五郎丸の、五郎丸による、五郎丸のための戦い…。衝撃の15人制赤黒デビュー。日頃はクールな九州男児が、雨ニモ負ケズ、その才能を爆発させた（この日のオール宮城はそのほとんどが社会人）。
身に纏う赤黒の重みからか、前半はイージーなミスを連発。ことごとく相手にボールを渡し、ひたすらキックに背走した。
自陣深く蹴り込まれるキックに右往左往。プレッシャーを感じて、自陣に釘付け…。並みのチームであれば、そんな構図が目に浮かぶような展開も、この日は最後の砦・FB五郎丸歩が、ルーキーとは思えない余裕の対応。スピード満点、美しすぎるカウンターに、驚愕のスーパータッチ（雨、風を物ともせず、飛距離出まくり…）。乗れないチームをひとりで救い、次第に流れを引き寄せた。
我慢を重ね、前半のうちに3トライをもぎ取ると（２１－５）、後半は雨、風をまったく感じさせない爽快な『高速』アタック。「ワセダらしいラグビーを見せよう」。指揮官の指示通り、石巻のファン（スタンドは大盛況、選手が感動するほど石巻はラグビーが盛んです）へ華麗なトライをプレゼントし続けた。
故郷に錦。CTB松井暢彦（3年、福島高）、WTB勝田譲（3年、山形南）の東北出身者によるトライがあっても、主役はもちろん五郎丸。キレキレのステップ、豪快なストライド、一瞬の閃き、懐の深いオフロード。「めちゃくちゃいいね」（清宮監督）。ひとり別次元のスーパープレーで、圧倒的な存在感を示して見せた。
蹴ってよし（難しい角度のコンバージョンも難なく沈め、失敗は1本のみ）、走ってよし、放ってよし。早くも射程に捉えたファーストチーム。『怪物』五郎丸には赤黒ジャージーが良く似合う…＜早大ラグビー蹴球部広報 疋田拡＞
＜美しくトライを決めたWTB勝田譲＞
「今日は東北での試合という意識もあったけれど、Aチーム入りを賭けたセレクションだという思いの方が強かった。ここでアピールしようと思っていたけれど、うまくいかずに、自分の課題が見えた。今回の遠征は、その課題が分かったという点で意義があったと思う。足りないのはコンタクトの強さと決定力。ここまでは副務の仕事とラグビーの両立もしっかりできていると思うけれど、納得できるレベル、理想の形には程遠い。今年はいいWTBがたくさん居て、自分にも刺激になっている。目先ばかり見るのではなくて、長い目で見ながら、1日1日を大切にして、いいWTB像を作っていきたい。そうすれば自然とAで出られるようになっていると思う。とにかく今年はがんばりたい。今日はお互いにトライも取れたし、高校時代から知り合いの松井と一緒に試合に出られて嬉しかったです。試合内容がもっとよければ最高でしたけど。15人制で着る赤黒は全然違いますね」
＜初めてシニアチームに昇格したCTB松井暢彦＞
「今日は赤黒を着る以上、恥ずかしいプレーはできないという責任感をすごく感じたし、両親に初めての赤黒姿を見てもらえて本当によかった。チームとしてはいい内容だったけれど、自分としてはBKをコントロールできなかったのと、練習してきた仕掛けができなかったのが反省。初めてシニアに上がったけれど、すべての面を向上させなければダメだと感じた。ずっと下で耐えてきた自分は、チャンスを多く与えてもらえるようなプレーヤーではないと思うので、このチャンスを逃さないようにがんばりたい。これからも自分でいくのはもちろん、人を生かすプレーで勝負していければと。トライできたのはすごく嬉しかったです」
＜地元の英雄？ こちらも赤黒デビューのプロップ畠山健介＞
「今日は地元での試合だったけど、初めての遠征ということで緊張した。やっぱり赤黒はかっこいいです。自分は生かしきれてないけれど、パワーが出る感じです。スクラムはいい時と悪い時の両方があった。もっともっと色々なチームと組んで、勉強して、安定したスクラムが組めるようになりたいです。今日は反省してます。当然ですけど、Aチームと組むより他のチームの方が組みやすいです。練習で諸岡さんと組むのはすごく勉強になるし、いかに強いかが体感できる。今日は自分の課題、役割を監督、そして両親に見せようと思ってたんですけど、ダメでした…。もっともっと練習して、いいところを見せられるようになりたい。今日みたいなプレーでは厳しいとは思うけど、これからは与えられたチャンスをいい方向にもっていければと思います。（伊藤）雄大さんには練習でも私生活でもお世話になっているので、盗めるものは今のうちに盗んで、雄大さんがいなくてもワセダのスクラムは強いと言われるようになっていきたいです」
＜快勝に笑顔弾けるヤングワセダ！＞
