「ULTIMATEやで!やったろや!」(NO8佐々木隆道)。ウェイトとフィットネスに明け暮れた7月、徹底的に走り込んだプレ合宿を経て迎えた大事な夏合宿初戦。春シーズン終盤にチームを離れたU21日本代表4人(青木佑輔、佐々木隆道、豊山寛、内藤慎平)も揃ってスタメンに名を連ね、会心のロケットスタートが期待された。
「相手を振り回して攻め続ける」。そんな思惑通り、開始からワセダがゲームを支配。9分、17分、38分とゴール前ペナルティーからの素早い仕掛けで3トライを連取し、19-0と相手を引き離しにかかった。
しかし、リードこそ奪うものの、この日のワセダはどこかチグハグ。「攻めたいところを突けているのに、崩しきれなかった」(大田尾主将)と言う通り、あと一歩のところでのミスが噴出。スクラムをコントロールされるなど、セットにも安定感を欠き、時間の経過と共に掴んだ流れを失った。
迎えた後半。17分にWTB吉永将宏(4年)がトライを挙げたものの(26-0)、狂った歯車は元には戻らず、ズルズルと後退。選手のイライラもピークに達し、不穏な空気がチームを襲った。
「意地を見せろ!俺たちはワセダやろ!」(佐々木)。激しい言葉でチームを鼓舞。それまで狂ったように刺さりまくっていた大黒柱・佐々木隆道を負傷で失うと(後半21分)、トライを取られる気配なし、不発に終わったアタックを補う形でゲームを支えていたディフェンスもついに崩壊。30分、35分と立て続けにトライを許し、『王者のプライド』はずたぼろに切り裂かれた。
後半の魅せ場は、初めてAチームに昇格、FBで途中出場した『キング』曽我部(佳憲、1年)がカウンターから連発したミラクルパスとスーパータッチのみ。
続出するミス、仕留め切れないツメの甘さ、不安定なセット…。まさに清宮ワセダ始まって以来の『超低空飛行』。「24日の関東戦はもう意地だね」(清宮監督)。『ULTIMATE CRUSH』を旗印に、破竹の勢いで勝ち続けたあの時の輝きを取り戻すことができるのか。ワセダに残された時間はそう多くはない…<HP委員 疋田拡>
<天気にお手上げ?清宮監督試合後のコメント>
「ちょっと意思統一が足りない感じだね。色々と新しいことを試したんだけど、それがうまくいかなかった。ここまでは計画通りのメニューは消化しているけれども、雨ばかりで思う様な練習ができていない。晴れた日は一日しかないから…。最悪だね。グラウンドもぐちょぐちょで、今日はパスもランもまったくダメだった。いい反省になった。関東学院大戦にはもっと絞り込んで臨む。もう意地だね。来週は晴れるみたいだし、春みたいなことにならないようにしたい」
<試練の時を迎えた主将・大田尾竜彦>
「んー、ちょっとしたところだと思うんですけどね。相手に崩されている感じも、コンタクトとかで当たり負けている感じもしないですし…。チームが若くて、勝負勘がまだない。ここ取ったら突き放せる、相手が切れるという場面が何回もあるのに、そこでの集中力が足りない。今日も相手のディフェンスは崩れていたけれど、決定力がない。攻めたいところは突けているし、それほど重症ではないと思うけど…。今はこんなもんかなと言う感じですけど、とにかくこの差を詰めていかなくてはいけない。昨年みたいに常に圧倒してぶっちぎれるチームではないと思ってはいた。関東戦に向けては今日出た悪いところを全部修正して気持ちをしっかり持って戦いたい。今日は隆道が抜けたのが痛かった。リーダーを育てなければだめですね」
<大田尾を支え続ける副将・川上力也>
「今日は監督から与えられたマストの部分がほとんどできなかった。相手のプレッシャーもたしかにあったけれど、自分たちのせいで苦しい展開にしてしまった。2ヶ月ぶりの実践ということもあるけど、どうもしっくりいかない。今日は破綻というところまではいかなかったけれど、意識が足りず、綻びを見せてしまった。春と同じことをやったらただのバカなので、モチベーションをしっかり持って次に臨みたい」
<久々のスタメン出場を果たしたWTB山岡正典>
「ひとつひとつのプレーが甘い。練習でもちょっとふわっとしていたし、それがそのまま出た。もう少しうまく内側を使えればもっと崩せたと思う。BKはメンバーが変わった部分もあって、まだ合わせ切れていない。今日はうまくまとまらなかった。その辺は4年の僕らが変わらないようにしてあげないといけないんですけど…。今日は最後のところで取れなかった。自分たちのミスで取れない間にズルズルといってしまった。反則(この日のワセダの反則は18)で相手にボールを渡して消耗してしまった。個人もチームもまだまだです。ディフェンスも崩されたというイメージはないですけど、取られているということはまだセットがきちんとできていないということだと思う。このままだとマズイですね。何かこうだというものが分からない…」
<FWの核・桑江崇行>
「ミスが多いという春からの課題が改善されていない。今日はBKラインで崩せなかった。メリハリが今イチ。2次でBKがきちんとセットできていないからランナーも決まらなかった。人数が揃っているのにディフェンスがアップできていなかったし。寝方も悪くて球出しがうまくいかなかった。スクラムは3番が切れると組めなくなってしまう。これからどんどん組んで強くしていかないと。3番がよければいけると思う。ラインアウトも隆道がいなくなって、合わせていなかったので苦しかった。ターンオーバーができなかったのは運動量が足りないからです。関東学院のロックは強いですけど、僕と強さを出して対抗していきたいです」
<U21日本代表から合流したCTB豊山寛>
「今日はディフェンスの時にFWしかいない場面が幾つもあった。個人的にはタックルを外されてしまったし、チームとしてそこを修正できなかった。前半はボールをキープできたけど、自分たちのミスでチャンスを失ってしまった。あと5本は取らないと。CTBのところでもっとラインを深くして楽に取らないとダメだと思う。3次位にはミスマッチができているのに、ノットリリースになったりツメが甘かった。今村は僕がもっと引っ張ってあげないとダメだった。関東にはまず勝つことが大事。そのために接点で勝って、一歩目を速くすることが必要だと思う。春は自分たちのペースでできずに終わっているので、そんなことがないようにしたい」
<初のAチーム、FBで出場した曽我部佳憲>
「全然ダメでした。FBとしての仕事ができていなかった。スイープしなくてはいけないのにいかないとか。今日は途中から雰囲気も悪くなってしまって、歩き始めてしまった。豊山さんのところで崩せても、2次3次で浅くなって相手に詰められてしまった。口では言っていたけれど、雨で滑るのが怖くて浅く近くなってしまったと思う。隆道さんがいなくなってからFWで声を出す人がいなくなってしまった。初めてのAだということはあまり気にしなくて、自分の仕事をしようと思ったけどダメでした。監督にFBやれと言われた時はやったという感じでした。SOももちろんいいですけど、FBもやりたかったので。関東相手には動き回って、ボールを動かして崩していかないとダメだと思う。合宿は思っていたよりも環境がよくて、高校時代に比べたら全然いいです。1年なんで元気に乗り切ります!」