「セカンドフェーズに進めてホッとしたという気持ちと、ラスト5分で2トライ取られたことは反省だなという気持ち、今はその両方です…」(ゲームキャプテン・和田卓也)。この上ない逆境、緊張感で迎えたジュニア選手権・ファーストフェーズ最終戦。敗北=死、シーズンの終焉を意味した崖っぷちの戦いで、『早田組』セカンドチームは、その気概を見せつけた。
運命を決める戦いは、浮き沈みの激しかった過去4戦のジェットコースター・ワセダを、そのまま80分に凝縮したような展開。3分、CTB牛房佑輔の強烈なタテから、流れるような展開でWTB原田季郎がノータッチエース。8分、結束の強さを示すモールドライブで怒涛の前進。完全に圧勝ペース!今日はこれで大丈夫!しかし、11分、手堅く選択した正面のPGに失敗し、セーフティリードに逃げそこなうと、流れは一変。相手WTB田中大喜のパワフルラン(やられまくり…)、そして、実に法政らしい目の覚めるようなセットアタックにディフェンスが物の見事に切り裂かれ、試合は再び緊張感に包まれた(17-12)。ミスとペナルティで、いつの間にか崩れてく。これ、敗れた明治戦、帝京戦とまったく同じ。またしても…。
それでも、この日のワセダには、逆境を楽しむ覚悟と割り切り、シンプルにプレーしようという芯の強さがあった。狙えるエリアではしっかりと「3点」を選択。そして、圧倒できると判断すれば、徹底的にモール。フェーズでも、四の五の言わず強いプレーヤーが愚直に前へ。「落ち着いてプレーできたし、全員で意思統一できたのは大きかった」(CTB常藤健)と言う様に、一度流れを失いながらも大崩することはなく、その後は着実に点差を広げていった。
その中心にいたのは…、紛れもなくこの男、SO吉井耕平! この日のゲームメーク、司令塔ぶりは、とにかく素晴らしいの一言。静と動。ときに堅く、ときに果敢に。変幻自在。心身自在。「もう少しボールを動かしたかった」と、試合後本人は反省しきりも、そのタクトには寸分の狂いもなかった。スケールの大きな山中亮平とも、万事に滑らかな村田賢史とも、また一味違う存在感。チームを勝たせることこそがSOとしての指名。この男、必ずやワセダを背負って立つ!
完全に勝負の決まった残り5分、法政に好きなように走られ、相変わらずのジェットコースターぶりを最後の最後に披露してしまったものの、崖っぷちからは何とか生還。これで試合前4年生が涙ながらに訴えた、赤黒への道も、『荒ぶる』への道も、繋がった。「セカンドフェーズはもちろん、その前にある早慶戦に向けて、来週、再来週とどれだけやれるか。Bで勝つことではなく、自分たちがAに上がるんだという気持ちが大事。そういう意識で、一人ひとりがレベルアップしていければと思ってます」(ゲームキャプテン・和田卓也)…。全員が同じ想いを共有できるか。ワセダ、ここから先が本当の勝負―
<逆境でこそ輝く! 学生たちにその想いを伝え勝利を掴んだ中竹監督>
「今日は負けるとセカンドフェーズには進めないという崖っぷちで臨んだゲーム。学生たちには、この緊張感、逆境でいかに自分たちのパフォーマンスが出せるか、ここでやれる人間を評価する。硬くならずに、こういう緊張感のなか、強気で、ワクワクした気持ちでプレーすることを期待していると伝えました。入りから強いプレーをして、ボールを動かして、グラウンドを広く使って、いい形でのトライがあってよかった。とはいえ、まだまだ力が足りないところがあるので、ひとつひとつ修正して、セカンドフェーズに向かっていきたい。ひとまず今日のところは、トライを量産して、勝ったことがひとつの成果。課題としては、残り10分で2本取られた精神的な甘さ。そこは反省しなくてはいけない。先週の課題であった部分についても、FWが体格差のあったなか、意地を見せて、激しい、いいディフェンスをしてくれたと思う。SOの吉井は、ゲームコントロール、プレー選択と、期待どおりのものだった。素晴らしい力を発揮してくれましたね」
<ホッと一息? 一週間すべてを仕切ったゲームキャプテン・和田卓也>
「今はセカンドフェーズに進めてホッとしたという気持ちと、ラスト5分で2トライ取られたことは反省だなという気持ち、その両方があります。途中までは、まぁよかったんですけど、やっぱり最後の5分、個人技で取られてしまった。タックルからと言っているにも関わらず、あの取られ方は…。今日は自分たちで、『前へ前へ』というテーマを掲げましたが、坂井をはじめ強いプレーヤーを軸に前に出る意識があって、そこはよかったと思います。ブレイクダウンも越えるところはしっかり越えて、スローガン的には総じてよかったのかなと。今週の練習ではずっとAにブレイクダウンで圧倒され続けて、ダメだなと思ったところもあったんですけど…。試合ではまあまあでした。ただ、欲張ってしまったときのリリースであったり、まだまだ反省はあります。ゲームメークについては、先週の帝京戦で村田に任せきりにしてしまった反省を踏まえて、4年生みんなで吉井をしっかりサポートできたと思います。何とか崖っぷちは乗り越えましたけど、次からは負けたらその時点で本当に終わり。このままでは厳しいと思いますし、ディフェンスをもっともっと強化しなくてはいけないと思います。セカンドフェーズはもちろん、その前にある早慶戦に向けて、来週、再来週とどれだけやれるか。Bで勝つことではなく、自分たちがAに上がるんだという気持ちが大事。そういう意識で、一人ひとりがレベルアップしていければいいと思います」
<欠かせぬ存在! 日々安定したプレーを見せるNo8武田佳明>
「勝たなくてはいけない試合を物にすることができて、課題はありながらも、一安心です。今週はずっとピリピリしたなかやってきて、今日は普段緊張しない自分も、さすがに少し緊張しました。試合内容としては、アタックは強い人間が前に出て、よかったと思いますけど、ディフェンスはちょっと…。前半は前にることができていましたけど、後半は前に出られず、いかれてしまいました。FWがモールで消耗していたこともあるでしょうし、法政が作りにくるラックだったのに対して、遅らせることができず、セットが不十分で前に出ることができませんでした。ブレイクダウンに関しては、ハンマーが効いていたと思いますし、法政が捨て気味だったとはいえ、2人目が強くスイープできてよかったと思います。帝京のように拘ってくる相手には分かりませんけど…。もっともっと勝負しないといけないです。チームとしては、満足いく試合ではなかったと思います。大島や(山下)昂大を焦らせるくらいのプレーをして、Aに絡めるようにならないと『荒ぶる』はない。残りの時間、その気持ちでがんばります。4年としては、チームのことより自分がAに上がることをどれだけ考えられるか。それが底上げに繋がって、『荒ぶる』に繋がっていくと思います」
<涙の勝利! 初公式戦にもらしさを発揮したCTB常藤健>
「崖っぷちということで、とにかく勝つこと、そのために自分には何ができるのかをこの一週間ずっと考えてやってきました。自分にできるのは、Bを盛り上げること。アタックでもディフェンスでも声を出し続けようと。練習からBは声が途絶えるようなところがあったので、自分が常に意識して声を出して、絶対に切らせないように。初めての公式戦でしたけど、グラウンドに立ったらめちゃくちゃ落ち着いていて、自分でもびっくりでした。本当に楽しかったです。チームを勢いづけられたかは分かりませんけど、自分の責任は最低限果たせたのかなと思います。でも、まだまだアタックでもディフェンスでも課題があるので、細かいところを修正していきたいです。チームとしては、試合中に点を取るパターンが見えて、それを全員で意思統一できたのは大きかったと思いますし、強い奴がドンドン前に出るプレーもできて、うまく試合を運べたと思います。吉井はしっかり裏が見えていますし、こっちとしてはすごく楽。1年生でも思っていることをしっかり言ってくれるので、コミュニケーションもしっかり取ることができました。とはいえ、今日はFWのモールに頼ってしまって、消耗させすぎたようなところがあるので、BKとしては反省です。人数が揃っている局面では、抜けきれなかったですし。ブレイクダウンに関しては、BKもそこまで悪くなかったと思いますし、立っている意識、2人目、3人目の寄りの意識もあって、まずまずだったと思います。残りのシーズンは、練習のなかで毎日毎日100%出し切っていくことが一番大事。4年の意地です。もう時間がないので、ひたすら赤黒を目指して、日々大事に過ごしていきたいと思います」
<抜群のゲームメーク!間違いなき判断でチームを勝利に導いた吉井耕平>
「今日はとにかくBKでボールを動かすこと、FWを前に出すことを意識してプレーしました。試合前は結構緊張もありましたけど、先輩たちが助けてくれて、思い切りプレーすることができて、よかったです。自分のプレーができたかは…、もっとボールを動かせると思っていたんですけど、法政のジャッカルのうまさもあって、テンポを出すことができませんでした。そのなかでトライをたくさん取れたのは、FWのモールがあったからです。そこでトライが取れていたので、エリアマネジメントもしっかりできました。今日はFWのおかげ。BKとしては反省です…。あまりボールを動かすことはできませんでしたけど、ゲームメークとしては間違っていなかったと思います。ディフェンスに関しては、もっと練習が必要です。シニアに入って毎日Aチームと練習していると、やっぱり接点が激しいですし、ここでプレーしていれば、絶対にうまくなると思えました。これからしっかりとチームに貢献できるよう1日1日努力していきます。人を生かして、空いたところは自分で勝負。セカンドフェーズに向けては、まだまだミスが多いので、それを減らして、もっと圧勝したいと思います」
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