大男たちにしてみれば、今のワセダはお茶の子さいさい? 5月30日、すっかり初夏を思わせるお茶処・静岡にて春早明を開催。異国の地・ソウルで再起のへ一歩を踏み出し、ここからのブレイクを誓ったはずの男たちは、文字どおり紫紺の分厚いカベに跳ね返された。「もうFWで完敗です。スクラム、セットプレーはもちろん、近場を含め、すべてで受けてしまいました…」(ロック岩井哲史)。「ディフェンスの精度があれだけ悪いと、こういうゲームになってしまうなと…。FWだけの話ではなく、BKもまったくよくなかった。まずは1対1でしっかり勝つ。そこからだと思います」(宮澤正利)―。
この日はあの東海大戦が、思わずフラッシュバックしてしまうようなゲーム展開。まず先制点。お互いもみ合い、感触を確かめ合った後の11分。相手のセットアタックをしっかりと前で分断 → そこから一気の切り返しで、最後はフランカー土屋鷹一郎がその嗅覚を発揮しトライ。1本返された後の25分にも、ペナルティからの速攻でCTB坂井克行が豪快にディフェンスラインを切り裂き、どこかモヤモヤ感を残しながらも、まぁ悪くはない内容だった。
しかし、直後のキックオフでもたつき、32分グッドアタックからのスチール、さらに36分自陣ゴール前から⑪→⑩→⑥が立て続けに裏に抜け出した大大大チャンス、もう外のWTBに渡すだけの決定的場面でパスが乱れると、流れが一変。逆に前半終了間際、自陣ゴール前ラインアウトのミスを相手に拾われ逆転を許すと、重戦車にスイッチが入った。ゲームメークうんぬん、相手うんぬんの前に、精度の低さで自らの首を絞める。これが今のワセダの甘さか…。
相手のペースに合わせない。自分たちの形に引きずり込むことを確認して臨んだ後半も、「強かった。ワセダのやりたいラグビーをやられてしまった」(辻監督)と言ったように、ゲームは完全にメイジの前へ。ゴリゴリ、ガツガツ、ジワジワ、グリグリ。ワセダが開始早々陣取り合戦に後手を踏むと、およそ10分間じっくりと時間と体力を奪った挙句、重すぎるトライ。ここからはとことん後ろに下げられ続け、赤黒はその力を失った。懐に鋭くブッ刺さるタックルは皆無。拘りの1対1で完敗。「東海戦とまったく同じやられ方…大きな課題です。もっと前5人がしっかりしなくては」(岩井)。「まずはファーストタックル。しっかりと正面に入ること。もっと自分たちから仕掛けなくてはいけないです」(ゲームキャプテン・中村拓樹)。いくつかのトライを挙げ、最後の最後まで必死の追い上げを見せるも、この日の決定的な差は最後まで埋まらなかった。
これで春シーズン早くも2敗目。やるべきことは分かっていても、まだまだレベルに達していないということを嫌というほど突きつけられた。また新たなものも、この日は見えた。今は苦しく、辛くとも、目指している方向に間違いはなし。「ワセダのラグビー、辻さんの言うワセダのラグビーをもっともっと突き詰めて、体現することができれば、見ている方も、やっている方も楽しめるラグビーができると思います」(SO松井一樹)。『有田組』、このままでは終わらない―
<自分たちから!FWの更なる変化を訴えるゲームキャプテン・中村拓樹>
「完全に1対1のディフェンスのところで負けました…。FWとしては、セットプレー、特にキックオフ、イーブンボールで相手に負けてしまい、こんなことしていたら明治は乗ってしまうよなという感じです。セットして、しっかりとタックルに入れば大丈夫なんですけど、ひとりが受けると、すべてが後手後手になってしまう。まずはファーストタックル。しっかりと正面に入ることが大事になると思います。東海大戦とは…、またちょっと違うかなという印象です。今日は裏に出たときに簡単に繋ごうとして、一発で取ろうとしてミスをしてしまったという感じでした。いいアタックをしているのに、ミスで相手にボールを渡してしまっていたので。そこをきっちり仕留められるように精度を上げていければ、もっともっと楽な試合ができると思います。ブレイクダウンに関しては、タックラーがすべて後手後手で受けてしまっていたので…。ひとりめのタックラーがしっかりファイトすることを意識してきたにも関わらず受けた。まず1対1にしっかり入れるようになるところからです。これは僕の感覚で、ビデオを見なければ分からない面もありますけど、まだまだ反応は上げなくてはいけないですし、練習で走ってきた分を出せていないと思います。あれだけ走ってきたので、もっともっと試合で出せるはずです。特に前半などは、明治のペースでゆったりラグビーをしてしまっていたので。自分たちから仕掛けて走るラグビーをしなくてはいけないです。ここで2敗目を喫したことは申し訳ないと思っています。もう切り替えてやるしかないです。特にFWは前でしっかりと体を張ること、キックオフの精度を上げること、自分たちから走り勝つラグビーをすること。ゲインもたくさんできていますし、やってきたことに間違いはないので、どれだけ精度を上げられるかだと思います」
<差を痛感… 前5の奮起を誓うロック・岩井哲史>
「もうFWで完敗です。スクラム、セットプレーはもちろん、近場を含め、すべてで受けてしまいました。東海戦とまったく同じやられ方だったので…、大きな課題です。スクラムであれだけやられてしまうと、土屋のシンビン(後半8分)のようなことになってしまう。もっと前5人がしっかりしなくてはいけないと思いました。モールに関しては、明治がうまかったです。中盤から組んでくることは分かっていて策も考えていたんですけど、途中で対応されたところから受けてしまい、ただ闇雲に入るだけでズルズルといかれてしまいました。もっともっと練習して、モール、ショートサイドディフェンスを体で覚えるしかないです。あとは意識の問題。ゴール前ではしっかり集まって意思統一するだったり、今日はダラダラしていたので、そういうところも変えなくてはいけないと思いました。今日はあれだけゴリゴリこられて、動き出しがかなり遅くなった部分があったので、もっと自分たちから仕掛けて主導権を取らなくてはいけないです」
<まず1対1!ディフェンスの悪さを悔やむBKリーダー宮澤正利>
「ディフェンスの精度があれだけ悪いと、こういうゲームになってしまうなと…。FWだけの話ではなく、BKもまったくよくなかったです。まずは1対1でしっかり勝つ。そこからだと思います。アタックに関しても…、ミスが多いなと。振ればゲインできますし、トライも取れるので、精度をいかに上げるか、マイボールをいかにキープするかです。今日も精度が低かったので。スクラムにあれだけ拘られて、FWは相当きつかったと思います。体の小さい自分たちは、ずっとディフェンスをしていたら消耗してしまうので、どこでボールを取りにいくかが勝負です。次に向けては、その意思統一とゲームメーク、精度だと思います」
<ワセダらしさの追求!自身のゲームメークを反省するSO松井一樹>
「大きな相手に対して、終始ワセダのラグビーをさせてもらえなかったというのが率直な感想です。特に前半の後半、あそこでミスをして自分たちの形にもっていけなかったのが大きかったです。BKに関しては、もっとSOの自分が周りを引っ張っていかなくてはならないと強く感じています。ひとつひとつの精度はもちろん、ゲームメーク、味方が一番欲しい状況でボールを供給できるかどうか、そういったところをビデオを見て反省です。ディフェンスについては、大きな相手を一発で仕留めることができませんでした。僕たちの形、ワセダのラグビー、辻さんの言うワセダのラグビーをもっともっと突き詰めて、体現することができれば、見ている方も、やっている方も楽しめるラグビーができると思います。来週から吉井がU20から帰ってきて、山中もチームに合流して、争いがし烈になると思いますけど、秋も赤黒の10番を着られるように、自分自身としっかり向き合って練習していきます」