心地よい風が吹く岐阜県メモリアルセンター長良川競技場。秋の早慶戦を前に、招待試合として春の早慶戦が開催された。先制点を決め、試合を最初に動かしたのは早大。連続でトライを決め12-3とリードして前半を終える。後半に早大は2トライを追加し流れに乗ったと思われたが、終盤に連続失点。必死のプレッシャーでなんとかインゴールを守り切り、26-17と勝利した。しかし、大田尾竜彦監督(平16人卒=佐賀工)は「もっとやれるし、もっと力を持っているし、選手たち自身、歯痒さはあると思います」と試合を振り返る。宿敵・慶大を相手に「物足りなさ」の残る試合となった。
前半の立ち上がりは両者互角の戦いとなった。その中でも早大は展開プレーでじわじわと敵陣へ攻め入る。12分、敵陣ゴール手前の相手スクラムからSH宮尾昌典(スポ3=京都成章) がボールを奪うと素早くスクラムの裏を周り、CTB野中健吾(スポ2=東海大大阪仰星)にパス。そのまま勢いよくトライを決めた。14分、自陣ゴールポスト手前で反則を取られ、相手のペナルティーゴールを許してしまった早大。その後も慶大の攻撃が続くが、鋭く低いタックルでゲインラインの突破を阻止する。
一方で、攻撃ではSO伊藤大祐主将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)のキックから何度か好機を演出するものの、なかなか決めきることができない。試合は膠着状態が続いたが、26分に会場を沸かせるトライが生まれる。自陣でフェアキャッチした伊藤がクイックスタート。スピードあるプレーで相手をかわしていき、一気に敵陣へ前進。さらにショートキックを蹴り俊足を生かして伊藤自らボールを追っていく。すると、ボールが吸い込まれるように伊藤の手に入り、そのままインゴールへ飛び込んだ。しかし、その後は得点を重ねられず、12-3で前半を折り返した。
さらに点差を広げたい早大は、後半5分、敵陣22メートルライン付近でWTB矢崎由高(スポ1=神奈川・桐蔭学園)から巧みなパスを受けフランカー永嶋仁(社4=東福岡)が相手をかわし前進 。最後はサポートに入ったフッカー佐藤健次(スポ3=神奈川・桐蔭学園)がインゴールを割った。続く20分、フェーズを重ね再び敵陣に攻め入る早大。インゴールまであともう少しのところで反則を取られ相手ボールになるが、プレッシャーをかけてすぐにジャッカル。ボールを取り出した宮尾がトリッキーな動きでディフェンスを翻弄し、相手の隙を突いてトライを挙げた。
26-3とここまで慶大にトライを許さなかった早大。しかし、後半終盤、流れは相手に移り、2連続で失点する。試合終了間際まで慶大の攻撃が続いたが、粘り強くディフェンスし、リードを守って26-17で勝ち切った。
「このままだと昨シーズンの決勝のように、帝京大に大敗を喫してしまうのではないか」(大田尾)。早慶戦終了後、監督はそう語ったという。早大は26-17で慶大に勝利したものの「受け手に回った時間が長かった」(伊藤)と、点差を引き離せず、納得のいくゲーム内容にはならなかった。「日本一」に向け、春シーズンの残りの試合にどのように挑んでいくべきか。この早慶戦を機に選手たちがさらに気合を入れ直したことだろう。次戦に控える流通経済大戦こそは快勝に期待だ。
記事:川上璃々 写真:濵嶋彩加(早稲田スポーツ新聞会)