「これで今シーズンのチームづくりに迷いがなくなる」(清宮監督)…。「今日の勝利は僕たちにとって価値のあるものだと思う。関東に勝てたことはすごく大きい」(NO8佐々木隆道)…。視界に広がるビクトリーロード。ようやく掴み取った確固たる自信…。すべてを賭けた大一番、宿敵・関東学院との「マストウィンゲーム」で、『諸岡組』がその真価を見せ付けた。
「今日は最初からFWで圧倒する予定でしたから…」(副将・桑江崇行)。テンションはMAX。この日の核弾頭も、もちろん自尊心の塊・『最強』FW。スクラム、ラインアウト、そしてモール。まさにカントー王朝の生命線、すべての局面で相手を粉砕し、久しく横たえてきたその牙城を完膚なきまでに切り崩した。
まずは開始5分。『諸岡組』のお約束、美しいラインアウトからのドライビングモールで労せずしてトライを奪うと(場内がどよめくほどの勢い…)、前半は何かに取り付かれたように押し合いに終始。ただひたすら『前へ』。ワセダ史上かつてない安定感。FWの「押し」だけで勝負を決めたと言っても、過言ではないほどの取り組みで、『横綱』カントーを押し出し続けた。
「お前ら押し合いに勝っただけで満足するのか。もっとボールを動かして走り勝って来い!」。21-7とリードして迎えた後半、「もう相撲は御免」とばかりに指揮官からミッションが下されると、遅ればせながら本来の「ワセダらしさ」を発揮。自陣マイボールスクラムからの巧みな仕掛け(WTB内藤慎平がブラインドサイドを攻略し、CTB三角公志、今村雄太、フランカー権丈太郎と繋いで奪った18分のトライはこの日のベスト。BK陣3人と権丈のよさがここに凝縮!)に、ゴール前ラインアウトからの華麗なムーブ(今村はやっぱりスゴイです…)。まだまだ稚拙さは残るものの、BK陣も何とか面目を保ち、今後に大いなる可能性を感じさせた。
52-21、実に31点差。『清宮ワセダ』始まって以来のカントー戦大勝にも、選手たちはどこか浮かない表情。「まだまだ不完全燃焼です」(プロップ伊藤雄大)。「今日のデキで満足してる奴はいないよな。次はもっといいゲームをしてやろうぜ!」(清宮監督)。再戦の場は8月22日、菅平。より激しく、よりしなやかに、より美しく。『ULTIMATE CRUSH』 again!この日の勝利も、まだ『諸岡組』の序章にすぎない…<早大ラグビー蹴球部広報 疋田拡>
<大勝に満足気な表情を浮かべた清宮監督>
「今日はみんな意地は見せてくれたと思う。BKはまだまだだけど、FWは特に見せてくれた。今日よかったところは、相手にFWで完全に負けたと思わせたこと。この勝利で今シーズンのチームづくりに迷いがなくなる。あとは足りないところを作っていく作業。武器は武器としてたくさん持って、あれもこれもトライできるようにしていきたい。そこはまだまったくできていないからね。ディフェンスもまぁまぁ。この何年かで1番いいんじゃないかな」
<宿敵相手の勝利に安堵感を滲ませた主将・諸岡省吾>
「先週終わったときに、意識のところの話をだいぶしたので、今週は自分から特に声を掛けなくても、練習からみんなよくやってくれた。ただ、今日も後半最初の10分に集中しようと言っていたのに、そこでトライを取られてしまった(スクラムアタックの不用意な連係ミスを相手に拾われトライ)ので、そこをどうするか気をつけないといけない。すぐに試合モードに入っていけないというか、軽いプレーをしてしまう。そこを集中させてやらせなくてはダメですね。でもあそこで関東の攻撃を我慢して凌げたのは収穫。凌ぎきって、自分たちがトライを返す。昨年の逆の形ができたことは評価できると思う。FWでいっているのはあくまでもBKに取らせるため。FWで取れているのもそれはそれでいいけれど、もっとBKでも取れた。今日はひとまず勝ってよかった。昨年の3連敗の雪辱を、まだ全然足りないけれど、返せたと思う。夏にもまた勝って、冬に繋げたい。FW戦で自ら消耗してしまって、ワセダの持ち味のスピードあるランナーが突破するということが少なくなってしまったので、もっとフィットネス、ただ走るだけではなくて、コンタクトしながら走るフィットネスをこれから課題として、高めていかないとダメだと思う。今日は昨年に比べたらいい1日でしたね(笑)」
<プロフェッショナルファールでのシンビンに反省しきりの副将・桑江崇行>
「シンビンになってしまったことは反省している。自分がどうにかしないとトライだと思ったので、取りにいったら滑ってああなってしまった。外から見ている間は、ここで取られたら自分のせいだと心配で心配でしょうがなかったけれど、FWが7人でがんばってくれた(直後に挑まれたスクラムではひとり少ないにも関わらずターンオーバー)。本当に信頼できる仲間を持った。今日は最初からFWで圧倒する予定だった。FWで崩して、走って、また崩す。最初のところでは崩せたけれど、その後走って崩すというところができなかったのは課題。そこはまだまだ。崩した後にBKフェーズにも走っていって、相手を圧倒する。そこを課題として取り組んでいきたい。明治も慶應も伝統があって大事だけれど、1年生で出て負けて、昨年も最後に負けた関東はやっぱり誰よりも特別な相手。今日は絶対に負けたくなかった。まだ春だし、相手も途中でメンバー替えてきたし、全然これからが勝負です」
<BK陣の更なる向上を誓う副将・後藤翔太>
「今日はFWがあれだけやってくれたのが大きい。まだフェーズを重ねているときに、何をするのか、何をしたいのかの意思統一が9番10番の間でできなかった。試合運びそのものはよかったけれど、ボールを動かしたときのコミュニケーションをもっとしっかりしないとダメですね。あれだけFWが勝っているのだから、もっとBKでいいアタックをしないといけない。FWはしっかり崩してくれたけれど、取りきる意思統一がまだまだ足りないかなと。ただ、試合に勝ってこれだけ課題が見えるのはいいことだと思う。今日の勝利は選手権のための第一歩。その一歩で勝つことができたのは重要。これで勝てるというか、さらにまだやれるんだという気持ちになれたのは大きい。これから夏に向けては、BKでただ漠然と回すのではなくて、しっかりと意思統一のされた、効果的なアタックができるように、課題を持って取り組んでいきたいし、その中で自分が引っ張っていきたい。勝てたということに関してはいい春だったと思うし、勝ちながら課題が見えたというのがよかったと思う」
<力強いゲインでチームに流れを呼び込んだWTB内藤慎平>
「今日は関東相手に気負いすぎることもなく、普通に臨むことができた。最初はFWでいくというのはあったけれど、ちょっと手堅くいきすぎてしまった。FW任せになってしまった面があるので、もっとBKで何とかしないといけなかった。BKにボールを出したときにどうかってところを見せることができなかった。自分としては後半いいところは出せたと思うけれど、FWにいかせていかせて作ったチャンスフェーズでBKがしっかり取れなかったのは反省。FW任せになるのではなくて、BK全体でもっと何とかしなくてはいけない。今日はリムーブ、ペナルティーの戻り、実際その部分でとられてしまったし、気の抜けたところがあったのも反省点。関東がどうとか、法政がどうとかではなくて、もっとベクトルを自分たちに向けなくてはいけない。アタックなり、タックルなり、スイープなり、パスなり、自分たちの中にもっと拘りを持つことが必要だと思う。今日は昨年負けた悔しさを晴らせて嬉しいけれど、これで終わりじゃない。ここからどうやっていくかが本当の勝負です」
<勝利の味を噛み締めるNO8佐々木隆道>
「今日の勝利は自分たちにとって価値のあるものだと思う。勝てたことはすごく大きい。やっぱり今年はどうなんだとか、そういった不安もありましたから。内容に関しては何というか…。まぁモールが1番取れるし、攻めるべきところで攻められた。ただそこで満足してはダメだし、もっともっとできるはず。今日はFWでいくのが1番よかったということ。前半はボールキャリアがしっかりしていなくて、翔太さんも大変だったと思うけれど、後半はブレイクダウンもよかったと思う。夏には戦術的なことをやっていきたいので、オフには基本プレー、体づくり、フィットネスをしっかりやって、いい夏を過ごして、そこでチームを完成させていきたいですね」
<勝負を決定づける場面でのノックオンに反省しきりのFB五郎丸歩>
「今日はとにかくあのトライだけ(裏でボールをもらい、ゴール寸前に迫りながらノックオン)。あそこでしっかりトライしていればもっと楽な展開になっていた。あそこでトライを取れなかったことで、チームの足を引っ張ってしまった。その他の部分はまぁまぁよかったと思うけれど、あのトライを取れなかったことと、大事なペナルティーでタッチに出せなかったのが反省です。自分はまだまだ通用しないことが分かった。FWがあれだけ前に出てくれているのだからもっとBKで取れるようにしなくてはいけない。そこが課題になると思います。関東はやっぱり他のチームとは違った。接点の強さ、コンタクトの強さ、ラックの崩し。自分たちがやられて嫌なことをやってくるというのを感じた。自分の当面の課題は確実なプレーをすることと、コンタクトを強くすることです。今日の僕は何もしていません…」