「今日は本当に苦しかったけど、メイジとやる以上絶対に負けられなかった」(SH三井大祐)。『ワセダのプライド』…。85年を超える栄光の歴史の中で培われてきた「強靭な精神力」がベイビーワセダを突き動かした。
「これぞ早明戦…」。49-44と5点リードで迎えた後半ロスタイム。ワセダゴール前で壮絶な光景が繰り広げられた。鬼の形相で一直線に突き進む『重戦車』、ゴールラインを背に命懸けで耐える『軽量FW』。アマチュアリズムの最高峰・『早明戦』で幾度となくファンを魅了してきた光景が、ワセダの新聖地・上井草で甦った。
執拗なまでに形成されるメイジのお家芸・ドライビングモール(メイジの8トライ中5つがゴール前でのドライビングモール)、トライを目論む威圧感十分のスクラム。そのパワーにことごとく跳ね飛ばされ、ワセダはズルズルと後退。ゴールラインに足が掛かる絶体絶命の状態が続いた。残り数センチ…。
しかし、こんな状況こそワセダラグビー最高の見せ場。入部から僅か2ヶ月のベイビーワセダが、この土壇場で驚異的な粘りを見せた。「メイジのモールは本当に強かったけど、最後は何とか守り切れた」(NO8・近藤嵩)。「ワセダのフロントとして、スクラムトライだけはプライドが許さなかった」(プロップ・宮崎潤野)。倒れても、押し込まれても、チーム一丸、次々と相手に襲い掛かり、最後の一線だけは阻止。小さな体を張り続け、インゴールだけは明け渡さなかった。
これぞワセダとメイジにしか成し得ない特別な戦い。すべてを出し尽くし、死ぬ気で掴み取った価値ある勝利に、ノーサイドの瞬間、ワセダフィフティーンの目からは涙がこぼれ落ちた。まざまざと見せ付けた『ワセダのプライド』。「みんなまだまだだけど、この2試合見ていておもしろかったよ」(清宮監督)。果てなく広がる明るい未来。ワセダの時代はこれからも続く…<HP委員 疋田拡>
<『清宮マジック』炸裂!>
抜群のリーダーシップでチームを牽引、ゴールキックすべてを沈めたSH三井大祐。変幻自在のスーパープレーを連発し、王様ぶりを如何なく発揮したSO曽我部佳憲。常勝・啓光学園HB団の勝負強さはもちろん、この日勝利を手繰り寄せたのは、土壇場で炸裂した『清宮マジック』。
3連続トライで逆転を許した(42-44)後半35分すぎ。相手のキックに備え、それまでCTBだった今村雄太をFBに配置転換。メイジの勢いを跳ね返すべく、弾丸男・今村のカウンターアタックにすべてを賭けた。
この配置転換がズバリと的中。キックからのカウンターという、思い描いた形とはならなかったものの、大外でこぼれ球を拾った今村が、持ち前の力強い走りで相手ディフェンス3人を巻き込みダウンボール。そこから曽我部(相手のギャップを突き、ゲインラインを突破)―田中勝悟―細川明彦とつなぎ、最後は再びボールを受けたSO曽我部がインゴールへ飛び込んだ。この美しすぎる、起死回生の逆転トライに「ドンピシャだったな」と勝負師・清宮監督も会心の表情。ワセダの至宝・『清宮マジック』がベイビーワセダに劇的な勝利をもたらした。
<7本のコンバージョンすべてを成功させたSH三井大祐>
「今日は本当に苦しかった。試合前から負けられないと思っていたし、清宮さんや古庄さんからも、1年生同士とかは関係ない。ワセダの誇りを持て。ワセダとして試合をする以上、メイジには絶対に負けるなと言われていた。メイジのFWは強かったです。早い時間に相手より上回っているところを見つけて、そこで勝負しようと思っていた。やっぱり、FWは強かったけれど、BKではうちが上回っていたので、そこで勝負だと思った。曽我部とはずっと組んできて、動きも分かるからやりやすかった。BKではやれたけど、モールしかないと分かっていたのに、そこでやられたのは反省点。慶大の時にできなかったタックルをみんなでしようと言っていたのに、あまりできずに取られてしまった。最後はここで取られたら負けだと思って、必死にやった。ノーサイドの笛がなった時はうれしかったし、力が抜けました。自分には足りないところがたくさんあるけれど、課題をひとつずつクリアして上のチームでやりたいです」