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2024
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大学選手権/帝京大学戦展望記

頂上まであとひとつ。最後に待ち構えるのは、最大の難敵・帝京大だ。今季の対戦成績は3戦3敗と白星を挙げることができていない。また秋シーズン開幕以降、一度も敗戦しておらず、準決勝でも71-5と大差をつけて勝利するなど圧倒的な強さを誇っている。厳しい試合になることが予想されるが、打ち破った先にはこの上ない喜びと感動が待っているはずだ。これまでのリベンジを、そして『大学日本一』奪還を懸けて、いざ最終決戦へ。

ダブルタックルで相手を阻むSO伊藤とCTB吉村

全国大学選手権(大学選手権)準決勝・京産大戦では、抜きつ抜かれつの息をもつかせぬ展開をわずか「1点」差で制し、早大は勝負をものにした。ここまでの大学選手権を振り返ってみればいずれも「勝負強さ」が際立っている。

初戦の東洋大戦では、勢いのある相手に押され、まさかのビハインドで折り返したが、徐々に早大らしさを取り戻し勝利した。続く準々決勝の明大戦では、1トライ1ゴールで逆転負けの危機に迫られていた中、ラストワンプレーで明大に自陣深くへと猛攻され、我慢の時間が続く。だがこれを耐えしのぎ、最後はフランカー相良昌彦主将(社4=東京・早実)がジャッカルを決め、手に汗握る勝負に決着を付けた。

その勝負強さの根源は「チーム力」にあるといえるだろう。関東大学対抗戦ではなかなかチームがまとまることがなかった。だが、関東大学対抗戦の明大戦で敗戦したことで、チーム全員が自分たちのやるべきことに向き合った。

さらに相良主将が一時離脱したことも重なり、「4年生がまとまって、いつもはリーダーシップを発揮しない選手も声を出してくれた」(相良主将)。さらに明大戦の前哨戦として行われた4年生の早明戦は、チームを変えるきっかけとなった。

「最後まで、口だけじゃなくてあがいて何かを残そうとしていて、その姿にみんな感化された」(鏡鈴之介副将、法4=東京・早大学院)。

ジュニアの4年生が見せた底力、敗戦から得た危機感、そして4年生のまとまり。それがチームをひとつにし、「本当の意味でチームになれた」(相良主将)。

カギとなるセットプレー

チーム力を新たな武器とした早大が、挑む決勝戦。今対戦でもセットプレーは勝敗を分けるカギとなるに違いない。帝京大の強力なFW陣に対し、秋は押し込まれ劣勢に立たされてしまった。

両プロップの井元正大(文4=東京・早実)亀山昇太郎(スポ2=茨城・茗溪学園)を中心にスクラムでいかに対抗し、フッカー佐藤健次(スポ2=神奈川・桐蔭学園)のスローイングでの安定性がポイントとなるだろう。

またフィジカルが強い相手FWを、いかに粘り強いディフェンスで抑えられるかが重要になってくる。守備を固め、守りからBK陣と連携した素早い攻撃へ転じることで、得点への好機は見えてくるはずだ。

ロック前田知暉(社4=東海大大阪仰星)、相良主将の4年生を中心に、「なんとしてでも止める」と気持ちのこもったタックルで相手の攻撃を封じ、アタックでも激しいラインブレイクを見せたい。

SH宮尾のゲーム展開にも注目したい

一方のBK陣は大学選手権開幕以降、左右を幅広く使った展開や相手の隙を突いたアタックから得点へと結び付けられている。特に、目覚ましい活躍を見せるSH宮尾昌典(スポ2=京都成章)の速いパスさばきやチャンスへの嗅覚は必見だ。

また、ここまでの試合でキック成功率が勝敗を左右してきた中、今試合でもCTB吉村紘副将(スポ4=東福岡)の正確無比なキックが必要不可欠だといえるだろう。

また展開からの仕留めを担う両WTBにも注目だ。WTB松下怜央(スポ4=神奈川・関東学院六浦)の力強いゲイン、WTB槇瑛人(スポ4=東京・国学院久我山)の加速力で確実にチャンスをものにしたいところ。

さらに帝京大のキックの精度と多彩さには警戒が必要だ。規律を守ることはもちろんのこと、FB小泉怜史(文構4=東京・早実)の効果的なキックで、確実に陣地を獲得したい。また途中出場が予想されるSO野中健吾(スポ1=東海大大阪仰星)と、その際にポジションをFBへと移すであろう伊藤大祐(スポ3=神奈川・桐蔭学園)。このふたりがいかにチームへ流れを呼び込めるかにも注目だ。

紆余曲折を経て、チーム相良もようやくここまでたどり着いた。最後に立ちはだかる高く厚い壁。部員の思いを背負って、最後の舞台に立つ23人の赤黒戦士たちは、これまでのすべてをぶつけ、その壁を打破するべく躍動する。成し遂げた先に待つ最高のクライマックス、そして国立で響き渡る『荒ぶる』へ。見据える先は「日本一」ただひとつだ。全員の心をひとつに、大きな闘志を燃やす。

「荒ぶる」まで、あと一つ。

文=山田彩愛 写真=谷口花(早稲田スポーツ新聞会)