「今日のタマリバのまとまり、気持ち、次に全部ぶつけるぞ」(清宮監督)―。立春の2月4日、日本選手権がついに開幕。見果てぬ夢、打倒・トップリーグへ、『佐々木組』が新たな一歩を踏み出した。
31年ぶりの連覇ボケ、長く続いた試験疲れを払拭すべく、この日のテーマは、試合勘、フィジカル、フィットネスを実践で取り戻すこと。あらゆる手を尽くしてくるであろう相手うんぬんではなく、己との戦いこそが焦点だった。
しかし…、「選手権中の雰囲気とまったく違った」と主将・佐々木隆道が素直に語ったように、分かってはいても、心身ともスイッチが入らず、すべてがユルユルの冬眠状態(春なのに…)。1番大切な戦う意志に欠け、この試合に懸けたタマリバのラグビー愛、魂に未体験ゾーンでのプレーを強いられた。前半稚拙極まりないアタックを繰り返し1トライに終わったばかりか、後半2分にはふとしたスキに失トライ…。獅子奮迅の青木佑輔も忘れかけていたものを口にした。「今日は先輩たちから色々なことを教わった。ひたむきさ、気持ち、ワセダが持っていなければいけないものです。次はそれをトップリーグにぶつけます」―
終始冬眠から目覚めぬままの80分。それでも後半トライを積み重ねられたのは、SH茂木隼人(後半頭から出場)の長く、速いパス、そしてテンポがあればこそ(選手権決勝前日に、堀越正巳大先輩からマンツーマン指導。その効果は絶大?)。「今日よくなかった要因のひとつは、矢富が出てなかったこと。いつもと接点の来る位置が違ったり、BKの立ち位置が変わったり。そういうところで影響が出た」(清宮監督)…。前半の狭く浅いラインから一転、パスで切る大外勝負へ。やっぱりワセダはハーフが命。「僕のパスと曽我部のパス。判断と判断が重なれば、トライが取れると思ってます」(矢富勇毅)。夢の打倒・トップリーグを前に、HB団の重要性を改めて認識させられた。
「今日僕たちは本気で勝ちにいきました。自分たちより大きくて強い相手でも、向かっていく気持ちがあれば必ず勝てると思ってます。次は絶対に勝ってください。心から応援しています」(タマリバ主将・中村喜徳)―。ファンクションで心に響いた大先輩・トツさん(今でもワセダコミュニケーション用語に「トツ」は残っています!)からの言葉。本気、ひたむきさ、ひとつになる…。次はワセダがそれを見せる番。「試合から遠ざかっていると、こういうのはよくあること。いい課題が出たし、いい経験をしたし、何の心配もしていない」(清宮監督)。7日にはトップリーグ・セコムとの合同練習で最後の調整。ワセダの想いも、タマリバ以上にまっすぐ真剣。「次は本気で勝ちにいく。そのために今週一週間できることをすべてやります」(主将・佐々木隆道)…。「ずっと打倒・トップリーグと言ってやってきた。『佐々木組』はまだまだ終わらせない」(副将・青木佑輔)…。そう、2005年『佐々木組』最大のターゲットは、常識の打破、夢の打倒・トップリーグ。「2月12日は絶対に見に来てください。大学選手権優勝以上の感動と興奮をお約束します」(清宮監督)―。この5年ワセダを率いてきた清宮克幸、男に二言はなし。歴史の一大転換点。2006年2月12日、『佐々木組』は伝説になる―
<5年間の集大成、打倒・トップリーグへ自信を見せる清宮監督>
「ゲーム勘、フィットネスを得ることが今日のゲームのターゲットだった。前半はたくさんスクラムがあったし、そういう意味ではFWは目標を達成できたのではないかと思う。内容に関しては、タマリバはよくやって、ワセダはよくなかった。そういうゲーム。でもそんなに問題はない。佐々木はどうでしょう、折れてなければいいですが…。今日よくなかった要因のひとつは、矢富が出てなかったこと。いつもと接点の来る位置が違ったり、BKの立ち位置が変わったり。そういうところで影響が出た。あとは、簡単なハンドリングエラーが3つほどあったのがいつもと違うところ。先ほど話したゲーム勘、試合から遠ざかっていると、こうなるのはよくある。そういう感じです。ずっと社会人と学生の差があると言われているけれど、学生が社会人に勝つ可能性が今年ほど高いのは、格差が広がってから1番だと思う。そういう状況の中、最高の状態で試合を迎えたい。自分が監督になってから社会人と4回やっているけれど、どんどん差は縮まっているとずっと学生には言ってきた。そこでベストパフォーマンスができるか。今日はいい課題が出て、いい経験もして、何の心配もしていない。1番はスクラム。ずっと言い続けてきたようにラグビーはスクラム。そこに拘りたい。次は矢富も問題ないし、五郎丸も昨日軽くコンタクトして、週中の状態でメンバーに入る可能性がある。牛丼食べてフライデーに載るくらいのプレーヤーですから(笑)、復活してくれたら、メディアのみなさんには煽って欲しい。みなさまにネタを提供しているようなものだと思っている。ドンドン書いて欲しい。そしてトップリーグに勝って、ラグビー界のスターを作って欲しい。第一試合の印象?、関東はいつもどおりだったら勝っていたでしょう。トップリーグとトップチャレンジの差はかなりあると感じました。次のトップリーグとの試合は絶対に見に来てください。大学選手権優勝時以上の感動と興奮をお約束します。戦い方は当日のお楽しみ?、いやいや、これまでどおり、やってきたことを出すだけだよ」
<1年の集大成、打倒・トップリーグにすべてを懸ける主将・佐々木隆道>
「個人的にはボールを持ったら前に出られていたし、別に悪くはなかったけれど、FWはモールが組めていないし、BKはミスが多いし、チームとして取りきれていなかった。しかもいつもだったら安全にいくところで敢えて攻めたり…。よくなかったです。FWもBKもユルユルでビックリした。今日が久々の試合だったというのもあるし、この試合に懸ける意気込みが、うちとタマリバとでは違った。普段しないようなあり得ないミスをするのは、集中してないということ。選手権中の雰囲気はなかったです…。清宮さんが問題ないと言ってた?、じゃあ問題ないでしょう。ひとりひとりが激しくいけば問題ないし、僕も心配していません。次のトップリーグとの試合は本気で勝ちにいく。今週はそのために必要なことをやります」
<タマリバの気持ちを受け、打倒・トップリーグを誓う副将・青木佑輔>
「今日の試合は気持ち、ひたむきさの面で相手に先手をとられてしまった。そこをしっかりしないと、トップリーグには勝てないので、来週1週間意識して克服したいです。自分たちにとっては最後の大会、負けたら終わりだということをしっかりと認識して臨みます。昨年も1回戦でタマリバの気持ちに圧倒されてしまって、そうならないようにと言っていたのに、学んだはずの今年も同じことをしてしまった…。トライが取れずにどんどん悪循環に陥った感じです。昨年トップリーグにはFWで負けたと思ってます。スクラム、接点は絶対に負けてはいけないところですし、そこは譲りません。まずはセットプレー。今日はモールディフェンスが甘かったし、アタックもすべてが緩かったので、そこは修正したい。今日はタマリバから色々なことを学べた試合。たくさんの先輩たちからワセダのひたむきさ、しつこさを教えてもらった。次は自分たちがそれを出して、トップリーグに勝ちます」
<ともに老いぼれ? 桑江との同期対決を満喫?したロック内橋徹>
「今日は前半まったくダメでした…。まずコンタクトの時点でひとりひとりが負けていたし、立ってプレーする意識が低かった。さらに向こうがポイントに人数を掛けてラッシュしてきているにも関わらず、自分たちは受けてしまって、テンポも出なかった。僕自身も入りがよくなかったし、意識を変えないといけない。みんなまだまだ走れるのに、ミスでプレーが続かなくて差を見せられなかった。でもトップリーグと対戦する前に、今日があってよかった。感覚は取り戻せたし、試合はこういうものだったということも思い出せた。向こうもものすごくひたむきで勉強になった。桑江にはしょっぱなからペナルティーされました(笑)。コラプシングとか、あいつペナルティーし放題ですよ(笑)。桑江とやるからどうとか、もうそんなんでもないです(笑)。相手を見る余裕もなかったですし。今日は相手より自分たちです。次は今日みたいなゲームはしません。火曜のセコムでコンタクトやスクラムを勉強して、タマリバのようにひたむきなプレーをして絶対に勝ちます」
<この日も抜群の存在感!FWに喝を入れ続けたフランカー松本允>
「今日は疲れました。僕のかわいい銀ちゃんも指を噛まれてしまいましたし(今日は曽我部、池上の計3名がタマリバに指、肩を噛まれました…。そのネタで?ファンクションは大盛り上がり!でもめちゃくちゃ痛かったらしいです…)。今日はフィジカル、フィットネスを取り戻すことがテーマだったけど、そういう意味ではいい試合だった。感覚を思い出しながらだったし、タマリバもテンポよくきていい試合ができた。最初の入りがみんな悪かったし、ひとりひとりに強さがなかったので、これは自分が近場をいってやろうと思いました。隆道もいなくなったし、青さんと俺たちがやらなきゃって(この日は青木と松本です)。相手がどこであれ、意識の高さが必要だったのに今日は全然ダメでした…。豊田にラストパスしたあのプレーは、桑江さんが狙っているのが分かったんですよ。目が合って、これはやばいって。でもやっぱり現役との差です。桑江さん、足がついてこなかったですね(笑)。今日はタマリバにひたむきさ、2人目の速さといった自分たちが社会人相手にやらなきゃいけないことを教えてもらった。もう一度しっかり気持ちを作って、あのレベルに上げていきたい。もしトヨタと対戦することになったら、フラベルも今年でNZに帰ってしまうみたいなので、もう日本には来たくないと思わせるくらい、いってやろうと思ってます」
<大変身? 対ワセダを満喫し後輩たちにエールを送る桑江崇行>
「いやぁ楽しかったです。後半3分までは勝ってたんですけどね(笑)。今年のワセダはすごくいいチームだと思います。ひとりひとりは目立たないのに、みんなすごくがんばっている。今日はタマリバの方がありましたけど(笑)、ひたむきさもあるし。ただ松本に抜かれたのだけが心残りです(笑)。いつもどおり、今までどおりひたむきにやれば、トップリーグに勝てると思います。ワセダと試合をするのは本当に楽しい。来週は僕も応援に行きます(みなさん、この言葉覚えていてください!)。かわいいかわいい後輩ですからね(笑)」