ついに大きな山が動き出した。ワセダはようやくひとつのカベを乗り越えた。2007年12月9日、ジュニア選手権決勝。『権丈組』セカンドチーム…もとい、熱き男たち・『松田組』は、その結束、意志の強さで、一足先に「日本一」の称号を手に入れた。苦しみ抜いた、悩み抜いた上での覇権奪回。「この試合はスタンドで見ているAチームのメンバーはもちろん、自分たちへのチャレンジ。それぞれが昨年の、これまでの自分を越えられるか。俺は昨年の自分を越えて絶対に勝つ。みんなも自分自身に勝とう!」(ゲームキャプテン・松田純平)…。男たちは、己との勝負に完全に克った。
この日の決勝は、また「トラウマ」との闘いでもあった。1月13日はもちろん、もうひとつ頭から離れない12月10日のあの悪夢。「まずジュニアから。ここでやれなければ先はない」。ミーティングでは、二度と見たくない昨年のビデオもしっかりチェック。信じ難いプレーの数々を目にしたからこそ、ファイナルのテーマ・「全力を尽くす」「力を出し切る」ことが必要だった。
前半はドン底を味わったジュニア選手権の歩みと軌を一にするように「我慢」の展開。快調に先制こそすれ、その後は相手のモールに手を焼き(「1度は止められても、ユーズイットのかかる2回目でズルズルと…」。東海、すごくうまかったです)、何とももどかしく、取って取られてを繰り返した。そのすべての元凶は他でもないペナルティ。「前半はいらない反則があって自陣に釘付け。もう下のボールはむやみに絡みにいくのではなく、帝京のときのようにポイントを越えていこうって。ラインアウトは…、Aチームが東海のコピーをやってくれたおかげです」(ロック・寺廻健太)。イマイチしっくりこなかったアタックも、「楽をしない」意識で統一し、徐々に流れを引き寄せた。昨年の教訓を生かした濃密なコミュニケーションに、的確な対応力。「みんなでしっかりと話をして、前半のあの展開をよく我慢しきってくれた。松田を中心に本当にいいチームになったね…」(中竹監督)
チームの力が試された前半を「全員で」凌ぎきると、後半はその想いを爆発させるように一気にスパート。11分、23分、怒涛のモールプッシュで結束を示すと、13分にはターンオーバーから小峰徹也が、26分にはWTB坂井克行が「今村先生」ばりの大爆走。チームの大半を占めた若手メンバー(この日はなんと8人が1年生!さらに言えば、22人中11人が一般組!ワセダの意地見せてます!)が思う存分暴れまわり、「日本一」を手繰り寄せた。もちろん、その裏側にはチームを引っ張り、変えてきた、松田をはじめとする4年生の力があればこそ…。「今日はもう4年生が試合前からめちゃくちゃ熱かったですし、その一言一言が信じられるものだったので、安心してついていくことができました。今日ほど『ワセダ』というものを感じた日はありません。こんなに熱くなった、熱い気持ちで試合に臨めたのは久々でした…」(フッカー・有田隆平)。4年の「熱」にワセダを感じ、下級生がついていく。強いときのワセダの形が、『松田組』にもしっかりあった。思えば、かのレジェンド・佐々木隆道もことあるごとに口にしていた。「4年が体を張って引っ張って、いかに才能ある下級生の力を引き出してあげるかです」…。下級生という表現がふさわしいかはさておき、万事にわたる上田一貴のキレもまた、秀逸だった。
まさに4年の力でチームを変え、「全員で」掴み取った価値ある価値ある「日本一」。ドン底から這い上がり、これでようやく山が動いた。「トラウマ」を拭い去り、ひとつのカベを乗り越えた。「今日はすべてが確認作業。やっぱりワセダはBも日本一だった。そのことを自分たち自身で確認する試合。これからさらに自信を持って戦っていける」(中竹監督)…。「松田をはじめ、みんなの気持ちがすごく伝わってきた。この勝利でワセダが得たものは、勢い。今日の勝利でAも勢いを持って一気にいけると思います」(主将・権丈太郎)…。松田、寺廻、掛井、大野、三原、山下。そして後藤悠太をはじめ、想いを伝えきった4年生に大きな拍手を! そして戦いはまだまだ終わらない。ここからが「リアル日本一」へ向けた本当の勝負。「これからはAとの戦いと言うか、個人の戦い。自分もフランカーの誰にも負けないし、それぞれが勝負する。それがAへの道。みんなにもそう言いますし、何より自分自身がそうしたいと思ってます…」(ゲームキャプテン・松田純平)。自信と誇り、そしてあの日の想いをしっかり持って、『権丈組』、いざ決戦の舞台へ。お膳立ては整った。ワセダの夢、『荒ぶる』まで4つ―
<チームに自信と緊張を! 4年生に最大の賛辞を贈る中竹監督>
「今日のこの勝利でひとつの壁を乗り越えることができたと思う。今日はすべてが確認作業。やっぱりワセダはBも日本一だった。そのことを自分たち自身で確認する試合。俺たちは強いんだと。だから今日のこの勝利はチーム全体の自信になる。早明戦ではAの強さを証明して、次はBもやっぱりという感じで。今日は50点取れて、しっかり確認できたと思う。これからさらに自信を持って戦っていける。ただ、その強さは常にチャレンジャーとしての意識があることが大きな要因。それがないとダメだということは、ファーストフェーズでも十分に思い知らされた。ここからもチャレンジする気持ちを持ち続けられるかが勝負。それにしてもBはいいチームだった。松田を中心に4年が引っ張り、それをみんなで支え合う。今日は力を出し切ってくれたと思うし、前半のあの展開もよく我慢しきってくれた。今日はAに対してだけでなく、チーム全体の自信になる。同じポジションの活躍を見て、選手権は初戦からしっかりやらないと危ういと思ったAの奴もいただろうし、これからいい戦いが始まるだろうなと。今日はBはチームに自信と緊張感を与えてくれた。残りは大学選手権だけになるけど、本当にもう1戦1戦成長していかないと『荒ぶる』はないと思ってる。目の前の試合に全力を出す。それができなかったら、隙を見せたら勝つことはできない。しっかりと意識して戦っていきたい」
<最大の功労者! チームを見事にまとめあげたゲームキャプテン・松田純平>
「もう感無量です。もう寄せ書きにもホントすごい量の言葉が書いてありましたし、内容もグッとくるものばかりで…。正直泣いてしまいそうになりました。みんなの気持ちがすごく入っていて。アップのときには、もう変なものもなくて、とにかく勝つこと、チームをまとめることだけを考えてました。いいアップだったと思います。前半は自分たちのミスから後手後手な感じでしたけど、試合前から絶えずコミュニケーションを取ろうと言ってましたし、トライを取られた後も、プレーが切れた後も、ハーフタイムも、FW、BKお互いがしっかり話ができて、しっかり対応できました。こうしよう、ああしよう、ここがよくないという感じで、意思統一できて、すごくやりやすかったです。みんな力を出し切ったと思います。自分がBに戻ってきたときは、ちょうど負けが込んでる時期。合流したらスクラムはダメだし、チームアタックでは何をしても抜けないし、逆に抜かれまくる。もうどうしていいのか分からない状態でしたけど、4年でまとまって話をして、チームは変わりました。今はスクラムは負けないし、色々な形でトライも取れる。みんな自信を持ってやれるようになりましたし、強くなったと思います。4年のみんなも、間違いなくそれぞれの仕事をまっとうできた。今日出られなかった奴らも熱い気持ちを伝えてくれて、全員が力をくれました。個人的にも昨年ここで負けてから止まってましたし、チームとしても、自分としても、ひとつ乗り越えることができたと思います。これは絶対に『荒ぶる』に繋がる。ここからはAとの戦いと言うか、個人の戦い。自分もフランカーの誰にも負けないし、それぞれが勝負する。それがAへの道。みんなにもそう言いますし、何より自分自身がそうしたいと思ってます」
<4年の意地! セットの安定感でチームを上昇させたロック・寺廻健太>
「昨年のリベンジ…、できましたね。今日は気負いはなかったんですけど、秩父宮が初めてという奴もいたし、決勝というこの特殊な雰囲気に飲まれかけていたのかなと思います。それが前半の結果。ただ、セットプレーが安定してましたし、後半はうまく立て直せてよかったです。とにかくキックで敵陣にいこうと。前半はいらない反則があって自陣に釘付け。もう下のボールはむやみに絡みにいくのではなく、帝京のときのようにポイントを越えていこうと意思統一しました。ラインアウトは…、Aチームが東海のコピーをやってくれたおかげです。Aが用意してくれたのと同じムーブに自分たちは反応するだけ。ピッタリはまりました。Aのみんなにはすごく感謝してますし、自信を持って戦えました。後半は気持ちよかったです。実はあまり覚えてないんですけど(笑)。まずディフェンスで前に出て、ターンオーバーして、外で取る。もう何でもできるといく感じでしたね。4年生がみんなでアップを見に来てくれたのには、グッときましたし、寄せ書きを見てもすごくて…。悠太をはじめ、みんなの心が入ってました。Aチームのとき以上に紙が真っ黒。全員着てくれたことはすごく嬉しかったですし、絶対にやってやろうって。みんなに感謝しています。9月10月はホントつらくて…。一時は入替戦かと思うような状況から、結果優勝できて最高です。松田中心に引っ張るべき奴が引っ張ってくれて、1年生がノビノビやる。いいチームになれたと思います。ジュニアの優勝は松田のおかげです。昨年はここでコケて勢いに乗ることができなかったけれど、今年はこれで乗っていける。Bとして最低限の仕事はできたと思います。ここからは個人の戦い。自分自身もAに行くために集中していきます」
<この日は不出来?もチームに勢いをもたらしたSO掛井雄馬>
「優勝、最高ですね! けど、前半は僕が足を引っ張ってしまって…。後半は松田や後輩たちがガンガン行ってくれて、本当に感謝です。前半は連続ペナルティからの近場ゴリゴリにはまっていたので、後半はとにかく敵陣にいこうと。そこをしっかり修正することができて、中竹さんがいつも言われるコンセンサスの勝利です。途中明治に負けて、関東にも負けて…。特に自分が出た関東戦は今でも忘れることができません…。自分としては後悔するところもありますけど、チームとしてはナイスゲームだったと思います。4年のみんながしっかりと引っ張ってくれました。松田がとにかく声を出して盛り上げてくれた。僕や大野、三原は口で言うタイプではないですけど、プレーで示すことができたのかなと。あとは1年生。今日もみんなノビノビやってくれて、ホント様様です(笑)。昨年はここで負けてチームが停滞してしまいましたけど、今年は早慶戦、早明戦といいゲームできて、今日の決勝でまず借りを返すことができた。このまま『荒ぶる』までいきたいです。まだまだBで諦めている奴はいないし、最後の最後まであがき続ける。それが『荒ぶる』への原動力になればと思っています」
<ワセダを実感! 大舞台でスーパープレーを連発したフッカー・有田隆平>
「寄せ書きに書いたとおり、楽しくプレーできました。今日がBとして最後の試合。そういう気持ちでリラックスしてできたと思います。個人的にも、アタックで何回かいいのがありましたし、ディフェンスでもいいタックルがいくつかあった。けど、ラインアウトでミスもありましたし、相変わらずセットが課題という感じです。今日はもう4年生が試合前からめちゃくちゃ熱かったですし、その一言一言が信じられるものだったので、安心してついていくことができました。アップで4年生全員が見に来てくれるというのは初めての経験だったので、ちょっと緊張しました…。ラインアウトは特に目の前だったので(笑)。でも、成功率高くできてよかったです。試合については、最後は向こうが切れてああいう展開になりましたけど、前半のうちは取って取られてで、ペナルティで自滅という感じでした。ペナルティが苦しんだ一番の要因でしたし、後半はとにかくそこをコントロールしようと。流れ的には前半最後に櫻井さんが取ったのが大きかったです。うまくいかないなかでも焦らず、4年生がいてくれたので、思い切りできました。今日ほどワセダというものを感じた日はありません。こんなに熱くなった、熱い気持ちで試合に臨めたのは久々でした。自分としては、一歩でも早くAチームに、みんなから信頼されるように、セットを安定させないといけないですし、ラグビーをもっと勉強しないといけないと思ってます。山中や寛造の活躍は嬉しい反面、悔しい気持ちもありますから…。いい刺激になるので、あいつらにはもっとガンガンやって欲しいです」
<『荒ぶる』へ一直線! Bの気持ちに心打たれる主将・権丈太郎>
「今日は松田を中心に、ホントみんなが気持ちの入ったところを見せてくれました。モールでトライを取られてしまったり、色々ありましたけど、いい試合だったと思います。今日のこの勝利でワセダが得たものは、勢い。今日の勝利でひとつカベを越えたというか、Aも勢いを持って一気にいけると思います。アップを全員で見たのは…、臼井の独断です(笑)」
<WTB坂井克行、今村先生ばりの決定力!空飛んでます>