「こんな試合してて恥ずかしくないんか!」―。ハーフタイムのロッカールームに響いた、最後尾の司令塔・五郎丸歩の激しい檄。明らかに不足した前に出る力、漂う停滞感、飛び交う様々な思い…。対抗戦第2戦、少しのスキも見せないと誓っていた『東条組』は、超魂の相手の前に完全に自由を奪われた。
前半はとにもかくにも、相当に訓練されているであろう(昨年まで教えていたのは…)立教のディフェンスにタジタジ。意を決した、寸分の迷いもないアップ、恐れなき膝下へのタックルにボールキャリアがバッタバッタと倒れ続け、『継続』の精度は著しく低下した。今年対戦したチームのなかで、もっともシャープだったかもしれない相手のディフェンスは、絶対に賞賛されるべきものだったとは言え(選手たちもかなりビックリした様子。本当はワセダがこれを…)、ワセダの単調さも要反省。「舞い上がって、バカ正直に真っ直ぐいきすぎでした。ショートステップ、練習でずっとやっているのに…」。ひとりうまくいなしたとも言えるフランカー豊田将万の言葉は、起きていた現象とワセダの問題点を的確に表していた。
後先考えず?に思いっきり前に出て、飛び込んでくる相手に対し、ワセダは抜きにも、ズラしにもいかず、さらには常に接点に近いところから勝負。ボールをもらう瞬間にはもう相手は目の前 → そのまま真っ直ぐブチ当たる → 思いっきり下に入られる → 自由を奪われ自分からバタバタ倒れる → 2人目が遅れブレイクダウンでしんどくなる → 継続はできても形は崩れ、人数も揃わない → また最初に戻る。ひたすらこのサイクルの繰り返し(理屈抜きのパワーがあれば、それでも崩すことはできたかもしれないですが…。この日はパンチ不足?)。接点を遠くに、早めにボールをもらって勝負する。相手を抜きにいく、ショートステップで裏に出てつなぐ。ラックを捨ててくるところを突いて、ピック&ゴーで前進する。途中で修正するにはしたものの、ワセダのやるべき形、昨年まで崩していたパターンを取り戻すのに、かなりの時間を費やした。「練習でやってきたことを出すのはもちろんですけど、対応力、相手がこうだからワセダはこうするというところを、もっと高めていく必要があると思ってます。前半は連続でミスばかり。そこは相手が強いと一気に行かれてしまう、前半で決まってしまう試合もあると思うので、そこは課題です…」(副将・後藤彰友)。
開始から、相手が元気なうちから(元気なうちこそ?)圧倒するという理想からは程遠かったものの、後半はSO曽我部佳憲の安定した(ここのところずっと。後藤コーチ曰く、いい声出してます!)ゲームコントロールでトライを重ね、トータルで見れば、ギリギリ許容できるであろう「合格最低点」という試合。「まだまだ課題もたくさんあるけど、よかったところはしっかりと評価してあげたい」(中竹監督)。今週土曜日は、群馬県は太田まで出向いて、三洋電機Bチームとの合同練習。思えば、レジェンド・『佐々木組』の分岐点は、1年前のちょうど今頃、10月10日の東芝B戦。もっともっと激しく、強く、ワセダがワセダであるために…。10月14日、野武士との遭遇は、『東条組』のターニングポイントとなるか―
<週末は三洋練! 勝負所へ向け更なる強さを求める中竹監督>
「前半立教さんの堅いディフェンスが続いて、足元、懐に入ってくるタックルに吸い込まれてしまっていた。それでブレイクダウンで劣勢になり、ボールは出るけれど、いいアタックができなかった。それを後半修正できたのはよかった点。ワセダのデキも悪かったけれど、しっかりとしたディフェンスをしてくる相手に対してどう対応するのか。今日の試合はいい経験になった。学生たちにはダメだったと思った選手も多いだろうけど、キチッと修正できたところもあったし、いいゲームであったと思う。まだまだ課題もたくさんあるけど、いいところはしっかりと評価してあげたい。修正できたところは、ブレイクダウン。飛び込んでくる相手を交わして、前に出ることで2人目がしっかりとサポートする。そうすれば、立教もディフェンスで立てなくなる。立教のポジショニングにはかなり仕込まれた力があったので、近場を崩して寄せてから外。修正力はちょっとずつついてきてるかなと。あとはスクラムのローバー。前半はダイレクトフッキングでいかれていたけれど、後半はフランカー、SHがうまく対応してくれた。細かい部分ではあるけれど、しっかりとできたところだと思う。どのチームも20分はタックルがいい。そんななかジワジワいって取れた。そこには色々な要因がある。このチームは選手たちが優秀なので、自分たちで直すべきところは直せるし、そこにスタッフが加えていく形。いつくか取れないところもあったけど、菅野は安定していたし、今日もっともがんばった選手。着実に力を付けてきている。今日は(田中)渉太もチャンスで力のあるところを見せたし、バイスの甲子郎、早田、WTBはこれから本当の競争だと思う。前半で交替した今村に関しては、練習からずっと足の状態がよくなかったので替えた。東条は来週には戻ってくる。夏休んでいたのとは別のところなので、すぐに復帰できる状態。矢富に関しても練習でのケガ。深刻ではないので、パフォーマンスが出ればすぐに戻す。14日に三洋に行くけれど、テーマは完全に個で上回る相手に対してどれだけやれるか。FWであればセット、スクラムを8人でいかに組めるか。アタック&ディフェンスではブレイクダウンのところでいかにやれるか。そこを見たいと思ってる」
<課題は対応力 前半の不出来を悔やむゲームキャプテン・後藤彰友>
「僕はダメだったなと思ったひとりです(笑)。昨年はたしかにチャンピオンチームだったけれど、今年は違う。受けて立つとか、飲んでかかるとか、そういうのはなかったけれど、今日は立教が思いっきり向かってきて、それに対応できずにこういうゲームになってしまった。立教のあの向かってくる気持ち、ひたむきさ、自分たちも見習わないといけないと強く思った試合でした。立教さんのひたむきさをしっかりと学んでこの先戦っていきたいです。ただ監督も言われたように、しっかりと修正できたところはあった。ゲームプランとしては、自分たちの強いところをぶつけようと。序盤は浮き足立ってしまったというか、ああいう状態だったので、まずしっかりいけるところで取ろうということで、あのモールになりました。外で余らせて取るという理想の形にできませんでした…。ハーフタイムみんなで話したのは、1人目が簡単に倒れてしまって継続できていないということ。後半はそこが修正できたことで、外でトライが取れた。ここ数試合とメンバーが替わった影響があったかですか?、SHは矢富、三井、伊勢とみんなタイプが違うので、そういう点ではいつもと違ったのかもしれません。FWのサポートに関しては、人はいるけど仕事はできていなかったというか、ボールキャリアへの声が足りなかったです。つなげる場面なのにダウンしてしまったり、相手が捨ててきてるのにラックにしてしまったり。後半のはじめはピックしにいったことでリズムが出た。それはワセダのセオリーではないけど、前に出ることができれば、自然とリズムも出る。この間も言ったけれど、この修正も後半ではなく、もっと早い段階で。試合中にしっかりと方向性を示せるようにならないといけないです。練習でやってきたことを出すのはもちろんですけど、対応力、相手がこうだからワセダはこうするというところを、もっと高めていく必要があると思ってます。前半は連続でミスばかりでした。そこは相手が強いと一気に行かれてしまう、前半で決まってしまう試合もあると思うので課題です。FWはもっと激しく、もっと強くというのもありますけど、もっとうまさが必要かなと。激しさとかは気持ちで変わるところもありますけど、うまさはもう練習なので。Bの負けは、アウェー、八幡山の明治は違うってずっと言ってたんですけど…。ちょっとでも緩かったらやられるぞって。気持ちが入っていないことはなかったんでしょうけど、ワセダらしさというか、アグレッシブさが足りなかったと思います。今日のAもそうですけど、もっと前半からいかないといけないです。あとはとにかくセットプレー。そこでやられたら勝てないですから」
<本日の『極賞』!安定したプレーでチームを支えたWTB菅野朋幸>
「この間の青学戦ではしっかりと声が出ていたんですけど、今日はまた出なくなってしまって…。外から曽我部をリードすることができませんでした。個人的には立教の低いタックルに対して1発で倒れてしまって、迷惑を掛けてしまった。チームとしてもそう。なかなかゲインすることができなかったですし、ミスも多く、トライを取りきれずもどかしかったです。みんな色々な思いを抱えていたと思いますけど、そこでイライラするのではなくて、しっかりまとまることを意識してやったつもり…、です。でもまだもっともっとできる、やらないといけない。WTBとしても決定力が足りないです。今日は余ったところでしか取れてないですから。しんどいときも自分から勝負してトライを取るWTBになっていきたいです。キック処理に関しては、まだ五郎に頼っている部分が大きいので、もっとやらないといけません。自分から。ここも声が大事です。WTB争いも熾烈なので、そのなかで自分のよさをしっかりと出して、絶対に『荒ぶる』を手に入れます」
<存在感ありまくり! 郡を抜くうまさで前に出続けたフランカー豊田将万>
「もっとやらないといけない試合でした…。相手が何も考えないくらいの勢いで突っ込んできていたのに、ワセダもバカ正直に真っ直ぐいってしまってました。もっと考えてアタックできていれば、違った展開になったでしょうし、テンポも出たと思います。ボールキャリアが倒れすぎたというのもありますし、やってきていることを試合でしていないなと。ショートステップで相手をズラすということを練習からずっとやってきているのに、舞い上がって真っ直ぐいって自滅。そんな感じでした。バタバタ倒れて前にも出れず、ワセダが点の取れないときのパターン。FWはもっと考えてやらないといけないです。後半は相手が疲れたというのもあるし、前も見えて、そこにしっかりと走りこむことができた。それをもっと早い段階で見極められるようにならないと、これからの相手では厳しくなる。あとは個の強さです。昨年の流れとは今年は全然違うので、自分自身もまた新しい気持ちで臨んで、昨年の自分、昨年のチームを超えられるようにやっていきたいです」
<武器はディフェンス 安定した力を発揮し続けるCTB長尾岳人>
「今日はノーペナルティがテーマのひとつだったのに、いらないペナルティをして、前半リズムを作ることができなかった。相手のタックルが下に入ってくるのに、接点に近いところでボールをもらっていて、バチバチ入られる。後半は接点に近いところではなくて、先にボールをもらうことで、リズムが出せたかなと。BKは前半1発で倒れすぎでした。倒れるなとずっと言われているのに、相手に合わせてしまって…。今日は課題がたくさん出た試合です。個人として、常に意識しているのは曽我部さんとコミュニケーションを取ること。それを一番に考えてます。僕からの判断で色々なオプションが使えるように。曽我部さんとの間では、だんだんとできてきているような気がしてます。ただ、FWとのコミュニケーションはまだまだなので、そこはこれからの課題です。自分の持ち味はディフェンス。BK全体としてもだんだんと前に出られるようになってきたと思います。そこは夏にずっと取り組んできたことですし、BKもしっかりと状況を見極められるようになってきたかなと。個人としては、とにかく最後までAチームで出続けたいです。周りのBKはメチャクチャ頼もしい人ばかりですから」
<レギュラー獲りへ名乗り! 決定力を見せ付けるWTB田中渉太>