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2024
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対サントリー 中竹竜二×清宮克幸×豊田将万…


 「毎年毎年のワセダらしさというものがあるなかで、『豊田組』は一番人間らしいチームだったと思います。最後に清宮さんが来てくださって握手をしましたけど、そこに言葉は要りませんでした。分かり合えていたということです。ワセダは負けたら何も残らない。本当に不甲斐なく、悔しい。こんな4年間はもう二度とないと思います…」(主将・豊田将万)―。
 2009年2月15日、ワセダ対サントリー。中竹竜二、清宮克幸、豊田将万…、様々な想い交わる、世紀の一戦に待ち受けていたものは、自責、寂しさ、虚脱感、ワセダとは?の問い掛けだった。20-59。涙の終戦。それでも、『豊田組』は最後までその「らしさ」を貫いた。
 ワセダとして…。試合に臨むにあたっては、当然ながら勝利以外頭になし。周囲にどう思われようが、何を言われようが、レジェンド越えの可能性を信じきり、見たことのない世界への誓いを立てる。本気も本気。俺たちはワセダ。しかし…、14:10、キックオフから僅か数秒、最初の攻防で、その夢は儚く、あまりに早く消え去った。サントリーの蹴り返しをバウンドさせ、挙句もっともダメージの残る形でターンオーバーを喰らうと、そのまま誰もタックルすることなくインゴールまで一直線。その後も、サントリーの圧力がそうさせたのか、メンタルの問題か、学生相手には見られなかったタブーを続々犯し、準備したことを全くと言っていいほど出すことができなかった。スクラム選択からあと1歩に迫った渾身のセットアタック(16分。もしボールを拾いトライになっていったら…)、個で互角以上に渡り合った有田隆平(まだ19歳であることを考えると驚異的!)と見せ場も作ったものの、基本は、キックで揺さぶられ、近場をエグられ、BKに切り裂かれ、力だけでなく、上手さでもやられるの繰り返し。「もう最初のところでいかれてしまった。いきなり越えられて、越えられて。そこがすべて、今日の試合を象徴していたと思います。あれで嫌な流れになりましたから…」(フッカー有田隆平)。「まだまだやれたはずと思いながら、それを出せないのが今年の悪いところだったのかなと。今日は完全に清宮さんと俺の差が出た試合。学生たちには本当に申し訳ない…」(中竹監督)。やはりトップリーグ、さらにそのなかでもコンセンサスのしっかり取れたチームに勝つのは容易ではない。インターセプトからの2つのトライで会場を盛り上げようとも、力の差は歴然だった。
 試合後、涙に暮れた選手たちから発せられた最初の言葉は「悔しい」。そして、「悲しい」。本気で勝ちにいったゲームで結果を残すことはできなかった。自らの人生を変えるような、見ている人の心を揺さぶるようなラグビーはできなかった。ワセダは勝つことがすべて。たとえそれが叶わずとも、狂い、出し切るのが90年受け継がれてきたDNA。豊田将万は「後輩たちに何も残してあげることができなかった」とうなだれ、これまでにないプレッシャーがあったというサントリー・清宮監督も、「もっとできたはず」とワセダ愛溢れるからこその寂しさを口にした。格上相手に真っ向から勝負を挑んで、普通に負けたワセダ…。
 でも…、それでもやっぱり『豊田組』の勝ち取った『荒ぶる』の輝きは色褪せない。歴史上4度しかなかった連覇の価値は変わらない。最大の感謝でその功績を讃えたい。最後までそれぞれが「らしかった」。4年間でもっとも心沈んだ日であったとしても…、下を向くな。胸を張れ。そして、本当にありがとう。オシムの名言・それでも人生は続いていく―


<その差を痛感…『豊田組』の終焉に無念の表情を浮かべる中竹監督>
「今日のゲームは勝つつもりで準備をして臨みました。ディフェンスで相手を上回って、僅差の勝負で最後に点を入れて勝つ。しかし、ここが力の差だなというところがたくさんあった。うまくディフェンスにいけないような力強いアタックをされて、取られないはずのところで取られてしまった。スコアどおりの試合。ディフェンスで試合を組み立ててと思っていたけれど完敗。学生たちも、やりきったという感覚より、やってきたことを格上相手に出させてもらえなかったという感じだと思う。今日は豊田の下での最後のゲームになってしまったけれど、下級生たちは色々と学んで欲しいし、4年生には本当に感謝したい。今日の負けはよくなかったとしても、最後まで豊田らしくやってくれましたし、今後も自信を持ってやっていってくれたらと思います。試合を振り返ると、まずキックの処理がうまくできず、グチャグチャっとしたところで強いチェイサーに潰されてしまった。そうなると、どのチームも機能しない。ワセダとしては、もっと普通のラインディフェンスに対峙したかったけれど、後手になるようなアタックをサントリーにさせられてしまった。やりたいことをサントリーにやられてしまったということです。(日本選手権の仕組みに関する問いに)この質問は300回くらい繰り返されてますけど、学生は試験期間があって徹夜をしたり、1ヶ月間が空いて大きな試合と、ディスアドバンテージを背負うのは厳しい。けど、これは変わらないので仕方がない。トップリーグも昔と違って、プロのように優遇されたいい環境でラグビーをしている。そのなかで、学生としては根底から考えを変えないと難しいと思うけど、正直そんな余裕はない。対策は難しいと思います。トップリーグのどこが上かと言うと、単に力負けだけではなく、試合巧者なところ。例えば、今日のスクリューのかかったハイパントなどはワセダとしては初めての経験。スカウトの面でもプロがいて、映像の分析も学生とはまったく違う。学生は一ヶ月の準備。どう勝つか。ウエート、ゲームの理解…、そこだけを考える余裕のあるチームは学生にはないと思います<以上、記者会見> 『豊田組』ラストマッチという視点から言うと、今日はすごくもったいない試合になってしまった。まだまだやれたはず。逆にそう思いながら、出せないのが今年の悪いところだったのかなと。思いたくはないけれど、勝負どころでキャプテンがトライするとか、そういう面ではラストっぽい試合だったと思う。最後に円陣で学生たちに話したことは、やっぱり負けたら悔しいなということ。それが一番。ワセダは負けてはいけないんだと。『清宮サントリー』との対戦というところで言えば、今日は清宮さんと俺の差が出た試合。そこの差でこういう試合になったと思う。時が経てば経つほどそう強く感じるし、学生たちには本当に申し訳なかった…。『豊田組』はグラウンドの中でも外でも、躍動感のあるチームだった。4年生には『荒ぶる』を歌った代として、自信と誇りを持ってこれからもがんばっていって欲しい。ワセダのこれからということでは、やっぱり勝ちにとことん拘って、負けたらすべてを失うという危機感を持ってがんばっていくべきだと改めて思った。最初に出てくる感情は悔しい、そして学生たちに申し訳ないということです…」


<最後までらしく!人間味溢れる集団でその戦いを終えた主将・豊田将万>

「負けて得るものなんて何もないと思っているので、すごく悔しいですし、後輩たちに何も残してあげることができなかった不甲斐なさ、悔しさが残る試合でした。(ハーフタイムはどんな様子だったかの問いに)まだまだやれるって。自分たちも負けを前提にやっていた訳ではありませんので。自分たちのやるべきことをやろうという話をしていました。スクラムの圧力については、予想して準備してきましたけど、あんなプレッシャーを試合で経験したことはない。想定はしていたけれど、自分たちがうまくやれなかったという感じです。試合の内容は、見たとおりだと思います。サントリーは外国人選手が核となって、思っていたよりプレッシャーがありました。強い、強いと分かって準備してきましたけど、一方で、意外に通用していた部分もあったのかなと思います<以上、記者会見> やっぱり、すごく寂しいです…。試合を振り返ると、キックでプレッシャーをかけてくることは想定していて、その通りの展開だったんですけど、その対応がうまくいきませんでした。そこをうまく対応できていれば…。秀樹、両WTBが取ったところにFWが返るのが遅くなってしまって、悔やまれるところです。みんなには最後まで胸を張って、負けた顔をして欲しくなかったので、終わった後の円陣では、泣くな、俺たちはこれで終りだけど、お前たちはここからがスタートだ、次のことを考えて、この悔しさを決して忘れることなくやっていって欲しい、ワセダは負けてはいけないんだという話をしました。後輩たちにしっかり伝えられたかは…、ワセダは負けたら得るものはありませんから。今日を含めて3回も負けてしまった僕たちから、後輩たちが得るものは何もないと思います。同じ過ちだけは繰り返して欲しくない。絶対に負けるなと。清宮さんへの挑戦ということに関しては、建前と本音色々あるんですけど…(笑)、やっぱりこのチーム、この仲間でまだまだラグビーをしていたいと純粋に思う気持ちが一番だったので、今はとにかく悔しい。それが本音です。試合後、清宮さんが来てくださって握手をしましたけど、特に言葉は交わしませんでした。そこに言葉は要らない。分かりあっていたということです(笑)。毎年毎年のワセダらしさというものがありますけど、『豊田組』は一番人間らしいチームだったと思います。どんなに勝とうが負けようが、感情を表には出すなと、みなさん思われているみたいですが、そこは僕たちも人間なので…。その意味でも、今年は人間味あるチームだったと思います。ワセダでラグビーができたことは、僕の人生のなかですごく大きなことでした。こんな経験はもう二度とできないと思います。この4年間の経験を大事にして、これからも生きていきます」


<充実の4年間 真っ先に後輩たちへの感謝を口にする副将・瀧澤直>

「僕としては、これで引退だから悔しいではなく、人生を左右する試合で出し切れなかったことが本当に悔しいです。内容的には、コンタクトのところ、接点でゲインを越えられて、そのポイント周りをまた行かれて、やりたい放題やられてしまったなと。前に出るディフェンスをしている分、そこをしっかり止めないと帰ることができない。その繰り返しでやられてしまいました。あとはいきなり背負った10点のビハインド。トップリーグに勝つためには、あってはならない10点です…。今日は清宮さんとの対戦どうこうより、ただ純粋にトップリーグに勝ちたいという思いでした。もちろん、OBの方もたくさんいて、他とはちょっと違うものはありましたけども。今日は出し切ることができなかった。むしろやり残したという感じです。『豊田組』は今日もそうでしたけど、豊田がガンガン引っ張っていくチーム。最後には学年関係なく、やるべき人間がやるべきことをしっかりやった。『荒ぶる』にしろ、今日の試合にしろ、そういうチームだったと思います。後輩たちには何かを伝えたいというよりは、とにかく感謝です。後輩たちも含めて、今年は誰ひとり欠けてはいけなかったチーム。こんな自分たちにしっかりついてきてくれたことを考えると、本当に感謝の言葉しかありません。ワセダでの4年間は…きつかったです(笑)。特に最後の方は。毎週試合をして、その度に毎回何かを背負う。普通の日常生活ではあり得ない時間を過ごさせてもらいました。そういう意味でも楽しかったですし、こんな4年間はワセダでなかったら送れなかったと思います。僕はラグビーが好きというよりは、ワセダのラグビーが好きで、楽しんでいたということです」


<体現の男! 最後まで体を張り豊田将万を支え続けた副将・長尾岳人>

「サントリーが強いチームであることは分かっていましたけど、勝ちたいではなく、絶対に勝つという気持ちで試合に臨みました。振り返ってみると、最初に簡単にいかれてしまったのが…。前に出るディフェンスには手応えがありましたし、後輩たちには更に磨きをかけて、より前で止められるものを作り上げていって欲しいです。それができるのはワセダしかないと思うので。今はすごく悔しいですけど、すべてを出し切れたということにしておきます…。今年は本当に豊田についていっただけです。僕は豊田の言うことをすべて信じてやってきました。『荒ぶる』がすべて、その後のことはどうでもいいと言っていた豊田がトップリーグに勝とうと口にしたときから、僕もその気でやってきました。結果を出すことができず、すごく悔しいです。後輩たちには…、まずバイスキャプテンをやらせてもらったことを本当に感謝しています。BKは若くて才能のある人間がたくさんいるので、全く心配していません。ワセダのセオリーというものはありますけど、型に捉われることなく、やっていって欲しいです。そうすれば絶対に大丈夫。今でも十分日本一なわけですから。『荒ぶる』というものはワセダにしかないもの。『荒ぶる』がなかったら、ここまで熱くなれなかったですし、ここまで勝ちに拘ることもできなかった。これがワセダの誇れるところ。後輩たちにもそのことは絶対に忘れないで欲しいです」


<最後には涙 シーズンを通して輝きを放ち続けたフランカー小峰徹也>
「やっている間は長いなと思っていましたけど、今は終わっちゃったんだなという感じです。この間までは、対トップリーグ?、もう日本一になったんだからいいじゃんって思いもあったんですけど、日に日に勝ちたいと思うようになって…、今日は本当に勝ちたかったです。すごく悔しいですし、最後は悲しかったです。昨年の東芝戦よりいけるという感覚があったんですけど、個々に大きい相手に受けて、そこからやられてしまいました。コンタクト以外のところでも、ゲーム運び、キック、うまさにやられてしまったなと。『豊田組』は…、やんちゃなチームだったと思います。キャプテンが1番に暴れて。でも楽しかったです。変に静かにまとまるよりは暴れた方が熱くなれる。いいチームでした。世間の評価は冷たいみたいですけど(笑)、みなさんが思っているよりいいチームです。この1年はらしさ全開でやれたと思います。最後は泣いてしまって、中竹さんにらしくないって言われてしまいましたけど(笑)。昨年も同じことを言ってましたが、もっといける、ワセダは負けてはいけないんだということです。そのワセダらしさというものを肝に銘じて、『荒ぶる』を取らなければすべてが否定されるという思いを持つ。後輩たちは絶対やってくれると思いますし、がんばって欲しいです」


<この日も獅子奮迅!『豊田組』への感謝溢れるフッカー・有田隆平
「本気で勝つつもりでいたので、『豊田組』の最後になってしまって本当に悔しいです…。今日はやっぱりブレイクダウンのところ。キックの後のブレイクダウンだったり、最初のところでいかれてしまったなぁと。いきなり越えられて、越えられて。そこがすべて、今日の試合を象徴していたと思います。あの2つのプレーで流れを持っていかれて、嫌な感じになりましたから。個人として通用した部分もあったかもしれないですけど、やっぱり狙っていた外国人選手にうまいこといけず、逆にやられたところもあったので…。外国人選手、やばかったです。とにかく悔しい。1対1のところでも、チームとしても、やるからには勝ちたいと思っていたので。『豊田組』からは、諦めないこと、常に前を見て、声を出して、体を張ることを教わりました。最後の最後に体現してくれていたのは4年生。そう強く感じました。やっぱり負けるのは悔しいです。勝ち続けるのは難しいことだと思いますけど、プレー中だったり、それ以外のところでだったり、みんなで力を合わせて修正、進化していけば、来年もいけると思います」


<何かが足りない? サントリー清宮監督からワセダへのメッセージ>
「試合を終えて、今思うことは、自分がイメージしているワセダではなかったというのが一番。記者会見でも、もっとできたと思うというコメントをしたんだけれども。ホッとした気持ちがある反面、ちょっと寂しさも感じた。自分の中の「ワセダ像」というものがあって、トップリーグや格上のチームに挑んだ数々の戦いの中にそれはある。相手より勝るものを創り、全員がそこに集中する。学生同士との戦いよりも、はるかに戦いやすく意思統一できる。10回戦って1回しか勝てない相手に挑む勝負の王道で、それをやりきる事がDNAであり、多くのファンを魅了した歴史だと考えている。寂しさを感じた理由はそんなところだろうか…。当然、圧勝することがトップリーグである我々の使命だったが、ワセダもいいプレーをして、さらにそれをサントリーが乗り越えて勝つのがベストだった。サントリーとしては、ここでいいゲームができなければ、決勝で勝てないという思いで臨んだ一戦だったので、今日の試合には満足している。細かいミスはあったけれど、良い状態で決勝に向かう事が出来ると思う。今年のワセダは大学選手権に入ってから、勝利のシナリオがしっかりと見えていた。「これで勝つんだ」というものがしっかりあって、それをやりきって勝利した。これは早稲田のDNAであり伝統。格上のチームにいかに勝つか?来季もそこに拘り、今日の試合を活かして欲しい。負けから何を学ぶか?これが大切です」


<『荒ぶる』の誇りを!笑顔で試合を振り返るサントリー主将・山下大悟>
「ワセダの後輩たちと試合をすることができて、今日はすごく嬉しかったです。トップリーグのタイトルを取れなかったが故の対戦で、本来戦うべきではなかったかもしれないですけど。自分がキャプテンをやっている間に対戦できてよかったです。赤黒を敵にして戦った感覚は…、やっぱり思い入れがありますからね。自分のときとは柄も違いますけど(笑)。今日の試合に臨むにあたってサントリーとしては、ワセダは強い相手なので、まず自分たちの精度を上げること、そして圧倒すること。今週はいい練習ができたと思います。内容的にはまだまだ、ちょっとバランスが悪いなと。ワセダに関しては…、よかったと思いますよ。シーズン2敗しての優勝は近年になかったことで、その精神力には本当に感服しますし、4年生のみんなは『荒ぶる』を勝ち取ったことに誇りを持って欲しいです。これからも『荒ぶる』を目指してがんばってください」

<『豊田組』涙のノーサイド 1年間熱きご声援ありがとうございました>

※新チーム始動日等、09-10シーズンの予定につきましては、19日の予餞会後、決まり次第お知らせ致します。