ミッション:いかなる苦境にもブレない芯の強いチームに―。敵は己のなかにアリ。いかに自らをコントロールし、チームとしてひとつになるか。あの『夏関東』から一週間、ちょっぴり大人になった『権丈組』は、自らの手でその殻を打ち破った。
スクラム、ラインアウト、ブレイクダウン…。8月19日、あの戦いを通じて多くの課題が出こそすれ、この一週間、もっとも強く意識されたのは、真のチームワークとセルフコントロール。思いどおり、うまく回らないときこそ、チームとしての真価が問われる。ミスが起きても必要以上に他人を責めない。どんな苦しい状況でも決して自分たちから崩れない。中竹監督の想いと、学生リーダーたちの自覚と気付き…。夏合宿の締めくくり、この日のゲームではその取り組みの跡が随所に見られた。
試合の入り、流れ、空気は『夏関東』とどこか同じ。イマイチ安定しきらないセットプレーに、ポロポロと飛び出すミス。相当に気の張っていたと思われる法大の才能(BKはかなりものです)がこれに絡み、なかなか主導権を握ることができなかった。何となくシックリこない。『夏関東』の後だけに余計に感じる何とも言えない閉塞感。ん~。しかし、この日のワセダは負のスパイラルに陥ることなく、しっかりと自分たちでその状況を打開した。ほとんどアタックすることなく迎えた6分、ペナルティからのハリー1発でインゴールをこじ開けると、その後は完全にゲームに支配。キック連発の相手に対し自陣で過ごす時間も多かったものの、しっかりと我慢しターンオーバー。一度ボールを手にすれば、2,3の継続で簡単に相手ディフェンスを無力化し(気付けば前が空いている?)、気持ちよくトライの山を築いていった。
なかでも、スキッパー・権丈太郎のビッグゲイン連発は間違いなくシーズンベスト。体で示すだけでなく、声を出しチームのベクトルを常にひとつの方向に統一する。『夏関東』の経験で、チームは生まれ変わったか。自ら取り乱すことのない、スキを見せない戦いぶりからは、頼もしさが感じられた。「チームワーク、そのためのセルフマネジメント。今日も崩れてしまいそうなところで、自分たちで立て直して、乗り越えることができたのは大きな成長。関東戦でそのことに気がつこうって。たんなる仲良しではなくて、本当のチームワーク。そこに気がつかないとダメだと話をしたら、練習からチームとしてのコミュニケーションが上がって、リーダーが中心となって変わることができた。これはすごく大きなことだね」(中竹監督)…。
夏のメインテーマ・ディフェンスでも確かな成果を出し、これでいよいよ『権丈組』は聖地へ帰還。「夏でチーム全員が自分たちはこれでいくんだってカラーが見えたし、それを意識して練習、試合をすることで、こうして結果も出すことができた。これで自信もついたと思う。今年のワセダはチャレンジャー。1戦1戦全力を出して、全部ノートライに抑えて勝ちます」(主将・権丈太郎)。あとは自分たちと常に向き合い、すべてで「結果」を残すのみ。来るべきシーズン、ついに『権丈組』がその真価を発揮する―
<できるのなら最初から… Bチームは締まらない内容に要反省?>
関東制圧、立正リベンジと着実に結果を出してきたセカンドチームも、この日はイマイチ。フッカー有田隆平のスーパーセービング、CTB坂井克行のビッグゲイン連発(アタックは今村級?)を転機にスコアでは圧倒(61-19)したものの、全体的な緩さ、まったり感は80分間拭えなかった。Aはもちろん、Bに気を緩めている暇などなし。赤黒めざし、常に全力、常に勝負。Bチームはこの日のデキに要反省…
<チームワーク、セルフコントロールに成長の跡を見る中竹監督>
「夏合宿の締めくくりとしてはいいゲームだったね。関東戦では2本取られてしまったけれど、3週間やっていくなかで、ディフェンスの精度、圧力が増して、力をつけていることは感じていたから、試合でそのことを証明して欲しいと思っていた。今日こうして結果が出たことで、しっかりと確認することができた。ヒヤリとする場面はいくつかあったけど、3点に抑えることができたのはよかった。関東戦でほとんどなかったアタックに関しては、もっとやりたかったという感じ。特に前半は少なかった。ペナルティからももっとテンポよく攻めたかったし、相手のキックに対しても、もっと大きくボールを動かしていきたかった。自分たちのペナルティでリズムを掴みきれないところもあったしね。そんななか73点取れたことはよしとします。ブレイクダウンについては、まだまだ全然。今日も1人目が簡単に倒れてしまっていたし、コンタクトシチュエーションでまだ雑なところがある。ここはもっともっと拘って、徹底してやっていく。関東戦の課題だったセットは、この夏でやりたいことはハッキリ見えたけれど、細かいスキルがまだまだという状態。全体としてはいい方向にいっているので、あとは細かい部分。関東戦からの1週間は、所謂チームワークというものを意識してやってきた。この間のゲームでは自分たちでストレスを溜めてしまっていたから。チームワーク、そのためのセルフマネジメント。今日も崩れてしまいそうなところで、自分たちで立て直して、乗り越えることができたのは大きな成長。関東戦でそのことに気がつこうって。たんなる仲良しではなくて、本当のチームワーク。そこに気がつかないとダメだと話をしたら、練習からチームとしてのコミュニケーションが上がって、リーダーが中心となって変わることができた。これはすごく大きなこと。シーズンに向けては、見ていてワクワクするようなアタックを強化していきます」
<充実の日々! チームの成長に自信を深める主将・権丈太郎>
「この夏のテーマはディフェンスだったので、相手をノートライに抑えることができのはよかったです。今日はディフェンスターンオーバーからの切り返しでトライを取ろうってみんなで意識してました。あとはペナルティからのハリー。その動き出しの早さもテーマでしたけど、その部分に関してはまだまだです。特に前半、相手のペースに合わせてしまいました。これは関東戦のときと同じで、スクラムでのペナルティ、ラインオフサイド、連続ペナルティで相手のペースに付き合ってしまった感じです。前半は乗り切れませんでした。関東戦の課題に挙がったブレイクダウンについては、相手があまり入ってこなかったのでアレですけど、ディフェンスから押し上げて、ライドオンタックルして、超えていくというのは少なかったですかね。ブレイクダウンについては、まだまだです。今日は夏の締めくくりとしてはいい手応えです。ベースとなるディフェンスが整備されてきましたし、アタックに関しても自分たちの形が見えてきた。秋に向けていい形で夏を終えられたと思います。セットからのトライは少なかったですけど、FWで切っていく動きでゲインできましたし、裏に出たとき、ビッグゲインした後の押し上げもよかった。この夏でチーム全員が自分たちはこれでいくんだってカラーが見えたと思いますし、それを意識して練習、試合をすることで、こうして結果も出すことができた。これで自信もついたと思います。東京に帰ったら成蹊大とケンブリッジと試合は続いていく。今年のワセダはチャレンジャー。1戦1戦全力を出して、すべてノートライに抑えて勝ちます。シーズンに向けては、ディフェンスの仕上げとアタックの精度アップ。あとはスクラムとラインアウトを徹底的にやっていきます」
<ディフェンスが1番! この夏の成果に手応えを感じる副将・五郎丸歩>
「この夏はディフェンスを中心にやってきたので、今日は完封しようってみんなで話してました。とにかく意識していたのはディフェンス。(DGで)3点は取られてしまいましたけど、あれは相手が逃げただけですし、別に気にしません。まだまだ100%とは言えないですけど、今の状態にしてはベストに近い形だったと思います。関東戦でまったくなかったBKのアタックは…、今日もあまりなかったですね。トライはたくさん取りましたけど、形で取ったというのはあまりなかったですし、そこは東京に帰ってからです。基礎になる部分はこの夏でだいぶできたので、帰ってからミッチリとやっていきます。関東戦で修正点がたくさん見えて、この1週間は1日1日充実した練習ができた。その結果として、ノートライに抑えられたことはよかったですね。この夏でディフェンスが整備されましたし、チームとして一段階上にいけたと思います。ターンオーバーからのトライ、1番いい形です。この結果は対抗戦でいいスタートを切るよき材料。いい形で夏を締めくくることができました。田邊のアウトサイドCTBについては、あまり(よさを見極めるような)機会がなかったですけど、ディフェンスに行くべきところではいってましたし、よかったと思います。後半キックが飛んでいたのは風上だったからです(笑)」
<スーパープロック! 久々の3番にも抜群の存在感を示した橋本樹>
「今日は久々にプロップとして試合に出て、改めてそのしんどさを体感したという感じです。スクラムに関しては、思っていた以上に組めた感もありますけど、合格点には程遠く…。プロップとして、スクラムにもっと拘らないといけなかったです。前半相手に対してプレッシャーをかけることができなかった。そこは課題として残りましたし、もっと拘りが必要でした。ただ、ロックをやったことで、フィールドの部分で働くことが増えましたし、それがプロップにも生きているのかなと思います。ロックがどういうセットをして欲しいのかが分かりましたし、今日もロックがやりやすいようにということを1番に意識してました。FW全体のデキとしては、モールでもトライを取れましたし、ラインアウトでプレッシャーもかけることができて、いい感じだったと思います。この夏でディフェンスを再確認できたというか、みんなの意識がガチッと固まりましたし、今日もノートライに抑えることができて、いい成果です。今年は3年目、もっともっと自分から、自分を押し出していけるように、アグレッシブに、プレーで引っ張っていければと思っています。ロックでもプロップでも出場機会さえあれば、どちらでもいくつもりです」
<声だけ?でチームを引っ張り続けたフランカー/No8豊田将万>
「今日はチームとしてはいい試合でしたけど、個人的にはサボってしまったというか、動けなかったです…。攻められたときにもっと早く動き出さないといけなかったですし、相手のキックに対する反応だとか、そこに課題が残りました。ただ、チーム全体としては、夏に取り組んできたディフェンス、動き出しのスピード、よかったと思います。ジョグバックリーダーとしての役割を果たせていたか?(隣にいた五郎丸は「全然ですね」と即答…)あれは声出していただけです(笑)。とにかく声でみんなを盛り上げようって。自分が声を切らさなければ、周りのみんながしっかりとやってくれるので。関東戦での課題だったセットに関しては、ラインアウトのセットを早くすること、ジャンプスピードを上げること、リフトスピードを上げることを意識してました。今日はまずまずでしたけど、もっともっと精度を上げていかないとダメですね。ブレイクダウンについては、ショートサイドにしても引くことなくしっかり戦えていましたし、優位に立っていたと思います。みんなのディフェンスの意識が上がったことは、この夏の大きなポイントです。昨年が昨年だったので、今年はもうあんな思いをしないように、対抗戦からブッちぎっていきます。昨年までは体を張るということに関して、先輩たちに甘えていた部分があるので、今年は自分が先頭に立って、ブレイクダウンで1番にファイトして、周りを奮い立たせるようなプレーをしていきたいです」
<今後へのキーマン アウトサイドCTBとして出場した田邊秀樹>
「アウトサイドCTBは初めてでしたけど、試合に出られたらどこでもいきますと中竹さんには話していましたし、このチャンスを絶対掴み取ってやろうと思って試合に臨みました。今日の試合、危なかった(ディフェンスの際転び…)のは僕のところだけでしたね(笑)。チームとしては、五郎さんが敵陣に持っていってくれて、取るべきところで取って、相手をノートライ、よかったと思います。夏は全体でディフェンス、ディフェンス、ディフェンス言ってやってきましたし、アタック練習にしても切り返しからの形が中心でしたから。自分がCTBとして使われたのもディフェンスを買われたからというのもあって、チームとしても個人としても、今日はディフェンスを1番に意識してました。CTBに対してはディフェンスの部分で、まだ多少の違和感はありますけど、アタックはFBもやってましたし、みんなにカバーしてもらいながらという感じです。試合でのデキについては、タックルシチュエーションがいくつかありましたけど、入りきることができず…、反省ですね。アタックでも2対1で取りきれず、僕で7点損してしまいました…。自分が勝負していくべきところはやっぱりディフェンス。それにゲームコントロールに関して、五郎さんに頼りすぎるところがあるので、その役割を僕が担えればと思ってます。来年は五郎さんがいなくなりますし、次にその役を担うのは僕。五郎さんが熱くなったときにコントロールするのも僕。そう思っていますし、その部分で勝負していきます。今年1年が僕の人生を大きく変える。それくらい勝負の年だと思いますし、オンとオフの切り替えをしっかりして、最後に国立の舞台に立っていたいです。ポジションについては、どこでもいきます」