冬の到来を感じさせる11月3日正午、激戦の火ぶたは切って落とされた。もう一敗すれば関東大学対抗戦での優勝が絶望的となる早大が対峙するのは、現在全勝を守り続けている帝京大。夏の雪辱を果たすべく臨んだ一戦で、王者を相手に前半はリードを奪う。しかし、後半終盤になると早大にミスが相次ぎ、その隙を突いた帝京大についに逆転されてしまう。試合終了間際には試合を決定づけるトライを献上し、最後は27-37で惜敗。勝利まであと少しというところで、赤いカベが立ちはだかった。
前半は上々の立ち上がりを見せた。序盤からテンポの良い展開ラグビーで敵陣に攻め込むと、カギとなるスクラムでも互角に渡り合う。ペナルティを犯し再三チャンスを逃す場面も散見されたが、それでも敵陣でのプレータイムを確実に伸ばし、主導権は早大が掌握。14分、ラインアウトで相手に危険プレーが出ると、この日初めて赤黒に袖を通したSO間島陸(商3=東京・早大学院)がしっかりペナルティゴールを決め先制する。しかし、その後一瞬の隙を突いた帝京大に自陣ゴール前まで迫られ、早大はそこでペナルティを連発。相手がスクラムで勝負を仕掛けてくるのに対し、負けじと
粘りのディフェンスを見せるが、29分に相手ラインアウトから失点。それでも集中を切らさず攻め続けた早大は36分、ラインアウトにおけるサインプレーで相手の裏をついたフランカー金正奎(教3=大阪・常翔啓光学園)からボールを受け取ったNO・8佐藤穣司(スポ1=山梨・日川)が倒れ込みながらボールをインゴールにたたき込む。これで同点とすると、今度はその直後のBK展開からFB黒澤健(スポ4=東京・国学院久我山)がビッグゲインで相手ゴール前まで詰め寄り、そこへ走り込んだ金がゴール中央にトライ。スコアを17-10とし、移り変わる流れをものにして勢いに乗った早大がリードして前半を折り返した。
後半開始9分、相手ペナルティでゴールを狙って蹴ったボールがポールに跳ね返り、地上に落ちたところを金がトライにつなげるというファインプレーも飛び出し、早大のリードは14点に広がった。しかし20分、帝京大が外国人FWを投入すると、いきなりモールで押し込まれ失点。そこから流れががらっと変わる。30分には自らのペナルティで相手にゴールを決められ、点差は4点。じわじわと差を縮めてくる帝京大を前に、早大はキックオフの場面でミスをするなど精彩を欠くプレーが目立ち始めた。試合終了も近づいてきた34分、相手の洗練されたアタックにディフェンスラインの中央を突破され、ついに逆転を許す。さらに38分には安易なパスをカットされ、帝京大の勝利を大きく引き寄せるダメ押しトライ。そしてノーサイドを告げるホイッスルが鳴り響く。27-37で早大の敗北。勝てる試合だっただけに、終盤のミスが悔やまれる結果となった。
筑波大戦と同じ負け方だった。試合終盤で崩れ、結果を残せない。「勝ち切れなかったというところにいまのチームの弱さがある」(WTB中鶴隆彰、スポ4=福岡・西南学院)。王者へのリベンジこそならなかったが、夏の敗因の一つとなったブレイクダウンはしっかり修正するなど通用した部分もあり、暗い材料ばかりではない。この先はどれだけ勝ちにこだわれるかが重要となってくるだろう。対抗戦も残すところあと2試合。早慶戦、早明戦という大舞台がまだ控えている。気持ちを切り替え、一戦一戦あくまで勝ちにこだわり戦っていきたい。
(記事 冨丘太朗、写真 久保田啓介、浜雄介)
◆コメント
後藤禎和監督(平2社卒=東京・日比谷)
――きょうの試合を振り返って
きょうのゲームに関しては、セットプレーを安定させるのはもちろん、スクラムで相手チームにプレッシャーをかけるというところと、もう一つ大きなところではエリア戦術をしっかり取って優位に進める試合というのを考えていました。前半から後半の途中まではおおむねイメージ通りで、用意したプレーも有効に機能していたんですが、やはり先日の筑波大戦と同様、重要なところでのミス、今回で言えば大事なセットプレーとキックオフのところで2つミスが出てしまって。どうにも最後の10分、20分で。ここらへんはもう理屈じゃないと思うんですが。
プロップ上田竜太郎主将(スポ4=東福岡)
――きょうの試合を振り返って
帝京大戦に向けて準備してきたことはいくつか通用したんですけど、大事な場面でのミスが出てしまって、それが敗因だと思います。
――ミスを抑えられなかった要因は
練習不足です。
――後半で疲れなどはありましたか
やっている本人としては疲れもなく、80分間戦いました。
ロック近藤貴敬(社3=宮城・仙台育英)
――惜しくも敗戦しました。いまのお気持ちは
前半勝っていただけに、筑波大戦のときと一緒で後半の最後の方で点を取られてしまって、また同じ反省をしてしまったなという感じです。
――ブレイクダウンの出来はいかがでしたか
夏合宿に比べれば全然やり合えていたと思います。
――NO・8マルジーン・イラウア(帝京大)の投入で向こうに流れを取られた部分はあったのでしょうか
そうですね、やはりインパクトプレーヤーなので、強さにやられていた部分はあると思います。
――前半までの戦い方は
前半はいい感じで、みんなやってきたことができていたので戦えていたのですが、後半に関しては修正すべきことが多いです。
――FWで修正すべき点は何ですか
ペナルティの多さとか、ピラーサイドの寄りとか、色々ありますね。
――残り2試合はどう戦っていきますか
もう絶対に落とせない試合ですし、慶大、明大ということ特別な相手でもあるので、圧勝したいです。