カテナチオならぬ、『ワセナチオ』?―。我慢、ガマン、がまんの連続。Jr選手権ファーストフェーズ第一戦、こちらも覇権奪回を目指す『権丈組』セカンドチームは、華やかさの欠片もないジッミーな戦いで、大事な勝利をもぎ取った。
この日はとにかくセットの不安定さがすべての元凶。春からこのチームを支えてきた『3番』山下高範を欠き、急遽、横谷祐紀を起用したものの、合わせたのが僅か3回の練習となれば、苦しむのも無理はなかった(しかも相手は帝京大…)。「強いランナーたち、寛造、坂井で勝負していこうと思ってたんですけど、その大前提であるセットプレーが今日は安定せず、BKに迷惑をかけてしまいました…」(ロック・寺廻健太)。崩壊とまではいかないまでも、至る場面でジタバタ、ドタバタ。さらには連鎖反応か、ラインアウトも相手が競ってこない(完全に外してる)ところでミスを続け、信念のモール、外に待ち受けるスーパーランナー、自分たちの強みをまったく生かすことができなかった。やっぱり、あの言葉を思い出す。ラグビー=スクラム…。
しかし、そんな状況でも、まったく危なげなく勝つことができたのは、もうひとつの柱、ディフェンスの安定感があればこそ。「しっかりと前にも出れていたし、ディフェンスに回ったら、絶対に勝てると思ってました。取られる気、まったくしなかったです」(CTB井上隼一)…。BKはCTB井上を軸に首尾よく前へ。FWもフランカーを中心に猛タックル(中村、上田の啓光コンビによるダブルタックルの競演も!)。守りを固め、気付けば、したたかにスコアを重ねる。これぞまさに『ワセナチオ』。きちんとしたセットアタックができなくとも、多少のミスがあろうとも、ディフェンスさえしっかりしていれば、負けないということが改めて証明されたゲームだった。
そしてそして、この日触れずにはいられないのが、SH櫻井朋広が見せたグレートパフォーマンス。言うなれば、渾沌のなかをノビノビ生きる、ザ・ワセダのSH。とにかくポイントに一直線、捌きに捌き、時にノースイープでも鬼のようなダイブパス。「スイープがひとりいれば捌くのは当たり前。最近はこれもできない選手が多いけれど、ノースイープでも捌けてこそワセダのSH。それが理想。なかなかいなくなっちゃって寂しいけど…」。かつて(たしか『大田尾組』決勝の夜)、かの大先輩・堀越正己がそう語ったことがあったが、この日の櫻井はまさにこれに当てはまった。「2人目の寄りが遅かったけど、今日は櫻井様様です。本当に助かりました」(寺廻)。まだミスもある。パスももっと速くできる。しかし、課題こそあれ、この日の勝利は、SH櫻井抜きには語れなかった。
ファースト15同様、覇権奪回へ向け、まずは連戦の頭(10月丸々1ヶ月はメイングラウンド養生のため、こうなりました)を無難に勝利。ディフェンスだけでなく、後々にはファンタスティックなラグビーを。『権丈組』は、セカンドチームも『Penetrate』で!
<大前提・セットプレーの不出来に猛省のロック・寺廻健太>
「今日はジュニア選手権最初の試合、帝京とは春3点差で強いことは分かっていたけれど、絶対に勝とうって。ワセダは若いチームだけど、逆にBKの1年生、寛造、坂井で勝負していこうと思ってました。でも、その大前提であるセットプレーが今日は安定せず…。横谷が急遽3番をやったということで合わせきれず、スクラムは劣勢。ラインアウトも不安定で、BKに迷惑をかけてしまいました…。ラインアウトに関しては、空いているところを合わせで取りにいこうと言ってたんですけど、自分たちがそれに反応できずに、リフトの精度が悪い。相手が競ってきてないのに、確保できないという状態でした。これは技術どうこうより、マイボールを取るんだという意識の問題です。そんななかでも、ディフェンスは後半特に取られる気はまったくしなかったですし、ジャッカルもできていたし、ブレイクダウンもしっかりやれていたと思います。ただ、2人目の寄りがまだまだ遅い。ここは櫻井が早く来て、捌いてくれたおかげで大丈夫だったという感じです。今日は櫻井様様。本当に助かりました。チームとしても、我慢の勝利です。今日は点の取り合いというゲームではなかったですし、キックで組み立ててくるオーソドックスな帝京相手に、ずっと自陣にいながら勝てたのは、我慢に尽きます」
<チームの要! 攻守に安定感をもたらしたCTB井上隼一>
「今日はこの暑さもあって苦しかったです…。本当はもっとテンポを上げて、ワセダのリズムで試合を進めたかったんですけど、ミスもそうですし、ペナルティもあって、うまくいきませんでした。でもディフェンスに回ったら、絶対に勝てる。そう思ってました。今日の勝因はディフェンスです。ただ、前に出る意識はかなりでてきましたけど、チームでマストゾーンと呼んでいる部分だったり、FWとBKの間のところは、まだ修正が必要だなと。今日はホームだし、開幕戦だし、完封して圧倒しようってみんなで話してました。完封はできずに1本取られてしまいましたけど…、やられたところは明確ですし、そこはしっかり修正していければと思っています。外に坂井や寛造といういいランナーが揃っているので、今日はもっとそこに放していきたかったんですけど…。次こそは強いランナーにどんどんボールを渡していきたいです。僕の持ち味はアタックだと思うので、そこで勝負。岳人さん、秀樹にはないところで上に上がれるようがんばります」
<WTB高木亮太、文字通りボーナス点をゲット!>