覚悟、責任、爆発、克己。ここでやれなきゃ男じゃない!再び危機感からのリスタート。2週間前、何とも危険なスタートを切った『早田組』が、早くも真価の問われる戦いで、プチエクスプロージョンしてみせた。そこに満ちていた確固たる意志…。他の誰でもない、俺たちはワセダ!―
ファーストゲーム、さらには新チーム発足からの日々を踏まえ、この日強調されたのが、『個のExplosion』。チームどうこうの前に、それぞれ個人が周りの人間に頼ることなく、いかにして戦うか。この1週間チームとしての、組織の焦点を当てたトレーニングは一切なし。一体感を重んじてきた試合前のアップさえも各個人が行う(もしかして史上初?)徹底ぶりで、それぞれが己との戦いに挑んだ。
その初めての試みが影響したのか、序盤はどことなくチームがバラバラ。開始早々の3分、美しい継続からあっさりトライを奪ったものの、執拗に近場を攻めてきた相手の前にディフェンスで後手を踏み(23分には未だ手付かずのモールで失トライ…)、しばらくは2週間前同様の空気が流れた。一歩目のインパクトを欠くことで、ダラダラ応戦するハメになる。ボールを生かされ、相手にいけると思わせる。大きな火傷には至らずとも、この近場での攻防は、早急に対処すべき明確な課題。「全体的に差し込まれるところがあったので、まずピラー1、2がしっかりと立つこと。今は外に気が向きすぎている。もう一度ショートサイドはやり直さないといけないです。このままではまずいと思います…」(フランカー中村拓樹)。
このモヤモヤを打ち消したのは、これまたテーマにバッチリ・個の力。その導火線は試合毎に進化を遂げるNo8大島佐利。1対1完全制圧、逆転した直後のキックオフで30メートルリターン、ペナルティからの速攻でディフェンスをごぼう抜き…。ここから先はそれぞれが持ち味を存分に発揮し、完全にゲームを支配した。
29-7で迎えた後半は、まさに変わらんとするワセダラグビー・『早田組』見本市。とにかくガツガツ。出場した誰しもが、周りを気にせず全力で自分を出し尽くす。パスしていたらきれいにトライだったのに…なんてシチュエーションも、この日ばかりはまぁOK。新たな挑戦大当たり、抜群の働きで最後尾からチームに安定感をもたらしたFB井上隼一。好プレー連発の先輩・村田賢史に負けじと、ビッグヒット&連続タックルで、これまでにない姿を見せたSO山中亮平。初めての、しかも突然のファースト15にも、物怖じせず堂々としたパフォーマンスを見せた(世界の?)伊藤平一郎。他、1番から22番まで、全員が躍動。まさに爆発の連鎖。ワセダらしくはなくとも?その戦いぶりは、いつになく力強く、『ワイルド』だった。『中竹ワセダ』の、新たなイメージ?
ふと気がつけば、テーマどおりの『個の爆発』で、史上唯一の三連覇校・同志社に88-7の大勝。しかし、この規模の爆発では、まだまだ目標には程遠い。大きなカベはぶち壊せない。ワセダが目指すのは、ちょっとやそっとではない、原形を残さない劇的な進化。「もっともっと進化していく必要がある。今日できたからと言って、これからもできるとは限らないし、まだ全然手にしていない状態。春の残りも徹底的に基本をやっていきます」(中竹監督)…。まだまだいける、『個のExplosion』。そのカラを完全に破るまで、己との戦いは終わらない―
<未だプチ段階! 更なる個の強化を口にする中竹監督>
「セカンドゲームとしては、グッドゲーム。今日はスローガンに『個のExplosion』を掲げて、チームうんぬんではなく、個人が今までの殻を破って『Explosion』できるかを問うた試合だった。その点から言うと、プチエクスプロージョンできた人間が複数いてよかったと思うし、『Explosion』といえるものもいくつか見えた。ファーストゲームから今日を迎えるまでは、チーム練習をしなかったけれど、個が『Explosion』するために拘ってきたことが大分できていたので、そこは評価したい。これまでになかったくらい、相手の対策を何もせず(ビデオも見ず、相手の情報は一切なし…)、個に目を向けて準備してきたことをしっかりと出すことができた。これまでにないくらいのメンバーの入替をして、ライバルとの競い合い。ライバルがプチエクスプロージョンしたら、それに刺激を受けて、同じポジションの人間に連鎖が起きる。爆発の連鎖ができつつあると、すごく感じられた。今日はファーストゲームからの成長が見られたけど、目指すのは劇的な進化であって、まだまだこんなものでは足りない。もっともっと進化していく必要がある。今日はチームのことは一切頭に入れず、個人だけを見ていた。そこがしっかりできれば、みんなに沁み込んでいるワセダラグビーの掟だけで、トライが取れるし、ディフェンスも成り立つ。今日できたからと言って、これからもできるとは限らないし、まだ全然手にしていない状態なので、春の残りも徹底的に基本をやっていきます」
<手応え十分? 久々の2トライで存在感を見せ付けた主将・早田健二>
「スコア的に大勝できたことはよかったと思いますし、これは特に後半になるんですけど、いいテンポでアタックもディフェンスも前に出て、トライを取れたことは成果です。ただ、前半の最初のところは1人目のタックルも、ボールキャリアも、練習でやってきたことがうまくいっていなかったので、そこは前半からしっかりやっていけなければダメだなと。今日意識したことは、とにかくチームのことより、ひとりひとりがいかにやれるか。強いタックル、アタックができたことはよかったと思いますし、あとはこれを強い相手に対してできるか。ひとりひとりがその部分を意識してやっていければいいと思います。今日はゲームプランもなく、アップもそれぞれでやるという初めての試みで、試合前は不安もありました。1人で盛り上げて試合に臨むことは難しいと、改めて痛感しました。ただ、それを乗り越えていい試合ができたことはよかったと思いますし、これまでひとりではできなかった人間が、そのカベを越えられたことはすごく大きいと思います。シーズンに入る頃には、ひとりひとりが自分で盛り上がられるようになって、それがチーム全体に波及するようになれば、もっともっといいチームになっていけるはずです。これからも、まずはひとりひとり。個人がレベルアップしていって欲しいと思います。試合の内容に関しては、ターンオーバーからのトライが自分たちの形だと改めて感じました。やっぱりタックル。1人目、2人目が強く入る。練習ではタックルしかしていないなか、アタックを練習していない分、ターンオーバーからたくさん取れたのはよかったです。これからもその精度を上げて、FWフェーズ、BKはセットからの攻防をしっかり磨いていきます。自分たちがやってきたことを信じて、これからも個人のレベルを上げていけるように。今日はみんな楽しんでプレーしているところがありましたし、爆発の連鎖が起きつつあるのかなと思いました。大島や清登が爆発してくれてますし、大志、賢史がやってくれたらチームの底上げ、レベルアップに繫がる。誰が出ても遜色のないチームは強い。それでチームが究極的によくなればと思っています」
<見事な凱旋? 抜群の存在感で観客を沸かし続けたフッカー・瀧澤直>
「年末の筑波戦、東西対抗と合わせて、今日が3度目の凱旋になりましたけど、ちょっと走れてないですね…。これは僕個人のことで、みんなは走れているですけど。これを言うと中竹さんに怒られてしまうんですけど…、体を大きくしたのでちょっとキツイなと。あとは、スクラムがちょっと劣勢の場面があって、そこに大部分の力を注いだこと。特にマイボールのときには。そこに力を入れたことでフィットネスが奪われてしまいました。フッカーに慣れてないというか、そこはまだまだ課題です。スクラム全体に関しては、まぁよかったと思います。最初はどう見てもやられてましたけど、マイボールは全部安定して出しましたし、途中からはよかったのかなと。決して満足というわけではなく、反省も得られたいいスクラムでした。最初の数本は、相手が大きかったので、平一(伊藤平一郎の愛称です)も和田もちょっと飲まれてしまったのかなと。いつものことができなかったですから。その後はいつものことができるようになって、よくなったと思います。FW全体で言えば、近場のところは僕たちの課題ですし、今日はちょうど相手がそこにガンガンきてくれて、これはいい機会だと。ただ、受けているシーンが多々あったので、そこは反省です。要所ではターンオーバーしたり、球出しを遅らせたりできましたけど、受けないように。今日は点数をたくさん取れましたし、いい試合だったと思いますけど、点数が取れないとかではなく、やってきたことができない上での停滞があった。まだまだということです。個の爆発という意味では、外に行くべきところでも敢えてガンガン行ったり、みんな意図をしっかり理解してプレーできたと思います。建前上であったとはいえ、今日は名前を呼ばれたときにしろ、ボールを持ったときにしろ、何もかも僕のときには沸いてくださって嬉しかったです(笑)。ワセダは名古屋だけではなく、色々なところで試合をやりますし、絶対に損はさせませんので、また秋、冬には応援に来て頂けたらと思います」
<背水の陣! その巧さでゲームを支配したSO村田賢史>
「今日は『個のExplosion』を掲げていたので、個人的には行くところは行く、どんどん勝負してやろうと思ってました。けど、それが裏目に出てしまって、放るべきところで放れなかったのは反省です…。ただ、その自分で行く意識のおかげでトライに繋がった面もありましたし、ディフェンスもできたのでよかったと思います。チームとしては…、80点くらい。もうちょっとミスが連続したときの立て直し方を身につけたいと感じました。前半に関しては、やってきたことができず、ミスが多かったです。でも、そこは意識で変われるところだったので、みんなでしっかりと話をして、その後は修正できたと思います。これからは、もっと入りから意識してやれるように。今日は久々の赤黒の10番で、この試合に今シーズンの自分が懸かっていると思いました。反省はたくさんしたとしても、絶対に後悔だけはしないようにって。もっと自分らしさを出したかったですけど、楽しかったです。今は日々、山中を意識しまくっています(笑)。お互いにいいモチベーションでやっていければ、チームも強くなると思いますし、自分自分にならずに、競争がチームのレベルアップに繫がるようにやっていきます。自分が山中に勝つにはもうディフェンスしかないです。できないながらも、やっていくしかない。4年として、チームの一員として、すべてはディフェンスから。今年はこれまでの3年間を糧にして~とか言いたいんですけど、すべてを忘れて、練習から精一杯やっていきます」
<頼れる男! この日も常にFWの中心であり続けたフランカー中村拓樹>
「今日はひとりひとりの爆発がテーマだったので、まず自分のプレーに集中して試合に臨みました。前半は相手のプレッシャーも強くて、同じミスばかり。ノックオンだったり、キャリアのミス。そこがしっかりできないと、ビッグゲームではきついので、入りのところは課題です。後半はよかったと思いますけど、トライを取られたモールしかり…。近場での攻防は、いいところもありましたけど、全体的に差し込まれるところがあったので、まずピラー1、2がしっかりと立つこと。今は外に気が向きすぎているので。もう一度ショートサイドはやり直さないといけないです。このままではまずいと思います。途中から対応できたというよりは、相手が単発で分かりやすく来ていたからという感じです。チーム全体としては、いつもは見られなかった山中のものすごいタックルとか、目立った選手が何人もいて、スローガンどおりでよかったと思います。あとは前半からしっかりできるように。FWについては、前回も出た課題が今回も出たのはきつい。意識を変えていかないとダメです。今はずっとAチームで使ってもらっているので、これからもその期待にしっかりと応えていけるように、自分のプレーでチームを引っ張っていきます」
<愛すべき男!懇親会で監督賞をゲットし大喝采を浴びた伊藤平一郎>
「いきなりのAチームでのスタメンで、正直ビックリしました…。練習する時間も何もなかったので、とにかくミーティングで中竹さんに言われたように、ボールをもらいにいく自分の持ち味をどんどん出していこうと、それだけを考えてました。同志社はピラーに人が少なかったですし、よく狙っていけたと思います。初めての試合にとしては、よかったです。とにかくすごく緊張しましたし、最近寝つきが悪かったんですけど、これでゆっくり寝られます(笑)。周りはテレビで見ていた人たちばかりで、Aチームは別世界でした。スクラムに関しては、瀧澤さんに頼っていたところがあるので、そこは反省です。大学と高校では、組み方だったり意識だったり、色々な拘りがまったく違うと痛感しています。4年間常にレギュラー争いに絡んで、ずっと『荒ぶる』を歌い続けたいです」
※開催にご尽力くださいました名古屋稲門クラブの皆様、同志社大学校友会愛知支部の皆様、試合後には名古屋らしさ満載の盛大な懇親会まで開いてくださり、ありがとうございました。この場を借りて御礼申し上げます。