「まだ俺たちの力はこんなもんなんだと。もう一度ゼロからやっていこう。試合後、みんなにはそう伝えました」(主将・早田健二)。「僕ら、弱いなって…。勝手に自分たちでプレッシャーを感じてしまった。勝っても全然スッキリしない。自分たちで自分たちの現状をしっかり見つめることが大事だと思います」(副将・田邊秀樹)―。秩父宮に流れ続けた何とも言えない微妙な空気。これってまた…。あの悪夢が…。テーマは『リベンジ』、誰しもが特別な思いを抱き、決死の覚悟を持って臨んだはずの『早田組』は、危うく奈落の底に落ちかけた。
シーズン最高の緊張感、ピリピリムードで迎えた試合は、その入りから「想定外」の連続。キックラリーには付き合わない!こちらからガンガン仕掛ける!キーマン・ツイにプレゼントボールは渡さない!…はすべて反故。それでも数多あったセットアタックで、選択を誤り?ことごとく相手の餌食。ボールが動かない。テンポが上がらない。チームの哲学を感じない。これでいいのか?ワセダ。見てる者の心をまったく揺さぶらぬ、刺激なきラグビーで、ようやく3点を手にしたときには、すでにゲームの3分の1が過ぎていた。
誰しもが抱いたこんなはずでは…、このままではマズイ…の根源となっていたのは、生命線・ブレイクダウンでの脆弱さ。「全然リベンジできていなかった。原点のところでやられてましたね、完全に…」(中竹監督)。この2週間、意識して徹底的に取り組んできたボールキャリアがあっさり、バッタリその場に倒れる。さらに2人目の寄りが遅れる。激しさ、そこに懸ける意志でも負け、ターンオーバー。セットから安定した球出しをしようとも、いつくかフェーズを重ね、ディフェンスの穴を作ろうとも、結局はその繰り返しで、時間だけが過ぎていった。シナリオに反し、消極的になったゲームメークはまだしも、ここはワセダの根幹を揺るがす大問題。「BKがブレイクダウンでプレッシャーを受けたことで、こういう展開になってしまった。今日はとにかくブレイクダウンに尽きる。そこに懸けてくる人数も相手の方が多かったですし、もっともっと一人ひとりの強さを意識してやっていかなくてはいけないです…」(主将・早田健二)。「1次、2次、3次のポイントに人が遅れてしまうのは、意識が不足しているということ。練習でやって誰が行くのか分かっているのに…」(副将・山岸大介)。今改めて思う、『ULTIMATE CRUSH』とは…
仲間を信じ、自分を信じ、アグレッシブに戦うことを誓った後半も、一度作り出してしまった空気は変えられず、ザ・我慢の消耗戦。6分、8単へのタックルを外されたところから3-3。8分、ゴール前ラインアウト→BK展開でターンオーバー。13分、チャンスでまたもターンオーバー。16分、スクラムからのアタックで最後はノックオン…。そうしてジタバタしているうちに迎えた24分、相手FBの50メートルスーパータッチで、一気に自陣ゴール前のピンチ。そこに至るまでの経緯を鑑みるに、流れは誰がどう見ても流れは帝京。ここでゴリゴリに屈したら昨年の二の舞。『早田組』に未来はない…。しかし、夏から、いや春から課題課題と言われ続けたFWが渾身のショートサイドディフェンス。誰ひとり仕事を怠らず「赤いカベ」を跳ね返すと、「敗北」の二文字は消え去った。「ここがターニングポイント、正念場だぞって。モール、ショートサイドをしっかり守りきって、収穫でした。やっと課題で成果がでましたね」(ロック・中田英里)。
この日最大の山場を凌ぐと、ここから残り15分はいかにして「勝つか」の戦い。2つの選択、冷静と情熱の間で、『早田組』の心が揺れた。まず、テンポは上がらずともボールは動かした32分、敵陣ゴール前正面、この上ないポジションでペナルティをゲット。ここで6-3の道を捨て、「絶対いける」の一声で、スクラム選択。頭を抱えた者多数(恐らく…)。正気か、ワセダ。しかし、これが「リベンジ」を掲げ戦ったワセダのプライド。何としてもトライを取って勝つ!自分たちを変える大きなチャンス!『Explosion』のしどころとばかりに勝負に出た。そのとおり、相手をねじ伏せられたら美しかったけど…、あろうことかスクラムを煽られ、ミスで後退。
そして…、再び攻めまくり、敵陣に居座り続けた37分、ゴール前でペナルティを得ると、今度は冷静に、極めて常識的に「3点」を選択。もはや勝ち方に拘ってはいられない。現実としっかり向き合う。「早田ワセダらしいなと。温かく見守ってました。彼らの判断はどちらも間違っていないです」(中竹監督)。落ち着いて勝ち越しに成功すると、スイッチを切り替え、リアリストぶり全開。つまらないと言われようが、ワセダらしくないと言われようが、徹底したファイナルラグビー(練習したことないけど、できた!)で至上命題・勝利だけは離さなかった。
この異様な雰囲気のなか、昨年の悪夢よみがえるドハマリゲームで、最後に勝てたことは極めて大きい。もし負けていたら、『早田組』のシーズンは終わっていたかもしれない。目の前の結果に一喜一憂するチームであれば、今日の結果でOK。何事もなく、次に進める。しかし、俺たちはワセダ。ミッションは、ラグビーを通じて夢と希望、感動を与える。こんなことでは、到底目標は達成できない。やるべきこと、変えなくてはいけないことが山積み。それこそ、ワセダのプライドでどうあるべきか。「本当に首の皮一枚繋がったという危機感を持って、次に向かっていきたい」(中竹監督)。残された時間はもう僅か。『早田組』、ここでできなきゃ明日はない!!!
<首の皮一枚! 改めて危機感を口にする中竹監督>
「昨年の借りがあるので、今日はリベンジするつもりで試合に臨みましたけど、終始受けて、やりたいラグビーがまったくできない0点に近いゲームでした。最後のペナルティの判断については、早田ワセダらしいなと、温かく見守っていました。話合っている姿を見て、これは狙わないだろうなと。グラウンドで実際に戦っている彼らの判断。僕たちは上から見ているだけ。最初にスクラムを選択した判断も、その後狙った判断も、ゲームメークとしては正しい判断だったと思います。やっぱりボールを展開しなくてはワセダのラグビーはできない。今日は起点となるブレイクダウンのところでことごとくターンオーバー、ミスを連発して…。キックラリーには付き合いたくなかったんですけど、相手の圧力の前に守りじゃないですけど、固いゲームをしてしまいました。次からの修正に期待です。<以上記者会見>今日は全然リベンジすることができなかった。原点のところでやられてしまいましたね、完全に。キャリアの寝方が悪いし、はがしきれていないし、基本的なボールキャリア、スイープ、ブレイクダウン全般でやられていた。もう一度鍛えて、この一週間で鍛えて、次の試合ではまったく別のワセダを披露したい。スタンドで見て感じてたことは…、これはいい教訓だなと。うちの課題を浮き彫りにしてくれた重要なゲーム。点差に関係なく、課題が浮き彫りになっていて、これは試練のゲームだなと思って見ていた。本当に首の皮一枚繋がったという危機感を持って、次に向かっていきたい。今日から中田、山中のふたりがジャパンに合流するけれど、ワセダとしてはジャパンファースト。この大事な時期であっても、喜んで送り出した。みんなの前で決意の挨拶もしてもらったし、チームの代表として、がんばってきてもらいたい」
<まずブレイクダウン!試合後反省しきりの主将・早田健二>
「今日は帝京さんのブレイクダウンの前に、やりたいアタック、ディフェンスができず、いい内容ではありませんでした。それでも、この展開で勝てたことは大きな成果だったと思います。この経験を生かして、日体、慶應、明治戦に向け、修正して、がんばっていきたいです。(終了間際の判断を問われ)まず、FWから絶対にいけるからと言われました。僕はPGを狙おうと思ってたんですけど、勝てるって。それでスクラムを選択しましたけど、そこで取れなかったのは反省です。その後は勝ちに拘って判断しました。ずっと敵陣にいましたし、チャンスはまだたくさんあるだろうと思ったので、スクラムを選択したというのもあります。みんなには集中するように言い続けていました。結果、勝つことができてよかったです。<以上記者会見>今日のテーマだったリベンジに関しては…、FWがあれだけがんばって勝ってくれていたにも関わらず、BKがブレイクダウンでプレッシャーを受けたことで、こういう展開になってしまった。いかにしてトライを取るのか。今日この展開で取りきることができなかったのは大きな課題。練習から考えていかないといけないです。ブレイクダウンについては、相手が反則気味に絡んではきていましたけど、レフリーの判断に従うだけ。そこに言い訳を持っていってはいけない。はがせないワセダが悪い。何も言わせないくらいやらないとダメです。今日は取られる気はまったくしなかったですけど、かと言ってこうすれば取れるというのもありませんでした…。どうやってトライを取るのか。もう一度意識していきたいです。この展開で最後に勝つことができたのは、勝ちたいという気持ちもありますし、大事なところで集中できていたからだと思います。ミスは多かったですけど、後半の半ば、ゴール前のモールを凌いだところは大きかったです。勝負どころの集中力で勝ちました。今日はとにかくブレイクダウンに尽きる。そこに懸けてくる人数も相手の方が多かったですし、もっともっと一人ひとりの強さを意識してやっていきます。試合後みんなには、俺たちの力はまだこんなもんなんだ、もう一度ゼロからやっていこうって。もう一回しっかり気持ちを作って、日体、慶應、明治に対していい戦いができるようやっていきます」
<2人目の寄り!FW戦には手応えも意識の低さを訴える副将・山岸大介>
「ミスは多かったですけど、FWとしてはスクラムの集中だけだったので、やっていてしんどい感じはありませんでした。今日は取るべきところでの2人目の寄り、ずっと取り組んできたブレイクダウンで球がでなかったことに尽きます。絡まれたくないところでことごとく絡まれて、テンポがでず、ターンオーバーというシーンがたくさんあったので。1次、2次、3次のポイントに人が遅れてしまうのは、意識が不足しているんだと思います。練習でやって誰が行くのか分かっているのに…。スクラムに関してはまだまだですけど、しっかりやれているところも多々ありましたし、これから修正を加えて、いい形を作っていきたいです。手応えはあります。後半のあのディフェンスですか?、あのときが一番集中していましたね。理想的なターンオーバー。みんなコールもしっかりでていましたし、やってきたことの成果がでたと思います。今日分かったのは、自分たちはまだまだ強くないということ。改めて、慢心などできないと思い知らされた。次から変わったところを見せたい。スクラムは戦えたとはいえ、いいボールを出せるスクラムとは言えないので、その精度は上げていかないといけません」
<勝ちが最善! 現状認識の大切さを口にする副将・田邊秀樹>
「まぁ、最悪勝ててよかったです。チームの現状がよく分かりました。僕ら弱いなって…。やるべきことが分かりましたし、勝ったのはいいですけど、全然スッキリしない、まったく満足できない試合です。とにかくやろうとしていることがまったくできませんでした。ブレイクダウンで圧倒しようと言って臨んだのに、全然球は出せないし…。アタックに関しては、何て言うんでしょう…、相手が実際僕たちに掛けてきたプレッシャー以上に、勝手に自分たちがプレッシャーを感じてしまっていたかなと。それでイライラしてしまうところがあって。言葉にするのは難しいんですけど…、そんな感じです。こうすればよかったの一番は、もっとカウンターに行こうと言っていたにも関わらず、蹴りすぎてしまったこと。相手に付き合いすぎてテンポが上がらず、継続したいところでもキャリアがすぐに倒れて、スイープに寄るのが遅れて、絡まれてターンオーバー。ここ何週間か拘ってきたところで圧倒することができなかった。そういうときに立ち返る原点を身につけていないと、きつい。とはいえ、勝って反省できるのは、よくないゲームをしたなかで収穫。こうすれば勝てるというのは見えていますし、やるべき課題をしっかりと見直していきます。自分たちは強くないし、普通にやって勝てるチームでもない。自分たちで自分たちの現状を見つめ直して、もう一度気持ちを入れて、それを次の試合にぶつけたいです」
<キックを猛省… ゲームメークに苦しみに苦しんだSO山中亮平>
「キャリアとブレイクダウンがよくなく、球出しが遅れてテンポがでず、ターンオーバーされる場面が多くて、やろうとしたラグビーができませんでした。今日こういう試合になってしまった根本はブレイクダウン。そこで絡まれたことに尽きると思います。自分自身のキックの調子も悪くて、出すべきところで出せない。地域もとれなかったですし、ゲームメークも難しかったです…。BKでのアタックもテンポが出ず、常に相手ディフェンスのセットの方が早い。仕掛けていくことができなかったですし、やりたいことがまったくできませんでした。最後の方は、もう自分の前が空いていたので、思い切り行き続けよう、とにかくスコアしよう、そう思いながらプレーしてました。ターンオーバーのされ方だったり、昨年のことをちょっと思い出したりもありました。そういうところでマイナス思考になっていたかもしれません。この展開で勝てたのは、後半は敵陣で仕掛けて、相手にキックゲームをさせなかったのが一番。ボールを動かそうとしたことで、ああなったと思います。ジャパンに選ばれたことはすごく嬉しかったです。勉強になると思いますし、得るものを得て、成長して帰ってきたいと思います」
<セットに収穫あり!タイトなゲームを楽しんだロック中田英里>
「今日は競った試合で、途中から楽しかったです、すごく。負けてはいけないというなか、この状況を楽しめました。ワセダに入ってからなかなかこういう経験はなかったので、楽しかったです。今日はロックのメンバーも替わって、自分がラインアウトのサイン出しをしたんですけど、あれだけ取れたというのは、自分の仕事ができたのかなと思います。ブレイクダウンに関しては、帝京がうまかったり、強かったり、人数を掛けてきたりで難しかったです。ワセダはキャリアがすぐ寝てしまう、ちょっと立っていられたとしても寝方が悪い。練習してきたにも関わらず、成果はでませんでした…。寄りも遅かったです。BKにもう少し立っていて欲しかったという思いもありますけど、もっと早くいかないといけないです。反応、リフレクションはもっともっといけると思います。後半ゴール前のディフェンスについては、ここがターニングポイント、正念場だぞとみんなで言っていましたし、モール、ショートサイドをしっかり守りきって、収穫でした。やっと夏からの課題で成果がでたなと。今日のゲームで感じたことは、FWとしてはまずセットの安定。それができれば、相手にボールを渡すことはないし、トライも取られることはないと。ジャパンに選ばれたときは、最初冗談かと思いました(笑)。授業が終わったとき、山中に聞いた?って言われて、こいつ何言ってんだと。そうしたら(主務)大川さんから連絡があって。実感沸かなかったです。ロックはトップリーガーばかりでみんな接点が強いと思いますけど、自分の武器である運動量、ボールをもらう動きでアピールしてきたいです」
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