11月27日、土曜の午後。初めてとなる舞台設定に、上井草は何ともいえない空気に包まれた。毎年チームをひとつにしてきた最大の目標は失った。もう先はない。でも、絶対に負けられない。あの早慶戦の直後、迫り来る早明戦…。様々な思いが交錯するなか、『有田組』セカンドチームは、最低限の責務は果たした。「残りが限られたなか、入替戦うんぬんでなく、こうしてゲームができるのはすごくありがたいこと。とにかく今日は自分がやるべきプレーを精一杯やろうって…」(ゲームキャプテン飯田貴也)
不本意な形ではありながらついに実現した『堀越立正』との公式戦は、開始から赤黒予備軍が爆発。6分、自陣ターンオーバーからの切り替えしでフッカー須藤拓輝が60mをぶち抜き(意外な?スピード!)、豪快に先制すると、その後も完全にゲームを支配し、3分に1本のペースでトライを重ねた。この日はシンプルに1:1で各人が前に出て、SO吉井耕平が空いたスペースに的確にボールを運ぶ。CTB内山竜輔がハイパントを取りまくる。ただ振り回すだけでなく、まさにFW、BK一体。強く、早く、人とボールが動く様を見て、誰しもが呟いた。これが最初からできていれば……。
打ち疲れか、はたまた緊張の糸が少し緩んだのか、後半は停滞感も漂ったものの、この日は全員が最後まで「トライライン」の意識だけは持ち続け、ひとまず逆襲へのお膳立ては完成。「いつまでも引きずっていられないですし、僕たちは前に進んでいくしかないんです」(飯田貴也)。過去は変えられなくとも、未来は変えられる。この日は赤黒の今後、そして来年のジュニア選手権へたすきを繋ぐ大切な一勝。プライドを守るため、もうワセダに負けは許されない―
<感謝でプレー しっかりと責務を果たしたゲームキャプテン飯田貴也>
「4年間で初めての入替戦。正直、みんながみんな熱い気持ちになれたかは分からないですし、どこかフワッとした空気もあったかもしれません。でも、残りが限られたなか、入替戦うんぬんでなく、こうしてゲームができるのはすごくありがたいことですし、とにかく今日は自分がやるべきプレーを精一杯やろうと思ってました。点数も離れましたし、トライもたくさん取れましたけど、内容を見ると、ブレイクダウンの寄り、スイープの精度など、やっぱり課題は多いなと。今日はみんなトライラインをしっかり意識してましたし、両手!とかコールもでて、その辺はよかったと思います。早慶戦に負けたからといって、いつまでも引きずっていられないですし、僕たちは前に進んでいくしかありません。チームとしても、個人としても、優勝するためにはまだまだ課題があるので、しっかりと意識を持って、限られた時間のなかでそれを克服していければと思います」
<残る後悔… リーダーとしてチームを引っ張り続けたロック井村達朗>
「個人的には上に上がるチャンスとだけ考えて試合に臨みました。今までやりたかった早いテンポ、大外で取りきること、それらが体現できてよかったです。ジュニア選手権ではずっとこんな試合がしたかった。最後にこういう形ではありましたけど、できてよかったのかなと思います。早慶戦では、やはり簡単には点は取れない。取りきるべきところで取らないと、ああいう負けを喫してしまうんだと痛感しました。それを受けて、今日はチームとして絶対に勝つこと。赤黒のために相手をぶっ潰すこと。取りきるところを意識しました。ジュニア選手権を振り返ると…、今まで決勝にいけなかったことすら一度もなくて、ましてや入替戦にまでいってしまい、その初めてづくしのなか自分がキャプテンで思うところが色々とあって…。でも結果は結果として、自分がしっかり受け止めていこうと思っています。残された時間、練習なり、試合なり、メンバーに入ることだけを考えて、私生活から何からすべてそのことだけを考えて、上を見てやっていきます」