昔取った杵柄ならぬ、4年間で培った『荒ぶる』―。あの壮絶ラストマッチから1ヶ月。赤黒レジェンド養成所、第2のホーム・福岡の地で、『諸岡組』がその尊い営みの成果を見せつけた。
準備は極寒のなか行われた前日の90分のみ。失われたゲーム勘に、募る不安、体とは裏腹に先行ばかりするイメージ…。それでも『赤黒の誇り』、何より愛すべき福岡の熱烈な歓迎が、眠りかけていた選手たちを突き動かした。「これだけたくさんの人が見に来てくれているんだから恥じないプレーをしよう。俺たちはワセダなんだ」(主将・諸岡省吾)―。
試合は開始早々からペナルティーがかさみ、あっさりと先制トライを許したものの、相手の出方を見極め、自分たちのあるべき姿を思い出すと、その後は社会人(九州代表はサニックス、CCWJ、九州電力、中国電力の混成軍。リザーブに福岡大が2名)を軽々と圧倒。「前後半とも最初の5分、10分でやることを整理して、残りの30分で一気にいけ」という清宮監督の指示を忠実に実行し、トライの山を築き上げた。
まずは12分、FB五郎丸歩のビッグゲイン(幅の広いステップと、その強さで相手を翻弄。もちろんスキルも健在!)→CTB豊山寛のスーパーパス→WTB三原拓郎のキレキレステップで口火を切ると、その後も名物のドライビングモール、『超人』・桑江崇行のタテ&SH後藤翔太のサイドアタック、頭脳的なインターセプトから再び三原と、『諸岡組』らしさ満点。「意外といけてたんじゃない、俺たち?」、「いや、でもみんなイメージだけだったでしょ?」…。ともあれ、『最強』ぶりを如何なく発揮し、チャンピオンチームとしての使命をしっかりと全うした。
そして点差を広げて迎えた(SOに入った久木元孝成が、「裏が空いているからそこを突け」との指示をこれまた忠実に実行し2トライを演出!)後半ラスト10分、今田圭太と大浦哲平の赤黒デビューこそが、本遠征最大のハイライト。「ちょっとの時間だったけれど、赤黒で試合に出ることができて、本当に幸せだった…」(今田)。「清宮監督には感謝の気持ちで一杯です…」(大浦)。最後の最後に掴み取った栄光の『赤黒』ジャージー。同期も心から喜んだふたりの晴れ姿は、誰ひとりとして妥協することなく戦ってきた『諸岡組』の真髄に溢れていた。
「『諸岡組』として戦うのはこれで最後だと思うと感慨深いですね…」(主将・諸岡省吾)。Aチーム25戦、24勝1敗。悲願のオックスフォード越え、ワセダ史上初対抗戦4年連続全勝優勝、Jr選手権3連覇、12度目の『荒ぶる』、そして「あの」トヨタ戦―。ワセダの歴史に燦然と輝く『諸岡組 最強伝説』。素晴らしき22人に最大の感謝と拍手を。「今日で全てを成し終えました。自分たちの任務も、これでもう完了です」(主将・諸岡省吾)…
<充実の福岡遠征に満足気な笑みを浮かべる清宮監督>
「大学チャンピオンとして、伝統ある朝日招待に来れたことを非常に嬉しく思う。4年生にとっては最後の試合だし、高いモチベーションで、いいラグビーをすることができた。4年生のメンバーはもちろん、8人いる福岡出身の選手にとってもいい凱旋になったし、たくさん見に来てくれた子供たちにとって大きな励み、意義のある試合だったと思う。3年生以下にとっては今日のこの試合からがレギュラーを取るためのチャレンジ。いいところも課題もいくつか見えた。4年生はこれで終わりだけど、3年以下にとっては今日からがスタート。そういう意味ではいいスタートがきれたと思う。九州出身の選手は、入ってきたときから筋がいいことが多い。高校時代に無名の選手でも1年目からBチームに入ってくるような選手がたくさんいるし、これはスクールがうまく機能しているからだと思う。みんな基本がしっかりしている。自分が現役のときもそうだけど、ワセダは九州出身者がいないと成り立たない。そういった意味でもこの朝日招待は意義のあるものだった」
<同期とのラストマッチを心から満喫した主将・諸岡省吾>
「今日はとにかく楽しかったです。久々のこの緊張感、やっぱりいいですね(笑)。最近忘れかけていたものを思い出しました。こういう緊張感はもう一生ないかもしれないですね。そう簡単には経験できないだろうなぁと。ラグビーってやっぱりおもしろいです。今日は今田とぺーさん(大浦)が初赤黒ということで、試合前に『北風』歌ったんですけど、やっぱり嬉しかったですね。久々に揃った4年生はやっぱりいいです。プレーに関してはみんなあの頃の面影はなかったですけど(笑)。スクラムもダメでしたし、コンタクトもしっかりできなくて、人間鍛えるのに時間は掛かるけど、老いゆくのは速いということです(笑)。この遠征で久々に後輩たちと一緒にやって感じたことは、五郎がよくしゃべるようになっているなぁということ。リーダーとしての意識が芽生えたというか、これから引っ張っていってくれそうな感じがして、すごく頼もしかったです。三原もいいトライをして今日で自信がついたと思いますし、孝成も既に4年の雰囲気が出ていてすごくよかった。矢富も相変わらずな感じで(笑)。矢富は歴代のワセダの先輩たちや翔太にはないものを持っているプレーヤーなので、今のスタイルを崩さずに新しいSH像を作って欲しいなぁと。みんな頼もしき後輩です。今回は清宮さんから赤黒を渡してもらうのも最後だと思うと感慨深かった。『諸岡組』の最後としていい試合ができてよかったです。今日の試合を見た高校生や小さな子供たちがワセダにいきたいと思ってくれたらいいなと思います。すべてを成し終えました。自分たちの任務もこれでもう完了です」
<ラストマッチで見事な凱旋を果たした『諸岡組』の象徴・遠藤隆明>
「今日は親や高校時代の友達、後輩など色々な人が見に来てくれて嬉しかったです。やっぱり福岡での試合は自分にとっては特別なものですから。最後はぺーさんと両WTBを形成できましたし、ほんと最高でした。いいプレーができなかったことに関しては悔いが残りますけど、最後の試合をここですることができて本当によかったです。赤黒もこれが最後だし、ようやくすべてが終わったんだなぁという感じです。自分たちは優勝することでたくさん幸せな思いを経験できたので、後輩たちにもこういう思いを味わって欲しいなと思います。ラグビーは楽しいですし、今回はみんな一緒でいい卒業旅行です(笑)」
<自らを高めてくれた4年生に対し感謝の思いで一杯のFB五郎丸歩>
「一応地元なので今日はここでプレーすることができてよかったです。グラウンドもいいですし、秩父宮とはまた違った楽しみがありました。4年生はやっぱりFWが強い。一緒にプレーするのは久しぶりでしたけど、どんなプレーでもミスを恐れず、小さくならずにできましたし、何より安心して試合をすることができました。自分、普段から声は結構だしてましたよ(笑)。ジャパンスコッド入りできたのは、4年生の先輩たちが自分のレベルを引き上げてくれたからだと思うので、恩返しの意味も込めて、がんばってきたいと思います。この1年同じポジションの遠藤さんからは、自分とは違うよさを学びましたし、1番大きかったのは、慎平さんが教えてくれた、ひたむきさ、練習でやったことしか試合ではでないんだということです。そういったことを胸に刻みながら、来年は確実で信頼されるプレーヤーになっていきたいです」