早稲田スポーツ新体制特集
【第3回】金正奎副将
『頼れる副将、相棒と共にあり』
※この取材は2月22日に行ったものです。
2本柱で支え合う
――副将になられたいまのお気持ちを聞かせてください。
僕自身としてはいままでとあまり変わらないですけど、でも最終学年になったということで、やっぱりそういった自覚というか責任感とかが、3年の時もあったんですけど、より一層強くなりました。副将になったからというよりは、4年生になったから責任というのはすごく感じますね。
――主将候補の呼び声も高かったと思いますが。
僕はどっちでも良いかなと。主将もやってみたかったですけど、どちらでも上手くいくと思っていました。
――副将に選ばれたことはいつ知りましたか。
1月の3週目ぐらいですね。垣永(真之介、スポ3=東福岡)が主将で僕が副将でいくからと言われたので。
――後藤監督(禎和、平2社卒=東京・日比谷)から直接ですか。
そうです。
――それを聞いた時の心境は。
僕は本当にどちらでも良かったので、あ、副将なんだという感じですね。
――周りの反応はいかがでしたか。
周りもたぶん同じ気持ちだったので。(垣永と僕の)どっちかなんだろうな、みたいな感じだったと思うので。そういう意味では周りもあまり驚いてはいませんでした。
――副将に選ばれた理由をご自身では何だと思いますか。
たぶん1年から出ているというのもありますし、あとは僕も中学校、高校からキャプテンやらせてもらっていて、現にU―20代表でもキャプテンとかリーダーをさせてもらっていたので、リーダーシップをとることは僕としては自信を持っているので、そういう理由で選ばれたと思っています。
――昨季の副将である西橋勇人(スポ4=神奈川・桐蔭学園)選手からアドバイスはいただきましたか。
いや、特には。「自分らしくやった方がいいよ」と言われたので。
――理想の副将像はありますか。
そうですね。まだ理想がどんなものかまだよく分からないので何とも言えないんですけど、いいなと思うのはキャプテンが2人いるみたいな。キャプテンを支える副将じゃなくて、どちらも支え合っているリーダーみたいなのが僕としてはすごくいいなと思っているので。キャプテンに頼るだけがリーダーではないと思うし、どちらも頼ってどちらも良いところを出すというのが一番ですね。
――垣永主将はどのような人物でしょうか。
彼はすごく前向きで、試合中も見ていたら分かりますけど、一番辛い時も一番声を出しているというのも彼の一番の強みだと思っていますし、明るく本当にきついことから逃げないキャプテンだと思っています。そういう人ですね。
――垣永選手の存在は金選手にとってどんなものですか。
僕は本当に彼と仲が良いので。まあ高校時代からも本当に仲が良くて、よく冗談とかで相棒とか言うんですけど(笑)。相棒みたいなやつなので、やっぱりすごく一緒にいてやりやすいというのはあります。
――新体制になってチームの雰囲気は変わりましたか。
やっぱりみんな何をやらなければいけないというのが分かっている中で新チームがスタートして、みんなトレーニングを必死にやって、まずは体を大きくしようということで。いまはすごく良い雰囲気だと思います。
「優しすぎる集団」
――昨季はどのようなシーズンでしたか
4年生がすごく中心というか、個々ですごい人たちが多くて、その中で自分も出させてもらっていたので。僕は僕なりに、自分らしさを出しながら、リーダーシップも発揮しながら、自分は4年生のつもりでやっていたので、そういう意味では充実した1年だったと思います。でも負けて悔しいというのが正直な話です。
――数とスピードで勝つことの完成度はいかがでしたか。
結果的に近づいたとは思うんですけど、最終の帝京大戦でああいった試合展開というのはやっぱり…。練習中でもすごく良い雰囲気の中、ああいった試合内容だったので、そういった意味では地力の差をすごく感じましたし、完成にはまだ届いていないんだろうなというのはそこで感じました。
――個人的な課題というのは見つかりましたか。
やっぱりフィジカルというか体の強さの面でまだまだ全然勝ててないというのが一番ですし、一つ一つのスキルも全然レベルが高いというわけではないので、もっと一からやり直さなければいけないなというふうに感じます。
――個人的に得られた成果というものはありましたか。
去年はすごくトライさせてもらって、一昨年はサポートしてトライというのがすごく多かったんですけど、去年に限っては、サポートしてトライも何個かあったんですけど、自分で抜けてトライを取ることができました。一対一を抜く間合いもだんだん分かってきましたし、ブレイクダウンでボールを取ることもずっと得意としてきたことなので。一昨年に比べて、上達というか良くなってきていると思います。
――今年のチームの他には負けない点はありますか。
やっぱり団結力は負けないと思いますね。僕らの学年自体がすごく仲の良い学年なんですけど、(何か)やろうと言ったらすごくまとまってやれますし、団結はあるんですけど。逆に言ったら優しすぎる集団なので、そこは僕とかよく新4年に対して言うんですけど、優しすぎるというのが欠点でもあります。
――ご自身の強みはどこですか。
サポートプレイとブレイクダウンのスキルだったり、タックルは去年も課題だったのでそこはあまり得意とは言えないんですけど、タックルもわりとできるようにはなっていると思います。
――去年、理想のフランカー像を「何でもできるスーパーマンみたいな人」とおっしゃっていましたが、そこに近づいた実感はありますか。
まだ近づいていないとは思うんですけど、その理想を持っている限りはそこに近づきたいなと思っているので頑張っています。
――2年連続でFWリーダーを務められますが、どんなFWにしていきたいですか。
あまり去年とは変わらないんですけど、セットプレーを強くして、あとはどのチームよりも走るFWが理想だと思います。やはり真面目にプレーすることが一番だと思うので、相手チームより怠けたプレーをしてしまうと、付け込まれてしまうので。真面目にプレーします。
――スクラムに関してはどう思っていますか。
去年は上田(竜太郎、スポ4=東福岡)さんのケガとかで、最終的にあまり上手くいかなかったんですけど、それまではすごく調子も良くて上手くいっていて、その上田さんが今年は抜けるので、そこは新4年生の大瀧(祐司、スポ3=神奈川・横浜緑ヶ丘)とかがしっかり頑張って埋めることができたら去年以上のスクラムが組めるのではないかと思います。
――体を大きくするということに関しては。
もちろん大きくしなければいけないなと思いますけど、大きくするだけではなくてその中でも動ける体にしなければいけないので、アジリティコーチもいまはしっかり付いていますし、環境はすごく良いんじゃないかと思います。
――最高学年になりますが同期に対して求めることはありますか。
やっぱりさっきも言ったんですけど、時には厳しく、時には優しくという。僕は常に厳しくが良いと思うんですけど、最終学年で悔いを残したくないので、良い時は良いで悪い時は悪いでメリハリをつけないと絶対後悔するので。まとめていきたいと思います。
――FWの後輩に対して求めることはありますか。
やっぱりまだ体が小さいので、僕らの下の学年の子たちは。まずは体を大きくすることが大事だと思いますし、僕がそうだったんですけど、4年生に頼るのではなくて、自分が最高学年という気持ちでやることですね。グラウンドに立てば学年は関係ないので。自分が最高学年という気持ちでやって欲しいと思います。
――後輩で期待している選手はいますか。
佐藤穣司(スポ1=山梨・日川)とか池本(翔一、スポ1=愛知・千種)とかにはすごく期待していて、潜在能力がすごく高そうなので、頑張れば絶対に試合にも出れると思いますし、そいつらが頑張れば絶対チームも伸びると思っています。
――今年のBKはFWから見ていかかでしょうか。
ちょっと決定力に欠けるというのはあるんですけど、でもすごく良い素材もたくさんいるので、十分戦えると思いますし、きょねん何が駄目だったとか分かっている人が小倉(順平、スポ2=神奈川・桐蔭学園)だったり布巻(峻介、スポ2=東福岡)だったり藤近(紘二郎、政経3=神奈川・桐蔭学園)であったり、そういった人材がいるので絶対良いBKは作れるんじゃないかと思います。
――布巻選手がフランカーに転向するという話を聞いたんですけど、その話を聞いたときどう思いましたか。
一回あいつがフランカーしてそれがすごくはまっていて、僕は良いんじゃないかなと思うんですけど、一回やってみてチームが上手くいかないんだったらCTBに戻るんじゃないかなと思いますし。FWにいてくれたらいてくれたで、すごく心強いというのはありますね。
『覇権奪回』は譲れない
妥協のない人というか、やるって決めたら絶対やりますし、僕たちもそれが分かっているのでしっかり付いていけますし、言えることもしっかり言えるのですごく良い監督だなと思います。
――後藤監督がよく使う『自律』という言葉ですけど、ご自身ではどのように解釈していらっしゃいますか
自分自身に厳しくというか、人に言われてやるんじゃなくて、後藤さんはやらされるとかやらすというのがすごく嫌いな方なので、自分で考えてやることが『自律』だと僕は思っています。
――U―20の経験がありますが、ジュニア・ジャパンも含めて日本代表に対してはどう思っていますか。
U―20から代表には縁がないんですけど、頑張れば選ばれると思っていますし、選ばれて嫌だということは100%ないですし、選ばれたら選ばれたで光栄に思います。そこを目標とするというか、結果としてそこに入れれば良いと思います。
――春シーズンに向けて具体的にやっていきたいことはありますか。
まずは体を大きくすることが一番ですし、あとは走れる体作りと、ことしやるラグビーというのをまずしっかり理解して、そういったことの完成に向けてしっかりやっていきたいなと思います。
――今季の意気込みをお願いします。
最終学年として、まだ一度も優勝を経験させてもらえていなくて、やっぱり優勝したいですし、優勝したいというのは他のチームも思っていることですし、その中で並大抵の努力じゃいけないということは分かっているので、しっかりハードな練習をします。ただ練習するだけじゃなくてしっかり『自律』して、自分で何をしなければいけないのかしっかり考えながらやるのが一番上達する近道だと思っていますし、私生活もいますごく充実していてみんな規律も守ってやっているので、そこは負けずにやっていきたいです。
――ファンの方に向けて一言お願いします。
いつもたくさんのファンの方に早稲田大学ラグビー蹴球部を応援してもらってうれしいですし、ただ結果が残せていないことがすごく申し訳ないという気持ちでいっぱいなので、ことしはしっかり覇権奪回に向けて頑張っていきますので、ことし1年応援よろしくお願いします。
――ありがとうございました!!
(取材・編集 坂田謙一、加藤千暁)
◆金正奎(きん・しょうけい)
1991(平3)年10月3日生まれ。176センチ、92キロ。大阪・常翔啓光学園出身。教育学部社会学科3年。ポジションはフランカー。色紙には『自分らしく』という言葉が。副将になったからといって何かを変えるのではなく、自分らしくいることがチームのためになるという意味が込められているそうです!