『有田組』、ここが本当のスタートライン。自らの至らなさを痛感した。やるべきことがはっきり見えた。辻ワセダ初戦で迎えたいきなりのビッグゲーム。そこに待ち受けていたのは…、大きな屈辱と、創部以来初めての体験だった―
この一戦に懸ける想いをしっかりと体現するように、滑り出し順調だった。軽くジャブを打ち合った後の7分、素早い仕掛けからFB井口剛志が相手のギャップを逃さず、そのキレとスピードで挨拶代わりの先制トライ。その後も速く(早く)大きくボールを動かす『高速アタック』で相手を揺さぶり、ゲームは完全にワセダのもの!これぞ2010ワセダラグビー!のハズだった。
しかし、ペナルティからの速攻で作り出したビッグチャンスをはじめ、自分たちのミス、詰めの甘さでいくつかの得点機を逃すと、それまでしっかりと渡り合っていたFWがズルズルと後退。敵方主将・前川鐘平のダンプカーのごとき突進、それに続く研ぎ澄まされた二の矢、三の矢。ワセダのアイデンティティ・低く、速く、前へはどこかに消え、受ける、そして喰い込まれる。次第にスクラムも押され出し、ゲームは大きく崩れていった。12分、26分、35分、失ったトライはいずれもゴール前の雪崩れ込み系。「今日はFWがBKについていけませんでした。東海の個はたしかに強い。でも、下に入ってレッグドライブすれば絶対に止められる。そこは体どうこうではなく、自分たちの意識の問題です…」(ロック・井村達朗)。
そして、迎えた後半。開始早々に井口が裏に抜け出し得た完全なるトライシチュエーションを、判断力の低さ、サポートの薄さで逃すと、ジ・エンド。力の差を見せられたかに思えても、この日は基本的にはお互い様の譲り合い(双方ミス多し)、苦しい展開のなか勝つチャンスは十分残されていただけに、ダメージは大きく、試合の行く末を決定づけた。再三の好プレー、点を線に繋げ切れなかったワセダ。気持ちのどこかで受けていたのか、自分たちを出し切ることができなかったワセダ。一方で実に分かりやすい強さがあった東海。後半もズドーンと3トライを加えられ、ホームで初めてとなる屈辱を味わった。
新体制、いきなり試練の黒星スタート。たしかに現時点での差を痛感させられた。すぐにでも取り組むべき課題も見えた。… 一方で、今年のチームの進むべき方向性を確認できたこと、ターゲットを明確にできたことは大きな収穫。「FWとしては、まずセットプレー。セットの安定とフィットネスをこれからもやっていく」(後藤コーチ)…。「春にやってきたことは間違っていないと思えたゲーム。辻さんの言っていることは間違っていない。これからも自分たちを信じてやっていけるかです」(SO田邊秀樹)…。試合後には、悔しさを忘れぬうちに人気がなくなるまでみっちりと反省練。さらにハートに火がついた。今こそアイデンティティを見せるとき。こうしてワセダは、絶対に強くなる―
<ワセダとして… 現状をしっかり見つめるゲームキャプテン・中村拓樹>
「まず、負けてしまったことに対して、下のチームに申し訳ないです…。Bがいい試合をしてくれたにも関わらず、Aがこういった結果になってしまったのはとても残念なこと。ただ、FWにたくさんの下級生が出ていたなか、大きな相手であっても、入るところさえしっかりできたら倒せるんだと自信を持ってくれたらと思います。スクラムは前半の何本かはしっかりと組めていましたが、途中からいかれてしまい…、もっと練習が必要だと感じました。1番嫌だと考えていたモールディフェンスに関しては、つぶせたところもありましたし、そこは収穫だったと思います。東海大と体をぶつけて感じたことは…、大きくてスピードがあって、1:1の勝負に強い。でも、ワセダとしても受けなければ倒せますし、相手にとってもそれが嫌なはずなので。そのためにも、短い距離でスピードを上げてディフェンスできるようにならなくてはいけない。ガンガンくるところに受けながらディフェンスしていては、今日のようになってしまいますから。入れているところもあるので、もう一レベル上に上がれるように。プラス、FWとしてはセットプレー。相手主導ではなく、こっちから行けるようになることです。そうすれば絶対に倒せる。AもBも今日で自分たちがどういう方向に進んでいるか分かったと思います。BKはいいので、相手に走り勝って、展開して勝つ。そのためにもフィットネスと動き出しです。負けてしまったことはすごく残念ですし、課題も出ましたけど、落ちるところだけでなく、ある程度のものが見えました。何が足りないのか、何が必要なのか。このゲームを絶対にこれからに生かします」
<妥協なき日々を!フィジカルリーダーとして今一度意識を訴える井村達朗>
「今日はチームとしての方向は見えましたが、FWがBKについていけませんでした…。BKはうちが勝っていたので、そこにいいボールを供給できなかったFWは大きな課題です。特にセットプレー。ラインアウト、スクラムが課題と言われてきたなか、こうなってしまったのは僕たちの責任。そこはしっかりやっていきたいと思います。東海大は確かに個が強かったですけど、とんでもなく差があったわけでもないですし、下に入ってしっかりとレッグドライブできるかどうかです。その体は自分たちも作っていますし、意識の問題だと思います。これから体が劇的に変わる訳でもないですし、ブレイクダウンにしろ、スクラムにしろ、足をかく意識です。それと、チームとしての方向は間違っていないので、戦い方がはまらなかったときに、どういう試合をするか。常にベストという訳にはいかないので、そういったときに立ち返る原点が必要だと思います。やってきたことも、戦術もまったく問題ないので、1:1にどれだけ拘れるか、そういうチームに4年生、委員でいかに持っていけるか。練習から妥協しているところがあるので、そこをもう一回締めていきます。ロックはライバルが多いですけど、今年は自分が赤黒を着るつもりです。英里、土屋のようなデカさも、岩井のようなセンスも自分にはないので、運動量と頭を使ったプレーを追及していく。妥協せず、1日1日やっていくだけです」
<自分たちを信じること!歩んできた道の正しさを確信する田邊秀樹>
「春からやってきていることに間違いはないという思いは、試合後の今も変わりません。アタックにしても、フィットネスにしても、やってきていることはしっかりと繋がっているので、これからよりフィットさせていけばというところです。今日負けはしましたけど、イメージはできました。敗因は…、相手ひとりひとりが強いのに対して、受けてしまった面があったこと。そういった相手を前に出て止める。80分続けられていれば、変わったと思いますし、もうひとつ思うのは、チャンスで取り切ることができなかった。井口にしろ、季郎にしろ、何度もブレイクしていたにも関わらず、そこで取り切れなかったのは大きかったです。FWが劣勢のチームはああいうところがポイントですから。アタック全体に関して言えば、セットが劣勢だったこともあって、SOから仕掛けられず、相手はディフェンスしやすかっただろうなと。もっと自分から仕掛けていきたかったです。東海大にはフィジカルの強さを感じました。そこで対等に渡り合うのは難しいかもしれないですけど、ワセダは他のところで上回る、実際今日も勝っているところはたくさんあったと思います。そういう意味でも、春にやってきたことは間違っていないと思えたゲーム。BKはよさを出せている部分がありましたし。フィットネスにしろ、アタックにしろ、ディフェンスにしろ、辻さんの言っていることは間違っていないと思うので、今日を踏まえてこれをやっていくというより、自分たちを信じてやっていけるかだと思います」
<再三のブレイクも… 精度の低さを悔やみ誓いを新たにする井口剛志>
「自分のミスが負けに繋がってしまったので、今は不甲斐なさ、悔しさしか残っていないです…。試合全体を振り返ると、FWが劣勢のなか、BKで随所にいいところがあって、そこは成果だったと思います。けど、まだまだ満足できるデキではないですし、今日のような状況が続くことも考えられるので、BKで今まで以上にやろうという話をみんなでしました。自分自身に関しても、ラインブレイクは納得できるスピード、キレ、判断ではありましたが、精度は低かったですから…。自分で行くのか、パスなのか、判断の精度が自分は低いので、そこを練習からやっていきます。東海は前川さん、フロント、安井を筆頭に、すごく強くて器用で、そこにやられてしまったという印象です。ただ、ワセダとしても、BKが今まで以上に積極的にボールをもらって、取り切るところまで持っていければ、問題ないと思うので、下を向くことなく、前向きにやっていきます。今日はやるべきことが見えた試合です。東海大の圧力、プレッシャーにさらされて、見えたものがありました。そういう意味でも、いい初戦だったと思います」