「覚悟を決めろよ。あいつらに××見せてやれ」(後藤コーチ)―。Jr選手権セカンドフェーズ準決勝、今季3度目、「因縁」の早明戦。『スウィフト』、プライド、激しさ、狂気…。これがワセダのアイデンティティ。意を決した『東条組』セカンドチームは、ハートの強さで重戦車を解体した。
とにかくこの日は入りの集中力が試合のすべて。キックオフクリーンキャッチから始まった息をもつかせぬ怒涛のラッシュは、ワセダの真髄に満ちていた。まずは1分。ファーストラインアウトからの仕掛けでSO村田賢史が判断よく裏へ抜け出すと、フォローについたCTB大島佐利が瞬く間にトライ。10分にはスクラムから左右の揺さぶりでWTB三原拓郎(9年間続けてきた11番に別れを告げた瞬間ブレイクしてます!)が、17分にはカウンターからの継続でSO村田がまたも相手ディフェンスを切り裂き、一瞬にして勝負を決めた。この村田のトライは何とな~くディフェンスを外し続け、60メートルを走りきる超ビッグプレー(普通ならありえない?『村田大サーカス』?)。強くはない、特別速くもない。けど抜ける。9月、10月の潜伏期間を経て一皮向けた司令塔は、間違いなくこの日のゲームを動かしていた。あのとき言った言葉。「今度は明治を跪かせたい…」。日々真価を続ける若き才能は、見事なまでにその言葉を体現した。
そして、この日忘れてはならないのが、何と言っても重戦車と互角以上に渡り合ったFW陣の奮闘。スクラムはマイボール安定供給(ときにプレッシャーを懸ける場面も!)。ラインアウトもブレなし。モールディフェンスもまずまず。集散、激しさ、シャープさでブレイクダウンも完全支配し、ここでもワセダのアイデンティティを見せ付けた。「いいディフェンス、いい粘り、今日は間違いなくFWのおかげです」(FB佐藤晴紀)…。
そしてそして、そんな一枚岩の8人中でも特筆すべきは、せずにはいられないのが、No8有田幸平のグレートパフォーマンス。とにかくこの日は(も?)激しさがひとり別次元。1歩も下がらないディフェンス、誰も真似できないジャッカル、ブレイクダウンでの怒涛のオーバー。アタックでもこれでもかと前に出続け、相手を次々に跳ね除けた。「今日は絶対にやってやろうって。フェーストフェーズではペナルティ、シンビン、僕のせいで負けてましたから…」。借りを何倍にもして返す、まさに『プライド・有田祭り』状態。男の中の男?、有田の存在なしにこの早明戦は語れなかった。あの御方もコーチ陣も、『清宮体制』下の人間が見たら、みんな目を丸くしたに違いない。
勝負のとっくについた試合終盤、自陣ゴール前に釘付けにされ、最後には認定トライを取られてはしまったものの、12月3日の本番を前に「やってはいけないこと」、「早明戦の掟」を身をもって確認しながらの大勝は、ある意味では最高の形。「今日の試合は相当なヒントになった。Aチームにとっても自信になると思うよ」(中竹監督)。「重いFWに対して、ワセダはテンポ。次につながるゲームです」(ゲームキャプテン・伊勢昌幸人)。「帝京大戦にリザーブを全員使いたいから」の理由で、主務会議で事前に申し合わせがなされていた18日or19日の準決勝開催を断固拒否(もうひとつの準決勝・関東対東海は18日に…)。挙句「協会に言って決勝の日を変えてもらう」とまで言ってきた明治に、聖地・上井草で執念のリベンジ。この日のパフォーマンスは、ライバルに対しての意思表示。俺たちワセダは、明治の「ゴリ押し」には屈しない―
<ひとまずは快勝もしっかりと12月3日を見据える中竹監督>
「会心のゲームとまではいかなかったけれど、課題も残してファイナルに進めたのはよかった。キックオフに関しては、シニアのなかでシーズンベストだったんじゃないかな。ここが大きかった。今日のゲームは12月3日の早明戦に向けて相当ヒントになったね。後半釘付けにされた場面。あのペースにはまるとやっぱり苦しい。後半の後半だったからよかったけれど、最初からだと大変なことになる。そういう意味でも最初に2本取れたのは大きかった。釘付けになった場面は、脱するチャンスはあったのにペナルティをしてしまって自滅。その教訓、課題を克服して完成だね。FWはよくがんばってくれた。今日の試合はAチームにとっても自信になると思うよ」
<この日も抜群の安定感で勝利をもたらしたゲームキャプテン・伊勢昌幸人>
「今日は試合の入りがよかった。いいテンポでトライを取って、相手の重いFWに何もさせずに勝つ。描いていたとおりのゲームになった。Bは毎回試合の入りだけに懸けてますから(笑)。最後までもたなくてもいいからとにかくそこに集中する。その思いを表すことができた。アタックでは順目順目にいってドンドン球を出そうと。ブレイクダウンに関しても、村田を中心にひとりひとりが前に出たことで、相手に何もさせなかった。練習からやってきたとおりです。後藤さんの言葉ですか?、そこまではいかなかったですけど、次は見せてやります(笑)。ただ、今日も自分たちで苦しい局面を作ってしまっていたのは反省点。次までに克服して、決勝では完封したいです。Bチームはみんな赤黒を目指してやっている。もちろん3日の早明戦にも出たいし、選手権にも出たい。Bチームはちょっとずつ階段を登れていると思います。でもまだまだ。毎回毎回、前を上回るいい試合をしていきます。今日は重いFWに対して、ワセダのテンポ、BKのワセダ。3日の早明戦につながる試合だったと思います」
<キーマンとしてスクラムで奮闘したプロップ宮崎潤野>
「いい試合だったと思います。ただスクラムに関しては、うまく当たることができなかったというか、ターンオーバーを狙ってたんですけど、横との連携、後ろとの連携がうまくいかなかったです。押す場面もあったんですけど、もっと支配できると思っていたので…。最後は後手に回ってしまいました。ペナルティから釘付けにされてしまって、そこは課題です。みんなでペナルティはなしって言ってたんですけど、いつもの調子でやりすぎてしまった感じです。モールについても、低く入って相手をバラバラにされることができていたかなと。でもやっぱり作られると強いです。密かにスクラムトライしてやろうと思ってたんですけど、持越しです。病気で1年間ラグビーができなかったことを思えば、今ここにいることはすごく幸せです。できれば上で活躍したいと思ってます」
<ベストパフォーマンス! 激しさでゲームを支配したNO8有田幸平>
「今日は絶対にやってやろうと思ってました。フェーストフェーズではペナルティ、シンビン、僕のせいで負けていたので。試合は前半はよかったですけど、後半はもっとやらないといけなかった。釘付けにされているなかで、自分が流れを変えるプレーをしたかったです。今日はチームでボールを動かして勝とうと。臼井をはじめ、みんなタテに強いプレーをしてくれて助かりました。スクラムは結構止まったと思います。みんな体を張ってくれて、バックローとしても楽でした。モールも最後は甘かったですけど、全体としてはまぁよかったかなと。今日はプレーしていて楽しかったです。あのパス(相手を外しまくった後、ハンドオフしながら左手一本でスーパーパス!)ですか?、あれは巴山さんから放れって声が聞こえたので(笑)。今日は勝ててよかったです。ただ、ペナルティが多かったことは反省。松田、笠原さん、両ロックがディフェンスでしっかり前に出てくれたこともあって、明治FWの圧力は感じませんでした。前よりボールを動かしたことで重さを感じなかったですし、ワセダの方が激しいということを見せられたと思います。外に振って、相手を疲れさす。今日はBKですね。個人的にもちょっとずつゲームの流れが分かるようになってきた。あとは赤黒を着られるように。早明戦、選手権に出たいと思ってます。今日で一応借りは返せました」
<抜群のアタックセンス! チームに安定感を与え続けるFB佐藤晴紀>
「今日はFWがすごくいいディフェンスをしてくれてよかったです。とにかくみんな入りに懸けてました。そこの勢いでテンポを上げて、明治を振り回す。前半は思惑通りの展開でした。あのトライ(相手を翻弄し、かなりスーパーでした!)はトイメンが知り合いだったから抜けただけです(笑)。内に見せれば足止まるかなと。BKは明治のディフェンスがよくないこともあって、自分たちから仕掛けていいリズムでできた。ブレイクダウンもいい球がでましたし。BKは最近リリースのところを意識してやってきた成果が出たと思います。外のブレイクダウンはそんなになかったですけど。FBをやるようになってから、味方を外から見ることができて、全体が見えるようになってきた感じです。久々だったんですけど、自分でもスピードに乗れているかなと。でもCTBもやらなくてはいけないと思ってます。今日はAチームに繋がる試合。BKも近場のタテタテ、外にいかれても全然怖くない。FWさえ止めればって感じです。今日はFWのおかげ。いいディフェンス、いい粘りだったと思います。関東はファーストフェーズで勝ってますけど、次は目の色を変えてくると思うので、自分たちも今日以上の試合をして勝ちます。早慶戦も出たかったですし、次の早明戦も出たいと思ってます」
<『今田無敗伝説』この日も炸裂! ワセダC、慶應Bを圧倒!>
Jr早明に先立って行われた慶大B戦は、対外試合今季無敗・超気合のCチームが攻守に渡り相手を圧倒。固いディフェンスから一気に切り返す(攻め込まれる場面こそあれ、ターンオーバーを連発!)『ディフェンディングラグビー』で、ライバルを完封した。この試合1番の輝きを放ったのが、最近影を潜めていた?SH茂木隼人。シーズンベストとも言えるタックル(魂のタックル顔負け!)、冷静なゲームコントロールは拍手もの。SHコーチも絶賛の仕事ぶりは、天晴れの一言だった。
早慶明が一堂に会した夢のような一日にグッドゲームを連発。この日の茂木のように4年があがく、魅せるのもまだまだこれから。ワセダは貪欲に直向きに、どこまでも走り続けます!