春季の締めくくりに、ターゲットとしてきた帝京大と対戦した。帝京大の強いフィジカルを生かした猛攻に苦戦するも、早大は自慢のフィットネスを生かし、あらゆる局面で数的優位を作り出す『数で勝つ』ラグビーで、王者相手に善戦する。試合終盤には2点差まで迫るが逆転することはできず、結果は17-22。敗れはしたものの、春の成果を感じられる試合であった。
SO小倉順平(スポ3=神奈川・桐蔭学園)のキックオフで、緊張の一戦が幕を開けた。前半3分、敵陣でのラインアウトモールで前進すると、そこからBKで逆サイドに展開し、CTB坪郷勇輝(商4=東京・早実)がゴール前右隅の空いたスペースにキックパス。それをWTB荻野岳志(先理3=神奈川・柏陽)が沈め、先制点を奪う。その後は自陣から抜け出せない、我慢の時間帯が続いた。何度もインゴールに押し込まれそうになるも、FB廣野晃紀(社4=東京・早実)、坪郷のビッグタックル、そしてプロップ垣永真之介主将(スポ4=東福岡)を中心としたFW陣の気迫のディフェンスで幾度となく訪れたピンチを凌ぐ。しかし29分、自陣でのペナルティからの素早いリスタートで隙を突かれ、ついにトライを許す。ゴールを決められ逆転を許し、さらに前半終了間際にはラインアウトでのミスからトライを献上。5-14で折り返す。
後半7分、敵陣に入ったところで垣永主将が相手のペナルティを誘い、SO間島陸(商4=東京・早大学院)がPGを狙うも、キックは枠を外れる。流れを引き寄せられないなか、14分にゴール前の相手ボールラインアウトで早大がボールを奪うも、直後にターンオーバーを許し、インゴールを割られ5-19と引き離された。だがここから早大の反撃が始まる。25分、帝京大のペナルティからSH岡田一平(スポ2=大阪・常翔学園)の素早いリスタートで坪郷が中央を突破。そこから間島、小倉と繋ぎ、最後は荻野が大外を走り切り、タッチライン際で出されそうになりながらも右隅にトライ。小倉が難しい位置からコンバージョンキックを成功させ12-19とする。32分にはFWが相手のペナルティを誘い、敵陣ゴール手前でのラインアウトを得る。そのモールからこぼれたボールを岡田が拾い、空いたスペースに自ら走り込み、2点差まで追い上げる。気合の円陣を組み、最後まで逆転を狙い続けた早大だったが、自陣でボールを奪うことができず、ロスタイムにはPGを決められ17-22でノーサイドを迎えた。
春季を戦い終えた早大。慶大に大敗を喫するなど、決して順調とは言い難いシーズンであった。しかしそれから1か月、「あの大敗があって、チームの意識がかなり変わった」と垣永主将は語る。そしてこの帝京大戦では、「1対1に関してはまだ負けている」(垣永主将)、「最終的には差があった」(小倉)と実力差を痛感すると同時に、「相手を上回った場面もあった」(坪郷)、「良いタックルも多かった」(荻野)と手応えにもなった。この春で得た自信と課題が、今後早大をさらに進化させることだろう。
(早稲田スポーツ新聞会 田中絢)
▼コメント
後藤禎和監督(平2社卒=東京・日比谷)
――試合の振り返りをお願いします
この帝京大戦だけじゃなくて、この後ずっと真っ向勝負とかぶつかり合いの部分でどれだけやれるかというところに焦点を絞って、春の最後である帝京大に勝つためにその部分のベースを上げて今までやって来ました。そういう意味では結果的に最後まで勝負をもつれさせることができたというのはそれなりに評価できると思います。
――帝京大の印象はいかがでしたか
1月2日の時点とか、帝京大の春の他のチームとの試合結果を見て、遥か彼方の頂きかなという印象はあったんですけど、この試合で体をぶつけて頂きにちょっとだけ近づけたかなという感じですかね。
――試合前に選手に伝えたことはありますか
真っ向勝負の部分で勝とうということと、こっちはチャレンジャーなので失うものは何もないと言いますか、力を出しきれないようなことはするなということですかね。
――全体的にタックルが向上していますが、その点についてはどうお考えですか
この春重点的に取り組んでいるポイントの一つで、ファーストタックルだけでなく、ダブルタックルやすぐに群がってターンオーバーを狙って行こうとしていて、ターンオーバーをしきるというところまでには行かなかったですけど、継続して強化して、秋には出来るようにしていきたいです。
――前半トライをとった後自陣いる時間帯が長くなりましたが、その点についてはいかがでしょうか
トライを割らせなかったということで、そういう風になってしまったということで、望むところの展開であるので、下のチームがそういったゲームをして勝ってくれたので、Aチームも勝てればそれが体感出来たのかと思います。でも印象は悪くないです。
――ビハインドで迎えたハーフタイムでの指示はどういったことを伝えましたか
全然キツくないだろうと。あと40分、むしろ楽しいくらいのはずだからという感じですかね。
――試合が終わって組んでいた円陣の中ではどういったことを伝えましたか
結果的に5点足りなかったというところで、それは集中力であったりペナルティの多さであったり、後はなんだかんだぶつかり合いの部分で少し足りなかったので、また7月以降頑張ってこの差を詰めていこうということですね。
――先週から帰ってきた布巻峻介(スポ3=東福岡)、荻野岳志(先理3=神奈川・柏陽)、佐藤穣司(スポ2=山梨・日川)の評価はいかがですか
概ね期待の通りの成長ですね。特にこの試合の布巻は良かったと思います。
――春を通してテーマの『数で勝つ』の完成度はどれくらいですか
どのくらいですかね。75点ぐらいにしておきましょうか。
プロップ垣永真之介主将(スポ4=東福岡)
――ナイスゲームでした。終わった瞬間はどんな気持ちでしたか
負けたんで、悔しかったですね。結果がすべてを物語っていると思います。
――昨日にB,C,Dチームが素晴らしい試合をしました。刺激になったんではないでしょうか
そうですね。勝ちたいという気持ちが強かったです。でもチームの代表である僕たちが結果を残せなかったことは下位のチームに対して申し訳ないです。
――前半は自陣での攻防を強いられましたが、ディフェンスで踏ん張りましたね
全体的には良かったんですけど、前半の最後にミスから失点されたのはいけないですね。たら、ればの話になりますが、あれがなかったらと考えるとあの失点は痛かったです。
――昨季の全国大学選手権で帝京大と対戦した時と比べて、体を当てたときの感触はいかがでしたか
少しはよくなっていると思いますが、まだまだだと思います。1対1に関してはまだ負けていますし、もっともっと努力して強くならならないといけないと感じました。
――春季に意識して取り組んできた動き出しに関しては、どのような評価していますか
動き出しに関しても、もっと早くできると思うんで、突きつめていきたいです。
――後半1トライを取られスコアを離されましたが、そこから2トライを奪うなど猛攻を見せました。これに関してはいかがですか
メンタル面で確実に成長している証拠だと思います。気持ちも切れていませんでしたし、集中できていました。
――5点差は、どの部分で生まれていると感じていますか
気持ちだとか言葉にできない部分だと思います。帰ったらしっかりとビデオを見て敗因を明確にし、修正していきたいです。
――慶大戦の大敗から1か月で、よくここまで持ってきたように思います。何が変わったんでしょうか
あの試合で自分たちが大学日本一を目指すチームにいかに相応しくなかったかを痛感しました。大学日本一に対する考えも浅はかでしたし、いろんなところに甘さがありました。あの大敗があって、チームの意識がかなり変わりましたね。練習の雰囲気も格段によくなりました。
――最後の夏合宿に向けて、ひと言お願いします
チームが一番伸びる時期でもあるので、とことん上を目指して努力します。
フランカー金正奎(教4=大阪・常翔啓光学園)
――ゲームを振り返って一言お願いします
ペナルティですべてが決まった。その一言に尽きると思います。
――密集での素晴らしいプレーの数々。試合前に心掛けたことは何ですか
そうですね、自分の仕事はブレイクダウンなど密集やボールをつなぐことなので、そういうところで自分らしさを全面に出そうかなと思っていました。
――帝京大戦ということですが試合前のミーティングでは何を話しましたか
これまで3年負け続けている相手ということで、借りを返すチャンスだぞということは話し合っていました。だから全員気合いも入っていましたし、チームは一つになっていたと思います。
――フィジカル面での手応えはいかがでしたか
まあそこそこ通用したかなと。でもそこは自信があるので。昨シーズンよりも当たり負けをしなくなったとは思います。
――前半終盤に相手と接触しうずくまっていたシーンもありましたが体調はいかがですか
あれは大丈夫です。ちょっとみぞおちに入っただけなので。(関東大学オールスターゲームの出場は)大丈夫そうです。
――最後に前期を総括して一言お願いします
前期は山あり谷ありでしたけど、やれることはやったと思います。ただそれでもまだ足りなかったというのが分かったので。これから夏にかけてまた努力し直そうと思います。
フッカー須藤拓輝(スポ4=東京・國學院久我山)
――試合を振り返っていかがですか
足りないところが良く見えた試合でした。
――帝京大戦ということでしたが、この試合に対する思いはどうでしたか
昨年、帝京大に負けて、そこからは帝京に勝つことを目標に春シーズンを過ごしてきたので、そういう意味では気合いの入ったゲームでした。
――前半にタックルで何度も押し返すシーンがありました
劣勢になるのは分かっていたので、そこは割り切ってリベンジしようという気持ちでした。
――前半終えて後半に入るチームの雰囲気はいかがでしたか
常に自分たちはチャレンジャーなので、この調子で続けていこうという気持ちでした。
――最後は追い上げムードでしたが気持ちとしてはいかがでしたか
最後はトライを取ることしか頭にありませんでした。
――今季の帝京大の印象はどのように感じましたか
昨年と変わらず強いチームでしたね。
――ルール変更から、スクラムの時のコールが変わったと聞きました
スクラムは悪くなかったですが、選手権の時も押されているので、これからです。
――これで、春オープン戦は一つ区切りが付きましたが、春を振り返っていかがですか
関東大学対抗戦や全国大学選手権に向けて、今は体を大きくしている途中なので、まだまだこれからだと思います。ここからまたトレーニングを積んで、夏に帝京大とやる時は勝てるようにしたいです。
――最後に夏に向けて意気込みをお願いします
帝京大に勝つことをターゲットにして、他のチームとの試合も良い内容で終えられるようにしていきたいです。
SH岡田一平(スポ2=大阪・常翔学園)
――試合全体を振り返っていかがですか
みんな走り続けて頑張ったんですけど、やっぱりコンタクトで勝てないというのは今後の課題ですね。
――前半、先制点をとってから自陣でのプレーが続きました
粘り強くやっていたんですけど、春先からオープン戦でずっと取られていたペナルティが響いて、失点したのもやはりペナルティが原因だと思います。
――帝京大の印象はいかがですか
かなり強いブレイクダウンで、持ち味を出してきました。ワセダはそれに対抗するコンタクトの強さが欠けていて、我慢できずにペナルティしていました。
――岡田選手自身もコンタクトを課題にしていますよね
自分も頑張ってタックルしにいったんですけど、やっぱりはじかれたところも何度かあったので、SHとか関係なしに相手側にひっくり返すようなタックルができるように頑張りたいと思います。
――ご自身のプレーについて具体的にどう評価しますか
パスはずっと課題にしています。また、帝京大以外に勝っていたタックルも、帝京大相手にははじかれることも多かったので、外人でもどんな相手でもひっくり返すようなタックルを目指して、夏、頑張っていきたいです。
――後半のご自身のトライについてはいかがですか
素直に嬉しかったです。
――ちょっとしたミスが失点につながる、忍耐力のいるゲームでしたね
それはゲーム始まる前からわかっていたことで、とにかくワセダはディフェンスで我慢して我慢して少しのチャンスをものにするっていうのが僕らの課題だったので、そこはゲームでも少し出せたと思います。あとは我慢強く守った分、ワントライにつなげるということを夏を超えて大学選手権で出せるようにいまから練習したいと思います。
――ライバル帝京大に最後まで競った試合を展開しました
かなり全国大学選手権につながる試合ができたと思います。でもここで満足せずに、自分らの目標は大学選手権優勝なので、勝たないとダメだし、アタックもしっかりできるように頑張っていきたいです。
――夏合宿に向けて強化したい点を教えてください
ずっと課題であるパススキルですね。SOにいいパスを出せるようにしたいと思います。あとはコンタクトです。はじかれたところを忘れずに、思い切りぶつかってひっくり返したいと思います。
SO小倉順平(スポ3=神奈川・桐蔭学園)
――試合を振り返っていかがですか
後半の最後の部分、ハーフ団のコントロールの所を修正したいと思います。
――後藤禎和監督(平2社卒=東京・日比谷)は先日「いつも通りやるだけ」とおっしゃっていましたが、成果は出ましたか
出る所は出ていたのですが、やはり後半ペナルティが多くなってその部分で負けたのかなという風には思います。
――ペナルティが多くなった要因は何でしょうか
いつも練習していてもそうなのですが、疲れてくるとちょっと妥協する部分があるので、そういう所を修正するべきなのかなと思います。疲れて自立できないとかばかりですかね。
――フィットネスの改善はありましたか
春の練習の成果が少しは出ているのかなと思います。
――帝京大と体を当ててみての感触を教えてください
最終的には差があったということなので、それを埋められるように7月、8月努力したいです。
――当たり負けはしていないように思いました
2人目が速かった、というのは思います。練習の時からずっと言っていて、徹底できつつあるのかなと。
――前半のエリアマネジメントの出来はどうでしたか
まだまだですね。前半自陣にいる時間が多かったと思うので。
――自陣にいる時間が多くても凌いでいた印象でした
そうですね、それは思いました。
――後半、角度のついたコンバージョンキックを決めましたが、その時の気持ちを教えて下さい
あまりないですね。入れて当たり前にしないといけないので。
――外してしまったコンバージョンキックについてはいかがですか
あれを決められるようにならないと(いけないと思います)。
――夏に向けての課題は見つかりましたか
疲れている時にみんなで声を掛け合ってペナルティをしないなど、そういう小さいコミュニケーションの取り合いが大事になると思います。
――BKリーダーとしてやってきての、春季BK総括はありますか
まだまだ練習すべき点があります。
――ご自身の春季総括をお願いします
もっと練習して、チームに貢献できるようになります。
CTB坪郷勇輝(商4=東京・早実)
――率直に試合を振り返っていかがでしたか
相手は結構強かったんですけど、入りは良くてやりたいことが出来たので良かったと思います。
――やりたいこととは何でしたか
ブレイクダウンとダブルタックルを中心に相手に圧力をかけていこうと思いました。それで相手を上回った場面もあったので良かったと思います。
――早い時間帯で先制出来ました
相手は先制すると強いチームなので、先制出来たのは良かったです。周りを見て良いプレーが出来た結果だと思ってます。
――タックルで相手にしっかりいけてた場面が多かったですね
そうですね、ただまだまだ負けてる場面もあったので体を大きくしたいです。最終的にはほとんどの場面で相手を上回れるように夏頑張りたいです。
――春シーズンを振り返っていかがでしたか
最初の頃はチームとして波に乗れなかったんですが、途中からみんなが1つになって戦えて、結果も残せてきたので良かったと思います。
――夏に向けての意気込みを
実際帝京大には負けてしまったので、現状に甘んじることなくこれから頑張りたいと思います。
フランカー布巻峻介(スポ3=東福岡)
――試合を終えての感想をお願いします
勝ちたかったですね。
――ターゲットである帝京大戦でしたが、どのような準備と意気込みで試合に臨みましたか
僕としてはどの相手とも変わらずにやろうと思っていたので、変に意識はしてなかったんですけど、チームの目標として、ダブルタックルに入る、ブレイクダウンに入るなどのディフェンスシステムであったり、そういう決まり事を作っていたので、そこができたことはチームとしては良かったと思います。
――前半はベンチから見ていていかがでしたか
みんな楽しそうだなあと思って、良いディフェンスをして、トライも取っていて。早く出たいという気持ちでした。
――我慢してはいるものの、先制点から追加点を奪えない状況の中での途中出場でしたが、試合に入る際に意識したことはありますか
ディフェンスではボールを奪うこと、アタックでは前に出ること、シンプルですけど、みんな疲れていたので、そこを自分ができればと思っていました。
――フランカーに転向してから2試合目の出場ですが、ご自身のプレーについてはいかがですか
まだまだ全然できていないので、もっと多くの場面に絡んで、チームに貢献できたらなと思います。
――布巻選手のビックタックルを含め、チーム全体としてタックルの精度が上がっているように感じました
それはチームとしての課題だったので、みんなできるようになって成長しているので、良いと思います。
――昨年の全国大学選手権に比べ、帝京大との差が縮まっているのではないでしょうか
どうですかね。昨年とは帝京大さんのチームも違うし、僕らも違うので何とも言えないですけど、点差だけは縮まっていると思います。
――次のターゲットは夏の帝京大戦ということになりますか
いや、全部の相手ですね。こういう試合はアベレージにしていかなければいけないし、どのチーム相手でもこういう試合ができるようにならないと強くならないので、全チームを意識してやっていきます。
――今後の課題を教えてください
個人的には多くの場面にもっと絡むこと。チームとしては、いまはもう一回個々の課題を見つめ直して、成長して、またチームとして集まるというイメージです。