと思いました。今日のゲームでは先輩たちの激しさがすごく伝わってきて、ワセダとはこういう組織、こういうチームなんだと。ワセダを志望した理由は、もちろんラグビーの強さ、グラウンドを広く使うスタイルが好きだったこともありますけど、教職が取れるということも大きかったです。将来は先生になりたいとも思っているので。テレビなどで試合を見ていて、赤黒は本当にかっこいいなとずっと憧れてました。1年生はみんな仲がいいです。花園に出ていない奴が大半ですけど、みんな一生懸命やっていて、負けられないという気になりますし、すごく仲間意識が芽生えてきました。ワセダでの4年間、素晴らしい環境がここにはあるので、選手としてはもちろん、人間としても誰からも認められるようになっていきたいと思ってます。そのなかで、『荒ぶる』を4回歌いたい。花園の決勝を戦った井口とは、あのときの話をしたりします。実は僕あのゲームのことは詳しく覚えてないんですけど…(笑)、ふたりで振り返ると何か人事みたいな感じです。あのゲーム、すごかったよねって。今度はふたりで一緒に日本一を目指します。井口は本当にすごい奴。僕はプレーヤーとしても全然負けているので、追いつき、追い越せるようにがんばっていきます」