2002/6/29
関東学院大戦・観戦記
ノーサイドの瞬間、笑顔を見せるものは誰一人いなかった。35-34。王者・関東学院からの勝利の味は、本来ならば、格別に違いなかった…。しかし、トライ数は5本対6本。負けに等しい内容にワセダフィフティーンの頭から「勝利」の文字は消えていた。 この日のワセダは、過去5戦とはまるで別人かのような戦い振り。ここまで相手を蹴散らしてきた自慢のアタックは鳴りを潜め、多くの時間をディフェンスに強いられた。その最大の要因は、関東学院の密集戦での強さとうまさ。素早い球出しは阻害され、ターンオーバーすることもほとんど許されなかった。そして追い討ちをかけたのが、開始前から降り出していた激しい雨。スリッピーなボールとグラウンドに、ワセダは持ち味を奪われた。 序盤こそ先行したが、前半34分に初めてのリードを許してしまうと、そこからは完全に失速。後半20分までの間に、3つのトライを献上し、その差を20点にまで広げられてしまった。「やっぱり関東は強い…」。そんな空気がピッチを覆うが、ワセダはここから意地を見せた。 26分、相手ゴール前でフランカー羽生憲久(4年)が魂のチャージを見せると、30分にはフランカー上村康太(4年)がインゴールへ決死のダイブ。瞬く間に相手を射程圏に捕らえると、32分に「奇跡を呼ぶ男」WTB山岡正典(3年)が中央に回りこみ、ついには逆転。まさしく絵に描いたような展開で、相手を一気に抜き去った。 高速アタック、ゴール前でのディフェンス、土壇場での集中力。窮地に立たされてからの最後の20分で「らしさ」は見せた。最終的には得点でも上回った。しかし、関東学院が誇る自慢の第一列が後半途中で退いた点、トライ数5対6という結果を考慮に入れると、チャレンジャー・ワセダは負けたも同然。この日も悲願の王者超えを果たすことはできなかった。 しかし、あくまでもオープン戦。昨年より始まった「早稲田・関東、新ライバル伝説」。本当の勝負はまだ、ずっと先にある。<HP委員 疋田拡>
<浮かない表情の清宮監督> 「今日は内容的には負け。完全に関東ペースだった。そうなってしまったのはミスが多く、マイボールを継続できなかったから。雨の影響もあったと思う。(関東と組むまで分からないと言っていた)スクラムはまだまだだね。上には上がいることが分かった。春の段階としてのチームの仕上がりはまずまず。やることはまだいっぱいある。ここでは言えないけど。やっぱり関東とやるのはいい。自分たちの駄目なところが分かって、一番いい練習になる。次に関東とやるのは8月25日。その時はスカッと勝ちたいね」
<「ワセダの魂はどこへ行ったんだ!」ハーフタイムで激しい激を飛ばしたヘンリー> 「今日はとてもenjoyableなゲームだった。20点差から逆転したことはすごいことだと思う。勝ってから得るものも大きいと思うけど、ちょっとネガティブになりすぎ。関東学院はキックをうまく使ってトライをとっていて、強いチームだと感じた。ワセダはこの試合で優劣をジャッジするのではなくて、この試合から課題を見つけて、チャンピオンシップをとるために何をすべきかを考えるべき。そのうちのひとつはメンタル。この3週間、すべての選手にimpressされた。今日は少しがっかりしたところもあったけど、それは雨が降っていたからということもある。もし、晴れていたら違ったストーリーになっていたと思うよ」
<主将・山下大悟> 「スクラム、ラインアウトはかなりよくなってきたけど、もう少し安定させられると思う。今日は雨ということもあって、全然ボールが回ってこなかったけど、後半は2ゾーンを突破できていたので、そこの部分はよかったと思う。チームの完成度はまだまだ。すべてにおいてまだダメ。春は全勝だったけど、勝ち負けは関係ない。今日もトライで見たら1本負けている。勝ち負けは相手があってのことだから。ただ、相手が関東だからといって、雰囲気に飲まれなくなってきたことはよくなったところだと思う。これから取り組むべきは個々のレベルアップ。ひとりひとりの瞬発力とかコンタクトの強さだとか、もっともっと上げられる」
<日本代表山村と互角以上に渡り合ったプロップ大江菊臣> 「関東のスクラムは今までやったところと全然違う。めちゃくちゃ強かった。今日は相手ボールは押せて、マイボールだと押されてしまったりと安定しなかった。全員でまとまって押すという意識がもっと必要。マイボールも含めて全部押すのが理想。ヤングに教わったのは8人で押すということと、ゴール前など窮地での気持ちの持っていき方。今日も最後にゴール前での相手ボールをゲットしたし、確実にスクラムは強くなったと思う。自信もついた。あとはマイボールを100%出さないと。春を振り返ると、英国遠征から帰国してから休まずすぐに練習始めて自分なりによくがんばったと思う。帰ってすぐというのがポイントです(笑)。夏を越せばスクラムで勝てるようになっているでしょう。今年は独走トライとかはなしで(笑)。スクラムをがんばります」
<開始早々、相手に殴られ前歯を折りながらプレーを続けた上村> 「前歯は殴られて折れた。集中していたし痛くはなかった。今日はディフェンスの時間が多かったけど、耐えるべきところで耐えられた。ただ、アタックはもう少し取るべきところで取らなければダメだった。後半の最後のほうは集中してアタックもディフェンスもできてよかった。あの形が前半の最初からできるようにしていきたい。ひとまず全勝という春の目標は達成できた。関東とはほとんど力は変わらないと思う。夏でどれだけ伸びるかが勝負。手応えはある」 |
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