今年も『矢富イリュージョン』!新時代のSH・矢富勇毅(2年)の華麗な個人技が、ファーストゲームでいきなり炸裂。「今日は矢富様様です」(SO久木元孝成)。チームメイトも感嘆しきりのランニングスキルで、パワー自慢の大東大を粉砕した(この日の大東大は外国人選手と主将抜きの飛車角落ち。残念…)。
まずは7分。自陣10m付近のペナルティーから、素早いタップキックで相手に接近すると、タックラーを嘲笑うかのようなステップで突然の方向転換。ディフェンダー4人を次々に置き去りにし、そのままインゴールを駆け抜けた。
矢富にしか成しえない、60mを1人で持っていく驚愕の個人技。チームを勢いづかせるには十分過ぎるトライで先制点を奪うと、あとはファーストゲームの不安を吹き飛ばすかのように、一方的に攻め立てた。
その後の起点も、言うまでもなくキレキレの矢富勇毅。スクラムからラックから。「どうしてそんなに抜けちゃうの」。一人でディフェンスを崩したといっても過言ではないほどの見事な持ち出しで、おもしろいようにトライを演出した(43-5)。上井草グラウンドオープニングゲームを華麗に彩るまさに一人舞台。一発目から100点ゲームへの幻想さえ抱かせた。
しかし、拍子抜けするような展開で迎えた後半、矢富が自らの突破を意図的に封印すると、状況が一変。「後半の入りのところで4年生が締めなくてはいけなかった…」(ゲームキャプテン・鈴木博幸)、「後半チームが悪くなったのはすべて、捌けなかった僕の責任です…」(矢富)。まるで急ブレーキ。最大にして最強のブレイクポイントを失うと歯車が狂い出し、トライショーの幕も引けた。
「まだまだ修行が足りないことが分かった。今からすぐにでも練習します…」(矢富)。どことなく後味の悪さが残ったものの、ファーストゲームにしては及第点と言える圧勝劇(結局は67-26)。矢富が抱いたこの感情こそ、明日への第一歩。磐石の30人体制構築へ。ワセダBは今年も魅せます!<早大ラグビー蹴球部広報 疋田拡>
<試合終了後、すぐさま反省練に取り組んだSH矢富勇毅>
「今日は全然ダメでした…。ボールを捌くことができなかった。どんなボールでも捌かなくてはいけないのに、不甲斐なかったです。大学に入って1番ダメなんじゃないかっていう位のデキでした。自分としてもある程度突破できるのは分かっている。今の自分が見られているのは突破ではなくて、捌きの部分。ゲインすることはできたけど、そこができなかったのですごく反省しています。サイドを突くだけではダメなんです。まだまだ修行が足りないことが分かりました。後半捌くことだけに徹したら、綺麗に出てきた球しか捌けず、チームをリズムに乗せることができなかった。後半チームが悪くなったのは全部僕のせいです。今日は(同期のSH)三井が遠征に参加しているのに、自分は何でここにいるんだっていう悔しい思いがすごくあったんですけど、遠征に行かないでここで、この80分を経験できてよかった。遠征に行ってたら途中から出て、サイドを突破して、今日も抜けたなって、それに満足して終わってたでしょうから。今日の80分で自分の悪いところが分かったので、ひとつずつそれを克服して、シーズンではレギュラーになれるようにしたいです。とにかく大学選手権決勝での悔しさは忘れない。それが自分の1番のモチベーション。翔太さんがいるうちに前半から出られるようにならないと、自分自身も納得できないですし。チームとしてはコンタクト負け。スイープがよくなくて、前に出る人間がいなかったのが課題です」
<ゲームキャプテンとしてチームを引っ張ったフッカー鈴木博幸>
「今日は若いメンバーが多かったので、まとめようと思っていたけど、あまりうまくまとめることができなかった。矢富1人で行っただけ。チームでリズムに乗って取ることはできなかった。スイープが甘くていい球、ファインボールが出せなかった。強い相手だとあれでは簡単には出させてもらえない。もっとスイープにこだわっていく必要があると思う。ディフェンスでは流れの中では相手を止めることができたけど、モールで来ると分かっているところで止められなかったのが反省。そこは修正していかないと。後半は最初に取られてあのような展開になってしまった。あそこを締めるのが4年の役割。今はBでチャンスをもらっているけれど、今シーズンはどのチームに居ても、最後まで諦めずに赤黒を目指していきたい。後輩に何かを教えて過ごす1年ではなくて、赤黒を目指す姿で下を引っ張れる1年にしたいです」