あちらを立てれば、こちらが立たぬ。どうしても80分間、いい状態が続かない―。ワセダ19-14東海。危なげない内容でファーストフェーズ3勝目こそ挙げたものの、何とも締りのないこの日の試合は、今のワセダJrを象徴していた。
「最後の10分。あれがなければいい試合…」。開口一番、中竹監督もそう呟いたように、とにかくこの日は締めのところの甘さがすべて。集中力を欠いたのか、動きの落ちた者多数…。時が止まったのか、タックルを放棄した者数人…。完封目前、残り数分での連続失トライ。最後まで戦い続けるのがワセダ。終盤でこそ力を発揮するのがワセダ。根負けなどという言葉は無縁(バッコーンとタックル外されました…)。そんな文化が流れているとは到底思えない、余りに「らしくない」最後のグラツキは、それまでのよかったイメージを完全に消し去った。「あの2本は本当にいらなかった。個々が受ける。この間の明治戦もそうですけど、自分たちより大きな相手に受けてしまっては、勝てないです…」(ロック小塩康祐)
誰もが口にしたように後味は「最悪」―。それでも70分間、ゲームは完全にワセダの支配下にあった。思わず拍手・SH伊勢昌幸人のスーパータックル×3(秀逸の一言!)。 浸透度が深まってきたFWの前に出るディフェンス(一発の力は足りなかったですが…)。 そして、いなかったらと思うとゾッとするFB松澤良祐の溢れるセンス(中学時代の呼び名は『北区のベッカム』。サッカーを続けていれば今頃プロ[JFL]???だったとか…)。 1発で仕留めて、すぐさまアタックに転じる『ディフェンディングラグビー』とまではいかないまでも、防御網の破綻はなし。裏に出てからのミスが目立つも、若き才能・フューチャーBKは雰囲気十分。決定力不足で1番欲しかった得点こそ伸びなかったものの、必要最低限のリードは保ち、「負けないラグビー」、「負けない強さ」は見せていた。
しかし、それが「80分」続かなかった。中竹監督が常々唱える「ムラのない、ブレのないチーム」には成り得ていなかった。「一週間の中でも、もっと言えばその日の練習の中でも、まだ波がある…」。シーズン開幕直前、指揮官が口にした言葉を、この日はある意味象徴してしまっていた。あの流れのまま完封で終えていれば、加えて4トライボーナスを取っていれば(痛すぎ…)、イメージはかなり違っていたであろう。ムラを呼んだのは何か…。「それがAチームとBチームの差」(Aもムラはありますが)。その言葉が恐らくはもっとも端的(過去5年間もABの差がないときなど…)。しかし、この試合に関して言えば、ごく限られた人間しかコンタクトスピードを変えられないFWのパンチ不足も大きな要因。「みんなもっと有田を見習ってガツガツいかないといけなかった…」(伊勢)。「有田さん、権丈さんみたく前で…」(小塩)。たとえその試合FWが圧倒できなかったとしても、違う崩し方で勝つのがワセダの伝統。この日も仕事人たちは、最低限の任務はまっとうしていた。でも…、これから待ち受ける相手、5連覇への道を考えると、少しばかり心もとなさが残ったのも確かだった。それが如実に表れたのが、あの最後の10分。コンタクト勝ち、パンチなしで勝てるほど、関東は甘くはないはず―。
「このままだとマズイ…」。ゲームキャプテン伊勢正幸人をはじめ、誰もがそんな思いを共有にしたように、1番危機感を抱いているのは他でもない選手たち。このムラを失くし、70分ではなく80分。FWはもっと強く、もっと激しく。BKも責任を持って仕留めまで。シーズンもいよいよ終盤、「ワセダとして」、このままでは終われない―
<ビッグタックル連発でチームの危機を救ったゲームキャプテン伊勢昌幸人>
「試合の締りが悪かったです…。ハーフタイムに完封しようって言ってたんですけど、1本取られたら…。結局2本取られて後半負けてしまった。点数をあまり取れる感じではなかったので、完封しようって言ってたんですけど…。ミスで自分たちをきつくして、自分たちで走れなくなってしまった。点数が取れなかったのはブレイクダウンのところです。早い球を出せなかったですし、継続してもミスばかりで。このままではマズイですね。今日は勝って反省できるのが唯一の救いです。ディフェンスはよかったかもしれないですけど、しっかりと体を当てられていたのは有田だけでしたし、デカイ相手に対して受けてしまっていた。みんなもっと有田を見習ってガツガツいかないといけないです。自分のディフェンスですか?、まぁ、結構裏にきていたので。自分はそこでしかいけないですから(笑)。できれば自分のコールでディフェンスを動かして、もうひとつ前で止められるように。次の関東戦に向けては、とにかく練習からです。まずディフェンスのセットをしっかりする。アタックはブレイクダウン。BKは裏には出られてますけど、2人目の寄りが遅かったり、無駄なオフロードでミスしてしまっているので、そこを詰めないと(先週と同じです…)。次のことを考えた球だしができていないので、もっと先、先を考えてプレーしないといけないです。個人的にも、もうやるだけ。ライバルが誰とか、ライバルがどうこうではなく、いかに自分がいいプレーをするか。自分との戦いです」
<初ジュニア選手権! 随所に生きのよさを見せたロック小塩康祐>
「初のジュニア選手権ということもあって、今週一週間ずっと緊張してました。リーダーを任されたラインアウトがある程度うまくいってよかったですけど、全体ではいいゲームでなかったです。デカイ相手に対して受けてしまって最後に2トライ。個々が受ける。この間の明治戦もそうですけど、自分たちより大きな相手に受けては勝てないです。まだ次があるので、絶対にやり返します。ディフェンスに関しては、1発目は止められても、2発目、もうひとつ外のところで差し込まれてしまっていた。最後の2発もそこのところ。有田さん、権丈さんみたいに前で止めないといけなかったです。あの2本は本当にいらなかった。完封していたら、いい試合であったと思います。夏の関東などもそうですけど、最後の10分が課題です。個人的にはペナルティのハリーとか、三井さん、伊勢さんからボールをもらえて、何度かいい形で抜けることができたんですけど、そこで終わってしまってました。自分は権丈さんみたいに強いプレーができるわけではないので、うかすプレーをしないといけない。うまく継続することができませんでした…。裏に出てからの継続、そこです。このままシニアに居続けられるように。僕みたいな人間にはチャンスは何回かしかない。今日はそのうちの1回を逃してしまった。僕や丹下や垰田みたいな人間が、推薦組に負けてしまっては、ワセダに入った意味がないですから。とにかくがんばります」
<久々の復帰! この日も実戦派ぶりを見せつけたWTB早田健二>
「今日は久々と言うこともあって疲れました。久しぶりの試合で楽しかったんですけど、試合内容的には…。最後が中途半端だったというか、締めが悪かったです。試合の入り、前半はよかったので、後半もそのままいきたかったんですけど…。メンバーが替わってコミュニケーションが取れていなかったところに穴ができて、そこを抜かれてしまった。もっとコミュニケーションをしっかりと。改めて重要性を認識しました。トライがあまり取れなかったのは、BKラインが少し浅くなってしまったことと、ノックオンなどのミス。もっと基本に立ち返らないといけないです。前半は相手の攻撃をしっかり防いで、よかっただけに…。あとは敵陣ラグビーをもっとしっかりすること。1年目ですけど自分の力を100%出して、これから上に絡んでいきたいです」
<こちらも久々! 攻守に芯を通したFB松澤良祐>