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2024
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トヨタ自動車戦観戦記をup

対トヨタ自動車戦・観戦記

 試合終了後、すべての戦いを終えたワセダフィフティ―ンに大きな拍手が送られた。学生らしいひたむきさ、胸のすくようなアタック。魅力溢れるラグビーはファンの心をがっちりと掴んでいた。ワセダはどこよりも愛されたチームだった。
  この日の対戦相手トヨタ自動車は社会人ナンバーワンと言われるFWを擁する完全に格上のチーム。近年の社会人と学生の力の差を考えれば、勝つ可能性は限りなくゼロに近かった。しかし…。
 「まだこのメンバーでラグビーがしたい」(中村)。「ただの大学2位のチームで終わりたくない。何かを残す」(田原)。ワセダは本気で勝利を狙いにいった。「力の劣るものがいかにして戦うか」。これこそが早大ラグビー部永遠のテーマ。創部以来、東伏見に脈々と流れてきたDNAが選手たちをその気にさせた。
 相手を目一杯振り回すべくFBに後藤翔太(1年)を起用。ワセダの歴史が築き上げてきた『才』が存分に散りばめられた、ダブルSHという『秘策』で勝負を懸けた。
 素早い展開で相手を振り回すことはできた。デイフェンスの裏に抜け出すこともしばしばあった。しかし、接点での力の差は如何ともし難く得点差はみるみる拡大。思い描いていた試合展開に持ちこむことはできなかった。
 それでもトライシーンでは観客を大いに沸かせた。後半30分にはフランカー上村康太(3年)の強烈なタックルからのカウンターでWTB仲山聡(3年)がライン際を50m独走。35分には途中出場のCTB川崎亨(4年)からのパスを受け、同じく途中出場のプロップ大江菊臣(3年)が40mを見事に走り切った。「あれくらい走れて当たり前」(大江)。さらりと言ってのけるその姿が今シーズンのワセダの強さを表わしていた。
 12-77。点差こそ離れてしまったが、3年生以下には何かを残すことができたはず。この1年で失われかけていた『輝き』を取り戻した左京組。その軌跡はワセダラガー、そしてファンの記憶にしっかりと刻まれたに違いない。

<清宮監督試合後のコメント>
「残念な結果になってしまったけれど、来年、再来年こういうチャンスがあったらやってみたい。(SHを2人にしたことについて)ちょっと無理があったかな。付け焼刃ではうまくいかないなと。可能性にかけてみたけれど成功には至らなかった。今週はいいモチベーションで練習できた。タックルにもいっていたし、トライも取れた。(社会人と学生が対戦することについて)社会人としてはやりにくいゲーム。勝って当然だし、遠慮するところもあるだろうし。なかなか難しいとは思うけれどいつかはこのレベルで勝負できるようにしたい。(来シーズンに向けて)来年度は今年手をつけられなかった部分に手を加えていきたい。移転もあって新時代の幕開けと考えている。左京のチームの残してくれたものをスタートラインとしてステップアップしたい。今年出来なかった、足りなかったところをもっと明確にできるというところが”進歩”だと思う。(引退する)4年生に俺から言葉をかけてあげる必要もない。みんな言わなくても分かっていると思う」

<左京主将試合後のコメント>
「今日は思っていたとおりで相手の接点のところが強くて球をうまくだせなかった。この試合に対してみんなすごく高いモチベーションで臨んでくれた。大学選手権が終わった後、委員を集めた時、『今までどおりしっかりやろう』と言おうと思っていたら、大悟(山下、3年)が『しっかりやらなければ意味がない』と言ってくれて、他のみんなも同じ考えで即決した。委員以外の人もそうしてくれた。これを見てすごいと思った。いいチームでやれたと思った。 ファンの方の声援の多さは1年間最初からずっと感じていた。応援してくださる方の数はハンパじゃなかった。うれしいことだし、ものすごく感謝している。『結果』という点以外では伏見で過ごした4年間は素晴らしいものだった。(次の代に残せたものは?)今年は特に1年間通して勝つということを、結果を出さなきゃいけないということを練習中も、もちろん試合やグラウンド上でも言いつづけてきたので後輩にはそこを受け継いで欲しい」

 <副将・安藤敬介>
「これで終わってしまうのは寂しい。左京に任せ切りになってしまって迷惑をかけたなと。結果が出なかったのは残念だけど、チームが進化していくのが見えたし、他の4年も協力的でうれしかった。今まで生きてきたなかで、そしてこれからの人生のなかでこれほど濃い4年間はもうないと思う。これ以上の居場所はない。今年勝てなかったのはボールリテンションの部分。ゼロからのスタートではなく、土台があるので突き詰めてやれば結果は出ると思う。後輩には関東学院に勝って欲しい」

<CTB山下大悟>
「(社会人相手にどこまでやれるか注目されていたけど?)難波さん(トヨタCTB)の方が全然上なんで意識はしなかった。今日は勉強になった。シンプルなことが激しくて強い。そこがワセダに足りないところ。目標を高く持って、うまさ、強さを肌で知ることで強くなれる。これはサントリーとやってきていつも感じること。今年1年はCTBで楽しかった。いい勉強になった。あまりメソメソしないで前向きに来年を考えていきたい。大学日本一にはなれなかったけど、たくさんのファンの方が来てくれて愛されるワセダになったと思う。来年はよりよいものも目指し、大学日本一になります。手応えはある」

 <FBで初スタメンの後藤翔太>
「練習の時に仲山さんが授業でいなくて、自分がたまたま11番に入ったら、『いけるじゃん』ってことになってFBに入った。本当に偶然です。自分は違和感なくできたけど、耕太郎(田原、4年)さんは少し違和感あったと思う。初スタメンが15番なんて僕らしくていいかなと。今年は最高の1年だった。生意気な僕に対して先輩たちは本当にやさしくしてくれた。それがすごくうれしかった。こういう環境にいられたことがすごく幸せだった。4年生がいなくなるのは寂しいけれど、来年はやりますよ。こんなにいい環境でやらなきゃバカ。次は9番で出る。耕太郎さんがいなくなるからとかではなくて、認められて試合に出たい」

<ちょっぴり複雑?昨年度副将・トヨタ自動車山崎弘樹>
試合にこそ出場しなかったが、現在トヨタ自動車でプレイする昨年度の副将・山筏弘樹の姿が見られた。試合後にはグラウンドに下りて、真っ先に早稲田の選手一人一人と握手するなど、やはり後輩たちのことが気に懸かる様子だった。対戦相手とはいえ、OBとして早稲田の健闘を「誇りに思う」とも。以下、後輩たちへエールを寄せてくれた。
「(今日の結果は)複雑な気分だね。両方応援してたから。点差はしょうがない。学生の上手い選手が社会人に来て、ピラミッド形式になっているからこういう点差は当たり前。でも早稲田以外だったらもっと点差が開いていたと思うし、点差ほど(内容は)変な試合ではなかった。緊張感もあったし。早稲田は良いラグビーをしてるなと。卒業してから早稲田の良さが分かった。(具体的には?)環境が良すぎる。本当に恵まれていると思う。でもこれは早稲田だからできること。(早稲田ファンにメッセージを)今年は1試合も出れなかったので来年はトヨタの弘樹になれるように頑張りたいです」