東日本大震災から2年。震災直後から自衛隊による救助活動の拠点となり、長く利用できない状況が続いていた石巻フットボール場が、復旧工事を終え、6/2よりグラウンド施設として再開された。その復旧記念試合として行われたのが、多くの人々に愛されてきた早慶戦だ。被災地のラグビーファンで溢れ返った会場で、石巻の1日も早い復興を祈り、伝統の一戦が火ぶたを切った。地元出身の選手も出場し、なんとしても勝利で飾りたい早大であったが、終始相手にリードを奪われ、わずか1トライしか挙げられないままノーサイドを迎える。昨季は全勝を収めた慶大相手に5-43と屈辱的な点差で大敗を喫した。
慶大キックオフで始まった前半は、序盤から相手に主導権を握られ、立ち上がりに不安を見せる。8分に自陣ゴール前10mでのラインアウトから右に展開されると、ディフェンスで相手を止め切ることができず、そのまま先制点を奪われてしまう。その後も相手の強いディフェンスが早大のブレイクを許さず、ミスの連発にも足を引っ張られ、なかなか敵陣に攻め入ることができない展開が続く。31分には久々のAチーム復帰となるロック近藤貴敬(社4=宮城・仙台育英)を投入するも、流れを変えることはできず、前半だけで3トライを献上し、無得点のまま相手の17点リードで前半を折り返した。
嫌な流れを断ち切りたい早大は、HB団を総入れ替えして後半に臨むも、開始5分で相手に今試合2本目のモールトライを追加される。完封を許すわけにはいかない早大が意地を見せ、19分には慶大のペナルティからゴール前での攻防につなげることに成功し、プロップ光川広之(スポ3=神奈川・公文国際)がインゴール左に飛び込み、初トライを決める。このまま流れに乗りたい早大であったが、最後まで慶大の勢いに打ち勝つことができなかった。敵陣に入ってもすぐにターンオーバーされ、「自分たちのアタックが通じず、相手のブレインダウンでの強さを見せつけられました」(呉泰誠、スポ4=大阪朝鮮)との言葉のとおり、反撃のチャンスも生み出せないまま失トライを重ねる。結果的に計7トライを挙げた相手に対し、わずか1トライしか返せないまま、40点近く離され完敗した。
完全に力負けだった。「絶対値的にフィジカルの強さは慶大が上回っていたのと、テクニカル的には大きい相手に飛び込んでタックルにいくと外されてしまうのが目立った」と後藤禎和監督(平2社卒=東京・日比谷)が語るように、春から力を入れてきたはずのフィジカル面にまだまだ課題が残ることを思い知らされた。また立ち上がりの弱さも関東大学春季大会通して挙げられている反省点だ。これまで勝利を挙げつつも試合内容は良いとは言い切れなかった早大にとって、この敗北は必ずしも悪い経験ではない。敗戦により突き付けられた課題に改めて意識を向け直し、6月末に控える宿敵・帝京大との一戦に向けトレーニングに勤しむ。(早稲田スポーツ新聞会 大口穂菜美)
◆コメント
後藤禎和(平2社卒=東京・日比谷)
――試合を振り返って一言お願いします
現時点でのメンバーの実力っていうのがはっきり出たのかなと。慶大は素直に強くて良いチームでした。ただどうせ負けるならこれくらいたたきのめされた方が良かったのかなと。先週、先々週と最後にごまかして勝つような展開だったので、これで良かったのかなと思います。
――春取り組んできた練習の成果は出ましたか
全然ダメですね。フィジカルのところで完全に当たり負けてたので、秋に向けてもう一度意識付けしなければならないなと思いました。
――後半、HB団を変えたところにはどんな意図があったのですか
ハーフは元々、前半で交代するつもりだったのと、間島(陸、商4=東京・早大学院)に関しては前半の出来があまりにも悪かったので交代させました。
――モールでの失トライが多かったですが、FWに求めるものは何ですか
こだわりですかね。
――石巻での復記念旧試合ということで、選手たちに何を感じてほしいですか
現在の早大は精神的に弱い部分がありますので、多くの注目が集まる中で、そういった雰囲気を感じ取ってもらえればなという期待がありました。(多くの観客がスタジアムを埋め)そういった中でもっと良い試合をお見せしたかったのですが、情けないですね。
――ファーストタックルを外される展開が多かったですが、どう修正していきますか
絶対値的にフィジカルの強さは慶大が上回っていたのと、テクニカル的には大きい相手に飛び込んでタックルにいくと外されてしまうのが目立ったので、そういった技術の練習と、体を大きくすることを同時にやっていくつもりです。
プロップ垣永真之介主将(スポ4=東福岡)
――被災地でのゲームでしたが、どのような気持ちで臨みましたか
勇気を与えるとかそのようなおこがましいことは言えませんが、自分たちのプレーを見て何かを感じてくれたらと思って試合に臨みました。
――試合の方は、慶大にまさかの完敗でした
いい経験になったと思います。この経験を生かして、次に繋げていきたいです。
――ファーストタックルの甘さが目立ちましたね
それも全部自分たちにベクトルを向けて、トレーニングしていきたいと思います。
――この大敗はチームの雰囲気にも影響を与えるのではないのでしょうか
マイナスに考えても同じなので、練習では4年生がいい方向に持っていきます。。
――個人的には火曜日からサントリーへの武者修行が始まりますが、主な目的を教えてください
まずはどれほど通用するか、自分の力量を計りたいです。また、日本一になるべくしてなっているチームなので、強さの秘訣を学んできたいと思います。
――最後に次戦に向けてひと言お願いします
一歩ずつ確実に前進して、後退しないようにしていきます。
ロック近藤貴敬(社4=宮城・仙台育英)
――復旧記念試合でしたが、どのような気持ちで臨まれましたか
高校時代も結構よく使っていたグラウンドだったので、そのグラウンドが新しくなって初試合ということで、今まで以上に思い出深いというか、僕的には気持ちが入りました。仙台育英高の後輩も観にきていたので、下手なプレーはできないと思いましたが、情けない姿を見せてしまって恥ずかしいです。
――試合は痛い敗戦となりましたが、敗因は何だとお考えですか
慶大はタテにタテに強いプレーでくるってわかってたんですけど、そこで受けちゃって、そこからズルズル前に出られる感じになってしまったので、個々のディフェンスの点だったり、そういうところを修正していかないとなと感じました。
――久々のAチーム復帰でしたが、調子はいかがですか
体重を増やしたということもあるんですけど、ちょっと体が重たくて動けてないかなという気がしました。
――慶大のディフェンスが強く、なかなかブレイクできない展開でしたが、勢いづいた相手の勢いに打ち勝つための改善点は何ですか
やっぱりディフェンスのレベルアップを図っていかないといけないかなと感じました。
――今後こだわっていきたい点はどんなところですか
僕はアタックよりもディフェンスの方が得意だと自分で思っているので、チームに流れを持ってこれるようなタックルができるようなプレイヤーになりたいと思います。
――次節、日大戦に向けての課題と意気込みをお願いします
課題としてはやっぱりディフェンスの部分があげられると思うので、そこはしっかり修正して、今度こそしっかり勝ちに行きたいなと、勝ちにこだわった試合をしていきたいと思います。
フランカー呉泰誠(スポ4=大阪朝鮮)
――試合を振り返っていかがですか
点数通り、力の差を感じさせられました。現時点でやってきたことが、通用したところもあると思いますが、全体的に良くなかったと思います。相手の個人個人のアタックの強さを感じ、また自分たちの個人個人の弱さも感じました。今までタイトな試合だったのに、これだけ一方的にやられてしまって、良い経験になりました。
――ディフェンスの時間が長かったと思いますが、いかがですか
自分たちのアタックが通じず、相手のブレインダウンでの強さを見せつけられました。ここだという場面でミスして相手ボールになることも多かったです。相手は確実なアタックをしてくるので、自分たちはじわじわと下がっていくようなディフェンスをしてしまっていました。また、ボールを出すのをもっと早くしなければなりませんし、良いディフェンスについて考えなければいけないと思います。
――スクラムについてはいかがですか
これから先、優勝を目指してやっていくためには、ラインアウトも含めセットプレーで安定したプレーをしていかなければいけないのに、ペナルティを多く出してしまいました。スクラムで優位に立たなければいけないと思うので、そのためにも自分たちバックローもしっかりスクラムに参加しなければいけないと思います。スクラムについてはまだまだ甘いと思いますね。
――その他反省点はありますか
最近の試合はどれもそうなんですけど、先制点を取られてしまい、入りが甘くなってしまっているので、良い準備をして、序盤から自分たちのプレーができるようにしたいです。自分たちの流れが作れず、探り探りのラグビーになってしまっているので、もっと自信をもってプレーできるようにしたいです。その自信をもつためには、練習をするしかないので、しっかりと個人個人の課題を克服しながら、やっていきたいと思います。
――最後に今後の意気込みをお願いします
4年になって初めて赤黒を着て、今4戦出してもらっているのですが、まだ誰もが納得するような存在ではないということは分かっているので、ライバルの多いポジションで、自分にはきらりと光るプレーもないですが、泥臭く、自分らしいプレーで赤黒を着続けるために頑張りたいと思います。
WTB中島翼(スポ1=千葉・流通経大柏)
――試合を振り返っていかがでしたか
前半波に乗られてしまったところが結構あって、タックルも自分はあまり行けなくて、1対1のタックルで逃げてしまったので、今後修正していくなかでそこをもっと考えてやれればよかったな、と思います。
――攻められる展開が多かったですね
1対1のタックルが甘くなり、裏に出られてしまって、アタックができずにディフェンスしかできなかったので、そこをしっかり頑張りたかったです。
――赤黒では初めてのスタメン出場でした
いつも通りやろうと決めていたので、思いっきり1年生らしく、1年生だからこそできることがある、と思い精一杯やりました。
――Aチームに定着するための課題は何だと思いますか
初めての早慶戦ということで、緊張はなかったですが、タックルの部分と1対1での勝負ですね。
――今後の意気込みをお願いします
Aチーム定着ということもそうですが、もっともっと上を目指して頑張りたいです。