やればできる!…ではなく、最初からやりましょう!― 思わずそんな言葉が出てきてしまう、何とも評しがたい不思議な不思議な80分。光と陰、天国と地獄、強さと弱さ。『権丈組』セカンドチームは、要検証の二面性を覗かせた。
前半は誰もが口を揃えた様に、最悪にして最低の試合。攻守ともまったくセットできずにドッタバタ、統率感ゼロのディフェンスで大外をブレイクされ、キックを蹴れば同じ距離を走られた。開始早々、そこらじゅうに転がっていたビッグチャンスを自ら手放した時点でプッツンしたか。ワセダらしさの欠片もない、見るも無残な戦いぶりで、気付けばスコアも離された(0-26)。「気持ちというか、相手を殺してでも~というものが足りなかったです…」(ゲームキャプテン・後藤悠太)
ワセダのラグビーはやっぱり気持ち!勢い8割、スキル2割!迎えた後半、ギラギラした男たちが登場すると、状況が一変した。まずは開始からドドーンと2発、CTB大島佐利が強いプレーでトライを演出すると、小休止を挟み、10分過ぎからは完全に確変モード。大島佐利、佐藤晴紀、中濱寛造(前半からいましたが…)の魅惑のトライアングルでガンガン前に出て、中村、渡辺の両フランカーがきっちりと反応する。SO宮澤正利、CTB井上隼一も抜群の仕掛けで勢いに拍車を掛け、スーパートライラッシュを導いた。トライ → キックオフ → 外 → トライアングルで100%ビッグゲイン → 気付けば花道…。途中からはまるでVTRの繰り返し。またそこにいくのかと、またそこをいかれるのか…。2つのノーホイッスルトライに、3連続ノーホイッスルトライの離れ業で65点。テンポ抜群のアタックは、一転ワセダらしさ満載だった。「後半から入ってきた奴らには、やってやろうというのがすごくあって、一番の違いはそこだったと思います…」(ゲームキャプテン・後藤悠太)。まさに激変。大島佐利、佐藤晴紀、渡辺千秋、宮澤正利。プラス目覚めた(よさを引き出してもらえた?)中濱寛造、中村拓樹、井上隼一、これらの男たちは、秀逸の一言といったところか…。
終わってみればリーグ戦1部校に快勝(外国人留学生は出場せず)も、「あの前半があるので…」(ゲームキャプテン・後藤悠太)と言う様に、チームとしては当然ながら笑顔なし。やればできる!ではなく、最初からやりましょう!常にMAX!それがワセダ。これが上井草の試合でよかった。本当にいい教訓。こんなゲームは、もう二度と―
<最終的には大勝も反省の弁を述べるゲームキャプテン・後藤悠太>
「あの前半がありますし、今日は決していい試合とは言えないです…。今週はディフェンスでのノミネート、アップ、順目へのアタックをやってきたので、そこを出そうと思っていたんですけど、まったくでした。気持ちというか、相手を殺してでも~というものが足りなかったです。後半から入ってきた奴らには、やってやろうというのがすごくあって、一番の違いはそこだったと思います。前半は最低。チームとしてはいい試合だったとは言えないですね。後半は大島が最初にいいスピードでガンガン行って、強いプレーをして、それに引っ張られてみんな乗っていけたという感じです。キャプテンとしては、チームを前半に変えられなかった反省だらけで…。個人としても、SHをやっている時間がすごく短くて、正直分からないことだらけです。モールのコントロールしかり、BKのアタックしかり…、SHの視点ではまだまだ分からないことばかりで。なので、ひとつひとつの練習、試合でどれだけ自分で吸収できるか。常に三井さんを見て、どんな場面でどんなコールをしているのかを聞いて、あぁこういう場合はこうするんだと吸収していきたいです。兄貴には聞かないかですか?、そこはまぁ兄弟のアレがあるので(笑)。兄を超えたいとかも特には思いません。とにかく目標は『権丈組』で『荒ぶる』を取ること、そしてそこに自分がいること。そのために兄を超えなければいけないとか、矢富さんがとか、三井さんがというのがついてくるのであれば、もちろん意識はしますけど」
<抜群のセンス! 後半から出場し流れを変えたフランカー渡辺千秋>
「前半は正面でタックルを受けてしまっていたし、単純なパワーでは勝てないので、とにかくBK中心に回そうと話してました。(中濱)寛造は裏に出て繋ぐのがうまいですし(後半はスーパーハンドオフ連発!)、自分はとにかくそこをフォローすることだけを考えて。もうひとりのフランカー中村がスイープを頑張ってくれた分、自分は走ることができました。後半からだったということもありますし。後半はとにかく前に出る気持ちです。前半はキレイにやろうとし過ぎていたので。FWもBKも前に強く。あとは気持ち。明日のことが頭にあったのか、みんな守りに入っていて、ワセダらしさがなかったです。最後には勝ちましたけど、チームとしては反省だらけです。昨年はケガばかりしてチームに迷惑を懸けた。今年結果を出さないともう後がないと思ってます。フランカーとしてはタックルをするのは当たり前。自分はプラス、周りにはないアタック力でアピールしていきたいです。慶應戦のリザーブに入ることができて本当に嬉しい。ずっと赤黒を目指してやってきたので、明日は出る機会があれば思いっきりがんばります。昨年はCチームとして新潟に行き、目の前で慶應に負けるところを見たので、その雪辱です」
<羽生コーチの秘蔵っ子? 中村拓樹はこの日も抜群!>