「いやぁ、今日はめちゃくちゃ緊張しましたよ。昨日のミーティングでみんなの顔を見たら急に…」(CTB須藤明洋)。いつ何時、如何なるチーム状態でも、特別な感情に苛まれる『開幕戦』。~初参戦の1年生から上にいるべき4年まで~。境遇の異なる22人が様々な思いを交錯させながら、『新生ワセダ』はその第一歩を踏み出した。
試合は開始早々の6分(昨年もJr選手権初戦のファーストトライは6分でした!)、ゴール前ラインアウトからガッチリとモールを押し込み、不安を吹き飛ばすように先制するも、これが若さと言うべきか、はたまた実戦離れの影響か、前半残りの時間は、あっちへ行ったり、こっちへ行ったりの落ち着かない展開。「切るべきところで切らなかったり、いらないペナルティをしてしまって」(SH三井大祐)…。さらには思いっきりミスも重なり、自らの首を絞め続けた。
そして、これらの状況に輪を掛けていたのが、あまりに気前よくゲインを許したBK陣のユルユル一次ディフェンス。まるで「フリーパス」状態…。浅く広く立つ相手SO(昨年の花園を沸かせたあの伏見工の文字隆也!)と、うまさ際立つインサイドCTB(前監督も賞賛していた東福岡の宮本賢二!)の絶妙な仕掛けにまったく対応することができず、ただ何となく、ズルズルと後退した。「広く浅いラインに対して待ってしまった…」(須藤)。「SOが浅く仕掛けてくるのに対してプッシュが間に合っていなかった。どこかで合わせないといけなかったのに。そこはコミュニケーション。前半ああいう展開(取って取られて)になってしまったのは、そこが要因です…」(三井)。相手が浅いところから仕掛けてくるのに、怖さもあるのか、普通に流す→接点がなかなか来ない→気付けば外で…。そりゃゲインされますわという話。まるで8月26日慶大戦のVTR。この日はハーフタイムにきっちりと修正し(1本いかれかけましたが…)、事なきを得たものの、チーム全体早急な改善が求められる。必要なのは内側からの圧力、コミュニケーション、そしてどこかで前に出る勇気―。頭では分かっていても、すぐに実践できないのは、まだまだ身についていないということか。それにしても法大のセットアタックはBチームとは思えないほどキレまくり。本来ならばあれをワセダが…。
「課題もたくさん出た試合」―。緊張の80分の後、誰もがそう話したように、至らない点も痛いほど感じさせられた。後半は完全にゲームを支配しながら点数は伸びなかった(ミス、ミス、ミス、ちょっとダラケた時間あり…)。それでも、公式戦ファーストゲームで34-10と無難に勝利。この日1番大切だったのは、まず勝利を収めること。「みんなもっともっとできる。もっともっと強くなる」(三井)。そう、ワセダ史上初・Jr選手権5連覇への道のりはまだ始まったばかり。日々勝負して、ひとつひとつ課題を克服しながら、最後には笑う。
この日強い意志でビッグゲインを連発したCTB須藤明洋のように…。今こそワセダ、前に出る勇気と強さを―
<これぞ4年の責任感 攻守に存在感を示したNO8近藤嵩>
「法政は運動量があったのに対して、うちは前半の最後足が止まってしまって、しんどいゲームでした。キックオフ、ラインアウトディフェンス、スクラム…、課題もたくさん出た感じです。ハーフタイムにも言われてしまいましたけど、自分も含めてFWは動き出しの一歩が全然で…。動き出しからの加速も遅かったです…。自分は口で言えるタイプではないので、試合前はとにかくプレーで見せる、プレーで前に行こうと思ってました。僕や肉(鈴木)、関がボールキャリアとして前に出る。松田をはじめ、ついてきてくれる奴はたくさんいますから。前半は自陣にいる時間が長くてしんどかったですけど、そういった状況をいかに凌げるかが今のチームの課題です。今日は取られてしまいましたけど、しんどい局面でこそ耐えられるように。最近のワセダはずっと競る試合がなかったけれど、そこを乗り越える力を持たないと強くはなれないですから。もっと練習からきつい局面で走らないといけないです。FWに関しては、キックオフ以外はスクラムも組めていたし、ラインアウトもまあまあ取れていたかなと。ただ、スクラムも押せるのにタイミングが悪かったりして、取りきるところまではいかない。相手ボールラインアウトもリフトミスで競りきれない。そういうところができれば、もっと楽なゲームができる。今日はスタートしてはまずまず。でももっともっとやれる。法政の奴と話したら、明治の前5は強い。スクラム、ラインアウト、そこだけでやられたと言っていたので、これからは自分たちより大きな相手に対してもしっかりと前に出られるように。次の帝京も強いだろうから、またしっかりとやっていきたいです。今年はとにかく赤黒を狙うだけ。昨年はトヨタに勝ったのをスタンドで見て、すごいなぁと思いましたけど、やっぱりグラウンドに立っていないと意味がない。昨年の追い出しではそれで泣きまくりましたから(笑)。ただひたすら最後まで赤黒を狙い続けます」
<リーダーの力を発揮 若いメンバーをしっかりとまとめあげたSH三井大祐>
「勝つには勝ったけど、課題が多く出た。今日はそういう試合でした。今年掲げている敵陣ラグビーを、前半は全然できずに自滅。自分たちで首を絞めてしまった感じです。切るところで切らない。いらないペナルティをする。そういうものが積み重なって、前半は苦しい展開になってしまった。BKのディフェンスに関しては、相手のSOが浅く仕掛けてくるのに対してプッシュが間に合っていなかった。どこかで合わせないといけなかったのに…、コミュニケーションですね。前半ああいう展開になってしまったのは、そこが要因です。あとはトライを取った後のキックオフを相手ボールにしてしまったり、勝負どころで流れを渡すようなミスをして…。ああなると苦しい。後半は点数はあまり入らなかったですけど、敵陣にいる時間が長かったですし、前半できていなかったところも修正できたかなと。仕留めるべきところで仕留め切れなかったのは、もちろん課題ですけど。今日たくさん出た若いメンバーには、思いきって、自分の思うようにやれって言いました。ミスはカバーするからって。みんなよくやってくれたと思います。とりあえず勝つこともできましたし。でも、みんなもっともっとできる。もっと強くなる。もちろんJr選手権も大事ですけど、自分はAに入るための試合、自分のために一生懸命やることがチームのためになると思って試合に臨みました。本当に1日1日が勝負だし、ライバルにはもちろん、自分との戦いにも勝たないといけない。まず自分に勝つ。そして勝負。チームの雰囲気もシーズンインって感じになってきました。みんな危機感持ってやってます」
<一歩でも前へ!ひとりビッグゲインを連発したCTB須藤明洋>
「今日はめちゃくちゃ緊張しました。今週ずっとしていたってわけではないんですけど、昨日のミーティングでみんなの顔を見ていたら…。最初の公式戦というのもあるし、初めて出る奴もたくさんいたし、オックスフォード戦のリザーブが懸かっていることも分かっていたので。ものすごい緊張でした。試合は久々ということもあって、みんな最初はバタバタしてしまったなと。BKがズルズルと下がってしまって、FWに負担をかけてしまいました。申し訳なかったです…。BKとしては自分たちが前に出て、FWに楽をさせてあげようと言っていたので、そこは悔いが残ります。今日はFWが戦ってくれたおかげで取ったトライばかり。BKはもっと詰めていかないといけないです。ディフェンスに関しては、広く浅いラインに対して待ってしまった…。相手の立ち位置が浅かったら前に出る。それができずに…。後半はそこがしっかりと修正できたので、怖くはなかったですけど、取られてから気付くのでは遅いですから。前半ああいう展開になってしまったのは、ディフェンスのせいです。後半はディフェンスラインを上げて簡単に当たれた。だったら最初からやれよという話です…。個人的にはゲインもたくさん切りましたけど、最後は攣りまくりで。ただ、周りが信頼してくれているので、今はすごくやりやすい。みんなに生かしてもらっている状態です。まだシーズンが始まったという実感は沸かないですけど、よく考えたらもう残りも僅か。1試合1試合、ラグビー人生の最後として、命を懸けていきたいと思ってます。Jr選手権は昨年まででもう十分。5連覇より3連覇です」
<ハーフタイムに懸命の修正を図るBK陣 後半はしっかりと対応>