すべてはあの日から始まった。2001年6月30日、夜の三ツ沢。5-57。トライ数1本対9本。惨敗。生まれ変わることを誓い、かすかな自信を胸に秘めた清宮ワセダは、当時無敵を誇った関東学院大に完膚なきまでに叩きのめされた。まるで大人と子供の試合。相手の強さが嫌と言うほど体に残り、選手たちは打ちひしがれた。そんな屈辱の夜、清宮監督は選手たちを前に言い放った。「これがスタートラインだ。絶対に関東学院を倒すぞ」。
あれから2年。破竹の勢いで連戦連勝。大学王座を奪回し、消し去ったはずのあの忌まわしい記憶が、三ツ沢で再び甦った。タックルしてもスイープしても倒れない体の強さ。トップスピードで飛び込んでくる相手に制圧されたブレイクダウン。一瞬で振り切られる圧倒的な走力差。続出するノックオン。まさに成す術なし。その戦いぶりに『王者の面影』は微塵も感じられなかった。14-75。いいようにもて遊ばれるあの時以上の屈辱。ワセダ史上、学生相手最多失点で完膚なきまでに叩きのめされた。
これまで勝つことによって自らを肯定してきた選手たちは、この惨敗劇に唖然とした表情。試合後、しばらくはかつてないほどの重苦しい空気がチームを包み込んだ。しかし、勝ち続けることで隠れていた歪み、自らの甘さを改めて自覚。あの時の『出発の地』・三ツ沢から始まる新たな一歩。「夏は気合を入れ直して、死ぬ気で勝ちに行く」(大田尾主将)。再戦の場は8月24日(日)、菅平。乾坤一擲、『赤黒のプライド』を賭けたリベンジへ。ワセダは試練の夏を迎える。<HP委員 疋田拡>
<リベンジを誓う大田尾主将>
「今はこんなにも力の差があるのかという感じです。関東はものすごく集中力があったし、ラックのところがうまかった。そこにすべてを懸けているように感じた。今日はワセダが受けてしまった。そんなにあぐらをかいていて、勝てるわけがない。とにかくミスが多く、自滅。ノックオンが多すぎて思っていたようなアタックが全然できなかった。とにかく受けてしまったのだと思う。夏にもう一度やる時は、点差とかを考えずに、気合を入れ直して死ぬ気で勝ちにいく」
<厳しさ、激しさを求める副将・川上力也>
「今日は基本プレーでミスが出てしまった。これまでもミスはあったけれど、関東はそれを見逃さなかった。ミスから崩れるというワセダが一番やってはいけないことをしてしまった。ミスはしょうがない部分もあるけれど、いかにそのミスに反応できるかが大切。今日はワセダの悪いところが全部出た。何がいけなかったのかはビデオを見ないと何とも言えないけれど、この敗戦はしっかりと受け入れなければならない。ポイントに人は行っていたのだろうけど、行くだけで、強さ、激しさが足りなかったのだろうし、相手の方がひたむきだった。関東のこの試合に懸ける気持ちを感じた。そこで受けてしまって、修正できずに後半も失点を重ねてしまった。激しさ、厳しさを突き詰められていなかった。相手があることなのに、勝つことで自己満足してきたのかもしれない。今日の負けをしっかりと受け入れて、この先またがんばっていきたい」
<『高速アタック』も不発に終わったSH後藤翔太>
「今は唖然という感じです。向こうの気持ちが80分間、一瞬たりとも切れることがなかった。ドライブにしてもスイープにしても、ワセダは個人の責任をそれぞれが果たせなかったと思う。接点でトップスピードでぶちかましに来る相手に喰らってしまった。今日はすべてが悪循環だった。こてんぱんにされましたね。こんなに負けたのは人生で初めてです。これからは関東にこうやって勝つという意思統一が必要だと思う」