春季大会もついに最終戦を迎え、早大は今大会最大の難敵である帝京大と相対する。昨シーズンは3度の対戦でいずれも敗戦を喫している宿命の相手である。開幕から4連勝で現在単独1位に座る早大と、その背中を3勝1分で追う帝京大。次節は優勝をかけた直接対決となった。チーム佐藤の春シーズンを締めくくる戦い、赤黒の戦士たちは集大成をぶつけるにふさわしい強敵との大一番に挑む。
昨年度の全国大学選手権を制し、3連覇を果たした帝京大。今年のチームを率いる4年生は、大学入学から日本一だけを経験してきた常勝世代だ。1年時からグラウンドに立ち、勝ち続けるチームを知り尽くすFL青木恵斗主将やLO本橋拓馬は、今年の日本代表候補にも選出されている。今季も強力なフォワードを中心とした破壊力抜群の攻撃は健在だ。
優勝をかけた春季大会最終節、早大の勝利に不可欠なのはセットプレーの安定と得点力の向上である。今大会はチームの始動から強化を図ってきたスクラムの調子が良く、セットプレーでのアドバンテージが勝利に大きく貢献している。明大戦では『重戦車』のスクラムを見事に押さえ込む圧倒的なパフォーマンスを見せた。一方で帝京大のフォワード陣はさらに強力。スクラムのパワーは大学ラグビー界トップクラスの圧力を誇る。体格で勝る相手に対して、起点を作らせない安定したセットプレーの鍵はHO清水健伸（スポ2=東京・國學院久我山）が握っているだろう。日本代表への招集により佐藤健次主将（スポ4=神奈川・桐蔭学園）が不在の中、前節では途中出場ながらインパクトを残す活躍を見せ、ビッグゲームでHOのスターティングメンバーを勝ち取った清水。セットプレーの要となるポジションとして、大きな役割を担うことになるのは間違いない。
帝京大戦ではタイトな戦いが予想される中、好調なディフェンスから一つのチャンスを得点につなげることができる決定力の高さも重要なポイントになる。すでに大きな得点源になっているラインアウトからのモールに加え、バックスによる展開からの得点が大きな鍵になるだろう。アタックのキーマンはやはりSO野中健吾（スポ3＝東海大大阪仰星）。春季大会第2節の東海大戦から満を持して赤黒の10番に返り咲くと、早大の司令塔としてチームの攻撃を牽引してきた。野中のパフォーマンスを支えているのは確かなスキルの高さだ。パス、キック、ラン、どれをとっても世代を代表する高水準の技術を安定して出し続けることができる。CTBやWTBのメンバーが定まらない中、早大伝統の展開ラグビーを体現すべくチームのアタックをつなぐことができるか、その手腕に注目が集まる。
『Beat Up』のスローガンとともに『全勝』の目標を掲げ走り出したチーム佐藤。その宣言通りジュニア以下のチームも含めた全試合で勝利を挙げる快進撃を見せている。現在Aグループにおいて勝ち点差2点で単独一位につけている早大。次節で引き分け以上の結果となれば春季大会初制覇が決まる。帝京大との優勝決定戦。絶対王者から春の王座を奪うことはできるのか、『荒ぶる』へ向けて突き進む早大は大きなターニングポイントを迎える。
記事：西川龍佑 写真：西川龍佑、清水浬央（早稲田スポーツ新聞会）
