永遠に解かれないとさえ思えた笑顔なき円陣、久方ぶりに感じた重苦しい空気…。まさに屈辱。気持ちを入れ替え、必勝を期したはずの新生ワセダは、またしても「勝つ」ことができなかった。己に負け、帝京に負け、関東にも負け―
この日は朝一・一発目・帝京大戦の入りがすべてだった。セブンズのセオリー、戦術、自分たちのやるべきことを頭では十分に理解していても、体がまったく動かず(動かさず?)、アグレッシブさゼロ。未だ目がさめていないようなマッタリした展開に終始し、自分たちの色をまったく出すことができなかった。
前半2分、5分とあってはならないターンオーバーから立て続けにトライを奪われ、0-12。自分たちから仕掛けることを再確認して臨んだ後半は一転、茂木、菅野の「勝負」で逆転に成功したものの、今度は「我慢」ができず、ラストワンプレーで敗北の憂き目にあった。
準備してきたことをまったく出せず、イーブンボールでも負け続けた最悪の敗戦。「みんな硬くて、自分たちのいいところを全然出せずにあっという間に終わってしまった。今日は帝京大戦がすべてだった…」(三井大祐)。
気を取り直して臨んだコンソレーションでは、青山学院大、道都大を堅実な試合運びで下すと、大先輩・堀越監督率いる立正大には、唯一大きな相手にも怯まず(喜んで)タックルに入る『外人キラー』・松田純平の超ハードタックル×4と、キャプテン今村の引きの強さで辛くも抽選勝ち(こちらもラストワンプレーで追いつかれ…)。初戦敗者同士のトーナメントながら、神様が用意してくれたとしか思えない『関東学院大』との決戦まで辿り着いた。
「ワセダに負けは許されない。相手は関東だぞ」―。絶対に絶対に、どんなことがあっても、どんなチームでも、勝たなくてはいけない宿敵を相手にしての大一番。願ったり、叶ったり。気合も十分、初戦敗退の汚名は消えなくとも、あとは最後の気力を振り絞り、目の前の敵にすべてをぶつけるだけだった。
しかし…。開始早々の1分、幸先よく先制トライを挙げたものの、相手の高いボール保持力に「我慢」「勝負」することができず、その後はズルズルと後退。若野の80メートル爆走トライで7点差に追い上げる場面こそあれ、関東のアグレッシブさに終始後手を踏み、今季初対戦で痛すぎる完敗を喫してしまった。「勝たせてあげられなかったのは僕の責任です…」(久木元孝成)。「絶対に負けたらアカン相手だった…」(三井)。
ここ数年、定めたターゲットに対してことごとく結果を残してきたチームが、まるで勝ち方を忘れてしまったかのような足踏み。まだまだ春先、されどチームの土台を作るのも春先…。ワセダがなすべきは、この先勝って勝って勝ち続け、揺ぎ無い自信を取り戻し、春の終わりに関東を粉砕すること。夕刻の秩父宮、長い円陣がようやく解けると、リーダー・三井大祐は意を決したように口にした。「今シーズンワセダが負けるのは今日で最後だと決めたし、みんなともそう約束しましたから」―
<またも結果が出せずに責任を感じる監督・久木元孝成>
「今日は負けてはいけなかった…。歴史的には慶應と明治、今は関東には絶対に負けてはいけないのに…。屈辱です。僕がこんなに悔しいということは、学生たちはもっと悔しいと思います。勝たせてあげられなかったのは僕の責任です。ただ、この経験を経て田邊や大島が関東には絶対に負けてはいけないということ、赤黒への想いというものを分かってくれたら、それは幸いなことかなと。YCACも今日もコンタクト負けが大きかった。ワセダは小さいメンバーで試合をしているから、相手もガンガン来る。そこで負けてはいけなかったんですけど…。Aチームのメンバーはこれをバネにして6月最後の関東戦でやり返せるように。僕自身も最大のサポートをしていかなくてはと思っています」
<攻守にフル回転 今村とともにチームを引っ張り続けた三井大祐>
「まず負け続けていることはよくないことで、その負け方も最後の我慢比べのところで負けてしまっている。そこが気になるし、今の自分たちに足りないところ。ワセダは我慢比べで負けてはいけないチームなのに。今日は最初の帝京戦が大きかった…。帝京との試合はみんな硬くて、自分たちのいいところを全然出せずにあっという間に終わってしまった感じで。練習でできていたことが、試合では出せないというのがあって、そういう空気を作るのは4年生の仕事だし、下の奴らがやりやすいようにするのが4年生の仕事。僕たちの力が足りませんでした…。ワセダはどこにも負けてはいけないということを4年が下の奴らに教えないといけなかった。最後は絶対に負けたらアカン相手に負けてしまった…。すごく悔しいし、やらなきゃいけないことがたくさんあります。もう今シーズンワセダが負けるのは今日で最後だと決めたし、みんなともそう約束した。そうするべく、みんなでがんばっていきたい。個人的には全部終わったときに、後悔だけはしたくないと思っています。すべてやり切った、出し切ったと言って終わりたい。そしてチームとしては絶対に優勝する。それもみんなと約束しましたから。やらなくてはいけないこと、たくさんあります…」
1回戦 対帝京大 14-19(前半0-12、後半14-7)
先発メンバー:菅野朋幸(4年)、谷口拓郎(4年)、豊田将万(2年)、茂木隼人(4年)、三井大祐(4年)、今村雄太(4年)、若野祥大(4年)
交替:小峰徹也(2年)→豊田(後半1分)、大野雄也(3年)→若野(後半4分)
得点者:茂木1T、菅野1T、三井2G
コンソレーション1回戦 対青山学院大 33-0(前半19-0、後半14-0)
先発メンバー:菅野、谷口、豊田、茂木、三井、今村、若野
交替:上田一貴(2年)→谷口(後半1分)、佐藤晴紀(2年)→豊田(後半1分)、田邊秀樹(1年)→三井(後半4分)
得点者:菅野2T、今村1T、豊田1T、若野1T、三井3G、田邊1G
コンソレーション2回戦 対道都大 21-0(前半7-0、後半14-0)
先発メンバー:菅野、谷口、小峰、田邊、三井、今村、大野
交替:松田純平(3年)→小峰(後半0分)、佐藤→今村(後半0分)、大島佐利(1年)→菅野(後半3分)
得点者:今村1T、谷口2T、三井3G
コンソレーション準決勝 対立正大 17-17(前半7-10、後半10-7、抽選勝ち)
先発メンバー:菅野、谷口、豊田、茂木、三井、今村、若野
交替:松田→谷口(後半2分)
得点者:菅野1T、谷口1T、今村1T、三井1G
コンソレーション決勝 対関東学院大 17-33(前半5-12、後半12-21)
先発メンバー:菅野、谷口、豊田、茂木、三井、今村、若野
交替:松田→谷口(後半1分)、田邊→三井(後半5分)、佐藤→若野(後半5分)
得点者:若野2T、菅野1T、三井1G