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2024
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対明大戦・観戦記


  すべては奥さんのために…。『ULTIMATE CRUSH』。深い悲しみを乗り越えて、ワセダは忘れかけていた「強い気持ち」を取り戻した。
 まさに激動の一週間。11月30日、清宮監督は全部員の前で訴えた。「今の俺たちに必要なものは奥さんの残してくれた『ULTIMATE CRUSH』。困難に立ち向かう強い気持ちだ」。屈強な指揮官が初めて見せた悲しみの涙。悲痛な叫び。そして思いはひとつになった。「残りの試合は『ULTIMATE CRUSH』」…。
 喪章を付けて臨んだ宿敵との大一番。先制トライこそ許したものの、前半は準備されたプランを着実に実行。「ヨコのワセダ、タテもワセダ」。過去の歴史を覆すようにワセダエイトが『重戦車』を粉砕し、激しく前へ出続けた。
 もはや赤黒の推進力となりつつある、NO8佐々木隆道(2年)、ロック内橋徹(3年)のロングゲインであっさりと逆転に成功すると、37分にはラインアウトからの展開でスーパールーキー・今村雄太(1年)が相手の間隙を突く超ド級の弾丸トライ。一瞬の加速、鍛え上げられた肉体から漲るパワー、相手に指一本触れさせない脅威の伸び足。「抜けた瞬間、背筋が凍った…」(清宮監督)。まさに戦慄、指揮官も大絶賛のスーパートライで、24-5と大きくリードして前半を折り返した。
 「後半に入ってそれまで強くなかった風が吹き出した。足が痛くて自分のキックも飛ばないし、やっぱりラグビーは難しいなって…」(主将・大田尾竜彦)。後半も勢いそのままに一気に押し切りたいところであったが、強烈な風、ロングキッカー・曽我部欠場の影響をモロに受け、自陣に釘付け。ほとんどの時間、ゴールを背にする我慢の展開を強いられた。
 そんな攻められっぱなしの展開で浮彫りになったのが、一発で仕留め切れないタックルの脆弱さ。「あそこまで継続される前に、どこかでターンオーバーできないと苦しい」(フランカー川上力也)。実に30分を守りきり、これまでにはなかった粘りを見せたものの、ボールを奪い返すまでには至らず、結局は失点。ラストプレーで貫禄のトライを挙げたものの、またも集中力が持続せず、『ULTIMATE CRUSH』と呼ぶには物足りないスコアとなってしまった。
 「今日の試合で満足している奴はいないと思う」(CTB内藤晴児、4年)と言う様に、『究極の破壊』を目論んだ選手たちには自らへの憤り、落胆の色も見えたが、「今日は点数どうこうじゃない。ワセダの選手は誰も恥じるプレーはしてないし、胸の張れるいいゲームだった」と連覇を誓う勝負師・清宮監督は至って前向き。「大学選手権はとにかく『ULTIMATE CRUSH』あるのみ」(主将・大田尾竜彦)。ついに始まる『大田尾組』最後の聖戦。宿命付けられた『究極の勝利』。「強い気持ち」を胸に秘め、必ずや奥さんに『荒ぶる』を捧げます…<HP委員 疋田拡>

<奥さんに『ULTIMATE CRUSH』を誓う清宮監督>
「今日の試合は『ULTIMATE CRUSH』してこいと言って選手を送り出した。今日の早明戦は特別なものだとみんな分かっていたと思うし、自分自身もそのことを意識して臨んだ。点数どうこうというよりも、己のプライドに懸けて胸の張れるゲームを、その姿を見せてくれと。これが早明戦でしょう。今日は球出しを遅らされたのが1番。あとは甲子郎がイマイチだった。前半はプランどおりにできたけれど、後半はペナルティーとってもロングキッカーがいないし、強烈な風下だっだしあんな展開になってしまった。これが早明戦。最後までメイジは切れなかった。ただ、ワセダの選手は誰も恥じるプレーはしていないし、胸の張れるプレーをしてきた。この勝利を奥さんに捧げたい。もし100点ゲームになったとしても奥さんは喜ばなかっただろうし、お互いの力を出し合っていいゲームをすることを望んでいたと思う。自分のプレーに誇りを持てる、そういうゲームにすることがテーマだったから、よかったのではないかと思う。2日前に曽我部がケガをしてプランを大きく変えなくてはいけなくなった。これから毎週続く選手権のなかで、試合をしながらチームを作っていく。曽我部がいなくなって失うものもあるけれど、代わりに得るものもある。これからその部分の力を付けていきたい。今村はずっと育ててきたプレーヤー。最後の場面でああいうプレーができたことを大田尾は喜んでいると思うし、自分もあれは嬉しかった。FWはあんなもん。明らかに力の差があるのにスクラムを1回押されたのが不満。体力的なものもあるかもしれないけれど、集中力のなさがでた。これからはしっかりとしていきたい。奥さんは世界的な素晴らしい人(火曜日のバーシティーマッチの際にも追悼セレモニーを実施することが決定)だった、そんな人が僕等の仲間であったことを誇りに思う」

<痛みをこらえながら懸命にチームを引っ張った主将・大田尾竜彦>
「いつの時代もと言ったら言い過ぎかもしれないけれど、これが早明戦なんだと感じた。試合中ずっとそれを感じていた。後半は風下だし、足は痛いし、本当にきつかった。影響ないだろうと思っていたけれど、実際はかなり影響があった。前半は思うような形で崩せたけれど、もっと冷静にプレーすればよかった。冷静にプレーできていればもっと取れたと思う。歓声が大きくて、味方同士の声が聞こえなかった。前半でもう2本取りたかったですね。雄大はトライ慣れしていないんでしょう(笑)。ずっと言い続けてきたことを今村がやってくれたのが本当に嬉しい。中身は言えないですけど(笑)。今村がああいうプレーをやってくれると、もっともっとトライを取れるようになる。最後もBKだけで取れたし、今村に関しては満足している。FWはモールを止めていたし、ディフェンスはよくしていたと思う。取られたトライは根負けというのではなくて、現代ラグビーの必然。あれだけボールを持たれたら取られてしまう。その前に何とかしないと。後半の2本目は僕の責任です。対抗戦を終えて、チームが成長しているという実感はすごくある。これからはいい試合をして勝ち続け、奥さんに勝利の報告をしたい。大学選手権ではとにかく『ULTIMATE CRUSH』あるのみです」

<選手権での飛躍を誓う副将・川上力也>
「今日は評価し難い試合。FWで崩すというプランどおりにできたところもあるけれど、ミスやペナルティーが多くて自らの首を絞めてしまった。相手は常に近場近場をゴリゴリきていたので、一発で取られるという恐怖感はなかったけれど、最後の最後でやられてしまった。あそこまで自陣に釘付けにされると難しい。ターンオーバーするなど、その前に切り返す術があったと思う。モール自体にはそんなに強さは感じなかったし、FWは結構やれていた。チーム状態は徐々によくなってきていると思う。あとはここってところでいかにできるか。集中してボールに働きかけることを80分続けられるかが大事。今日はお客さんもたくさん入っていたし、雰囲気がまさに早明戦という感じだった。若いチームにはいい経験になったと思う」

<初の早明戦で躍動したWTB吉永将宏>
「早明戦の雰囲気は今までの試合とまったく違った。今日はプレーしていてすごく楽しかった。すごく緊張したけれど、アップを4年生全員が見に来てくれて熱いものがこみ上げた。4年の代表として、こいつらの分までやってやるんだって緊張も吹っ飛んだ。相手がシャローで、みんなも前、前という感じであまりボールがもらえたかった。後半はそれまでの鬱憤が溜まっていたので、それを出そうと。みんな『ULTIMATE CRUSH』と言っていたけれど、口だけで、ノリ切れず、受けてしまった面もあった。それが早明戦なのかもしれないけれど、決していい内容ではなかった。ディフェンスはがんばれたと思う。大舞台を経験して自信にはなったけれど、まだまだこんなものではダメ。とにかく激しく、ガムシャラにやっていきたい」

<スクラムに後悔の念を抱く諸岡省吾>
「この雰囲気はやばかったです。清宮さんには深呼吸して、今までやってきたことを思い出せと言われたんですけど、さすがに試合前は浮き足立ちました。前半はFWでいいリズムで崩せたと思うし、スクラムもよかった。後半もその勢いでいきたかったんですけど、メイジもまったく切れなかった。後半はずっと自陣で相当苦しかったけれど、トライを取られる気はそんなにしなかった。ペナルティーさえしなければと。ただ僕も伊藤も途中でバテてしまった。押されて交替するというのはプロップとして恥ずかしい。もうこんなことはないようにスクラムフィットネスを意識して、練習からしっかりやっていきたい。チームとしてはミスをしないことと、接点で負けないことが大事になってくると思う」

<驚愕のスーパートライを決めた今村雄太>
「突然のメンバー入りでものすごく緊張しましたけど、昨日の夜は普通に寝れました(笑)。今日は周りの雰囲気もいつもとは違うし、メイジもこれまでとは全然違った。前半のあれは会心のトライ。ずっと練習してきたプレーなので、よかったし、嬉しかった。曽我部にもがんばれ、トライを取ってくれと言われていたので。今日は大舞台でフル出場できて自信になった。曽我部みたいなあんなプレーはできないけれど、自分の持ち味であるスピードを生かして活躍していきたい。ラインの裏にでてどんどんチャンスを作りたいです」

<入学以来、連勝記録を伸ばし続ける佐々木隆道>
「今日は全体で言えば、そこまでディフェンスはよくなかったし、接点でも相手を上回ることができなかった。ただ、FWのディフェンスはまあまあよかったと思う。前半FWで崩すのは意図どおり。後半もそうしたかったけれど、風もあったし、あのような展開になってしまった。あれだけ攻められると苦しい。根負けはしていないけれど、気持ちがふっと切れたところでスパッといかれてしまった。あの辺はもっと気を利かせられればよかった。だんだん激しさも出てきたし、よくなってきたとは思う。この先連覇するために必要なものは集中力。今日も疲れたときに集中力がなくなってしまったので、そこを改善していきたい」


 大学選手権1回戦・対関西学院大戦の会場は秩父宮と決定致しました(14:00キックオフ)。『大田尾組』の成長をその目に焼き付けるべく、是非応援にいらしてください。