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2024
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1年早慶 勝てなかったのか、負けなかったのか…


 「これだけミスしても、ラインアウトがまったく取れなくても、ディフェンスさえがんばっていれば絶対に負けないんだ。今日はそういう試合。お前ら負けてないんだからな」―。試合後のロッカールームに響く、元祖『軍曹』・後藤コーチの激しい檄。ワセダラグビーとは何たるか…。自分たちは何をすべきか…。まるでお通夜かのような雰囲気の中、未来の赤黒戦士たちの心にまた新たな感情が芽生え始めた。
 我慢。最悪のコンディションで行われたこの日の試合は、とにかくその一言。花園準V・桐蔭学園トリオ(3,4,8。特にこの日のキャプテン8番松本くんは別格の存在感。昨年末同校が練習に訪れた際からこの3人は光ってました…)を擁する、自分たちより明らかに大きな相手を前に、FWは後手に回り、ひたすら耐え続けるしかなかった。FWは黒子に徹し、BKで勝負して勝つ―。描かれていたシナリオは明治戦とまったく同じものだった。「FWは本当によくがんばってくれたんですけど、自分が…」(ゲームキャプテン・櫻井朋広)。
 接点で負けながらもFWはボールをしっかりと確保した。テンポのいい球も幾度となく供給した。しかし…、猛烈な雨で自慢のBK陣が著しく自由を奪われたことに加え、「それってOKなんですか」的な位置からボンボン飛び込み、飛び出してくる相手にSHがことごとく潰され(ワセダ全般として、ブレイクダウンが弱いということでもあります)、あの胸のすくような明治戦の再現とはいかなかった。「僕がしっかりと捌いていれば、違う展開になっていたはずで…」(櫻井)。チャンスの度に飛び出すBKの致命的で自虐的なミス。雨の日はやっぱりFWの大きい方が勝つのか―。
 前半は相手SOの超ロングキック(すごかったです。陣取り合戦で完敗…)に萎えまくり、0-5。後半2分、SO村田のランで逆転し7-5。27分、再び明治ばりの執拗なゴリゴリに屈し、7-12。34分、WTB大島のカウンターを基点に、早田が立ってつないで12-12。相手キッカーにとにかくプレッシャーを掛ける、近場を埋めて必死にタックルを繰り返す、櫻井を守る。後半はこの3点だけをひたすらやり続け、時に攻め込まれながらも大半を敵陣で過ごし、最低限やるべきことだけは実行した。「確かに勝てなかったけれど、あの状況できちんとできているところはたくさんあった。そこはしっかり評価してあげるべき」(後藤コーチ)。変わらずミスは続発。セットも最後まで不安定。ゲームメイクもちょっと稚拙(SO村田はかなり悔いが残ったみたいです…)。でも、最後の最後まで心を折らずに守り続けられたことだけは合格点。まだまだまだまだやらなければならないことはたくさんあっても、この学年には耐える、我慢できる素養はあり。あとはいかにして首脳陣が鍛え上げるか、これからが勝負になる。
 最悪のコンディションの中、互いに意地をぶつけ合い、12-12。ワセダは勝てなかったのか、それとも負けなかったのか。ワセダが弱いのか、慶應が強いのか…。「今日で日本一だというプライドは納めます。慶應ともう一度、今すぐにでもやりたいくらいです」(櫻井)。毎回、毎回、色々なことを教えてくれる『早慶戦』。ワセダもこれで変わらなきゃ…。こんな勝負なら、この先いつでも、どこでも、何度でも―



<痛恨のドローに自らの不出来を反省するゲームキャプテン櫻井朋広>
「んー、やっぱり悔しいですね…。今日反省すべきはまず自分です。FWはがんばってくれていたんですけど、捌けなかったのが勝てなかった要因。ここでクヨクヨしてもしょうがないので、しっかりと前を見てやっていきます。僕は高校時代から慶應とやってきたので、彼らがレベルアップしているのが分かっていましたし、コンタクト、ディフェンス、今日はすべての点で負けていました。やるのは監督でもコーチでもなく自分たち。もう一度しっかりやり直していきます。FWは本当によくがんばってくれました。チームということで言えば、個の能力うんぬんよりも、ディフェンスの時に誰かが一言発する、ここは守ろうぜとかいう声が出ていれば、もっとできたはず。コミュニケーションをもっと多くしないといけなかったです。今日は大人し過ぎました。慶應が相手ならという気持ちが心のどこかにあったんだと思います。今日はとにかく自分です。SHはリズムを作るポジション。相手がボールの上に足を乗せてきたり、色々と小技をしてきてたんですけど、ボールは見えていたので、自分が捌かないといけなかったです。それができていれば違う展開になっていたはずですから。BKはFWに申し訳ないことをしたと言うより、僕の責任です…。でもこういう風に課題が見えるというのは、すごく嬉しいことです。試合に勝てなかったことは悔しいですけど、これでまた新しい目標も出てきますから。今日できなかったことをもう一度やり直したいです。慶應ともう一度やりたいか?、明日、いや今日すぐにでもやりたいです。相手のキャプテンは桐蔭の同級生で、あいつらが狙ってくることは分かってました。藤本(この日の4番。いい選手です)も明治戦の前には、「がんばってくるわ」ってメール送ってきたりしてたんですけど、今日はまったく連絡がなくて、これは絶対何かやってくるなと。分かってはいたんですけど…。もっと最初から、自分たちから向かっていくことが必要でした。今日は負けなかったというより勝ちきれなかったという試合。今日で僕自身もプライドを捨てようと思います。ワセダだといういい意味のプライドは持ち続けたいですけど、自分たちは日本一だというプライドは今日で納めます。そういうプライドだけでこれまでやってきて、相手を下に見ているところがあったと思うので。どんな相手でも自分たちから向かっていく。それでもしできるのであれば、100点取ってやろうって考えでやればいい話ですから。相手にもうこいつらとはやりたくない。そう思わせるのがラグビーというスポーツだと思っているので、これからは改めてそういう気持ちでやっていきます」

<この日の象徴 魂のタックル、あと一歩でトライ奪えず…>