「80分間、意識し続けろ」(清宮監督)。「この試合は今年のワセダにとって一番大事な試合になる」(後藤コーチ)。王者のプライド、春のリベンジ、この夏の成果。「俺たちはワセダだ」。「もう同じ過ちは繰り返さない…」。悲壮な決意、不退転の覚悟で、宿敵・関東学院大に立ち向かった。
しかし、開始僅か37秒。ハーフライン付近の攻防でボールを失うと、相手WTBのスピードについていけず、いきなりの失点。「まるで春のビデオを繰り返しているようだった…」(副将・川上力也)。ここからあの『悪夢』が甦った。
ボールキープから、準備したムーブで仕掛けるものの、ミスもあり、ここ一番のところでことごとくターンオーバー。「反応が遅いと、外に速い選手がいるから厳しい」(大田尾主将)。一瞬の切り返しで、次々とトライを許し、30分と経たない内に5-43と絶望的な点差を付けられてしまった。打ちひしがれる選手たち…。春と変わらない光景がそこにあった。
「後半は春とは違うところを出せたと思う」(清宮監督)。意地を見せ、ここから立て続けに4トライ(前半38分、後半4,6,11分)を奪取。怒涛の追い上げで、遠くに霞んでいた相手を29-43と射程圏に捕らえた。十分に残された時間に高まる期待…。しかし、この日を象徴するかのようにトライ寸前のパスが相手に渡り、ジ・エンド。この後、ゴール前ラインアウトからの圧力に屈し、再び相手に突き放された。
必死に喰らい付き、一時は14点差にまで迫ったものの、最終的には29-67で完敗。打倒・関東学院への熱き思いは今回もまた、完膚なきまでに打ち砕かれた。思うようにいかない現状。突きつけられた厳しい現実。『王者ワセダ』は崖っぷちに追い詰められた。しかし、苦境でこそ力を発揮してきたのがワセダの伝統。
この夏、清宮監督が選手たちに贈った言葉。「俺はお前たちを優勝させるために存在することを忘れるな」。関東学院大に連敗しようとも、ワセダの目標はあくまでも大学選手権連覇、日本選手権ベスト4。「今は苦しいけれど、最後には絶対にワセダが勝つ…」(大田尾主将)。『大田尾ワセダ』の夢はこんなものでは終わらない。<HP委員 疋田拡>
「後半は春とは違うところを出せたと思う。67点は取られ過ぎ。ただ、関東のターンオーバーからの切り返しは相当なレベル。スクラムに関しては相手も本調子ではないみたいだし、まだ何とも言えない。やっぱり関東は得るものが大きい相手。チームが成長していると感じる部分もあるし、まだまだこれから」
<試合後、敵方山村主将とがっちり握手 頂上での再戦を誓い合った大田尾主将>
「FW、キックオフ。関東が仕掛けてくる一番初めのところが止められなかった。キックオフが取れないと、守る時間が長くなってリズムも出ず、苦しくなってしまう。ゲームスピードも上がらないし。ターンオーバーされた時の反応が遅いと、外に速い選手がいるので厳しい。もっと反応を早くしなければ。とにかくブレイクダウン。そこにかかっている。これから若い選手を引っ張って、しっかり成長させていきたい。今日の曽我部はある程度しょうがない。1年生に頼らなければいけない今の状況がダメな訳ですから。(試合後には1時間半以上に渡り練習)どこかで厳しいことをやらなければチームは変わらないと思うし、厳しいことをやれば絶対に強くなれる。あの練習で気持ちも入ったし、いいきっかけになれば。ひとつひとつをしっかりやって、最後には関東に勝ちたい。成長を感じた部分もあったし、おもしろいこともあった。今は苦しいけれど、最後には絶対にワセダが勝つ」
<反省しきりの副将・川上力也>
「春のビデオの繰り返しのようだった。意識、集中力がまだ足りない。ワセダとしてやってはいけない展開になってしまった。外に振った時にもっとサポートにいかなければいけない。FW周辺であれば、行けるけれど、遠くなるにつれて厳しくなる。そこを行くのがフランカーの仕事。自分も含めてまだまだ運度量が足りない。関東はここという時の集中力がワセダより上だった。春はやられたい放題で、どうすればいいのかやっていて分からない面もあったけど、清宮さんの言った通り、今日はどこが空くか、どこが抜けるかというのが分かった。試合後の厳しい練習もワセダには必要。負けてはいけないチームですから。一昨年も関東に負けて同じようなことをして、最後は勝てなかったけれど、5点差にまで詰めることができた。今年もこれをきっかけにしていきたい」
<切れのある走りを見せたWTB吉永将宏>
「とにかく接点。関東はヒットしてドライブできているけど、ワセダはそれができていなかった。テンポよく球が出ても、ドライブし切れていないので、前に出ることができなかった。やっぱり1対1の勝負。そこで前に出られなかった。それが一番。もっとやらなければダメ。関東は意地を持ってやっているけど、ワセダにはまだ意識が足りない。今日はCTBのところでつぶされてしまったし、ターンオーバーされた時の意識も足りなかった。今までの4年生みたいに、もっと自分たちが先頭に立って引っ張らないといけないと思う。まだ4年生に甘い面がある」
<U21日本代表FB内藤慎平>
「ターンオーバーから外。春と同じことをしてしまった。ブレイクダウンでのミスなり、何かしらのミスが出た時の反応が遅かった。監督から意識と言われたのに、そこができなかった。相手が出てくるところにも対応しなければ。このクールで加藤進一郎さん(臨時コーチ・日本選手権優勝メンバー)に色々と教えてもらった成果を出そうと思ったけど、タックルミスもあったし、まだまだ。チームとしてやらなければいけないことは色々とあるだろうけど、とにかく激しさと強さが必要だと思う。ブレイクダウンあってのワセダなので、そこで激しさを出していかないと。U21W杯で学んだのも、色々な戦術がある中で、結局は激しいプレーをしたところが勝つということ。これからはとにかく激しくいきたい」
<初めて日本代表プロップ山村と対峙した諸岡省吾>
「今日はやろうとしていたことが最初からできなくて、流れを失った。あれだけ言われたのに、キックオフが取れなかった。意識が足りない。その点を直さないと。関東は少しでもスキを見せたらそこを突いてくるので、常にスキを見せないようにしないといけない。FWは場面場面では止めているかもしれないが、リムーブが遅くて最後にやられてしまった。ブレイクダウンが激しくできた後半の初めは波に乗れたし、相手の足が止まるのも分かった。ただ、3本目取った後に、トライを取られたのが痛かった。山村は強かった。今まで組んだ3番とは全然違う。重い。正月までには押されないようにしたい。これまでは未知の部分もあったけど、今日でいい目標ができた。大江さん(前年度プロップ)にも強いけど、そこまで遠い存在ではないと言われた。これからは一日も気を抜かず関東を意識していきたい」
<走れずに反省 フッカー青木佑輔>
「今日は最悪。体調が悪く、すごく辛かった。最近は全然ダメです。山本貢さんと初めてやるのは初めてで、気合が入ったけど、向こうは本調子ではなかったみたいです。向こうは僕のことなんて知らないと思うけど、自分は意識している。今日はとにかくターンオーバー。自分も走ろうと思ったけど、全然走れなかった。スクラムはうちも調子がよくないなか、あれだけやれれば…。まだ何とも言えないですけど。とにかくコンタクトを強くしたい。U21でもプロの選手は全然違った。あの位の強さを身につけたい。今年は最後までスタメンでいられるようにがんばる」
<B、Cは完勝!>
Aチームに先立って行われたCチーム同士の対戦では、後藤彰友(1年)、百合洋(2年)の両ロックの体を張ったプレー、WTB松澤良祐(1年)の華麗な3トライなどで59-43で快勝。Aチームより一足早いリベンジに付っきりで指導に当たった古庄コーチも会心の笑顔を見せた。
一方、Aチームの大敗を受けて試合に臨んだBチームも、春同様、安定した試合運びで終始ゲームを支配。CTB三角公志、WTB勝田譲、FB小吹和也の2年生BKトリオが存分に魅せ場を作り、関東学院を捻じ伏せた。
春は手も足も出ずに大敗を喫したCチームが見せた魂の勝利にAチームも刺激を受けたはず。正月こそ、Aチームがリベンジを!